29話
『ターンエンド』
皇さんのターンが終わり、負けはしなかったが絶望的な状況である。
スティグマの合成から始まり、連続召喚を行われた。ライフポイントこそ削られずに済んだが私のフィールドの「竜騎士レムス」「ハスキーメイド」「ドラゴンの谷」は破壊されてしまった。
さらに悪いことに最後に召喚されたスティグマのキマイラにより、皇さんの手札が3枚も増えている。
『私のターンドロー。』
改めて状況整理を行う。試合は焦って自滅するのが一番してはいけないこと! 視聴者さんから教わったことの1つである。
まずライフポイントだが、私は8000、皇さんが3800。フィールドにカードはスティグマのキマイラのみ。手札枚数は、私が2枚、皇さんが3枚。墓場のカードは。。。
「キツイな」
心の中で呟く。
最後相手は3枚引いて、セットカードを行わなかった。それはつまり手札から発動出来る妨害カードを持つことを意味する。
何枚妨害があるかは不明だが、このターン勝負を決めないと勝ちはないことだけがわかる。
10秒…。
20秒……。
30秒………。
逆転する方法、勝ちに繋がる動きを考えるが見つからず、時間だけが過ぎていく。
諦めることは簡単である。何もせずターンを返すだけで良い。ただそれは、数少ない応援している視聴者さんに申し訳が立たないと思った。
視聴者さんは優しい。もし間違えたり、諦めても「頑張った!」「凄いよ!」「良かったよ!」。。。
きっと褒めてくれるだろう。
でも私が欲しいのは、そんな偽物の言葉ではなく、心の底から本当に思っている言葉が欲しいのだ。
60秒……。
70秒………。
喉の水分がなくなり、汗が噴き出る。勝機を見いだせない…。脳裏に「負け」の文字がよぎる…。
もし負けるとしても、最後まで足掻いて、藻掻いて、食らいつく! 諦めることだけは絶対にしない。
残り時間が60秒を切った…、その時。。。1つの可能性をようやく見つけた。
時間との勝負、妨害によっては負けるし、賭けでもある…! それでも私はその賭けに乗るしかないのである。
『手札から幼き黒き瞳を持つ龍を召喚します』
『召喚時、手札からエフェクトの魔法少女を発動。幼き黒き瞳を持つ龍の効果を無効にする。』
皇さんは、召喚と同時に妨害を使ってくる。大会中、私が何度もコストにして、デッキから黒き鋼の瞳を持つ龍を手札に加えているので仕方がない。
『無効OKです。幼き黒き瞳を持つ龍をコストにして、特殊デッキより、ドラゴンストライカーを召喚し、効果を発動します。』
私は構わず、プレイを続ける。幼き黒き瞳を持つ龍の効果発動は出来ないが、コストにすること可能である。残り時間がなく、迷ったり、考え直す時間はない!
『ドラゴンストライカーに対し、桜の精霊うららを発動。効果を無効にする。』
まだ持っていたか。。。
私の召喚後の効果発動を無効にして来たが…、もしこれが最後の妨害なら…。
『桜の精霊うらら、OKです。私は手札から竜騎士レムスの効果を発動します。墓場に送ることでデッキから、ドラゴンの谷を手札に加えます。』
私はこのターン引いた最後の1枚の手札を使用する。
『…、了解』
妨害はなく、効果が通った…、賭けは私の勝ちである。
『ドラゴンの谷を設置し、墓場に送った竜騎士レムスの効果を発動。自身を蘇生します。
ドラゴンストライカーと竜騎士レムスをコストにして、特殊デッキより、竜騎士ロムルスを召喚します。』
『墓場のドラゴンのお片付けを取り除き、ナサリーメイドを蘇生します。
ナサリーメイドの効果を発動。墓場のチェイムメイドを蘇生します。』
残り時間が30秒を切った。。。それでも勝利が目の前に来ている…!
