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リゼの悪役令嬢日記  作者: 風野うた
番外編 双子とルイス

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83/87

29、双子とルイス 26

楽しい物語になるよう心がけています。

誤字脱字等のご連絡は感謝いたします。


ベンジャミンは、キャロットケーキの入った籠を持って、廊下をウロウロしている。


久しぶりに王都で羽を伸ばしたお母様は、馴染みのお店で買ったストールを私に見せびらかしているところだ。


「エリーゼ、素敵でしょう?ルーヴェンスも同じ柄のマフラーを買ったのよ」


 ん?ルーヴェンスって、、、。


あ!お父様のことだ!!


「もしかして、お父様と一緒にお出かけしたの?」


「ええ、そうよ。昨日は陛下がお父様にお休みを下さったのよ」


「ふーん、そうなのね。楽しめて良かったわね」


「ええ、ここで落ち着いたら、いかに自分が凝り固まっていたのかが分かったわ。たまには息抜きをして、のんびりするのもいいわね」


「そうね」


 私は、ベンジャミンやレノンが、お兄さん、お姉さんと楽しそうにミッションへ、チャレンジしていたことをお母様には伝えなかった。


それは本人たちから直接聞いたほうがいいかなと思ったから。


お母様も私と同じで、双子はいつまでも小さな子供という意識があったのかも知れない。


この二日間、レノンとベンジャミンは初めて知ることに興味を示し、いろいろと考えながら行動していた。


それを見て、二人の個性を感じた。


双子だから似ているというのは、こちらの思い込み。


結果から言うなら、レノンもベンジャミンも全然似ていなかった。


レノンは、用心深くて、慎重で、人を頼るのが上手。


ベンジャミンは、行動力があって、柔軟性あって、人を使うのが上手。


これはあくまで私の意見であって、ほかの人はもっと違う印象を持っているかも知れない。


私の弟達、これでわずか九歳なのだから、結構、優秀なんじゃない?


間違いなく、私よりは、、、。


『リゼは、自己評価が低い癖は、いい加減に直したほうがいいと思うんだが』


『あー、もう!!ルイス様、急に何なんですか!また勝手に心の声を聞いてたんですか!!』


『あ、いや、リゼの分析力は、なかなかのモノだと思うぞ。だから、もっと自信を持っていいと思う。話は変わるが、今から宰相を連れて、そちらへ行く。帰る準備をしておいてくれ』


『はーい、分かりました』


 もう!!!勝手に心を読む癖は辞めて欲しい。


ほら、私は怒っていますよ!!!


今、聞いてくれたらいいのに、、、。


「お母様、ルイス様がそろそろ来ます」


「はいはい、準備は万端よ。ベンジャミン、殿下が到着されるわよー。こっちに来なさい」


 お母様は、ベンジャミンを呼ぶ。


ベンジャミンは、早歩きで戻って来た。


あ、走らないんだ、、、。


「あのね、キャロットケーキから凄くいい匂いがしてるんだ。早く帰って食べたい、、、」


 そう言いながら、私たちの前に籠を近づける。


バターとシナモンのいい香りがした。


「確かにいい香りね。あと少しの我慢よ、ベンジャミン!!」


「うん」


「もう、二人とも、、、」


 お母様は呆れて笑い出す。


「お待たせ」


 ルイス様が現れた。


その横にはお父様も。


「父様!!」


 ベンジャミンは私に籠を預け、お父様に飛びついた。


お父様は急に飛びついたベンジャミンを、グッと持ち上げ、目線を合わせた。


「大きくなったね。ミッションゲームはどうだったかな?」


「あのね、ミッションゲームは・・・最高に楽しかった!!」


「そうか、それは良かった」


「宰相、ベンジャミン、申し訳ないが続きは帰ってからにしてくれないか?皆が待っている」

 

「おおっと!そうでした。では、殿下お願いいたします」


「では、戻ろう」


 ルイス様の転移魔術によって、私たちは一瞬でベルカノン領の邸へ転移した。



 風景は中庭に切り替わり、お肉のいい匂いが漂っている。


「レオーン!帰ってきたよ」


 ベンジャミンは、レオンを呼ぶ。


声に気付いて顔を上げたレオンは、にっこりと笑った。


私の横を通り抜けて、お父様はレオンのほうへ歩いて行く。


ベンジャミンも、その後ろに付いていった。


「あらあら、お父様は大人気ね」


 お母様が楽しそうに言った。


「久しぶりだからね」


 私が返す。


「宰相のミッションゲームは、なかなか良かったですよ。二人とも真剣に取り組んでいましたから」


「あら、そんなことをしていたの?もしかして、キャロットケーキも?」


 お母様が、ルイス様に質問する。


「ええ、そうです。他にも色々とチャレンジしていたので、後で話を聞いてあげてください」


「それは楽しみだわ。殿下、この度は色々とありがとうございました。わたくしも、リフレッシュいたしましたわ」


「そう言っていただけて嬉しいです」


ルイス様は、王子様スマイルを炸裂させた。


ウッ、眩しい!!


