29、双子とルイス 26
楽しい物語になるよう心がけています。
誤字脱字等のご連絡は感謝いたします。
ベンジャミンは、キャロットケーキの入った籠を持って、廊下をウロウロしている。
久しぶりに王都で羽を伸ばしたお母様は、馴染みのお店で買ったストールを私に見せびらかしているところだ。
「エリーゼ、素敵でしょう?ルーヴェンスも同じ柄のマフラーを買ったのよ」
ん?ルーヴェンスって、、、。
あ!お父様のことだ!!
「もしかして、お父様と一緒にお出かけしたの?」
「ええ、そうよ。昨日は陛下がお父様にお休みを下さったのよ」
「ふーん、そうなのね。楽しめて良かったわね」
「ええ、ここで落ち着いたら、いかに自分が凝り固まっていたのかが分かったわ。たまには息抜きをして、のんびりするのもいいわね」
「そうね」
私は、ベンジャミンやレノンが、お兄さん、お姉さんと楽しそうにミッションへ、チャレンジしていたことをお母様には伝えなかった。
それは本人たちから直接聞いたほうがいいかなと思ったから。
お母様も私と同じで、双子はいつまでも小さな子供という意識があったのかも知れない。
この二日間、レノンとベンジャミンは初めて知ることに興味を示し、いろいろと考えながら行動していた。
それを見て、二人の個性を感じた。
双子だから似ているというのは、こちらの思い込み。
結果から言うなら、レノンもベンジャミンも全然似ていなかった。
レノンは、用心深くて、慎重で、人を頼るのが上手。
ベンジャミンは、行動力があって、柔軟性あって、人を使うのが上手。
これはあくまで私の意見であって、ほかの人はもっと違う印象を持っているかも知れない。
私の弟達、これでわずか九歳なのだから、結構、優秀なんじゃない?
間違いなく、私よりは、、、。
『リゼは、自己評価が低い癖は、いい加減に直したほうがいいと思うんだが』
『あー、もう!!ルイス様、急に何なんですか!また勝手に心の声を聞いてたんですか!!』
『あ、いや、リゼの分析力は、なかなかのモノだと思うぞ。だから、もっと自信を持っていいと思う。話は変わるが、今から宰相を連れて、そちらへ行く。帰る準備をしておいてくれ』
『はーい、分かりました』
もう!!!勝手に心を読む癖は辞めて欲しい。
ほら、私は怒っていますよ!!!
今、聞いてくれたらいいのに、、、。
「お母様、ルイス様がそろそろ来ます」
「はいはい、準備は万端よ。ベンジャミン、殿下が到着されるわよー。こっちに来なさい」
お母様は、ベンジャミンを呼ぶ。
ベンジャミンは、早歩きで戻って来た。
あ、走らないんだ、、、。
「あのね、キャロットケーキから凄くいい匂いがしてるんだ。早く帰って食べたい、、、」
そう言いながら、私たちの前に籠を近づける。
バターとシナモンのいい香りがした。
「確かにいい香りね。あと少しの我慢よ、ベンジャミン!!」
「うん」
「もう、二人とも、、、」
お母様は呆れて笑い出す。
「お待たせ」
ルイス様が現れた。
その横にはお父様も。
「父様!!」
ベンジャミンは私に籠を預け、お父様に飛びついた。
お父様は急に飛びついたベンジャミンを、グッと持ち上げ、目線を合わせた。
「大きくなったね。ミッションゲームはどうだったかな?」
「あのね、ミッションゲームは・・・最高に楽しかった!!」
「そうか、それは良かった」
「宰相、ベンジャミン、申し訳ないが続きは帰ってからにしてくれないか?皆が待っている」
「おおっと!そうでした。では、殿下お願いいたします」
「では、戻ろう」
ルイス様の転移魔術によって、私たちは一瞬でベルカノン領の邸へ転移した。
風景は中庭に切り替わり、お肉のいい匂いが漂っている。
「レオーン!帰ってきたよ」
ベンジャミンは、レオンを呼ぶ。
声に気付いて顔を上げたレオンは、にっこりと笑った。
私の横を通り抜けて、お父様はレオンのほうへ歩いて行く。
ベンジャミンも、その後ろに付いていった。
「あらあら、お父様は大人気ね」
お母様が楽しそうに言った。
「久しぶりだからね」
私が返す。
「宰相のミッションゲームは、なかなか良かったですよ。二人とも真剣に取り組んでいましたから」
「あら、そんなことをしていたの?もしかして、キャロットケーキも?」
お母様が、ルイス様に質問する。
「ええ、そうです。他にも色々とチャレンジしていたので、後で話を聞いてあげてください」
「それは楽しみだわ。殿下、この度は色々とありがとうございました。わたくしも、リフレッシュいたしましたわ」
「そう言っていただけて嬉しいです」
ルイス様は、王子様スマイルを炸裂させた。
ウッ、眩しい!!