『竜騎士ロムルス、ナサリーメイド、チェイムメイドをコストに特殊デッキより、、、「アクセスコードの騎士」を召喚します!!』
アクセスコードの騎士。
トレカアプリカードゲームはその人気からアニメ化もしている。
アニメは5作品以上あり、その中の主人公が使う切り札の1枚である。
シンプルであり、非常に強力な効果から使用者も多く、私のデッキでも最終切り札として入れている。
『…。』
沈黙ながら、皇さんから、やってくれたな!という圧を感じる。
それでも私のやることは変わらない!
『アクセスコードの騎士、効果発動。墓場の竜騎士ロムルスをゲームから取り除き、スティグマのキマイラを破壊します。』
『破壊ッ…、了解…。』
『アクセスコードの騎士で、皇さんに攻撃します!』
アクセスコードの騎士の攻撃力は4300。
皇さんのライフポイントから4300が引かれ、0になる…。
私の画面に「勝利」の二文字が表示される。
…か、、った。。。?
かっ、た。。かった。勝った。。勝った。勝った!勝った!!!勝った!!!!!!
私の勝利である!!
『対戦ありがとうございました。』
マウスを動かす手が震え、水分がないためか声が枯れてくる。。。
試合が終わりインタビューであるが、その前に本配信を見ると…。
[桜ちゃんの優勝だぁーーーーー!!!!!!!!!]
[逆転凄すぎる!!!]
[天晴]
[桜ちゃん、おめでとうございます!!!]
[黒姫、惜しかったな]
[勝負を諦めないの、、、伝わりました!]
[最高の試合をありがとうございます!感動しました!!!!!!!]
[試合終わったなーー。と思ったら逆転勝利!!アニメ見ているみたいでした]
[練習した成果100%出ましたね!]
[桜ちゃん、初代チャンプおめでとうーーーー!!]
[凄まじい試合でしたね!]【夕凪 葵ch@サウザンドキューブ】
私の勝利を祝うコメントが爆速で流れている。体の芯からこみ上げてくるものがあった。。。
『皇さん、水華さん、決勝戦お疲れ様です! 私の声、聞こえますか?』
山田さんの声がヘッドフォンから聞こえる。
『…聞こえる。』
『聞こえてます!』
『改めて、お二方ともお疲れ様でした!まずは、惜しくも敗れてしまいましたが、皇さんに感想などお聞き出来ればと思います!』
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『皇さん、ありがとうございます。それでは水華さん、優勝おめでとうございます!今のお気持ちや大会の感想などお聞き出来ればと思います!』
『まずは、率直に嬉しい、、でeす! 本当にぁりがとぅございまs。』
我慢していたが、涙が出来てきて上手くしゃべれない。。。
『2ターン目に、、、スティグマのキマイラで、、』
涙声で本当にしゃべれない。。。頑張れ、ここで伝えないと後悔する…!
『スティグマのキマイラでフィールドにカードを全部破壊されて、、。 もう無理かな、って思ったときに、、、。視聴者さんとの対戦を思い出して、、いました。
大会が発表されて、「絶対に優勝したい!」って言ったとき、、、皆優しくて、、、。
「無理だよ」とか、「キツイよ」とか、言わないで、、、。「出来る!」とか「練習付き合うよ!」って言ってくれて。。。
練習も、、、何度も無理言って、時間を作ってくれて、、、。 「皆の思いに応えたい!」「諦めたくない!」って思ったら、足搔こうとっていう気持ちになって。
だから勝てたのは、きっと私の力じゃなくて、、
ここまで応援して、付き合ってくれた視聴者さんがいたからだと思っています!
その感謝を、この場で伝えられればと思います。本当に、、私の我儘とか練習とか、、皆ありがとね。』
凄いvTuberさんはいくらでもいる。
登録者が100万人を超える方、ドームでライブをする方、いくつもゲーム大会で優勝をする方。
そんな凄いvTuberさんには大勢の視聴者さんが付いている。
しかし、、、今日だけはそんな凄いvTuberの視聴者さんより私の視聴者さんは何百倍も凄い。
今誰が何と言おうと、世界で一番凄い視聴者さんは私の視聴者さんだ!
そのことだけをどうしても伝えたくて、、、。話し切った後、笑顔と涙で目が腫れた私が画面に映っていた。




