20、双子とルイス 17
楽しい物語になるよう心がけています。
誤字脱字等のご連絡は感謝いたします。
ピョンピョンと上に飛んでみたけど、前方には誰も居なかった。
――――もしかして、僕だけここに落ちた?
えー、他のみんなとはぐれた!?
どうしょう・・・。
途方もない気分で、空を見上げた。
「はっ?ええっ!?」
「ダメダメ!大きな声を出すと狙われるから」
耳元へ小声で囁かれる。パッと振り返ると、ロイ王太子殿下がいた。背が高いから、お腹の辺りまでしか草に覆われていない。
――――というか、気配を全く感じなかったのだけど・・・。
ロイ王太子殿下はそのまま、僕の両脇を持ち上げて、肩車をした。これなら、遠くまで見渡せる。
すると、ルイス兄様とアズ兄様とシータが空に浮かんでいるのが見えた。
――――凄いなぁ~、飛べるんだよなぁ・・・。
彼らはロイ王太子と僕の事を少しも見ようとはしない。それぞれが違う方向を見て、集中している。
さっきは『魔術師って、空も飛べたんだ!!』と驚いて声を出してしまった。
咄嗟のこととはいえ、アレはダメだったと反省。だから今は、きちんと黙って様子を窺う。
それから、ルイス兄様は僕の安全を考えて、草むらに落としたんだろうけど、僕の後ろにロイ王太子殿下を落とすのは、やり過ぎなんじゃないかと思う。
肩車までして貰っておいて今更な話だけど、いずれ隣国の国王陛下になる人に僕の護衛のようなことをさせていいの?
ルイス兄様も姉様と方向性は違うけど、かなり大胆だよね。皆の何手も先を読んで、どんどん巻き込んでいくのだもの。ルイス兄様の頭脳って一体どうなってるんだ?
「レノン君、ここはあの三人に任せよう。カイザーラビットは大きいし、飛びかかってくるから・・・」
前方を向いたまま、ロイ王太子殿下は小声で僕に話してくる。
「は、はい、分かりました」
僕も小さな声で返事をして、また口を固く閉じた。
辺りからは、鳥の鳴き声と草や葉のザワザワという音しか聞こえて来ない。
空にいる三人は、その場に静止したまま、ジーッとしている。
経験したことのない緊張感に、僕は息をする事さえ躊躇してしまう。
だけど、その時は突然やって来た。
視界から、ルイス兄様が消える。続けて、アズ兄様も・・・。シータは、まだ宙に浮いている。
僕はロイ王太子殿下の上から、辺りをクルクルと見回したけど、何も見つけられない。
「アズ、ナイフ!」
ルイス兄様の声が左側から聞こえた。
何が起きたのかな?
音も振動も、何もなかったんだけど?
ロイ王太子殿下は僕を肩に乗せたまま、左へ向かって、草を掻き分けながら歩き出す。――――力強い歩みでドンドン進んで行く。
草むらと木立の境界線が見えて来た。あと十メートルも進めば深い草むらから抜け出せる。
「えー、嘘!?大きい・・・」
木立の奥に横たわる三頭の大きな獲物とそれを見据えているルイス兄様が見えた。
カイザーラビットという名前だから、大きめのウサギをイメージしていたんだけど、アレはクマよりデカい。怖っ、あんなのに体当たりでもされたら、僕は即死だ。
順調に草むらを抜けた僕とロイ王太子殿下は、木立の下で立ち止まった。ここまで来れば、背の高い草も無くなり、自由に歩ける。ロイ王太子殿下は「一応、まだ気をつけてね」と言いながら、僕を下ろしてくれた。
そして、肩に下げていたトートバッグを下ろして、ナイフを一本とロープ三本取り出す。僕はロイ王太子殿下の手元を見てから、顔を上げた。
「!?」
目の前には、アズ兄様が立っていた。
――――えっ、え、どこから現れた!?音も何もしなかったんだけど・・・。
「ロイ王太子殿下、ナイフを下さい」
アズ兄様は、手を差し出す。ロイ王太子殿下は黙って、アズ兄様の手のひらにナイフをのせた。
ルイス兄様はまだ狩った獲物の近くから離れず、警戒している。
アズ兄様はそこまで歩いて行って獲物の首を持ち上げ、迷いなくザクっとナイフを刺した。
一頭目、二頭目、三頭目。
――――その様子にゾッとする。
――――怖い。
「ロイ兄様!ロープを下さい」
今度はシータが目の前に現れた。
――――さっきまで上空にいたのに!!
