11、双子とルイス 8
楽しい物語になるよう心がけています。
誤字脱字等のご連絡は感謝いたします。
霧の中を進む馬車に揺られること二十分。僕たちは、妖精の湖に辿りついた。
「懐かしいなぁー」
ロイ王太子殿下は、湖を眺めながら呟く。
「ロイ、ここが、あの妖精の湖なのね」
ロゼ王太子妃殿下が、相槌を打つ。
「ボクも来てみたかったんだ!妖精と会えるかなぁ」
シータが、気になることを口にした。
「妖精?」
「レノン、妖精に会ったことが無いの?」
「妖精って、架空生き物だよね?」
シータは、僕の返事を聞いて、目を見開いた。
「もしかして、レノン君、ここに来るのは初めてなのかい?」
ロイ王太子殿下から、尋ねられた。
「はい、僕はこの森に来たことがありません。と言うか、ほとんど屋敷からも出た事が無くて、、、」
ゴニョゴニョと、語尾が消えていく。――――何処にも行ったことが無いなんて、恥ずかしくて言えない。
「レノン、ここはベルカノン家の存在意義に関係するくらい重要な森なんだ」
「存在意義?」
「そう。此処に住む妖精たちを守っているんだよ」
え、そんな話初めて聞いたんだけど。
「シータ君、ルイスに確認しないと、その件って、勝手に話したらマズイんじゃないかな?」
ロイ王太子殿下が、シータに言った。
「それより、そんな重要事項を他国の私達が聞いて良いのかしら?」
ロゼ王太子妃殿下は困惑している。
「ロゼ、僕は妖精を過去に何度も見ている。その事は、エリーもルイスも知っているし、今更だよ」
「ロイはそれで良いかも知れないけれど。シータ君、私はここで聞いた事を口外しないと誓うわ」
「はい、ロゼ姉様、ありがとうございます」
「ロゼ、僕もそれで良いと思うよ」
ロイ王太子殿下は、ロゼ王太子妃殿下の肩をポンと叩いた。――――肩を叩くのは、クセなのかな?
「ロイ兄様、今、ルイス兄様に確認しました。レノンに妖精の件は話しても良いって言ってます」
――――え?何、シータは何をしたの?
「ああ、ルイスの許可が降りたなら、僕も昔の話とか気軽に出来るね」
ロイ王太子殿下は、シータの話を信じたの?
「あのう、シータは本当にルイス兄様とお話したの?」
僕は勇気を出して聞いてみた。
「うん、ボクはルイス兄様と念話でお話出来るんだ」
「念話って、何?」
「うーん、心で会話するんだよ。伝えにくいかなぁ。じゃあ、レノンに話しかけてみようか?」
僕に話しかけるって、今、話しているよね?
『レノーン!聞こえる?ボクだよー』
え!?何、頭の中に声が・・・。僕は頭を両手で抱える。何これ、気持ち悪い。
「ハハハ、レノンごめん。そんなに驚くと思わなかったんだー。今みたいに、ボクは遠くにいる人にも話しかけることが出来るんだ」
「シータ、怖いよ」
「慣れたら便利なんだけどー」
シータは何でもないって顔で僕を見る。僕、結構ダメージを受けたんだけど・・・。
「ねー、ねー、シータ君。私にも話しかけて見てくれる?」
ロゼ王太子妃殿下が目を輝かせながら、シータに頼んでいる。
「もう、ロゼはこういうの大好きだよねー」
ロイ王太子殿下が、クスっと笑った。シータは口を閉じて、ロゼ王太子妃殿下の方を見ている。
「うわー!!聞こえたわ!!スゴーイ!!」
ロゼ王太子妃殿下は、とても嬉しそう。
「今度から、シータ君、私には遠慮なく呼びかけていいわよー」
「うん、ロゼ姉様、また話し掛けるね」
シータは、ニコニコ笑顔で返事をした。ロゼ王太子妃殿下の横にいる、ロイ王太子殿下は、二人のやり取りを聞いて苦笑い。そんなロイ王太子殿下の様子には気付かず、ロゼ王太子妃殿下は、辺りを観察し始めた。
「さーて、本題は釣りよね。釣りのことなら、私に任せてね。先ずは、どこで釣るかを決めましょう」
僕たちにそう言いながら、視線は湖のふちを辿っている。
