剣鬼のもてなし
スウィートの街から東に君臨している、熱風の魔神パズズを攻略する時が訪れた。ギルドとしては、港湾都市スウィート~アクシー港をつなぐ陸路を阻むパズズは、何としても排除したいようで、討伐報酬も破格の金貨千枚(大和帝国一億円)を提示していた。
当然、ダンジョンでのお宝も含めると巨万の富になり、ファミリー単位で攻略したとしても、悠々引退できる財が見込まれるだろう。
針葉樹を縫うように設けられた小道を、山賊・魔物を警戒しながらソドム達は二日歩き、ダンジョン近くに辿り着いた。季節は秋だが、北部ゆえに雪がちらついていた。
「あ~、寒い!風は強いし、宿場町はないし、最悪なんだけど!」と、先頭を歩くシュラは不満を爆発させた。時折、強風にあおられてスカートがめくれるのだが、見られて困る相手はいないので押さえる素振りは微塵もなかった。後続のソドムとトリスは、見慣れたとはいえ本能的にシュラとレウルーラのミニスカ チラリズムは気になるようで、徒歩の旅も悪くない と、密かに思っていた。
かつての連邦王国ならば、街との区間には徒歩半日の場所に宿場町があって、そこで食事・トイレ・宿泊ができたので女子でも快適に旅ができたものだ。また、宿場町には兵士が駐屯し、さらに騎士が街道を巡回しているので、道中の治安は良かった。
それに比べて、連邦王国から分断されてしまった 今の下界は、何もないどころか山賊・魔物が跋扈する混沌とした大地なのだ、シュラの苛立ちは当然であった。
「寒さはコキュー島に比べれば何でもないけど、宿がないのは・・・。でも、ソドムと一緒なら楽しいわ」と、レウルーラは相変わらずソドムと並んで歩いてご機嫌である。
ソドムは内心、連邦時代と違って宿場町がないのに、陸路を選んでしまったことを後悔していたが、ハイキングとキャンプだと思うことにして、無理やり楽しんでいた。
「たまには野宿もいいじゃないか。土地のジビエを堪能しながら、夜は静かに星を見て・・・な」
冴子がバイザーを上げて、私見を述べる。道中は鉄鎧ゴーレムに歩くのを任せているので、彼女だけは全然疲れていない。
「街に停泊させていた戦艦で、ダンジョン付近に横付けしても良かったのではないでしょうか?」それなら、外敵を気にせず移動ができ、安心して眠れて、トイレ・簡易シャワーもあるので快適だっただろう。
「さ、さすが冴子殿!その言は正しい。ただ、派手に動くと 横取りを狙うハイエナどもが出るから、目立たない徒歩にしたのだ」
「でも、歩きだって帰り道ヤバいじゃん。むしろ、危険だろ!?」と、シュラが突っ込んだ。トリスは和やかな演奏をピタリと止めた。皆も思っていたことなのか、しばしの沈黙が一行を支配した。
「・・・正解だ!俺のリサーチ不足だったと認める。宿場町がないなら海路にしただろう、皆には苦労をかけてしまった」
だよな・・・、と心で思う一同。戦艦を所有しているというアドバンテージを活かさないなど、意味が分からない。
プラチナランクのファミリーで艦艇を有してるのはガーターズだけで、派閥ではアクシーズのみであった。
アクシーズは艦艇に、所属しているゴールド・シルバーランクの冒険者を乗せ、海から近いダンジョンに大人数の冒険者を送り込み、一挙に攻略することを得意としていた。
西の派閥タイタンズは真逆に陸上での行軍に定評がある。なぜなら、本隊は馬車ならぬ竜車・・・、つまり馬ではなくドラゴンが、家ほどの車両を牽引しているため、野盗や魔物を寄せ付けず、さらに派閥傘下の騎馬が護衛するという堂々たるものであった。
