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竜鱗のガントレットとかだったような


「くたばれっ!」

 

 鈴木の剣が振り落とされる瞬間、瑞稀は俺を突き飛ばそうとしてきた。

 おそらくこのままじゃ2人まとめて斬られてしまう、それならウチだけが……そう判断をしたのだろう。


 もちろんそんなことは俺自身が許せない。


 《パッシブスキル:自動反撃が発動します》


 そんな自分の気持ちに呼応するように、いつもの音声が脳内に鳴り響く。

 そして俺を今の位置から押し退けようとする瑞稀の手を掴み、逆に突き退け返すことで彼女を剣の軌道から逸らさせた。


「……ちょっ!? 海くんっ!」


 当然もう避ける時間などない。


 ならばどうするか。

 残された方法はおそらくただ1つ。


 それはこの腕で受けることっ!


 ガキンッ――


 金属同士が交じり合う音。

 ぶつかった鈴木の剣と俺の腕はどちらが押し負けるなどそんな様子は微塵もなく、まさに拮抗しているという感じ。


「……お前、どっからそんなもん出した?」


 鈴木が俺の腕を見て疑問を投げる。

 いや正確には腕というか、そこに装着されたものだ。


「えーっと、なんだっけ。竜鱗のガントレットとかだったような」


「そ、そんなこと聞いてねぇ! 今の間でいつ装着したかって言ってんだ!」


 いや、そんなこと聞かれてない気がするんだけど。

 ……ってそんな細かいことは別にいいか。


 俺は腕を大きく振り払うことで、鈴木の剣を押し返した。

 そして、この前腕から指の先まで全てを覆い隠す黒色のガントレットを両手に装着済みの俺は、拳を握り込み戦う意思を見せる。


 まぁいつ装着したか、なんて当人である俺にも分からん。

 というか《???から贈り物が届きました》に対して答えただけだ。

 そしたら突然手がこうなった。


 一体誰からなんのための贈り物かは分からないが、今はこの武器を手にできたことに感謝しよう。

 ここまで、剣と素手ってちょっと不公平だと思ってたし。


「瑞稀の言う通り、こんなくだらない戦いはもうやめよう。どっちが上とかはもうなしだ」


 怒り心頭中の鈴木に俺は言葉を投げた。


 これは紛れもない俺の本心。

 どちらの職業が上かなんて正直どうでもいい。

 共にダンジョンへ挑み攻略する、それが本来ある冒険者の形だと俺はそう思う。


 仮に剣士と武闘家の間に何か軋轢があったのだとしても、この際関係ない。

 そんなくだらない歴史、俺が今日ここで全て終わらせてやる。


「だ・か・らぁっ! 剣士が上だって、何度言やぁ分かる?」


 まぁ聞き分けが悪い奴だとは、ここまで会話して分かっていた。

 コイツはなんのプライドか、どうしても相手より立場が上じゃないと気がすまないらしい。


「……どうすれば理解してくれる?」


「はっ、そんなもんお前らが格下だと受け入れ、俺にひれ伏せば理解してやるよ」


「なら和解は難しいか」


 どう考えてもこれ以上は話が進まない。

 そう判断した俺は、本格的に戦闘態勢となる。


「ハァァァッ!」


 素早い剣撃。


 ガキンッ――


 俺は自身のガントレットを信じて、迫る刃を右手で受け止めた。


 2撃目は左手。

 いくら相手の攻撃が速くともこっちは両手に盾があるのと同様、素手で避けるしかなかったあの頃とは天と地の差がある。


 静寂の中、演習場に何度も響く金属音。

 鈴木は息を切らしながらも必死に剣を振っている。

 一方の俺も体力的にすり減ってきたが、半分以上はスキルが動きを補助してくれているため、相手ほどは疲れていない。


 しかしさすが格上の階級、疲れは見せても隙は見せない。

 さぞ冒険者として強い類なのだろう。


 だがそろそろ潮時だ。


 ドスッ――


「う……っ!」


 ガントレットによる重い拳が鈴木のボディに直撃。

 ヤツは短い唸りを漏らす。


 それでもまだ立ち向かわんとする鈴木は再び剣を振るってきたが、今までの剣速と比較して数段遅かった。


「……これなら避けられるぞ」


 躱した先でもう1発拳をぶつける。


「……うぶっ!」


 鈴木はついに精魂尽きたのか、痛む腹部を押さえつつ大きく後ろへ退き、その場に片膝をついた。


「……はぁ、はぁ。こんな、バカなことがあるかよ。俺は冒険者同士の喧嘩にゃ、負けたことがないんだぞ。D級にもC級にも……B級にだって! なのに、よりにもよって……くっ!」