お母様は、にこやかに受け止めている。
流石だわ。
普通のご令嬢なら倒れているわよ。
「クックック、、、」
ルイス様が下を向いて笑い出す。
「リゼ、、、。心配しなくても、そんなにおれの笑顔を褒めてくれるのは、リゼくらいだぞ」
「何のことでしょう?」
プイッとしらを切る。
『しらを切っても、かわいいぞ、リゼ』
あー!!もう、何なの!?
顔が熱くなってきた。
私たちが不毛なやり取りをしている間に、お母様がレノン達の方へ行ってしまったじゃない!!
「ルイス様、どこまでプライバシーを侵害する気なんですか!?」
「いや、四六時中、聞き耳を立てているわけじゃないんだ。何故か、いいタイミングで聞こえて来るんだよ」
「都合良すぎますよ」
「本当なんだ。済まない」
あー、もう!
そんな風に謝られたら、これ以上言えないじゃない。
「そういえば、姫のことを夫人に話してくれてありがとう」
「どういたしまして。その後、マーゴット様の調子はいかがですか?」
「部屋で眠っているはずだ。ロゼ殿もパーティーには降りてくるだろう」
「その間、マーゴット様を一人にしちゃって大丈夫ですかね?」
「それは大丈夫だ、ミヤビを付ける」
あ、ミヤビも王都から連れて来たんだ。
「なるほど、抜かりないですね」
「ああ、何かあったら一大事だろう?」
ルイス様は視線をアズに向けた。
視線の先のアズは、お父様とお母様に頭を下げていた。
多分、マーゴット様のことだろう。
「そろそろ、宰相に開会の宣言でもしてもらおうか」
「ええ、時間ですしね」
ルイス様は、お父様に視線を送る。
お父様はすぐに気づいて、こちらへやって来た。
「殿下、どうされました?」
「そろそろ、パーティーの開会宣言をしてもらおうかと思って呼んだ」
「私が宣言しても宜しいのでしょうか?」
「ああ、このパーティーは、レノンとベンジャミンが宰相のために頑張ったのだから、おれが挨拶をしたらオカシイだろう?」
「左様ですか。では、遠慮なく」
お父様は、ルイス様に目礼をしてから、再びレノン達の方へ戻っていった。
遠目に見ていると、お父様は何か指示を出している。
マーキュリーが駆け寄り、お父様に話しかけた。
次はマーキュリーが使用人に指示を出す。
あっという間に、トレーを持った使用人たちが中庭に出てきた。
トレーの上には、グラスが乗っている。
「手慣れたものだな」
横で、ルイス様がボソッと言った。
使用人たちは、一人一人にグラスを手渡していく。
今夜のパーティーはブッフェ形式なので、このまま乾杯をするようだ。
全員にグラスが行き渡ったところで、お父様がグラスを持ち上げる。
「お集りの皆様、二日間、息子たちのお手伝いをありがとうございました。今夜はディナーと、楽しいお喋り、そしてベルカノンの美しい夜空をどうぞお楽しみください。カンパイ!」
流れるようにカンパイの音頭を取った、お父様。
ブラボーとしか言いようがない。
「リゼ」
ルイス様が私に向かってグラスを上げた。
私もグラスを上げて返す。
口を付けるとシャンパン?だった。
「これ、お酒、、、」
初めて飲んだお酒の味はフルーティだった。
お酒って、苦くないんだ!?
「リゼ、初めて飲んだのか?」
「はい、今まで出されたことがなかったので」
すると、ルイス様は私の耳の横にくちびるを近づけて囁く。
「リゼの初めてに立ち会えて嬉しい」
無駄に甘く囁く必要があるのだろうか?