しかも車両には防御力を増すために鉄板が打ち付けられ、上部には対巨大生物用の超大型弩が備え付けられているので、移動する要塞と言ってもいいだろう。
この移動要塞と使役しているドラゴンで十二分に脅威なのだが、その主は連邦の皇太子ジオルドであり、最精鋭である三人の親衛隊と宮廷魔術師アジール搭乗しているので、ソドムにとっては何としてでも出会いたくない相手であった。
東の派閥ユーロはというと、勇者であるゼイター公爵を中心とした冒険サークルのような集まりの為、気ままに冒険はするが、基本は街の防衛にしか関心がないのが特徴だった。
「お、森を抜ける!…何やら先に建物があるから、一休みできそうだぞ」若干陰鬱な気分をそらすためにも、ソドムは明るい声を出し、石造りの平屋を指さした。安堵する一行、とはいえ快適空間とは限らないので大喜びはしなかった。
「ありがたい、戦う前に倒れるところでしたよ・・・」と、セイントのクインが珍しく弱音を吐いた。冴子と同じ全身板金鎧に大楯という装備でも、あちらはゴーレムとして勝手に動いてくれるのに対し、彼は30キロ以上の重さを引きずり行軍しているのだから堪らない。
ちなみにシュラ・レウルーラたち暗黒転生に成功した魔人の物理耐性は、クインの鎧くらいの防御力があるため、彼らの防具は首や心臓などの急所をしっかり守る程度で非常に身軽であった。
「まあ、寒風がこないところでブーツを脱いでくつろげるなら十分よ」と、レウルーラはポジティブな発言をして、夫の誤ちを薄め 皆の気持ちをも軽くさせた。
「そうだけど…」何の前情報もないので、さすがのシュラも喜びは小さい。
「楽観視もできません。ここはギルドの治安範囲外、いわば無法地帯です。旅人を狙った罠の可能性もあります」と、冴子が皆の気を引き締めた。
いくら最強チームといっても不意討ちされたら、ひとたまりもない。過去には頭上から何重もの投網をかけられ、絶体絶命になった時もある。とくに注意しなくてはならないのが、炎の魔法や吐息であり、いきなりブッ放されたら、冴子以外は壊滅状態になるからだ。
「そうだな・・・。よし!シュラ、偵察してきてくれ!レウルーラは魔法探知を頼む」ソドムは二人に指示を出し、残りのメンバーは臨戦態勢で待機させた。
シュラは石造りの平屋に接近し、その奇妙さに戸惑った。その建物を境に奥へと続く風景は、乾燥のため草木は枯れ 生き物の気配がしなかった。つまり、この屋敷は魔神影響下の境にあえて建てたように思えた。
手前には申し訳程度の石壁と鉄柵の門があり、その敷地には馬が六頭つながれている。
門前で安全を確認したシュラがレウルーラを手招きした。
「先客なのか、山賊の塒どっちかな?」
レウルーラは鉄柵の隙間から様子を見て、
「よく見て、馬の見張りが しゃがんでるわ」彼女が指差す先には、皮の鎧を着込んだ冒険者風の男がいた。
「お、ホントだ。見たことあるなぁ・・・あ!この前の騎馬兵だけの冒険者、ナントカだ」
「ああ、ライダースね。となると…攻略ではなく横取り狙いで来たのかも」よく見れば、男は冒険者ギルドの旗を抱えている。その旗は縁は、紺色で中心には軍馬が描かれている。
「ふぅん、なら潰しとく?」と、サラリと言うシュラ。その目は、数日空腹だった肉食獣が、獲物を見つけたかのように爛々としていた。気が早くて剣の柄を握ってさえいる。
「待って、シュラちゃん。相手はゴールドランクよ、たぶん気づかれてるわ。それにギルドルールで決められた時間以外は攻撃禁止だし」と、諭す。
「そっか。相手は野盗じゃないもんね。戦闘時間は、昼飯前と晩飯前くらいだったかな。今は その間くらいだから戦えないってことかぁ」
