26話
1回戦目が終わり、5位~8位の順位戦が先に行われるとのことである。いい加減何か食べて、休まないと最後まで持たない気がしたので一度対戦を忘れて休憩を挟む。
改めて部屋に置いてあるご飯を見たが、豪華である。お弁当も1人しかいないのに、揚げ物、カレー系と2種類あり、他にもサンドイッチ、クッキー、飲むゼリーなどがある。
カレーのお弁当と紅茶をチョイスし、しばしの休憩である。
『とりあえず、4位までは確定。残り2回勝てば優勝か。。』
私以外いない部屋、誰に聞かれることもない。ここまでは大きな手札事故もなく、順調であるが、問題はここから。
次は双剣との試合。
基本的に先行が有利とされるアプリカードゲームではあるが、先の試合で後攻1ターンキルが起きている。それを考えると先行の盤面形成が不十分であれば、むしろカウンターをくらう可能性がある。そのためコイントスで選択権を得た場合、敢えて後攻を選択する方法もあるには、あるが。。。
『私のデッキで1ターンキルか。。 無理だな。。。』
そうデッキにそれぞれ特徴がある。
先行盤面形成により、圧倒するタイプ。後攻に特化し、1ターンキルを決めるタイプ。両方に属さないバトルを避けるタイプ。など多種多様。
メイド&ドラゴンデッキは、その中では先行タイプに属するが、、、。 他の制圧デッキと比べると一歩劣る。そのため、強力な妨害カードを入れることでカバーしているのが、結局引ける、引けないになってくるのである。
対戦を忘れようと休憩を始めたが、結局対戦のことばかり考えてしまい。。。対して味わうことなく、ご飯を食べきっていた。
先行、後攻、どちらかを取れるかは分からないが双剣相手と確定している以上、出来ることは限られる。
鞄からデッキを取り出し、パターンのシュミレーションをしていく。
。。。。。。。。
。。。。。。。
。。。。。
。。。
『さあ、5位~8位までの決着が着きましたね、小林さんいかがでしたか?』
『いや~~、どの試合も見応えがありました! 流石決勝トーナメントに進んだ猛者達でしたね。特に結城さんのわくわくは、、、本当の意味でわくわくが起きたので、来た来た!! と思わず叫んじゃいましたよ!!』
『確かに! 私も思わず、真骨頂来た!! と感動しましたね。』
『さあ、興奮やまないですが、いよいよ準決勝第一試合です。対戦カードは皇 黒姫さん VS 夕凪 葵さんです! どちらも優勝候補筆頭ですので、今までにない激闘が見れそうですね!!』
『準決勝来ましたね。スティグマ VS 碑石。。。両方とも現トレカアプリカードゲームの最強デッキ。所謂Teir1と言われます。 僕個人としては碑石の方が有利そうな気がしますが。。。 山田さんとしてはどちらが有利だと思いますか?』
『私としても碑石の方が若干有利な気がしますね。先の試合のように、先行で碑石が盤面形成をしたら、かなりきつそうですが。。。相手はあの皇 黒姫さんですからね。。 甘さが残ったら、一瞬でひっくり返されるので、何とも言えない部分もあります』
『確かに!! 相手もこここまで残った皇 黒姫さん。。一筋縄ではいかないですね。。。 どうなるのか楽しみです!!』
『両プレイヤー準備が整ったようなので、準決勝第一試合、開始です!!』
16時。
私も本配信を見ている。決勝に進んだ場合、私の相手となるからである。先行は夕凪 さん。
碑石カードを使用し、特殊デッキのユニットを碑石のフギンを召喚し、泉を手札に加えようとするが、桜の精霊うららによる妨害。
まるで想定内と言うかのように、手札から神の碑石を刻む泉をプレイ。
穂の呪いを持つ碑石を使用し、デッキより後続用の碑石を手札に加えて、ゲームの流れを作りにかかる。
それを待っていた!と言わんばかりに皇さんが動く。
妨害カード「泥鳥と岩石」をプレイ。このカードは、このターン中、デッキから手札にカードを加える行動が出来なくなる効果。
夕凪 さんも流石にやられた!と言ったリアクション。。。
使える碑石カードを使用するが、皇さんのデッキを削れたのは10枚程度。。。
ターンが変わり、皇さんのドロー後、準備フェイズに、今度は夕凪 さんが動く。
神の碑石を刻む泉を起動し、手札リソースの回復に入ろうとするが、皇さんの宇宙の竜巻により泉自体をフィールドから取り除かれる。破壊効果にはフギンで防御出来るが、取り除く効果は防げず、手札リソースの回復に失敗。
手札0、妨害なし、フィールドにはフギン1体のみ。。。
このチャンスを皇さんが見逃す訳もなく、アルバスのスティグマから行動に入る。