声には出さないけど、心臓が驚きでバクバク言ってる。
ロイ王太子殿下は、シータの手にロープを三本渡した。
「シータ、気をつけてね」
僕は一声掛けた。
「まぁ、見てて」
シータはそう言うと、ロープを宙に放り投げる。
「え!?結ばないの」
僕は慌てた。だって、あのロープは血抜きをした魔物をグルグル巻きにするためのものだよね?
「・・・・・・」
シータは無言で、手先をクルリと回す。投げられたロープはグルグルと回転しながら、獲物まで飛んで行き、あとは蛇がとぐろを巻くようにグルグルと絡みついていく。
結び終えるまで、シータが獲物に触れることはなかった。
「え、えっ、アレって魔術で結んだの?シータ」
僕は動揺しながらも確認する。
「うん、バッチリ結んだよ」
「スゴい!!」
「シータ君、相変わらずスゴいね」
ロイ王太子殿下もシータを褒めた。シータは胸を張って、ちょっと威張ったポーズを取る。
そこへ、アズ兄様が現れた。シータを見るなり、「何だよそれ!?ブッ」と吹く。
僕も変なポーズだなぁと思っていたから、一緒に笑った。
「おーい、この三頭はベルカノン邸に送るぞ!」
獲物の横から、ルイス兄様が叫んだ。
あれ?大声を出したら、狙われるんじゃナイ?と、思ったら、風景が険しい岩場に変わった。
――――ちちち、ちょーっと待って!!展開が早過ぎて、ついていけない。
そのまま僕の隣にいたロイ王太子殿下に聞いてみる。
「えっと、皆さんはいつもこんな感じなんですか?」
ロイ王太子殿下はニヤリ笑う。
「そうそう、あの三人はキレッキレだから、任せた方が楽だよ」
――――キレッキレ?
僕は小首を傾げる。
ロイ王太子殿下は、僕の頭を撫でながら、自身の口元に人差し指を立てた。
あ、この合図をすると言うことは、静かにと言う事だ。今、ルイス兄様達が集中しているハズだから、邪魔しちゃいけないよね。
ちなみに僕とロイ王太子殿下は、切り立った岩場の一番上に立っていた。とても眺めが良いけど、頻繁に強い風が吹いてくる。その度に僕は身体を持って行かれそうになる。
ここはさっきの草むらより、かなり危険だと思う。だから、あまり動けない。
ルイス兄様達はどこに居るのだろうと、キョロキョロ視線を動かして探してみた。
――――全然見当たらない。
まさか、谷底の下?確かめたくても、足場が狭いから、一歩踏み込んで、真下を覗くことも難しいんだよなぁ・・・。
「アズ!ナイフ!!」
予想した通り、下からルイス兄様の声がした。
今度はさっきよりも、かなり早い。
ロイ王太子殿下は、手慣れた様子でトートバッグから、ナイフ一本とロープを五本出した。
お決まりの様に、アズ兄様が姿を現す。
「ロイ王太子殿下、ナイフを!」
それを素早く受け取り、アズ兄様は、ヒラりと僕の横にある断崖絶壁から、飛び降りた。
「!!!!!!」
血の気が引いた。腰が抜けて、その場にペタンと座る。
「あらら、ビックリしちゃったかな。レノン君、大丈夫かい?」
ロイ王太子殿下は、優しく声を掛けてくれた。
「はい、少し驚きました」
「普通はそうだよね。あの三人は、当たり前の様に飛んだり、消えたりするから、こっちがおかしいのかな?って、僕も時々思うんだよね」
フフフと、ロイ王太子殿下は軽く笑う。
「ロイ兄様、ロープを下さい」
また、落ち着く間もなく、シータが現れた。五本のロープを受け取ったシータは、それを断崖絶壁の上から放り投げ、ロープは谷底に落ちていく。
「あれで、大丈夫なの?」
さっきみたいにクネクネしなかったけど・・・。
「うん、大丈夫。もう、グルグルにしたよ」
「もう?」
「うん。今、ルイス兄様が、ベルカノン邸に獲物を送った」
「えっ、早くない?ねー、本当に早くない?まだ邸を出発してからさ、三十分も経ってないよね」
「そう?」
「僕は、いななき鳥の姿を見てもないんだけど!?」
「うん、僕も見てないよ」
「見てないのにグルグル巻きって、どう言うこと?」
「んー、見なくても出来ちゃうんだよねー、ボク」
シータのこと言っていることを理解したいと思ったど・・・、無理だった。
「おーい、ちょっと良いか?」
ルイス兄様が下から、ふんわりと上がって来た。
勿論、宙に浮かんでいる。
「ルイス、お疲れ様。ベルカウの場所だろう?」
ロイ王太子殿下が答える。
「ああ、そうだ。ヤツはどの辺にいるんだ?」
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