16、双子とルイス 13
楽しい物語になるよう心がけています。
誤字脱字等のご連絡は感謝いたします。
無事にミッションを終えた双子と助っ人達、正午前にベルカノン邸へ帰って来た。それをエリーゼとルイスは正面玄関で出迎える。
――――今朝、私達(エリーゼ、ルイス)はのんびりスタートだったけど、皆さんは、朝六時前から起きていたらしい。
「マーゴット様、ロゼ様、お疲れではないですか?」
「エリーゼ様、大丈夫です!午前中はお魚が全く釣れなくてヤキモキしましたけれど、午後も助っ人を頑張ります!!」
――――ロゼ様は、私が思っていたより、やる気満々だった。
「わたくしも、楽しく参加しています」
マーゴット様は、穏やかな笑みを浮かべている。――――今日も、やっぱりマーゴット様が一番美しい!!
「皆、お疲れ様。折角、揃ったのだから、一緒にランチを取ろう」
ルイス様からお誘いの声が掛かる。私達は昼食を取るため、中庭へ移動した。その中庭では既に三つのテーブルとチェアが人数分用意され、可愛い小花を使ったテーブルコーディネートも完了しており、後は食事が運ばれてくるのを待つだけという状態だ。
私達は自然と三人ずつに分かれてテーブルについた。
直ぐに大きな笑い声が上がる。声がした方を見るとベンジャミン、レノン、シータが居るテーブルだった。
―――――朝の出来事でも話しているのかしら?さっき、目を輝かせて楽しそうにしている弟を見て、涙が溢れてしまった。たった一日でベンジャミンの邪悪な言動や悪鬼のような雰囲気は消え去った。嘘みたいに・・・。
手に入れたレターセットで秘密の手紙をお父様に書くと張り切っていたけど、きっとお父様も手紙を受け取ったら泣くだろう。ミッションを与えるという方法で、こんなに変化をもたらすなんて、お父様とルイス様はスゴい!
私は、尊敬して止まないルイス様を見ようと視線を動かした。あれ、あれれ!?何だかあちらのテーブル・・・、険悪な雰囲気になってますけどー?
どうしたのかしら・・・。
――――――――
時間的に大丈夫なのか?と心配していた双子のミッションも無事、午前中でひとつ片付いた。
結論から言えば、リゼの持っていた『虹のしずく』というインクのことを宰相は知っていたのだろう。
――――まあ、金貨三枚というあり得ない出費なら、気が付いて当然か。
言うまでもないが金貨が三枚もあれば、ランドル王国の一般家庭なら一年間分の食費を賄える。オレはアレを買おうと思ったリゼの決断力に驚いたというか、正直なところ呆れた。
「今後、高額な買い物をする時は必ず相談します」と約束してくれたから、一先ず、信じることにする。
という訳で一つ目のミッションは無事に完了。ベルカノン邸へ全員、正午前に戻って来ることが出来た。
オレはレノンとベンジャミンがクリアしたミッションのことを互いに語り合いたいだろうと考え、全員をランチに誘った。
そして、ランチを楽しんだ後、再び双子にカードを引いてもらい、次なる助っ人も選んでもらうつもりだ。
そんなオレの『全員でランチを取りたい』という急な頼みを、ベルカノン家の使用人たちは嫌な顔もせず、迅速に用意してくれた。――――本当にありがたい。
用意されたテーブルは全部で三卓。
一つ目のテーブルに、オレとアズール、ロイ。
二つ目のテーブルは、シータ、レノンとベンジャミン。
そして、三つ目のテーブルには、リゼと姫とロゼ王太子妃が着席した。
食事が運ばれてくる前から、シータ達のテーブルは何かで盛り上がっている。早速、今朝の出来事でも話しているのだろう。それならば思惑通りで嬉しいのだが・・・。
あの世代は、色々経験してこそ成長する。
ずっと邸に籠って視野が狭くなっていた双子には、このゲームを通して、知己を広め、様々な人と関わることも楽しんで欲しい。