 そう言い放ったのち、悔しげに唇を噛む。


「鈴木、これで戦いをやめる気になったか?」


「……まだ、だ!」


「鈴木さんっ! もうやめましょう!」

「これ以上はマズイですって!」

「ほら、もう演習開始の時間も過ぎてますし!」


 剣士側も今の戦いを見て、引くのが吉と思ったのだろう。

 しかし鈴木に近づいて止めるのは危険と判断したのか、その場から動かず声だけで語りかけている。


「まだ……俺は諦めねぇぞっ! スキル【憑依:剣聖】」


 そう言って鈴木は剣を床にまっすぐ突き立てた。

 すると何やら下から剣を伝って、具現化した紫のエネルギーが鈴木の中へ入っていく。


「ダメです! そんなことをしたら鈴木さんの体が持ちません!」


 いよいよ数人の剣士が彼を止めに入るも、あの紫のエネルギーが全員を強い力で弾き返した。


「なんだ、あの力?」


「あれはたしか剣士最強のスキルにして禁忌のスキル。たしか半年前禁止になったはずなんやけど」


 瑞稀がそばに来て、スキルについて少し教えてくれた。


「そこまでするほど、武闘家が嫌いなのか」


 そう考える剣士と武闘家の間に何があったのか、俄然気になってきた。

 ただ毛嫌いしてるにしては悪意が強すぎるし。


「……殺す、殺す、殺すっ! うおぉぉぉぉぉ!」


 明らかに力が漲っている鈴木、果たして正気を保てているのか定かではない。


 《パッシブスキル:魔力吸収を発動しますか?》


 すると脳内音声、今回は俺に迫るものではないため疑問系で確認をとってきた。

 さて吸収するか否か。

 しかしこんなところで俺の中に入ってくれば、全員に怪しまれてしまう。

 だけどこのままじゃ鈴木の体が持たないらしいし。

 うーん……難しい。


「海くんっ! 他のみんなも! ここから逃げるでっ!」


 瑞稀は俺の手を引こうとする。

 周りを見れば、剣士側も武闘家側もっこの場から去ろうと一定数はエレベーターへ向かい、残りは上への非常階段へと続く扉をこじ開けようとしていた。


「ほら海くん、早くっ!」


 瑞稀がそう言って俺に逃げることを急かす中、突然颯爽と現れた中年の男性。

 俺と瑞稀の前で立ち止まる。


「おう。もぉ逃げなくていいぞ」


 どことなく雰囲気がウチのボスに似てる……気がする。


 彼は俺の前から一瞬で鈴木の眼前へ。

 その後俺の視界が再び彼を捉えた時にはすでに全力で拳を振り抜いており、禁忌のスキルにより不気味なエネルギーをまとった鈴木を十数メートル先の壁まで吹き飛ばしていた。


 いつ移動したのかも、いつ殴ったのかも分からない。

 動く前のモーションすら捉えることができなかったのは、冒険者になって初めてのことだ。

 この人、もしかしてめちゃくちゃ強い?


 そして案の定、鈴木は演習場の端で突っ伏している。

 さっきの不気味なエネルギーも消えてるし、これならもう安全か?


「悪い、ちょっと遅くなった。なんか大変なことになってたな、瑞稀」


 中年の男は俺達のそばに再び寄ると、まずは瑞稀に呼びかけた。


「ちょっと健斗さん、遅すぎやって。何しよったん?」


「はは、悪いな。ちょっと訓練前の会議が長くてな。……にしてもこんな大変なことになってるとは、もしかしてこうなることを見越して、わざと会議の時間が伸ばしてたとかねぇだろうなぁ!?」


 この健斗さんという人、怒り口調で誰かしら向かって異を唱えている。

 ここでは会議の内容なんて絶対に知り得ないことなので、答えようもないのだけれど。


「あ、海くん、この人は久後健斗さんゆーてな、武闘家の中で1番強い人やで」


「え、武闘家で1番!? 道理で強いわけだ……って久後? どっかで聞いたような」


「君がD級ダンジョンで調教師を捕らえたあの海成くんか! 噂は渉から聞いてるよ」


 渉? あの人、渉っていうのか。

 周りからは久後さんって呼ばれてるし、初めて会った時自己紹介もなかったから、今名前知ったんだが。

 てことはこの健斗さん、もしかしなくても久後さんの……。


「そう! 君の想像通り、俺は久後渉の実の弟、久後健斗ってんだ。よろしくなっ!」


 健斗さんは兄譲りの強面顔でニタリと得意げに笑ってきたのだった。

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