10 、双子とルイス 7
楽しい物語になるよう心がけています。
誤字脱字等のご連絡は感謝いたします。
――――夜がそろそろ明けようかとする頃。
ベルカノン家のロビーには、二組のチームが集まっていた。 一組目は、ベンジャミン、アズールとその婚約者であるマーゴット王女殿下。二組目は、レノン、ロイ王太子殿下とロゼ王太子妃殿下、シータ。
お題を見せ合うことは禁じられている。そのため、二組のチームはお互いの内容が漏れぬよう離れて円陣を組むことにした。
――――――――
一組目・ベンジャミンチーム。
「アズ兄様、お題はこれだよ」
ぼくは内容を口には出さず、ミッションの書かれたカードをアズ兄様へ見せた。
「ああ、なるほど。マーゴットも、ほら見て」
アズ兄様は、王女さまが、カードを見やすいように、腕を引いて近寄らせる。王女さまは、チラリとカードを見てから「了解です」と言った。ぼくのカードには、『ルブラン文具店でオススメの便箋と“虹のしずく”というインクを買ってくること』と書いてあった。
この内容なら、こんなに早く起きる必要は無かったかも知れない。お店は何時から開くのかな?執事のマーキュリーに聞いてみよう。
「執事のマーキュリーに質問をしに行きます」
ぼくがそう言うと、二人は頷いた。三人で、ロビーから離れ、執事のマーキュリーを探す。――――朝早いから、先ずは人がいる調理場へ行ってみることにした。
「ベンジャミン、簡単そうな内容だけどさ、“虹のしずく”って何だ?俺、初めて聞いたんだけど」
「わたくしは聞いたことがあります。幻のインクと言われていて、中々手に入らないのですよ。お店に在庫があるといいですね」
「幻!?そんなに貴重なものなのですか?」
ぼくは、王女さまに尋ねた。
「ええ、確か貴重な植物を使って製造しているインクです。わたくしもそれ以上のことは分からないのですが、、、」
「それってさ、在庫が無かったら、一気に難易度アップじゃん」
アズ兄様は、面倒くさそうに口を尖らせた。
「アズ様、ミッションなのですから、難しくて当たり前です。在庫があればラッキーと思うくらいの方がいいと思いますわよ」
なるほど、もし貴重なインクの在庫が無かったら、どうしようかなぁ・・・。作れるのかな?
――――色々と考えていたら、調理場の前に着いた。
「おはようございます。マーキュリーは、こちらに居ますか?」
ぼくは入口に立って、大きな声で叫んだ。直ぐに「おはようございます」と言いながら、マーキュリーが中から現れる。
「坊ちゃん、すみません。朝ごはんを食べておりました。何かご用意でしょうか?」
「ええっと、ルブラン文具店の営業時間を知りたくて」
「ルブラン文具店ですか?お店のオープンは十時からですが、急ぎでしたら、八時過ぎには店員がお店に来ていますので、私が行って参りましょうか?」
「分かった。でも、大丈夫だよ。ぼく達が行く」
「では、七時過ぎに馬車を出す手配をしておきます。その前に、御三人様は朝ごはんをお召し上がりになりませんか?」
マーキュリーは、ぼくたちに朝ごはんを勧めた。
「ベンジャミン、時間がある時に、食事はしておいた方がいいぞ。執事殿、ありがとうございます。遠慮なくいただきます」
「はい、直ぐにご用意いたします。隣のダイニングルームへご案内いたします」
ぼくたちは、出発の前に腹ごしらえをすることになった。
――――――――
二組目・レノンチーム。
ロビーに集合して、直ぐに四人で円陣を組んだ。先ずは、みんなにミッションカードを見せよう。それから、この後の予定を立てたらいいよね。
「お題はこれです」
僕は、カードを出した。
『妖精の湖に行って、“虹色に輝く金色の魚”を一匹釣り上げなさい』
「うわー!?魚釣りだー。ボクは、一度もしたことがないからワクワクするよ!!」
一つ年上のシータが目を輝かせる。何故、シータと呼ぶのかって?――――理由は分からないけどシータ兄様と呼ぶと、シータは怒り出すんだ。だから、僕たち双子は、昔から彼をシータと呼び捨てで呼んでいる。ただそれだけ・・・。
「シータ君、カードをよく見てご覧。“虹色に輝く金色の魚”を一匹って書いてあるよ。コレって、案外、難しいお題なんじゃないかな?」
「そうね、ロイ。私もそんな魚は見たことがないわ」
ロイ王太子殿下とロゼ王太子妃殿下は、指定された魚が落とし穴なのではないかと話し合っている。僕も“虹色に輝く金色の魚”など、見たことがない。そんな魚が実在するのかも怪しい。
「それに場所もあの湖だろう?絶対、何かあるって・・・」
ロイ王太子殿下は、とても物知りなのかも知れない。何故なら、僕は妖精の湖なんて初めて聞いたからだ。
どこにあるのだろう?
