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リゼの悪役令嬢日記  作者: 風野うた
番外編 双子とルイス

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15、双子とルイス 12

楽しい物語になるよう心がけています。

誤字脱字等のご連絡は感謝いたします。


 ―――――ほんの少し前。


 殿下から『都合のいい時に状況を報告してくれ』と命令を受けていたアズールは、ベンジャミンが店長とレターセットを選んでいる間に殿下へ連絡を入れた。


『それは・・・、これからそのインク(虹のしずく)を持っているヤツのところへお願いをしに行くというのか?』


『ああ、今オーナーが購入者を確認してくれてる。殿下、これさぁ~、時間的に無理じゃない?』


『いや、このミッションを考えたのは宰相だからな。恐らくカラクリがあると思うぞ。引き続きベンジャミンを見守ってくれ、アズ』


『まぁ、見守るくらいは全然構わないけど。で、レノン達は?』


『あっちは釣りをしている。もうしばらく掛かるとシータが言って来た。残り二枚のカードも夕方までに終わると良いけどな』


『宰相の計画ならさー、ギリギリまで動かしそうだよね』


『――――だろうな』


『まぁ、勝ち負けじゃないんだろ。俺たちは気軽に楽しませてもらうよ!』


『あーっ、えっーと、姫は怒ってないか?』


『殿下、マーゴットに怯えてるのか?心配は要らない、彼女も楽しんでるから』


『いや、それなら良いんだ。済まないが、弟を頼む』


『御意』


 俺は念話を終え、ソファーの背もたれにドサっと寄り掛かる。


 マーゴットは部屋の中を一通り見て回った後、窓の外を眺めていた。俺がソファーに沈んだところでこちらへ振り返る。


「ベンジャミンくんって、可愛いですね」


「そうか?」


「わたくしは弟が居ませんから、シータさんもベンジャミンくんも可愛くて」


――――あー、そうか。マーゴットは妹だもんな。


 マーゴットは窓のところから戻って来て、ソファーへ腰を下ろした。


「俺は弟が二人もいるから、何も感じないと言うか・・・」


「女の子を授かったりしたら、アズ様、ふふふっ」


 マーゴットは、下を向いて肩を揺らす。隣で幸せそうに笑う彼女の横顔を見ていると何故か照れくさくなって、俺は視線を外した。


「まぁ、当分授からないけどな」


 俺は余計な一言を吐き捨てる。――――昨日の殿下の様子なら、当分、俺が子を持つ必要は無いだろう。


 子供の頃から、しつこいほど親に言われていたことがある。


『殿下と足並みを揃えた人生を歩め!』

『王家を支えるのがバッファエル一族の使命!』

『実力のある者が家を継ぐ!』


――――ほんとに、こればっかり。


 幸い、殿下がいいヤツだから、俺は力になりたいと思っているし、兄弟とも仲が良いから、気にも留めずに済んでるけど・・・。――――中々、酷い家訓だよ。もう少し、柔軟さが欲しいね~。


 ひょっとすると他の四大公爵家も似たような家訓があるのかも知れないな。ベンジャミンを見ている限り、ベルカノン家には無さそうだけど。


 色々と考えを巡らしていたら、ギュッと袖を引っ張られた。


「アズ様、大変言い難いのですが、、、」


 マーゴットは俺の耳元にヒソヒソと・・・。


「は!?嘘」


 マジで!?――――予想外なことを聞いてしまって、俺の魂が遠くへ飛んで行ったんだけどー!!


 まぁ、いい。この件は一先ず置いておいて、今はベンジャミンの助っ人を頑張ろう。


――――――――


 

 ぼく達が応接室で、雑談をしているとニコルさんがノックもせずに飛び込んで来る。


「ベンジャミン坊ちゃん、朗報です!」


 走って来たのか、息が切れていた。


「ニコルさん、どうしましたか?」


「ええっと、母が!いえ、オーナーが三年分の購入者を販売リストから拾い終わりました。とは言っても、『虹のしずく』購入者は年に数人程度なのですけど・・・。その中に・・・」


 ニコルさんは息を切らしながら、一気に捲し立てたかと思ったら、急に言葉を止める。


「――――その中に?」


 ぼくは続きが早く聞きたい!ニコルさん、早く教えて!!


「エ、エリーゼお嬢様のお名前がありました」


――――えっ、エリーゼお嬢様って、何処のお嬢様?