カードを淀みなくプレイしていき、、、トーナメント1試合目同様の盤面形成が完了する。
全ユニットの攻撃を耐えれるわけがなく、、、。 夕凪 さんの敗北で1試合目の決着が着く。
『いやいや、、、! 決勝進出は、皇さん!! 碑石に先行を取られるも、妨害をベストタイミングで使用し、後攻での1ターンキル!!! やはり最強の名は伊達ではない!!!』
『僕は碑石が先行取った時点で、終わったか? と一瞬思ったんですが、、、。 いや~、圧巻です。本当、最強の名に偽りなしですね。』
『本当に、私も解説で声が裏返りましたよ。 夕凪 さんも泥鳥と岩石を使用された後、ターンが変わってすぐに行動に入ったんですが、一歩届かず、惜しかったですね。』
『両プレイヤー、、というより、この大会に出ているマスター到達者達全員に言えることですが、妨害などのタイミングがやはり上手いですね。妨害は先に使用したい気持ちになりますが、間違ったところに使用すると、止まりませんし。。 仮に合っている場所に止めても、そのあとのルートを相手に変えられて、結果ハマらないこともあります。』
『そう言った中で、皆さんキチンと止めるところを理解している。これだけでも、流石!と褒めたいですね。』
『小林さんの言う通りですね。私もランクマッチなどしていると、妨害を使用するのは日常茶飯事ですが、結構止まらず。。。ということは多いですからね』
『さて、まだまだ話たりませんが、、! 泉 桔梗さん VS 水華 桜さんの準決勝第二試合をそろそろ開始したいと思います!』
いよいよ私の試合である。シュミレーションは出来る限りした。視聴者さんとの練習もした。あと出来ることは、手札事故が起きないことを願い、焦らずプレイすることだけである。
『新人vTuberの水華 桜です。対戦、宜しくお願い致します。』
部屋のPCから作成されているルームに入り、いつも通り挨拶をする。そう言えば、事務所所属していないため、新人と名乗っているが、いつまで新人と言えば良いのだろうか。。。
『サウザンドキューブ所属の泉 桔梗です。こちらこそ、対戦よろしくお願いします。水華さん?桜さん?と何とお呼びすれば良いですかね?』
『あー、どちらでも大丈夫です。苗字でも、名前でも、さん付け、ちゃん付け、呼び捨て、、どれでも呼びやすいように呼んでいただいて。』
昨日の杏ちゃんの時もそうであったが、呼び方は大事である。個人的には、初対面は「さん」付けが助かるところだが、特別呼び方にこだわりはないので、相手の呼びやすいので良いのである。
『そうしたら、水華さんとお呼びしますね。アタシのことも、呼びやすい呼び方で大丈夫です。』
『それでしたら、私も泉さんとお呼びします。』
呼び方が決まってから、数秒経つが特に会話が続かない。相手の集中を妨げるのも良くないので、こちらから会話を振ることはないが微妙に気まずい。。。
そう思っている内に、スタッフさんから開始の連絡が入り、開始ボタンを押す。
画面でコインが回転し、先行・後攻が決まる。。。 私は後攻であった。
手札を確認する。
「ドラゴンの谷」「ドラゴンのお片付け」「チェイムメイド」「雷撃の嵐」「幼き黒き瞳を持つ龍」
・・・。 非常にマズイ。。。 妨害カードが0枚、辛うじて後攻発動できる全体除去はあるが、花騎士バロネスなど出されたら無効にされる。。。
『アタシのターン。双剣師バクラを召喚します。効果発動、手札の双剣カードを見せることでトークンカードを特殊召喚します。』
泉さんは双剣デッキの理想ムーブから動きだした。これは、本当にマズイ。。。
『双剣師バクラとトークンカードをコストに、特殊デッキより双剣師セキショウを召喚します。
バクラとセキショウの効果をそれぞれ発動します。デッキから双剣カードを1枚手札に加えて、さらにカードを1枚ドローします。』
『手札1枚をコストに双剣師リュウエイを特殊召喚します。
リュウエイ効果でトークンカードを特殊召喚し、そのまま2体をコストに特殊デッキより双剣師タイコウを召喚します。』
『マジックカード、霊峰双剣門を使用します。手札コストで墓場に送った双剣師タイアを蘇生します。
タイヤ効果発動。墓場の双剣カードを取り除き、トークンカードを特殊召喚。タイヤ・トークンをコストに特殊デッキより双剣の奇跡龍ドラガイトを召喚します。』
『カードを2枚セットしてターンエンドです。』
私の妨害がないため、流れるようなプレイ。希望を打ち砕くほどの妨害が盤面。
『私のターン、ドローします。。。』
!? 最高だ!! この絶望的な状況を切り返す1枚を引けた!!