「そ、だから相手も構えないんじゃないかしら。それに紺色の縁ってことは、後にタイタンズがいるから、モメるなら皆と相談しなくちゃだめね」
(冒険者となって一年、利害対立もなかったから派閥タイタンズとは争ったことはないけど、宗教的に真逆ゆえに戦うのも時間の問題ね)
「じゃ、入っても問題なし!」と言うや否や、隠れもしないで鉄柵を押しのけ、敷地に入るシュラ。
止める間もないので、レウルーラはソドムらに合図して皆で行くことに決めた。
(相手もセイントがいるだろうし、戦いにはならないはず。もしも戦いになっても、すでに味方を呼んであるから、即座に制圧できる)
見張りの男は、仲間にも聞こえるように大きめの声で、シュラに声をかけた。
「なんだい・・・嬢ちゃん、こんな危険なとこに来ちまったのかぁ」
(黒いミニスカ・ガーターベルト女子が二人。ん、仲間もワラワラと現れたな。ぱっと見は弱そうな連中だが、プラチナランクってことは勇者や化物なみに強いってのが常識だ。ガーターズとは戦わないに限る、ってリーダーが言ってたな。弱ってない限りは)
「おぉ、あんたらだって忠告しときながら、ちゃっかり来てんじゃん」と、シュラはナメた返答をした。別に悪意はなく思ったことを言っただけである。レウルーラは、彼らがギルドルールを絶対に守るとは限らないので警戒は怠らず、ソドムらの来着を待った。
「いやさ、俺たちは騎馬だから、儲け話がない時は ダンジョンなどを巡回るんだ。んで、お宝かかえた冒険者や賊をみかけたら狩るわけさ」
それを聞いてレウルーラは気が楽になった。
(なんだ、私たちと変わらない考えね。正義の味方じゃないなら落としどころもあるわ)
「で、ここは何なの?」無邪気に聞くシュラ。
「ん、ああ。看板が朽ちて落ちてたか。一応、宿屋だ。営業してるぞ。今、仲間たちが遅めの昼飯してるところさ」と、宿屋入口に落ちてる看板を見ながら親切に教える男。
「そなんだ。言われてみれば、いい匂いがする!」
少ししてソドム達も入口に着いた。
「むぅ、この揚げ物の香りは…昔 立ち寄った宿屋フォレストで嗅いだ気がするな」料理人だっただけあり、嗅覚が敏感なソドムは、かつて立ち寄った温泉付きの宿屋を思い出す。
「え~と、名物がトリプルチーズチキンカツだったかしら」と、レウルーラも記憶を辿り当時を思い出してきた。不思議なもので、香りや味は昔を思い出すきっかけになったりする。
シュラも食べ物の話で、完全に思い出す。
「そうそう、魔王十爪騒動!あと、竜王山脈を荒らされた竜王が暴れたのよね」
「・・・あの時期は色々ありすぎた。・・・とはいえ安全なら、とりあえず入ろう。寒いし、野外は危険だ」ソドムは、当時の事を触れられたくないので軽く流し、皆に合図してから木製の扉を開けて中に入った。
建物の壁は石造りで、石と石との間が色が違うのは、石灰石を砕き焼いて 水溶きしたものを流し込んだからだ。そのおかげで、強度が上がり隙間風もすくない。
入って正面にあるカウンターは、宿屋としての受付と飲食カウンターを兼ねていた。カウンター奥は厨房と主の部屋になっているようで、不意に侵入されないようカウンター下をしゃがんで出入りしなくてはならない構造になっている。これなら、一旦しゃがんだ相手より有利に戦えるし、大人数で一気に襲い掛かかれないわけだ。もちろん、カウンターを乗り越えてくる賊もいるだろうが、よじ登るときに無防備になるので、店側は守りやすい。
ソドム達は、カウンターの造りに感心しつつ、やはり油断のならない地だと改めて思った。周りを見渡すとテーブルが四つ、そのうち二つをくっつけて5人の男が食事をとっていた。ゴールドランクのライダースと、同行しているセイントであった。