「ああ、あの辺がいいわ。少し湖に突き出ているところ、ほら、みんな分かる?」
ロゼ王太子妃殿下はあの辺と言う場所を指差しながら、僕らへ場所を教える。
僕はロゼ王太子妃殿下の指先に視線を向けた。確かに、大きな岩が湖に迫り出しているところがある。
「ああ、あそこか。ロゼ、結構遠いね。釣竿は僕が持つから、早速、移動しよう」
ロイ王太子殿下は、僕たちの竿を軽々と束ねて持ち上げた。ロゼ王太子妃殿下は、食事のバスケットを抱える。僕は、釣り上げた魚を入れるバケツ二個を手に持った。シータは、仕掛けなどの道具が入ったボックスを抱える。
四人で、神秘的な雰囲気の湖を横目に、目的の場所まで歩いていく。
――――妖精が住んでいるって、本当なのかな?僕の目には、まだ何も見えないのだけど。
大きな岩のところへ着くと、ロイ王太子殿下は四本の竿を二メートル間隔にして置いた。
ロゼ王太子妃殿下は、その置かれた竿に釣り糸を掛け、ウキとつり針を結び付けていく。その作業は、とても手慣れていて素早かった。僕が手伝いますと言う間も無く、釣竿の準備は終わってしまった。王族って、釣りも出来て当たり前なの?
「いや、ロイ兄様とロゼ姉様は子供の頃、宮殿以外で生活していたからだと思うよ」
突然、シータが口にした。え?僕、疑問を声に出していた!?
「あ、レノンごめーん。心の声が聞こえたから、答えちゃった」
「えええっ!?シータ、僕の心を読んだの?」
「聞こえる時もあるんだー。ごめんねー」
何それー!?怖い。
「出来るだけ読まないように気をつけるね」
「今も読んだの?」
シータは頷く。
「ねぇ、魔法使いって、誰でも心の中を読めるものなの?」
「うーん、心を読めるのは、ボクとルイス兄様くらいだよ」
えー、ルイス兄様も、心が読めるの!?
――――気をつけよう。
「うん、そうした方が良いよ。エリーゼ姉様の悪口とか言ったら、恐ろしいことになるよ」
「うん、気をつける」
僕は強く頷いた。
「そこの二人ー!!、釣竿の準備は出来たから、次は餌の付け方を教えるわね」
ロゼ王太子妃殿下は、僕たちを手招きした。近寄って、つり針に餌を付けるレクチャーを受ける。
「うわぁ!?動いてる!!」
僕はビックリして、声を上げた。
「そりゃあ、動くわよ。生きているのだから」
ロゼ王太子妃殿下は笑う。その手は、ニョロニョロと動く大きなミミズを掴んでいる。
「ロゼ王太子妃殿下、ミミズが怖く無いの?」
「生きた餌の方がよく釣れるのよ。慣れたら怖く無くなるわ。最初は、私が付けてあげるけど、次は自分でチャレンジしてみてね」
そう言いながら、手際よくミミズをつり針にブッ刺した。可憐な見た目と行動が違いすぎる。僕はつり針に刺されて、痛そうにクネクネと動くミミズを直視出来なかった。
「次はこれを湖に静かに落とすのよ。バシャンと投げたら、お魚が警戒しちゃうから」
ロゼ王太子妃殿下は、手に持った竿をふわっと降って、餌のついたつり針を水中に落とした。
「ロゼ、上手だね。僕も負けていられないよ」
ロイ王太子殿下も、ふわっと竿を振った。音も無く、つり針は水中へ。
「こうやって、仕掛けた後は、あのウキを見るのよ。ウキが完全に水中に持って行かれたら、ギュッとこちらに引くの。引くタイミングは早くても、遅くても逃げられるから、気をつけてね」
僕の竿についたウキを手に持って、ロゼ王太子妃殿下は、丁寧に教えてくれた。本当に助っ人に来てもらって良かった。僕だけだったら、釣りなんて、絶対無理だったと思う。
シータと一緒に竿を振る。バチャっと音がしたけど、餌付きのつり針は、無事に水中へと沈んでいった。
「ここまで済んだら、後は待つだけよ。さあ、朝ごはんにしましょう」
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