お昼のメニューは、ガレットという茶色いクレープだ。
運んできた使用人から聞いて存在と名前を知ったのだが、このクレープは蕎麦粉で作られているらしい。そのガレットという茶色のクレープにはハムとチーズと卵ものっていて、とても旨そうだった。
執事のマーキュリーは「冷めないうちにお召し上がりくださいませ」と、アイスコーヒーを注ぎながら言う。
「ああ、ありがとう」
オレは礼を言ってから、ナイフとフォークを手に取った。
「殿下、ちょっと良いですか?」
アズの言葉が俺の手を止める。
「何だ、アズ?」
「殿下、かなり重要なご相談があります。お時間を下さい」
珍しく敬語で話すアズに違和感を持つ。
「アズ君、どうしたの?何か怒られそうな案件?」
ロイが割り込んできて、アズを茶化す。
「いえ、あー、まー、確かにそうかも知れません」
「あらら、それって僕も聞いて良いの?」
「寧ろ、聞いて欲しい案件です」
アズは椅子の上で背筋を伸ばして座り直す。――――何を言い出すのか、サッパリ予想が付かないのだが・・・。
「・・・・・・」
アズの言葉をロイと一緒に待つが、中々言葉が出てこない。――――ガレットが冷めそうで、少し気になる。
「アズ、そんなに言いにくい事なのか?」
「はい、あのう、怒らないで聞いて欲しいのですが・・・」
「怒らないから、早く言ってみろ!」
「いや、ルイス。そんなに強い口調で攻めたら、益々言い難くなるんじゃない?」
ロイが、クスッと笑って場を和ませる。
「アズ君、言いにくいなら、ゆっくりで構わないよ」
そう言いながらロイはガレットを切って、一口食べた。――――凄く美味しそうな表情をしている。
アズは時間が掛かりそうだし、オレも一口食べるか!とフォークに刺したガレットを口に放り込んだ、その時。
「赤ちゃんが産まれます」
ゴホッ。いや、アズ、何故このタイミングで言うんだ?
――――オレは慌てて、水でガレットを流し込んだ。味は、勿論分からなかった・・・。
「お前の家か?」
「いや、まぁ・・・」
「めでたく四人目が誕生って話か?」
「いや、えーっと・・・」
「ルイス、質問を挟まず、最後まで落ち着いて聞いてあげた方が良いんじゃない?」
ロイは、オレにアズを急かすなと注意する。
「ああ、済まない。焦ってしまったな」
「いや、殿下は悪くない。オレが今日はグダグダだから」
アズは分厚い前髪を手櫛で後ろへ流す。――――やっと、表情が見えたと思ったら珍しく、神妙な面持ちをしていた。
「それで、子供を産むのは母上ではなくて・・・」
まさか!?
オレは、アズが緊張し倒している意味が段々と読めて来た・・・。
「え、ええっ、そうなの!?アズ君!!」
ロイは席を立ち上がり、アズの肩を持って揺さぶる。
――――いや、ロイよ。お前が落ち着いて聞けって言ったよな?
「で、続きは?」
「はい、オレとマーゴットに子供が出来ました」
―――――あー、何と言うことだ!!オレとリゼの今後の段取りが、音を立てて崩れていく。でも、まぁ、先ずはこの言葉を・・・。
「おめでとう。アズ」
オレの言葉を聞いて、アズは椅子から崩れ落ちていく。
「殺されるんじゃないかと思った・・・」
両手を大地に付いて、項垂れていた。。
「いや、オレも子供が出来たと聞いて怒るほど、鬼じゃないんだが」
グズ、グズッ。
鼻をすする音がしたので、アズからロイへ視線を動かすと、彼は大粒の涙を流している。
――――は?何故。
「ゔーっ、おめでとう、アズ君!マーゴット!!」
グズグズの声でお祝いの言葉を言う、ロイ。
オレは席を立ち、立ったまま泣いているロイを椅子に座らせ、アズも地面から剥がして、椅子に座らせた。
一体、何なんだよ!お前達!!