「とりあえず、行ってみるしかないわね。ところで、釣りの道具はどうするの?」
ロゼ王太子妃殿下は、出掛ける準備の話を始めた。驚くほど、話が進んでいく。助っ人って、スゴイ!
「釣り道具は庭師のダグラスに聞いたら分かると思います」
「そう。では、ダグラスに聞きに行きましょう。それから、湖に行くのなら、食べ物も包んでもらった方がいいわね。ええっと、ちょっとすみません!そこのお方」
ロゼ王太子妃殿下は、通りかかった侍女のアメリを呼び止めた。
「はい、いかがいたしましたか?」
「急に呼び止めてごめんなさい。私達はこれから、湖へお魚を釣りに行くのだけど、お食事と飲み物を包んでいただけないかしら?」
「お出かけになられるのですね。承知いたしました。直ぐにご用意いたします。宜しければ、馬車もご準備いたしましょうか?」
「ええ、馬車の手配もお願いします。ありがとう」
ロゼ王太子妃殿下が、微笑みながらお礼を言うと、侍女のアメリは頬を赤らめていた。
「では、釣りの道具を借りに行こう」
ロイ王太子殿下は、僕が案内しなくても、ダグラスの居る場所を知っているらしい。迷いなく、中庭に出るドアのある方へと歩き出して行く。僕達は慌てて、ロイ王太子殿下の後ろを追った。
――――――――
中庭の奥に、庭師の住む寮がある。その隣には作業用の建物もあり、植木関係、屋敷の補修関係、工作関係などの部屋に分かれている。
僕達が、作業用の建物に近寄ると、早朝なのに庭師たちは普通に外で作業をしていた。
「おはよう!マキロイ。ダグラスに用事があるのだけど」
ロイ王太子殿下は、気軽な感じで目の前にいた年配の庭師に話し掛けた。
「おはようございます。ん?もしかしてブロイ坊ちゃんですか」
「マキロイ、嬉しいよ。僕のことを覚えていてくれたんだね」
ブロイ?よく分からないけれど、黙って聞いておくことにした。
「ダグラスなら、その奥に居ますよ。ちょっとお待ち下さい。呼んで来ます」
マキロイは、ダグラスを呼びに言った。
「レノン君、僕は昔、ここによく遊びに来ていたんだ。ブロイは、その時に使っていた名前だよ。隣国の王族というのは秘密にしていたからね」
ロイ王太子殿下は、口元に人差し指を付けて、僕に小声で教えてくれた。
チラリとシータを見たら、ニコっと笑顔を返される。シータは知っていたってことか。
――――マキロイが、ダグラスを連れて戻って来た。
「お待たせしました」
「いや、こちらこそ急に済まない」
ロイ王太子殿下は、ダグラスに詫びる。王族なのに謙虚な人だなと思った。
「このメンバーで、あの湖に釣りに行くんだ、良かったら、道具を貸してもらえないかな?」
ロイ王太子殿下は、湖の方向を指差した。ダグラスの表情が険しくなる。
「どなたのご指示ですか?」
「ああ、ベルカノン公爵からの指示だよ」
お父様の名前を出すと、ダグラスは溜息を一つ吐いた。
「御当主様の言うことなら、仕方ありませんね。ですが、くれぐれもお気をつけて行って来て下さい。道具は四名様分ですね。湖までは馬車で行かれますか?」
ダグラスの質問へ、僕たちは全員で同時に頷いた。
「ハハハ、チームワークはバッチリですね。釣果を期待しておきます」
ダグラスは目を細めて、笑う。
「ありがとう。期待に応えられるように頑張って来るね」
ロイ王太子殿下は、ダグラスの肩をポンと叩いた。釣具は、馬車まで運んでくれるらしい。僕たちは、ダグラスや周りにいた庭師達にお礼を言ってから、馬車に乗るため、再び正面玄関へと歩き出した。
「ところで、ロイ兄様。釣りをした事はありますか?」
シータが、ロイ王太子殿下に質問を投げかけた。
「うーん、数回だけど、一様、大丈夫だと思うよ」
「私、釣りには自信があるわよ。任せて!」
ロゼ王太子妃殿下が、会話に割り込んだ。
「ロゼ、君ってスゴイね!」
ロイ王太子殿下が、ロゼ王太子妃殿下の頭を優しく撫でている。ルイス兄さまと、姉さまみたいだ。
「ありがとう、ロイ。さぁ!みんなで、あっちのチームより早く終わらせるわよー!!」
「うぉー!!」
ロゼ王太子妃殿下の掛け声で、ロイ王太子殿下とシータも一緒に盛り上がっているけど・・・。
――――このミッションって、スピードを競うものではなかったような気がする。でも、とりあえず、一緒に「うぉーっ!!」と、僕も叫んでおいた。案外、僕は長いものに巻かれるタイプかも知れない。
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