17、双子とルイス 14
楽しい物語になるよう心がけています。
誤字脱字等のご連絡は感謝いたします。
ぼくたちのテーブルは、シータの愛犬、ルドルフの面白い話で盛り上がっていた。
シータは王都のベンカノン邸で産まれた子犬を、姉様から貰って育てている。ルドルフという愛犬は、とても人懐っこくて可愛いらしい。それで、ご飯を沢山食べるから、好きなだけあげていたら、シータは家族から怒られたのだと言う。
『このままでは、ルドルフが不健康になるぞ!』と。
そこで、満腹感をもたらす魔術を掛けた餌を作って、食べさせる様にしたら、ルドルフは適量のご飯で満足するようになった。ところが、食べる量は減ったのに、ルドルフのカラダが驚くほど大きくなっていって・・・。
今度は家族から『お前、ルドルフに何かしたのではないか?』と、シータは怪しまれているらしい。
だけど、今のところは上手く誤魔化しているんだと、シータは言う。――――その話を聞いて、ぼくは、ルドルフを見てみたくなった。ふわふわ大きな犬って、可愛いだろうなぁ・・・。
「シータ、その餌って、僕が食べたらどうなる?」
「え、ベンジャミンは犬の餌を食べたいの?」
シータはそう言って笑い出した。
――――いや、本当にベンジャミンは突然、何を思ってそんなことを言い出したんだ?と驚いてしまう。僕は弟が、犬ではなく、餌に興味を持ったことに驚きを隠せなかった。
「シータ、犬の餌ってどんな味なの?」
ベンジャミンは、シータへ質問を続ける。
「ドックフードだから、硬いし味も美味しくないよ」
「ふーん、そうなんだ」
「ベンジャミン、もしかして大きくなりたいの?」
僕は意を決して、弟に聞いた。
「うーん、どうだろう。突然大きくなったら面白いかなぁ~と思って」
「大きくなってどうするの?」
「大きな剣が持てそうだよね」
「ああ、なるほど!」
確かにベンジャミンは剣術を習いたいって、昨日ルイス兄様に言っていた。
「ボクさ~、ルドルフに悪いことをしたと思ってるんだよね。だから、ベンジャミンは食べない方がいいと思うよ」
「そっかー、失敗したら大変なことになりそうだもんね」
「うん、オススメは出来ないよ」
「そう言えば、シータってさ、もう将来の仕事が決まっているんでしょ?」
ベンジャミンがシータに尋ねる。
「え、そうなの?」
僕、その話は今初めて聞いたのだけど・・・。
シータは何でも無い事のように淡々と話し始めた。
「うん、ボクはね、大きな魔力を持って産まれたんだ。だから、筆頭王宮魔術師として、この国のために働くことが決まっているんだよ」
「国の為に!?スゴいね!」
「レノン、ベルカノン公爵も宰相という仕事をしているよね?」
「ああ、父様の仕事のこと?僕たちは余り詳しくは知らないんだ」
「宰相ってね、陛下の次に権限のある難しい仕事なんだよ」
「ええええ!?」
ベンジャミンが大きな声を出した。僕は深呼吸をして気持ちを落ち着けてから、シータに返事をした。
「そうなの?」
「そうだよ。だからここ(領地)にも、なかなか帰れないんだよ」
シータの話を聞いてビックリした。父様が王都に居て何をしているのか、何故ここになかなか帰って来ないのかを、僕らは全く知らなかったから。
「シータって、物知りだね」
僕は尊敬の気持ちを込めて言った。
「物知りってほどじゃないけど、ありがとう」
シータがニコッとして、僕とベンジャミンもニコッとした。そこで話が落ち着いたから、僕は周りを見渡してみた。
――――あれ?アズ兄様と王女さまが居ない。何処に行った!?
ロイ王太子殿下とルイス兄様は、真面目な顔をして、何かを話し込んでいる。
「何かあったのかな?」
僕が呟くと、シータが答えてくれた。
「多分、おめでたいお話だよ。後で聞いてみたらいいよ」
シータは、内容を知っているみたいだ。
姉様を見ると、ロゼ王太子妃殿下と楽しそうにお喋りをしていた。特に何か事件が起きたと言う雰囲気も無い。
シータの言う通り、心配しなくても良さそうだ。
「ねぇ、レノンのミッションは何だったの?」
ベンジャミンの質問を発端にして、僕たちはそれぞれのミッションの内容を報告し合った。
僕は正解が妖精だった『虹色に輝く金の魚』に驚いたけど、ベンジャミンが話してくれた金貨三枚の『虹のしずく』には、もっと驚いた。
姉様、スゴい。
ベンジャミン曰く、姉様は『虹のしずく』に於ける大胆な浪費について、ルイス兄様から注意を受けたらしい。
ルイス兄様、姉様に振り回されて大変だな。そこは父様が注意するところじゃ無い?