むず痒い気分になるのだけど。
照れ隠しに、グビッっと一口飲んだ。
「あ、おい!飲みすぎるなよ。悪酔いするぞ」
ルイス様は、急に慌てた声を出した。
「悪酔いはしたくないので、これくらいにしておきます。これ、残ったヤツは飲みますか?」
私がグラスを差し出すと、ルイス様はそれを受け取った。
「おれに残りを飲めとか言うのは、リゼしかいないだろうな」
半笑いしながら、私のグラスにゆっくりと口を付ける。
そのしぐさが妙に色っぽくて、ドキッとした。
「飲み物を飲む仕草までカッコいいって、何なんですか。ズルい」
「リゼ、ここでおれを煽るのは止めてくれないか?抱きつくぞ」
猛烈に開き直ったセリフを吐かれ、私は自分の口を押えた。
こんなところで抱きつかれたら困る!!
「エリー!ルイスー!パエリアは如何?」
ロイ様が、いいタイミングで近づいてきた。
彼は、大きなトレイを両手で持っている。
その上には、パエリア入りの小皿が三枚とフォークが三本あった。
「ロイ様、ありがとうございます」
「ロイ、お疲れ」
私とルイス様は、小皿とフォークを受け取る。
ロイ様は、横を通りかかった使用人にトレーだけを渡し、自分用の小皿とフォークは手に持った。
「ここの料理人に聞いたんだけど、このパエリアという料理は海の幸で作る地方もあるらしいんだ。僕は国に帰ったら作ってみようかなと思って、レシピも教えてもらったよ。あ、どうぞ、食べてみて」
あ、うさぎのパエリアだ!懐かしい。
昔、ここに住んでいた時に、よく食べていたメニューだ。
ああ、この味!!香ばしい!!
「これ、旨いな。サフランとガーリックの風味、トマト、パプリカ」
ルイス様が呟く。
「だろう?ベルファント王国は、コメの収穫量が結構あるからさ。レシピを広めたら流行りそうじゃない?」
「ああ、酒とも合いそうだ」
「なるほど、酒、、、。酒場から流行らせようかな、、、」
ロイ様は、ぼそぼそと戦略を立てながら、パエリアを口に運ぶ。
「これ、まさか狩りで」
「そうそう、結局、全部ルイスが狩ったんだよ。出来ないことが無さ過ぎだよね」
「全部?」
「ああ、エンペラーラビットと、いななき鳥と、ベルカウを少し狩った」
「ベルカウ!?超デカい牛ですよね」
「ああ、超デカかった」
ルイス様は、私の口調をマネしながら言った。
「それで厨房が、、、」
「そういうことだ」
「あのお肉、結局どうするの?」
ロイ様がルイス様に質問した。
「孤児院や病院に配った残りは塩漬けにして備蓄すると、ベンジャミンが指示していたぞ」
「やるな、ベンジャミン君」
へっ!?ベンジャミンが、そんなことを指示したの?
「弟が優秀過ぎる、、、」
私が呟くと、ロイ様が笑った。
「本当に二人とも九歳と思えないくらい冷静だよね。いつも一緒にいるから、個々の能力を発揮する必要が無くて、今まで気づかれなかったんだろうね。将来が楽しみだよね」
「双子あるあるだな」
「そうなの?」
ルイス様が無自覚に発言したことにより、ロイ様の頭に?が浮かんで見える。
あなたが双子竜って、超シークレットですからね。
今の発言はアウトです。
「ああ、書物で読んだ」
「流石、知識もいろいろと網羅しているね」
あ、ロイ様、全く疑ってないし、ルイス様はシレっと嘘を吐いたよね。
「そういえば、ロゼ様は?」
「マーゴットに付き添っていると思うよ」
「そろそろ、おれの護衛と交代するころだから、降りてくるだろう」
「ああ、それなら、ロゼの分のパエリアを用意しよう。じゃあ、席を外すね。ルイス、今夜はよろしくー!」
「分かった。あとでな」
ロイ様は、パエリア鍋の方へと戻っていった。
「送っていくんですよね?」
「ああ、送る。でも直ぐに戻ってくるから、起きていてくれないか?」
「はい、待っておきますね」
二人でパエリアの続きを食べていると、レノンから呼ばれた。
「姉様―!!ちょっと来て」
「ルイス様、ちょっと行ってきますね」
「ああ、行ってこい。おれは、ミヤビと打ち合わせてくる」
ルイス様は、食器をテーブルに置いて、中庭から建物の方へ歩いて行った。
それを見送ってから、私はレノンの方へと向かった。
最後まで読んで下さりありがとうございます。
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