「は?エリーゼ」と、アズ兄様が疑うように呟き。


「エリーゼ様?」と、王女様は首を傾げる。


「まさか・・・、エリーゼお嬢様って、ぼくの姉様のことですか?」


「は、はい、ベルカノン家のエリーゼお嬢様で間違いありません。二年前の冬に購入されています」


――――姉様、何故『虹のしずく』を買ったんだろう?


「『虹のしずく』をエリーゼが買っていただと?まさか、宰相はそれを知ってたのか!!」


 アズ兄様が、何かブツブツと言っているけど、声が小さくてよく聞き取れない。


「まずはエリーゼお嬢様が、現在も『虹のしずく』のインクをお持ちかどうか、ご確認された方が良いと思います。もし、お持ちでないのでしたら、この店から近い順に顧客を尋ねて行きましょう」


「分かりました。先ず、姉に確認します。結果は追ってご連絡します」


「ええ、そうして下さい。では、レターセットと封蝋キットはこちらです」


 後ろに控えていた従業員からニコルさんは紙袋を受け取ると、それをぼくに手渡した。


「ニコルさん、色々とお世話になり、ありがとうございました。アンさんにもお礼を言いたいのですが今、お忙しいですか?」


「どういたしまして。母は公爵家の馬車を呼びに行きましたので、店の前に出たら会えると思いますよ」


――――もう馬車を呼びに行ってくれたなんて、アンさんは素早い!


「店長、迅速に対応していただき、ありがとうございます。俺からも礼を言わせて下さい」


「お茶もとても美味しかったです。ご馳走様でした」


 アズ兄様と王女さまも、ニコルさんにお礼を告げた。ニコルさんは、満面の笑みで二人の言葉を受け止めて、こう言った。


「明日から、お二人も立ち寄った店と言わせていただきますので、お安いご用です!」


 いかにも商売人って感じの言葉に、その場にいた全員が笑った。


――――後は、姉様が今もそのインクを持っていると良いんだけど・・・。どうかなぁ・・・。


 

 店の前でアンさんにお礼を告げて、ぼくは馬車へ飛び乗る。沢山のお願い事をしたのにこんな風にバタバタと帰ってしまうのが、とても申し訳なかった。


「ベンジャミン、少し手伝ってやろうか?」


 馬車が走り出したところで、アズ兄様がぼくに尋ねる。


「何を?」


「屋敷まで、早く帰れる魔術を掛けてやろうか?」


 アズ兄様は人差し指を楽しそうにクルクル回している。


「え、どう言うこと?」


「あー、よく分からないかぁ。じゃあ、してみせるから、よーく窓の外を見とけよ」


 ぼくはアズ兄様の言う通り、窓の外をジッと見た。馬車は、街路樹の美しいメイプル通りを走っている。


――――パチンと指を弾く音がした。


「え、え、えええええ!?」


 風景が一瞬でガラリと変わった。


――――この風景は、ぼくの家の前だ!!


「アズ兄様、馬車を、ま、魔術で、い、移動させたの?ゴホッ」


 ぼくは興奮して声が上擦った上、咳き込んでしまう。――――こんなのカッコ悪くて、恥ずかしい・・・。だけど、王女さまは、ぼくの背中に手を伸ばして優しく摩ってくれた。


「――――ベンジャミン、コレが、ドアを開けて入ったってヤツだ!」


 アズ兄様は、懲りずに言ってる。その表現は、分かりづらいって・・・。


「ベンジャミンくん、大丈夫?」


 王女さまは、アズ兄様の分かりづらい解説を無視して、ぼくに優しく語りかけてくれる。


「はい、もう大丈夫です。急に風景が変わったから、ビックリしました」


「そうですよね。わたしも慣れるまでドキドキしましたよ。さぁ、もう(お屋敷に)着きますからね。エリーゼ様にインクのことを聞いてみましょう」


「はい、ありがとうございます。王女さま」


「マーゴット、ベンジャミンに優しすぎるぞ」


 アズ兄様は不満そうに口を尖らせていた。――――でも、王女様は全く悪くないのに・・・。


「アズ兄様、ヤキモチはカッコ悪いです」


「お前、結構言うんだな」


 王女さまはフフフと微笑みながら、ぼく達のやり取りを聞いていた。



―――――馬車が止まり、扉が開かれる。


正面玄関には、ルイス兄様と姉様が立っていた。


「おかえり、ベンジャミン」


「どうだった?ベンジャミン」


 二人は立て続けにぼくへ話しかける。


「ただいま、ルイス兄様、姉様。あのね、聞きたいことがあるんだ!!」


 ぼくは二人に駆け寄った。


「ルブラン文具店で、とても良くしてもらったんだ。素敵なレターセットも手に入れたし、父様の親友にも会ったよ。それで、『虹のしずく』は姉様が持っているって聞いて・・・」