お母様は、にこやかに受け止めている。


流石だわ。


普通のご令嬢なら倒れているわよ。


「クックック、、、」


 ルイス様が下を向いて笑い出す。


「リゼ、、、。心配しなくても、そんなにおれの笑顔を褒めてくれるのは、リゼくらいだぞ」


「何のことでしょう?」


 プイッとしらを切る。


『しらを切っても、かわいいぞ、リゼ』


 あー!!もう、何なの!?


顔が熱くなってきた。


私たちが不毛なやり取りをしている間に、お母様がレノン達の方へ行ってしまったじゃない!!


「ルイス様、どこまでプライバシーを侵害する気なんですか!?」


「いや、四六時中、聞き耳を立てているわけじゃないんだ。何故か、いいタイミングで聞こえて来るんだよ」


「都合良すぎますよ」


「本当なんだ。済まない」


 あー、もう!


そんな風に謝られたら、これ以上言えないじゃない。


「そういえば、姫のことを夫人に話してくれてありがとう」


「どういたしまして。その後、マーゴット様の調子はいかがですか?」


「部屋で眠っているはずだ。ロゼ殿もパーティーには降りてくるだろう」


「その間、マーゴット様を一人にしちゃって大丈夫ですかね?」


「それは大丈夫だ、ミヤビを付ける」


 あ、ミヤビも王都から連れて来たんだ。


「なるほど、抜かりないですね」


「ああ、何かあったら一大事だろう?」


 ルイス様は視線をアズに向けた。


視線の先のアズは、お父様とお母様に頭を下げていた。


多分、マーゴット様のことだろう。


「そろそろ、宰相に開会の宣言でもしてもらおうか」


「ええ、時間ですしね」


 ルイス様は、お父様に視線を送る。


お父様はすぐに気づいて、こちらへやって来た。


「殿下、どうされました?」


「そろそろ、パーティーの開会宣言をしてもらおうかと思って呼んだ」


「私が宣言しても宜しいのでしょうか?」


「ああ、このパーティーは、レノンとベンジャミンが宰相のために頑張ったのだから、おれが挨拶をしたらオカシイだろう?」


「左様ですか。では、遠慮なく」

 

 お父様は、ルイス様に目礼をしてから、再びレノン達の方へ戻っていった。


遠目に見ていると、お父様は何か指示を出している。


マーキュリーが駆け寄り、お父様に話しかけた。


次はマーキュリーが使用人に指示を出す。


あっという間に、トレーを持った使用人たちが中庭に出てきた。


トレーの上には、グラスが乗っている。


「手慣れたものだな」


 横で、ルイス様がボソッと言った。


使用人たちは、一人一人にグラスを手渡していく。


今夜のパーティーはブッフェ形式なので、このまま乾杯をするようだ。


全員にグラスが行き渡ったところで、お父様がグラスを持ち上げる。


「お集りの皆様、二日間、息子たちのお手伝いをありがとうございました。今夜はディナーと、楽しいお喋り、そしてベルカノンの美しい夜空をどうぞお楽しみください。カンパイ!」


 流れるようにカンパイの音頭を取った、お父様。


ブラボーとしか言いようがない。


「リゼ」


 ルイス様が私に向かってグラスを上げた。


私もグラスを上げて返す。


口を付けるとシャンパン?だった。


「これ、お酒、、、」


 初めて飲んだお酒の味はフルーティだった。


お酒って、苦くないんだ!?


「リゼ、初めて飲んだのか?」


「はい、今まで出されたことがなかったので」


 すると、ルイス様は私の耳の横にくちびるを近づけて囁く。


「リゼの初めてに立ち会えて嬉しい」


 無駄に甘く囁く必要があるのだろうか?