僕は父様がミッションを利用したのかもと勘繰ってしまった。
――――――――
――――時刻は十三時半。
食事も終わり、各テーブルではお喋りに花が咲いている。
そろそろ、頃合いか・・・。オレ(ルイス)は皆の前に出る。
「皆、ちょっといいか?」
オレが呼びかけると、皆は口を閉じた。
「レノン、ベンジャミン!そろそろ、五枚目と六枚目のカードを引く時間だぞ」
オレの声を聞いて、双子がバタバタと慌ててこちらへ走ってくる。
――――オレはテーブルに、二枚のカードを並べて置いた。
「ねえ、どっちにする?」
ベンジャミンがレノンに聞く。
「僕は左」
「じゃあ、ぼくは右でいいよ」
二人はテーブルから素早くカードを取って、自分の胸にカードを押し当てる。――――相手に見えないようにしている仕草が可愛らしい。
「内容を離れたところで確認してから、助っ人を選べ」
オレが指示を出すと、双子は右と左に分かれて走っていった。
皆からかなり離れたところで、周りを確認してから、ミッションカードを覗き込んでいる。――――警戒心が強くて、中々良い。
ベンジャミンは、カードを見てニコッとした。一方、レノンはあからさまに困った表情で肩を落としている。先にテーブルの方へ戻って来たのはベンジャミンだった。
そのタイミングでアズと姫も戻って来た。二人は何も言わず、ササっと席に着く。
『殿下、お陰様で落ち着いて話が出来ました。ありがとうございました』
念話で、アズが話し掛けて来た。
『ああ、良かったな。これからの事は、また後で話そう』
『はい、宜しくお願いします』
アズの表情は、さっきと一変して、柔らかく穏やかになっていた。オレはそれを見てホッとした。――――多分、オレはリゼがオレの子を身籠ったとか言ったら、間違いなく号泣する。アズの狼狽えなんて、可愛いものだ。――――とは言っても、あのアズが、椅子から転げ落ちるとは思わなかったけど。それくらい、子を授かるというのは人生で大きな出来事だよな。あー、正直なところ、物凄く羨ましいぞ!!
オレが色々考えていると、袖を引っ張られた。
「ん?」
振り返るとレノンがいた。
「レノン、どうしたんだ?」
「ルイス兄様、手伝って下さい」
泣きそうな顔で頼んできた。
「ああ、勿論、手伝うよ。他に助っ人は?」
「強い人にしました。アズ兄様とシータも・・・」
レノンは、オレの背後を指差す。振り返ると、アズとシータが戯れていた。
「おや、僕は?」
横から、ロイが話に割り込んでくる。
「ロイ王太子殿下は強いですか?」
「あー、僕は強いというより知略系だね。あと、ベルカノン領のことに詳しいよ」
ロイの顔をじーっと見ながら、レノンは悩む。――――そして、決断した。
「王女様がいいです」
ガクっと、ロイが椅子から滑り落ちていった。何なんだ、今日は椅子から落ちるのが流行っているのか?
「ロイ、自分で起きろよ」
「分かっているよ。レノンくん、僕じゃダメかい?」
ロイは、なおも食い下がる。姫が身籠ったと知ってしまったから、危険な事をさせたく無いのかもな。でも、レノンは事情を知らないから、上手く伝わらないんじゃないか。
「うーん、じゃあ、ロイ王太子殿下にします」
あ、案外、簡単に変えてくれるのか。優しいな、レノン。芝生に転がっていたロイは、スクッと起きあがり、そのままレノンを片手で持ち上げた。
「うわー!!」
レノンは予想外の展開に声を上げる。
「僕は強くないけど、力はあるよ。お役に立てるように頑張るね」
ロイはそのままレノンを自分の左肩に乗せた。レノンはすぐ慣れたのか、ちょっと楽しそうにしている。
「アズ、シータちょっと来い」
テーブルの周りに、助っ人を集める。
「で、ミッションは何だったんだ?」
オレは、レノンに聞いた。
「ええっと、野生のカイザーラビットを三羽と、いななき鳥を五羽、ベルカウを一頭捕獲して、それぞれの肉でパエリアと焼鳥とステーキを作れと書いてあります」
「それは結構ヘビーだな。土地勘のあるロイを選んで良かったと思うぞ」
「そう?」
「ああ、正しい選択だ」
レノンはニコッとした。
「しないといけない事が多い。早速、出掛ける準備をしよう」
そこまで話したところで、双子のもう一人、ベンジャミンのことを忘れていたと気付いた。見渡すと、リゼのテーブルにベンジャミンが居た。
『リゼ?ベンジャミンは何と言っている?』
『ルイス様、私は助っ人を頼まれました。ロゼ様とマーゴット様も一緒です。ミッションは、『我が家の畑に生えている人参を収穫して、キャロットケーキを作りなさい』だそうです』
なるほど、あちらはお菓子作りか。オレ達は、メインディッシュの調達と言った感じだな。宰相は夜にパーティーでもする気なのだろうか・・・。
『分かった。オレもレノンに助っ人を頼まれた。これから狩りに行ってくる』
『狩りですか!?ルイス様が行ったら、一瞬で終わりそうですね』
『そうか?オレ、狩りは人生初だぞ』
『あら、意外ですね』
『ねえ、ルイス兄様、リゼ姉様。時間が無いから、そろそろ出発しない?』
突然、シータが念話に割り込んでくる。
――――ビックリした。そうだった、シータはこんな奴だった。完全に油断していた。オレはリゼと目配せをしてから、立ち上がって声を上げる。
「さあ、最終ミッションは今からスタートだ!!」
皆が「はーい」と声を揃えて返事をした。
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