18、双子とルイス 15
楽しい物語になるよう心がけています。
誤字脱字等のご連絡は感謝いたします。
まさか、狩りに行くミッションが出てくるなんて思わなかった。信じられなくて、ミッションカードの文字を何度も読んだ。
僕に狩りなんて無理だ。ちょっと泣きたくなった。――――助っ人をしてくれる兄様達が居なかったら、どうなっていたんだろう。
ベンジャミン達は、中庭の先にある庭師の建物の方へと移動し始めた。見たところ、助っ人は、姉様と王女さまとロゼ王太子妃殿下の三人。一体、どんなミッションなのかな・・・。
ベンジャミンはニコニコしてるし、助っ人が姉様たちなら、過酷なミッションじゃないよね。
――――良いなぁ、羨ましいよ。
「おい、レノン。お前がリーダーなんだから、オレ達にどうして欲しいか指示を出せ」
ルイス兄様が僕に言う。
「えっ、リーダー!?それって、コレからどうするのかを僕が決めるってこと?」
「ああ、そうだ。誰に何をさせるのか、お前が決めるんだ。オレ達を上手く動かしてみろ」
う~ん、狩りに行くなら、何から準備したら良いのかな?そこから分からないのだけど・・・。
「ええっと、この中で狩りをした事がある人はいますか?」
僕はテーブルの周りに立っている、助っ人の四人に聞いた。
「ボクはない」と、シータ。
「オレもない」と、ルイス兄様。
「僕もない」と、ロイ王太子殿下。
「俺はあるぜ!」と、アズ兄様。
良かった!!一人経験者が居た!
「アズ兄様、狩りに持っていくものって何?」
「そうだな、獲物を縛るロープと血抜きをするためのナイフは必須だな。それと獲物を運ぶための荷馬車も必要だけど、ここにいるメンツなら転移魔術で荷物くらい送れるから必要ないだろ」
うん、確かにルイス兄様、アズ兄様とシータがいるからね。なるほど、ロープとナイフを用意したらいいんだね。それはマーキュリーに用意して貰おう。
次は向かう場所を調べないと・・・。さっき、ロイ王太子殿下が、ベルカノン領のことなら分かるって言ってたから聞いてみよう。
「ロイ王太子殿下、獲物のいる場所は何処か分かりますか?」
「僕はベルカウとカイザーラビットの生息地なら分かるよ。実物を見たこともあるんだ。どちらも凄く大きいから始めて見た時はビックリしたよ」
「では、いななき鳥の生息地だけが分からないと言うことですね」
「うん、知らないね。どうする?誰かに聞く」
「今から執事にナイフとロープの用意をしてもらうので、その時に聞いてみます」
ロイ王太子殿下と話し終えてから、僕は隅に控えていた使用人にマーキュリーを呼んでもらう。
「――――レノン坊ちゃん、お呼びですか?」
マーキュリーは直ぐに現れた。
「マーキュリー、これから僕たちは狩りに行くから、ナイフとロープが必要なんだ。直ぐに用意出来る?」
「ナイフとロープでございますね。かしこまりました。ところで、何を狩られるのでしょうか?」
マーキュリーは小首を傾げる。
「カイザーラビットと、いななき鳥とベルカウを狩る予定なんだ」
「それは・・・、どれも大きな動物ですね。あいにく、荷馬車のご用意は少しお時間が掛かるかと・・・」
マーキュリーは眉間に皺を寄せて、僕に告げる。
「マーキュリー、輸送なら大丈夫だと思う。ルイス兄様にお願いするから」
僕はルイス兄様の方をチラリと見ると、向こうもこちらを見ていて頷いてくれた。
「左様でございますか。では、直ぐにご用事をいたしましょう」
マーキュリーは、素早く踵を返して立ち去ろうとする。
「あ!ちょっと待って!!」
僕は慌てて彼を呼び止めた。まだ、いななき鳥のことを聞いてないと気付いたからだ。
「どうされました?」
マーキュリーは身体は進行方向に向けたまま、首を回して僕の方を向く。
「ええっと、マーキュリーはいななき鳥が何処に住んでいるか知ってる?」
「はい、存じておりますよ。いななき鳥はラジーの岩場に生息しています。ただ、あそこは少し険しい岩場となっておりますので、くれぐれもお気をつけて下さいね」
「分かった。ありがとう」
「では一旦、失礼します」
僕の質問に答えると、マーキュリーは今度こそ足早に去って行った。
――――スゴイな、マーキュリーって、何でも知っているんだ・・・。僕はいななき鳥の生息地が分かってホッとした。
「ね~え、レノン。ボクは何をしたらいいの?」
シータが不満そうな声でボヤキながら僕に体当たりをしてきた。
「シータは、どんな事が得意なの?」
僕は背中に纏わりつくシータに聞く。
「んー、ボクは何でも出来るよ」
何でもって、何だろう。漠然とし過ぎてよく分からない。僕は首を捻った。
「レノン、シータは予想不能な事をしでかすから、余り動かさなくていいぞ」
アズ兄様はそう言いながら、シータを小突いた。
「はぁ?危ないって、何なのー!?ボク、まだ今日は何もしてないよ」
「ぶっ!!今日って言い方。最高だね!」