むず痒い気分になるのだけど。


照れ隠しに、グビッっと一口飲んだ。


「あ、おい!飲みすぎるなよ。悪酔いするぞ」


 ルイス様は、急に慌てた声を出した。


「悪酔いはしたくないので、これくらいにしておきます。これ、残ったヤツは飲みますか?」


 私がグラスを差し出すと、ルイス様はそれを受け取った。


「おれに残りを飲めとか言うのは、リゼしかいないだろうな」


半笑いしながら、私のグラスにゆっくりと口を付ける。


そのしぐさが妙に色っぽくて、ドキッとした。


「飲み物を飲む仕草までカッコいいって、何なんですか。ズルい」


「リゼ、ここでおれを煽るのは止めてくれないか?抱きつくぞ」


 猛烈に開き直ったセリフを吐かれ、私は自分の口を押えた。


こんなところで抱きつかれたら困る!!


「エリー!ルイスー!パエリアは如何?」


 ロイ様が、いいタイミングで近づいてきた。


彼は、大きなトレイを両手で持っている。


その上には、パエリア入りの小皿が三枚とフォークが三本あった。


「ロイ様、ありがとうございます」


「ロイ、お疲れ」


 私とルイス様は、小皿とフォークを受け取る。


ロイ様は、横を通りかかった使用人にトレーだけを渡し、自分用の小皿とフォークは手に持った。


「ここの料理人に聞いたんだけど、このパエリアという料理は海の幸で作る地方もあるらしいんだ。僕は国に帰ったら作ってみようかなと思って、レシピも教えてもらったよ。あ、どうぞ、食べてみて」


 あ、うさぎのパエリアだ!懐かしい。


昔、ここに住んでいた時に、よく食べていたメニューだ。


ああ、この味!!香ばしい!!


「これ、旨いな。サフランとガーリックの風味、トマト、パプリカ」


 ルイス様が呟く。


「だろう?ベルファント王国は、コメの収穫量が結構あるからさ。レシピを広めたら流行りそうじゃない?」


「ああ、酒とも合いそうだ」


「なるほど、酒、、、。酒場から流行らせようかな、、、」


 ロイ様は、ぼそぼそと戦略を立てながら、パエリアを口に運ぶ。


「これ、まさか狩りで」


「そうそう、結局、全部ルイスが狩ったんだよ。出来ないことが無さ過ぎだよね」


「全部?」


「ああ、エンペラーラビットと、いななき鳥と、ベルカウを少し狩った」


「ベルカウ!?超デカい牛ですよね」


「ああ、超デカかった」


 ルイス様は、私の口調をマネしながら言った。


「それで厨房が、、、」


「そういうことだ」


「あのお肉、結局どうするの?」


 ロイ様がルイス様に質問した。


「孤児院や病院に配った残りは塩漬けにして備蓄すると、ベンジャミンが指示していたぞ」


「やるな、ベンジャミン君」


 へっ!?ベンジャミンが、そんなことを指示したの?


「弟が優秀過ぎる、、、」


 私が呟くと、ロイ様が笑った。


「本当に二人とも九歳と思えないくらい冷静だよね。いつも一緒にいるから、個々の能力を発揮する必要が無くて、今まで気づかれなかったんだろうね。将来が楽しみだよね」


「双子あるあるだな」


「そうなの?」


 ルイス様が無自覚に発言したことにより、ロイ様の頭に?が浮かんで見える。


あなたが双子竜って、超シークレットですからね。


今の発言はアウトです。


「ああ、書物で読んだ」


「流石、知識もいろいろと網羅しているね」


 あ、ロイ様、全く疑ってないし、ルイス様はシレっと嘘を吐いたよね。


「そういえば、ロゼ様は?」


「マーゴットに付き添っていると思うよ」


「そろそろ、おれの護衛と交代するころだから、降りてくるだろう」


「ああ、それなら、ロゼの分のパエリアを用意しよう。じゃあ、席を外すね。ルイス、今夜はよろしくー!」


「分かった。あとでな」


 ロイ様は、パエリア鍋の方へと戻っていった。


「送っていくんですよね?」


「ああ、送る。でも直ぐに戻ってくるから、起きていてくれないか?」


「はい、待っておきますね」


 二人でパエリアの続きを食べていると、レノンから呼ばれた。


「姉様―!!ちょっと来て」


「ルイス様、ちょっと行ってきますね」


「ああ、行ってこい。おれは、ミヤビと打ち合わせてくる」


 ルイス様は、食器をテーブルに置いて、中庭から建物の方へ歩いて行った。


それを見送ってから、私はレノンの方へと向かった。


最後まで読んで下さりありがとうございます。

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