これを降りれば2階層や
探索2日目。
ダンジョンにも関わらず照りつける眩しい朝日はテント越しでも分かるほど非常に明るい。
それに外の時間ともシンクロしてるようだ。
そうなると、ここが本当に外とは違う異空間なのか、疑わしい気持ちが芽生えてきた。
実はこれ、地球上のどっかだったり?
なんてこともあるかもしれない。
それにしても、テントの寝心地が最高な件。
外の環境がゴツゴツしてるので、寝転ぶと痛いもんかと思ってたが、これが思いの外フカフカ。
高級マットレスにも引けを取らない……と言えば大袈裟かもしれないが、それくらいの感覚だった。
まだ隣で陽介が寝てる辺り、時間的にもまだ起きるには早いくらいだろうか?
そう思い、俺はモバイルバッテリーを差し込んだ自身のスマホを確認する。
「……まだ6時か」
思った通り。
なんならまだ寝てもよさそうだ。
しかしまさかダンジョンの中でこんなゆっくり寝れるとはな。
チヒロさんいわく、各階層の出入口付近には特殊な魔力が流れており、モンスターが近づくことはないという。
おかげでこんなにゆっくり寝れたわけだ。
ま、時間も早いようだしもう少し寝るか。
バンッバンッ――
「海くん! 陽介くん! 2人共、はよ出てきて!」
テントが外から激しく叩かれる音。
それに瑞稀の様子から、ただ事じゃない感じが伝わってくる。
「瑞稀、どうした!?」
「えっ!? な、なんだ!? 何事ですか!?」
陽介も今ので飛び起きた。
「ええから! はよ!」
俺と陽介は顔を合わせ、首を傾げる。
ま、今ここで考えても分からないし、ってことで俺達は急いでテントを出た。
「えっと……で、何が起こったんだ?」
俺は瑞稀へ問いを投げた。
さっきの騒ぎよう、まるで何かに荒らされたり、仲間の誰かに危機があるレベルに感じたが……どうしても周りを見るだけではよく分からない。
陽介もあたりも見渡しつつ、困惑した表情。
おそらく似たような感情を抱いてるに違いない。
「なんでやねんっ! よぉみてや! ほら、岸辺班が……」
岸辺班。
そういえば昨日は少し距離を開けつつも、この同じダンジョン前で寝食していたはず。
「あれ、もういない?」
たしかに彼らの姿が見えない。
「どうやらもう出発されたようですね」
チヒロさんは冷静にそう言う。
「くっそ、アイツら先に行きやがった! きっと手柄を自分らのもんだけにするつもりやで!」
「手柄? そんなもんこの研修にあったっけ?」
「研修として直接の報酬はない。やけどここのダンジョン攻略のドロップ報酬とかは自分らのもんや。それにこの上級冒険者研修で功績を上げると、その後の冒険者人生が大きく変わるほど仕事が大量に舞い込んでくるらしいで。最近はギルド自体も増えて、自分らのギルドにまわってくるダンジョンの量も減ってもーとるはず。そんなギルドからしたら、願ってもない話やろ?」
「なる、ほどな」
つまりは副次的な利があるのか。
表向きには何もなさそうに見えていたが、実はメリットが多いようだ。
「しかしそんな出し抜いてまで得たい利益だとは到底思えないけどな」
まぁ俺がギルドというものを設立していないからそう言えるのかもしれないが。
「……きっと豊田くんでしょうね。彼、最近ギルド長として独立したみたいで、仕事がほしいのかもしれません」
チヒロさん、昨日もそうだったが、豊田が持つスキルについて詳しかった。
元々知り合いだったりするのか?
「チヒロさん、やけに豊田さんのこと詳しいですね。お知り合いですか?」
俺が今思ったことをまさかの陽介が口にした。
ま、みんな気になるよな。
「……えぇ。昔ちょっとね。そ、そんな大したアレじゃないですよ。ほら、早く私達もダンジョン攻略に行きましょ?」
なんとなくはぐらかされた気もするが、マッピング係の彼女が行くとなればついていくしかあるまい。
「……まぁ、せやな」
チヒロさんの意見には皆、概ね納得。
俺達は急いでテントを片付けてから、2階層へ続く遺跡の入口を潜った。
遺跡の中は狭く、本当に外観から想像出来る広さ、ちょうど8畳くらい。
真ん中にポツンと下へ続く階段があるのみ。
「これを降りれば2階層や。みんな、行こか!」
全員が首を縦に振り、ゆっくりと降りていく。
順番は戦闘に瑞稀、次にマッピング担当のチヒロさん、陽介、ユイさん、ミイナに俺。
一応何かしらの奇襲があっても対応できるような順番だと思う。
それから数分、いや10分くらい降っていくと、果てしなく続いていた階段がようやく終わり、2階層なる空間へ辿り着いた。
「こりゃモンスター出てきても戦いやすいで」
「……驚いた。遺跡の下がこんなに広いなんて」
先頭の2人、瑞稀とチヒロが感嘆の声を漏らしている。
もちろん後続の俺達も順に驚いていく。
広いなんてもんじゃない。
これ、もう1階層の森林地帯と同レベルだ。
遺跡って俺の中では、細い通路によって構成された迷路みたいなイメージだった。
でもここは開けっぴろげに続く広大な土地。
一応かなり奥には行き止まりっぽい壁があり、人が通れそうな通路っぽいのがいくつも見える。
こりゃ攻略に時間かかりそうだ。
「これは感知しがいがあるわ。ね、ユイさん?」
「え、えと、その……はい。わ、私の力が通用するか分かりませんけど、頑張ってみます」
魔力感知組だ。
ユイさんは相変わらず自信なさげだが、どことなくワクワクしたような顔をしている。
広い土地の攻略は、どうやらサポート役として大きなやりがいになるらしい。
そしていよいよ2階層探索開始。
「どうやら岸辺班はかなり奥まで進んでるみたいですね。私の魔力感知じゃ把握できない」
「わ、私もです」
1階層攻略の時と同じ隊列で進んでいく中、チヒロさんとユイさんはそう言う。
「つまりめっちゃ先におるってことやな。ペース、あげよか!」
先頭の瑞稀が走り出す。
「おい、瑞稀! そんな走ったら、サポートの人達がついてこれないだろ!」
俺は瑞稀へ注意促すため、同じペースで駆け出した。
「戸波さん、それは大丈夫だと思いますよ!」
陽介は俺の隣に付き、そう言う。
「え、なんで……」
「私達も体力には自信あるからですよ」
陽介の代わりにチヒロさんが走りながら俺の右後方辺りから答えてくれた。
「あ、ある程度、体力がないと、ダンジョン探索できませんから。それに迷惑かけたくないですし!」
「ミイナも問題ない」
ユイさんもミイナも余裕そうだ。
さすが上級冒険者研修に参加するだけあるな。
みんなダンジョンを攻略するためにできることを全てしているという感じ。
「そっか。そりゃ失礼しました」
完全にサポートの方々をみくびっていたと、俺は心からの謝意を伝える。
そして俺達はボス部屋である3階層へ向けて、チームみんなで駆けていくのだった。