今 争う訳にもいかないし、対立しても得はないので、ソドムは気さくに話しかけた。
「おう、貴公ら早いな。一杯始めたりしてるのか?」
ライダースのリーダーも心得ているので、
「冗談はよしてくれ、こんな危険地帯で酔うわけにはいかないぜ」と、苦笑いする。他のメンバーも軽く手を挙げて挨拶はするものの、街場の酔っ払いのように女を見つけては絡んできたりはしなかった。
「そう?アタシたちは飲んじゃうよね?」と、シュラがソドムに言う。
「そうだな、脱・野宿の祝杯といくか」
「いいわね、泥酔しない程度にだけど」レウルーラは、賛同しつつ釘を刺しておいた。
店内に女性の声が聞こえ始めたので、新規の客だと気がついた店主が奥から現れた。黒いバンダナにエプロン姿、やせ型であるが動きに無駄がない。腰には剣を帯び、背中には盾を背負っている・・・料理人なのか戦士なのか よくわからない男であった。
「いらっしゃい・・・。ランチタイムが終わって従業員は休憩入っちまったから、ロクなもてなしはできねぇが、とりあえず温泉で旅塵を流すといい」初老の男は、微かに笑って皆を迎えた。
「温泉があるのね!」と、目を輝かせるレウルーラ。正直、野宿などはうんざりで、水浴びでも何でもいいので体を流してサッパリしたくて仕方がないのだ。
「あー、知ってる!この人!フォレストのマスターだよね。連邦の元剣鬼じゃん」と、シュラは失礼お構いなしで指さした。
「お~、トリプルチーズチキンカツの剣鬼さん!」レウルーラも思わず指さしてしまった。
(確か先代連邦王が酔った勢いで近習に称号を乱発したんだったかしら。ソドムの剣聖もそうなんでしょうけど)
無礼にも指さされた店主は、怒りより先に古い記憶を辿って戸惑った。
(確かに見覚えはある。退役後に連邦旧街道で商売していた頃の閑散期に、一悶着あった客か。その時は女が多い印象的な団体だった。にしては…、このミニスカ2人と男2人は当時のまま歳を取ってない。まあ、あれから二十年になる…そっくりな子孫かもしれん。いや・・・だとしたら、俺が剣鬼と知ってるのはおかしい…)
「おお、いつぞやの新婚旅行の方々ですな。こんな辺鄙なところへ何用で?」
(俺も歳をとった。曖昧なことは横においておこう)
「もちろん、魔神討伐だ。しかし、まさか温泉があるとは驚いた。相変わらず上手いこと思いつくものだな」と、ソドムが感心した。
「ありがとよ。だけど、立地が悪くて客がいねぇのは変わらねぇが」
「そうか、今度いい物件があったら報せよう」と言って、ソドムは右拳を左胸に「ドン」と当ててから斜め前に突き出す連邦式敬礼をしてみせた。
連邦出身の店主もキリリと表情が引き締まり、同じく敬礼で返してからニヤリとした。任務は被ったことはないが、同胞との再会は嬉しいようだ。
「新メニュー、デミソースのハンバーグは自信作だから、風呂上がりに食ってみてくれ」そう言うと店主は仕込のため厨房に引っ込んだ。
まずは風呂に向かおうとしたソドムだが、おもむろに店主を呼び止めた。
「すまない、このテーブルを買い取るとしたらいくらだろうか?」
呼び戻された挙句、わけのわからない質問をされた剣鬼は、ぶっきらぼうに
「そうだな、新しいテーブルが納入されるまでの機会損失を含めると銀貨5枚だ」
「では・・・、一つ買わせてもらおう」と、ソドムは言い ライダースが使っているテーブルの一つを指さし、シュラに何やら命じた。
(痛い出費だが、後々の無用なトラブルを避けるためやむを得まい)