ロイ王太子殿下はシータの放った言葉がツボだったのか、大声で笑い出した。釣られてルイス兄様とアズ兄様も笑い出す。ええっと、みんなが笑っている間に、シータに何をしてもらうのかを考えよう。
僕は頭を整理するために一度、段取りを考えてみることにした。
一つ目、先ず道具を持って獲物のいる場所に行く。
道具はロープとナイフ。獲物の場所はロイ王太子殿下とマーキュリーに確認済み。獲物のある場所へは、ルイス兄様に転移魔術で連れて行ってもらう。
二つ目、獲物を探して仕留める。
獲物を探すのは全員でする。理由は早く見つけたいから。仕留める係は、ルイス兄様とアズ兄様がいい。理由は強いから。
三つ目、仕留めた獲物をベルカノン邸に持ち帰る。
仕留めた獲物の血抜きはアズ兄様にしてもらう。理由は経験者だから。
そうだ!!シータには、血抜きの終わった獲物にロープをかけてもらおう。理由は血抜きをした獲物は死んでいるから危なくないし、いざとなったらシータは魔術を使えるから。
そしてロープをかけた獲物は、ルイス兄様の転移魔法でベルカノン邸に送ってもらう。
――――これを三種類の獲物の生息地で繰り返す。
最後に四つ目、全て終わって戻ってきたら、獲物の調理をする。調理は厨房の料理人の力を借りよう。
僕は大きく深呼吸をしてから、手を挙げた。
「ええっと、聞いて下さい」
楽しそうに笑っていた四人は口を閉じて、僕の方を見た。勇気を出して、今考えた段取りを元に指示を出す。
「これからすることの指示を出します。獲物の生息地まではルイス兄様の転移魔術で送ってもらいます」
僕の言葉を聞いて、ルイス兄様は大きく頷く。
「次に生息地に着いたら全員で獲物を探します。獲物を見つけたらルイス兄様とアズ兄様に仕留めてもらいます。仕留めた獲物はアズ兄様が血抜きをしてください」
アズ兄様の方を見ると親指を立てて、了解の合図をしてくれた。
「それから、シータには血抜きを終えた獲物をロープでグルグル巻きにする係をお願いします」
シータは何か考えるような仕草をしている。もしかするとロープを巻く係は難しいのかもしれない。後で話そう・・・。
「シータがグルグル巻きにした獲物は、ルイス兄様の転移魔術でここ(ベルカノン邸)へ送って下さい。これを三箇所で繰り返します。帰って来たら厨房の料理人の手を借りて、全員で獲物を調理しましょう」
よし!言い切った!!
ルイス兄様は僕の肩に手を置いて「とてもいいと思う」と言った。
――――やったー!ルイス兄さまに褒められた。すごく嬉しい。思わず、顔が緩んだ。
そこへ「ボクはロープ係なの?」とシータが話しかけて来た。
「シータ、ロープ係をするのは難しい?他の人に代わってもらう?」
「うううん、全然大丈夫だよ!じゃあ、ボクはロープ係を頑張るね!!」
何故か、ウキウキし出すシータを見て、本当に大丈夫かな?と少し怖くなる。
「おい、レノン。そんな顔しなくてもロープ係はシータで大丈夫だ。こいつ無理なことは最初から出来ないっていう奴だから、信じて任せろ」
アズ兄様はそう言って、僕の肩をパンと叩いた。
「ああ、シータ君は強いからね。その采配はなかなか良いと思うよ」
ロイ王太子殿下も僕の采配を誉めてくれた。
「ところで、ロイ。カイザーラビットは何処に居るんだ?」
ルイス兄様がロイ王太子殿下に聞く。
「カイザーラビットなら、リンドウの森って言うところに生息しているよ。ここからだと馬車で一時間半はかかるけど、今回は転移魔術を使うんだろう?」
「ああ、移動時間が勿体無いからな。それから、レノンに頼みがひとつある。オレはこの国の地形は全て頭の中にあるつもりなんだが・・・、今回は念には念を入れたい。と言うわけで、ベルカノン領の地図を借りたいのだが・・・」
ルイス兄様は少しバツが悪そうな言い回しをした。僕は何となく気になって、無意識にルイス兄様をじーっと見てしまう。
「いや、何と言うか、ベルカノン領は場所が掴みにくい感じがするんだ。地形が複雑というのもあるけどな。今回は時間との勝負だろ。確実に辿り着きたいんだよ」
ルイス兄様は、僕に理由を話してくれた。
「あ、それ、ボクも分かる!!ベルカノン領は何か変なんだ。この邸とか領都へは簡単に飛べるんだけど、他の森や山脈の辺りは認識しにくい気がする」
シータが、ルイス兄様の意見に同意を示す。魔術師ではない僕には、その感覚がよく分からない。
「アズ兄様も転移魔術を使うよね?同じ感じなの?」
僕は二人の話を黙って聞いていた、アズ兄さまに質問してみた。
「あー、どうだろう。そんな事は考えてもなかったなぁ。ただ、俺の転移魔術と殿下やシータの転移魔術は全くレベルが違うから、、、」
アズ兄様は、ルイス兄様に視線を送った。その流れって、ルイス兄様に説明しろって言ってるみたいだ。
ルイス兄様は何と言うのかな。
「逆に、オレはアズのレベルが分からないのだが、、、」
まさかの回答だった。
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