 興奮し過ぎて、支離滅裂な報告をしてしまったと気付いたのは、だいぶん後のことだった。


「むむむ?『虹のしずく』って、あの黄色のインクよね?」


「そう、あの夜になると虹色に光る秘密のインク!!」


 ぼくは姉様の腕に巻き付く。


「ん!?夜?虹色に光る??あれって、何か特別なインクなの?」


 この後、ぼくがそれを譲って下さいとお願いする場面になるはずだったのに、姉様が一瞬で壊した。


「えー、姉様。まさか、知らなかったの?」


 ぼくは姉様の顔を覗き込む。姉様は視線をサッとズラした。


「ベンジャミン、リゼなら充分ありえるぞ」


 ルイス兄様が言った。


「もう!貴重なインクって言うのは知ってましたよ。どんな効果があるのかまでは、知りませんでしたけど」


「エリーゼ様、『虹のしずく』が希少なインクだということは、ベルファント王国でも知られています。かなり高価だったのでは?」


 王女さまは、姉様に尋ねる。


「マーゴット様!良くぞ聞いて下さいました!!物凄く高かったです。金貨三枚でした」


 姉様が値段を言い放った瞬間、全員が凍った。――――いや、姉様、金貨三枚って物凄く高いよ。ぼくでも分かる。というか、そんなに沢山のお金を姉様が持っていた事にも驚くけど・・・。


「リゼ、思いがけないところで大胆だな」


 ルイス兄様が、姉様の肩に手をのせて言った。


「だって、商人の方に、もう手に入らないかも知れませんって言われて、つい・・・」


 姉様はバツが悪くなり、グダグダと言い訳を始める。


「なるほどな、手に入らないって言われたから買ったのか・・・。今後、そう言うセリフを商人に言われたら、先ず俺に相談してくれないか?」


「――――はい、そうします」


 ルイス兄様に諭されて、しゅんとしている。姉様は、素直だから騙され易いのかも知れない。要注意だ。


――――そうじゃない!!


 ぼくは、姉様にその高価なインクを譲って貰わないといけないんだった。


「姉様、そのインクを、ぼくに譲って貰えませんか?」


 ぼくは上目遣いで、恐る恐る姉様に聞いた。


「良いわよ。ちょっと待っててね。部屋にあると思うから」


 姉様はあっさりと快諾して、部屋に走っていった。


「リゼ、淑女は廊下を走らないのよーって、言ってなかったか!?」


「エリーゼらしくて良いんじゃね」


「元気な方が、エリーゼ様らしいです」


 ルイス兄様、アズ兄様、王女さまはそれぞれ姉様が走っていった方を見ながら呟く。


「姉様が、高額なインクをあんな簡単にくれるなんて思わなかったです」


 ぼくが三人に向かって言うと、三人はこう言った。


「リゼだからな」


「エリーゼだから」


「エリーゼ様ですから」


 何だか、友達にそんな風に言われるのって、良いなぁ・・・。ぼくも友達が欲しくなって来た。父様に秘密の手紙で相談してみようかな。


――――――――


――――走って戻ってきた姉様から、黄色いインクのビンを受け取った。


「姉様、ありがとう」


「どういたしまして、大切に使ってね」


「はい」


 姉様は、笑顔だった。――――ぼくは姉様って、口うるさい人だと思っていたけど、ちょっと違っていたみたい。


「アズ兄様、王女さま、今日はお手伝いありがとうございました。このミッションを無事に終えることが出来ました。午後も頑張ります!」


 早朝から、ずっと見守ってくれた二人に、心を込めてお礼を伝える。


「ベンジャミン、俺たちもこんな機会はなかなか無いから楽しませて貰ったよ。午後も手伝いが必要な時は遠慮なく言えよ」


「ベンジャミンくん、秘密のお手紙は是非、私にも送ってくださいね。待っています」


 王女さまはそう言うと、ウインクをした。――――ちょっと、ドキっとした。


 最後に、姉様へお礼を言おうと振り返ったら、泣いている。それも号泣と言って良いくらいのレベルで・・・。意味が分からなくて、ぼくが首を傾げると、ルイス兄様がこっそり教えてくれた。


「ベンジャミンの成長に感動したらしいぞ。頑張ったな」


 ルイス兄様はスッと手を伸ばして、ぼくの頭を撫でる。


「ルイス兄様、ありがとう」


――――よし!これで、四枚目のミッションも完了したぞ~!!


最後まで読んで下さりありがとうございます。

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