「あいよ~!ちょっと兄さん方、テーブル一つ借りるわね!」シュラは有無を言わさず食器をどけて、テーブルを奪い取った。
当然、男たちは混乱した。他に2つテーブルが空いているし、カウンター席もあるのに横取りする意味などまったくないからだ。
そう、意味はない・・・奪うことにより注目を集めたかっただけなのだ。ソドムが両手を開き、抗議の言葉が出かかってるライダースに話しかける。
「諸君、我々は無用な殺生は好まない。ましてや、少々談笑した仲ならなおさらだ。だから・・・見てほしい」そう言って顎を引くと、
「ど~りゃあ!!」掛け声とともに金剛聖拳のオーラを纏ったシュラのパンチがテーブルを粉砕した。そのテーブルは華奢なつくりではなく、重装鎧の者が酔いつぶれてのしかかってもビクともしない頑丈なものだ。仮に、力自慢の戦士が両手持ちの斧で叩き壊そうとしても、両断するのは難しいだろう。
それを・・・ミニスカの小娘が素手で破壊したのだから驚きは隠せず、仰け反る者・椅子から転げ落ちる者まで出た。
さらに小娘は、態勢を低くしてから獲物に飛び掛かる獣のように、味方である黒騎士に凄まじい飛び蹴りを食らわせた。激しい動きゆえに、黒いスカートからは白い下着がチラリと覗く。
ちなみに冒険者や旅人はレンタル下着を身に着けることが多い。勝負下着は別として、旅先でパンツを洗うのは面倒だしテンションが下がるもの・・・。そこで!!宿屋や道中の宿場に立ち寄った際に、洗い済みの規格品に履き替えるわけである。つまり、今回のシュラのパンチラは、ショーツが見えたことへの喜びではなく(下着は共通なので)、その女子が身に着けている状態が見えたことに興奮を覚えたわけである。
さて、素手でも超破壊力がある戦士が放つ強力な蹴り、それを冴子は真正面から直立不動で受けた。「ゴッ」っと、鈍い金属音が響く。黒騎士である冴子は微動だにしない。
「ということだ。食事を中断させて悪かった」そう言ってから、ソドムはトリスと二人で、空いているテーブルをライダース達に運ぶ。圧倒的攻撃力と防御力を見せつけておけば、美女や豪勢なソドムの装備に目がくらんで襲撃してくることはなくなる。そして、近い未来にお宝をめぐってカチあった時に戦う必要がない。
無法地帯とはいえ、あまりにも荒っぽい牽制にクインは呆れている。
「ソドム卿、そのようなことせずともセイントが説得いたしますよ」
「どうかな。実力がないものほど力量差を見誤るものだからな。ギルドには言ったがプラチナタグとシルバータグの見分けがつきにくいのも問題だ」
「はぁ、確かに・・・。プラチナタグに関しては、金をあしらって豪華な見た目にするそうです」
「それは重畳。そうなれば、おいそれと挑んでくるものもいないだろう。山賊達ならアジトを吐かせれば一儲けできるかもしれんが、冒険者では利益率が低い上に手ごわいから迷惑だからな」
「そ、鬼畜な所業をしてきた賊なら、ぶっ殺してもスカッとするけど、冒険者相手だと故意に殺すのは禁止でメンドくさいし!」と、シュラは言って視線をライダースに向けた。
ライダースの面々は力の差を実感し、さっきまであった「あわよくば・・・」という野心はどこかに吹き飛んだ。リーダーのアザムは気力を振り絞り、味方を鼓舞するためにも一言発した。
「こりゃまた派手なデモンストレーションだなぁ!どんな仕掛けかしらねぇがビックリしたぜ嬢ちゃん。ハッハハ!!」と笑い飛ばす。もう、ここは余裕を見せるしかなかった。
(オイ、なんだこの怪物は!!人間が素手であんなことできるわけがねーだろうがよ!生身の人間ならグチャミソになっちまうぞ。それにあの鎧ヤロー、怪物娘の蹴りでノーダメかよ!これじゃあ、俺らが馬ごと突っ込んでも倒れねーだろな、アレは)