泉さんの盤面を確認していく。
フィールドにはマジックカードを無効にするドラガイト、破壊耐性と取り除きを持つタイコウ、ユニット効果を無効にするセキショウ、さらにセットが2枚。
私は念入りにカードを使用する順番を考える…。
『雷撃の嵐を使用し、2枚のセットカードを破壊します。』
1つのルートを見つけ、動き始める。まずは1枚目、おそらく無効にすると予想し雷撃の嵐を発動する。
『双剣の奇跡龍ドラガイトの効果を発動します。1ターンに1度、相手のマジックカードを無効にします。』
想定通り、ドラガイトで無効にしてきた。まずは1妨害を使わせた。
『ドラガイトの無効、OKです。幼き黒き瞳を持つ龍を召喚します。』
『召喚に対して、双剣師セキショウの効果を発動します。墓場の双剣カードを取り除き、このターン効果を無効にします。
さらに双剣師タイコウの効果を使用します。カードがゲームから取り除かれた為、水華さんの幼き黒き瞳を持つ龍をゲームから取り除きます。』
流石に私が幼き黒き瞳を持つ龍をコストにしてくるのを昨日の試合から学んだだろう。
効果無効に合わせて、ゲームから取り除きまでしてきた。しかし、これで2枚のセットカード以外のフィールド効果は全て使用させた。
『ドラゴンの谷の設置し、効果を発動します。手札コストを支払い、竜騎士レムスをデッキより手札に加えます。』
ドラゴンの谷が無効にされなかった。この効果を桜の精霊うららで無効や、2枚のセットカードで破壊されたらサレンダー以外なかったが、、、。
どうやらまだ私にもチャンスがあるみたいだ。
『竜騎士レムスの効果を発動します。手札から墓場に送り、デッキよりドラゴンの谷を手札に加えて貼り換えます。
貼り換えたドラゴンの谷の効果を発動します。手札コストを支払い、輪廻龍サーラを墓場に送ります。』
これで私の手札は残り1枚だが、準備が整った。
『コストで支払った墓場のドラゴンのお片付けを発動します。ゲームから取り除き、チェイムメイドを特殊召喚します。
チェイムメイドの効果を発動。デッキからドラゴンのお心づくしを手札に加えます。』
セットカードの反応、、なし。ブラフかまたは攻撃に対して起動するものか。。。分からないが、私はやれることやるだけである。
『墓場の竜騎士レムスの効果を発動します。自身を蘇生します。
チェイムメイドをコストに特殊デッキより、ドラゴンストライカーを召喚し、デッキよりリボル再起動を手札に加えます。』
『手札からドラゴンのお心づくしを発動します。墓場のチェイムメイドを蘇生します。』
私はこのターン引いた逆転の1枚を使うべく、カードを紡いでいく。
『ドラゴンストライカーとチェイムメイドをコストに特殊デッキより天聖印の玉を召喚します。』
最後の準備が整い、私は逆転の1枚を使用する。
『墓場のドラゴンストライカーと輪廻龍サーラをゲームから取り除き、混沌を司る龍を特殊召喚します!』
泉さんから声が漏れる。混沌を司る龍。本大会中、私は1度として召喚しておらず、視聴者さんとの練習配信でも1回召喚した程度である。
私のように練習配信を、対戦相手を研究していれば、この可能性を考えられるだろう。しかし、蓋を開けて見れば練習配信をした人は私以外おらず、おそらく公開されているデッキの確認もそこまでしていないのだろう。
心の中でこう呟く。
「この手は読めましたか?泉さん」と。