「それで、オレに言うのが怖かったと言うのは、今後のスケジュールの件だろう?」
「はい、そうです」
アズは目を伏せたまま、オレに答えた。
――――――――それはそうだろう。アズの相手は隣国の王女。彼女が妊娠してしまったというのなら、五ヶ月後の俺たちの結婚式を延期し、アズと姫の結婚式を優先しなければならなくなったということだ。
アズはオレがリゼとの結婚を心待ちにしていることを誰よりも知っているから、言いにくかったのだろう。
「今後のスケジュールに関しては話し合って調整しよう。それから、子供を授かるというのは、おめでたいことなんだからな。アズ、姫にそんな顔を見せるなよ。ちゃんとお礼は言ったのか?」
「お礼?」
アズは首を傾げる。
「そうだ、お前の子を身籠ってくれたんだろう?姫に感謝しろよ」
「――――殿下、俺、最低かも知れない」
「アズ君が!?」
涙をハンカチで拭きながら、ロイが驚きの声を上げた。――――この反応・・・、多分、ロイはあのじゃじゃ馬制御出来るアズをリスペクトしている。
「『赤ちゃんが出来たんです』って聞いて、『嘘?』としか答えられなかった・・・」
言い終えると力が抜けたのか、アズは再び椅子から崩れ落ちた。――――いやいやいや、またオレがお前を椅子に戻すのか?
「今からでも遅くないから、早く感謝の気持ちは伝えた方が良いぞ」
「――――分かりました」
崩れ落ちたアズをもう一度拾い上げ、ついでに姫も呼ぶ。
「姫、ちょっと来てくれ!」
姫は、相変わらず隙のない身のこなしで、迅速にやって来た。
「殿下、何でしょう?」
オレには無表情で安定の塩対応。まぁ、それは良いとして・・・。
「アズが至急、姫に話したいことがあるらしい。席を外していいから今、話してこい」
「それは命令ですか?」
「ああ、命令だ。ほら、アズ行ってこい」
強引に二人の背を押して、ランチ会から追い出す。――――その際、姫の耳元へ小声で「おめでとう」と、お祝いの言葉を伝えた。振り返った姫は、オレに普段見せたことのない笑顔で「ありがとうございます」と言った。
アズの去った後、まだ泣いているロイに、肘打ちをくらわせた。
「ロイ、泣きすぎだ」
「だって、あのマーゴットが結婚して子供まで出来るなんて!!少し前まで全く予想もしてなかったんだよ。スゴイことなんだって!!」
「いや、感動に浸っているお前に一言、言いたい」
「何?」
「結婚式を至急しないと、対外的にマズいだろう?ベルファント王国は正教会が・・・」
オレの指摘で、ロイの口は開きっぱなしになる。
「おい、大丈夫か?」
「あ――っ、わ――っ、どうしよう!!急いで、父上と相談しないと!!ああああ、新婚旅行が・・・」
現実に引き戻されて、涙が引っ込んだロイは頭を抱えた。
「今夜で良ければ、ベルファント王国まで送ろうか?」
「本当に!?ルイスありがとう。ぜひ頼む!!こうしてはいられない。ロゼに話さないと!!」
「ああ、だが、まだ公にはしない方がいいだろう。オレも最小限の人間にしか話さないと約束する」
「そうして貰えると助かるよ。父上と母上、後は正教会。父上は簡単に国から出られないから、僕がアズ君のご両親とも話さないといけないね」
「ああ、話し合いの場はランドル王国の王宮を遠慮なく利用してくれ。筆頭王宮魔術師のルータも常駐しているから行き来が楽だろう。日程は問題がなければ、オレたちが結婚する予定にしていた日にすればいいし、もし早めた方が良いのならそれでも構わない」
「ルイス、いつの日かエリーと結婚する時は僕も協力して、絶対盛り上げるから!!譲ってくれてありがとう」
ロイはオレの両手を握りしめて、また涙を溢しながら、何度も礼を言った。――――こんなに感謝されたら、文句も言えないな。
あ、オレもリゼに言わないと・・・。チラリとリゼを見れば、ロゼ王太子妃と楽しそうにお喋りをしていた。
――――後でいいや、先ずはガレットを食べよう。オレはすっかり冷え切ったガレットを、口に放り込んだ。
冷えていても、凄く美味しかった。
ルイスとリゼの結婚式は延期が決定してしまいました。
ともあれ、アズとマーゴットのおめでたいお知らせとなりました!!
続きもどうぞ、おたのしみに!!
最後まで読んで下さりありがとうございます。
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