他のメンバーも意図に気が付き、「ホント、すげーなぁ」などと言って囃し立てて、陽気なふりをして食事を再開して見せた。ライダース担当のセイントだけは、実力差を知っていたので、彼らを止める必要がなくなりホッとしていた。
ソドムはライダースの物分りの良さに満足し、シュラとレウルーラと共に改めて風呂に向かった。冴子は熱さを避ける為パスして、クインとトリスは風呂が一つのようなのでソドムらに譲り、一休みするようであった。
シュラは両手を頭の後ろで組みながら、おもむろに
「ねぇ、やるの?」とソドムに聞いた。
「やりません、ヤル曜日じゃないだろ。てか、貸し切りじゃねーんだから、無茶しては次に入る人達に迷惑だろが!」
「そりゃそうだ。アハハ」と、シュラは乾いた笑いで誤魔化す。
レウルーラは、シュラがわざと からかってるのがわかるので、とくに絡まず聞き流した。今は、やっと身体の汚れを洗い流せるのが嬉しくて、二人を追い抜いて奥へと向かった。
無意識にレウルーラを追いかけるシュラ。それを見たソドム、「動くものをとりあえず追いかけるなんて、犬みたいなヤツだな」と思った。
追いつかれたレウルーラは、イタズラっぽい笑みでシュラに囁いた。
「ねぇ、ソドムが自分ルールを守れるか試してみない?」
「んー?お、なるほど!面白そう!」普段、マナーやルールとか未だに義理親として注意してくるソドムが苦悩する様を見てみたいと思い賛同するシュラ。
「決まりね。どっちが誘惑できるか勝負よ」
「いいね!どうせなら、お金賭けよ?」と、シュラが提案した。
ソドムはガールズトークで盛り上がってるのだと思い、先に脱衣所でマントなどを外し始めている。
街に滞在している期間、シュラが暇をみつけてはバイトをしているのは知っていたレウルーラだが、金に執着し始めた理由までは知らなかった。
「そう言えば、最近お金欲しがるわよね。何か欲しい物あるの?」
「い、いやぁ~何というか…」
「何?言ってみて。化粧品とか…装飾品かな?」
(この娘、昔は全財産を持ち運ぶ為に、換金しやすい指輪や金銀の装飾品を身に着けてたけど、今はダサい金のカブトムシブローチだけだもの、ちょっと寂しいかな)
「あのさ・・・、言いにくいんだけど・・・ソドムとルーラに何かプレゼントしようかな~なんて思ってさ」と、恥ずかしそうにシュラがモジモジした。
「えっ、そうだったの!?嬉しい・・・、でも気を使わなくていいのに」
「だって、二人は いっぱい稼いでも、ほとんど国元に送ってるみたいだし…。ソドムもルーラも、自分の買い物してるのみたことないからさ」珍しく赤面するシュラ。
「もう、シュラちゃんったら優しいんだね…」そう言って、レウルーラはシュラを抱きしめた。というのも束の間、シュラを引き離し
「ともあれ、勝ちは譲らないわよ。押しかけ女房に負けるわけにはいかないんだから!」
「面白い!金をむしり取って、プレゼントしたげるわ!」と、俄然ヤル気のシュラ。なんだか無茶苦茶な話になってしまったことはわかるが、勝負なら負けたくなかった。加えて、心の底に「相思相愛な二人に割って入りたい」という暗い願望が芽生えていた。
(色気、肌質、顔、スタイル…勝てる要素は一つもねぇ。補うには、技と・・・ローションか)
レウルーラには、なんとなくシュラの考えてることがわかった。
「シュラちゃん、こっちから仕掛けちゃだめよ。あくまでも、さり気ない誘惑勝負ね」
「わわわ、わかってるってば」シュラは作戦が看破されたことを必死に誤魔化しながら、服を脱ぎ始めた。




