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リゼの悪役令嬢日記  作者: 風野うた
番外編 双子とルイス

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6、双子とルイス 3

楽しい物語になるよう心がけています。

誤字脱字等のご連絡は感謝いたします。


 カーンが厩舎の前で干し草を片付けていると、ご領主さまの馬車がこちらへ向かって来るのが見えた。


「さて、何かあったんじゃろか?」


 カーンは、首を傾げた。


「カーンさん、ご機嫌よう。ベルカノン家のベンジャミンです」


 馬車から降りてきたのは、ご領主であるベルカノン家の坊ちゃんだった。


「ようようお見えになられましたな。坊ちゃん、こんなところに何のご用事でしょうか?」


「カーンさんのところで、最近生まれた子牛のお名前を教えてもらうために来ました」


「何でそんなことを?」


「何故かは分かりませんが、家の者から確認して来るようにと言われたのです」


 カーンは、質問の意図を少し考えた。小さな紳士ベンジャミンは、黙って返事を待っている。


「坊ちゃん、わしゃ素直に答えたらいいのでしょか?」


「はい、教えて下さい」


「新しく生まれた子牛はオスじゃったから、名前は有りません」


 ベンジャミンは、不思議そうな顔をする。


「オスじゃなかったら、違うのですか?」


「ああ、メスの牛さはお乳を出すからね、長い付き合いになるけども。オスの牛さは、太らせて食肉加工所に出荷するんで、名前はつけない様にしとるんです。番号は振っとるけどね」


「太らせて、食肉、、、」


 ベンジャミンの顔色が、一気に悪くなる。


「そうだよ。坊ちゃんも、大切な命は残さず食べてやって下さいね」


 カーンは笑いながら、ベンジャミンの肩をトントンと叩いた。そこで、ベンジャミンは、我に返り、腕にかけたカゴのことを思い出した。


「あの、これはお土産です。ミランのお店のパンです」


 カーンはベンジャミンの差し出したカゴを受け取った。


「ありゃまー、こんなに沢山ありがとごじゃいます。ミランの店にわしも行ってみたいと思っとったんです」


「ミランのお店はパンの種類が多くてワクワクします。とってもいいお店です」


「そりゃ行ってみないといけないねぇ」


 カーンはベンジャミンの話をニコニコしながら聞いている。


「おとうさーん、誰か来たの?」


 厩舎から、おさげ頭の女の子が現れた。彼女の頭や身に着けているつなぎには、干し草が沢山付いていた。


「キャー!誰!?王子様?」


 女の子は、ベンジャミンを見るなり騒ぎ出す。


「ブフッ」


 ベンジャミンは、その面白い様子に思わず吹き出してしまった。


「ああ、ああ、坊ちゃん、すまねー。うちの子は、坊ちゃんみたいに綺麗な男の子を見た事がないんでね。騒いじまって、、、」


 カーンさんは額に手を乗せて、ベンジャミンに詫びる。


「いえ、大丈夫です。こんにちは、お嬢さん。ぼくは、ベルカノン家のベンジャミンです。王子様ではないです」


 ベンジャミンが彼女に向けて微笑むと、カーンの娘は飛び上がった。


「キャー!本物、本物だわー。無理〜!」


 彼女は、走って厩舎に戻った。


「本当に申し訳ねぇです。ちゃんと礼儀正しくする様に、言い聞かせなければー」


 カーンさんは、ベンジャミンに娘の無作法を再度詫びた。


「お嬢さんは、いつも厩舎のお掃除をしているのですか?」


 ベンジャミンは、干し草だらけの彼女が怒られない様にと話題を変える。


「ええ、そうです。わしらは家族で牛さのお世話をしとります。家族経営ですからね。娘も大切な人手なんです」


「そうですか、ご家族で、毎日僕らの食卓の為に働いて下さり、ありがとうございます。帰って、家族にも話します」


 ベンジャミンの言葉に、カーンは嬉しそうな表情を見せた。


――――――――


 すっかり日が暮れた頃、ベルカノン家のロータリーに馬車が帰って来た。――――マーキュリーは、無事にベンジャミンが帰って来たので、ホッとする。


 馬車が停車し、マーキュリーがドアを開けると、ベンジャミンは見たこともない神妙な面持ちで降りて来た。


「おかえりなさいませ、ベンジャミン坊ちゃん」


「ただいま、マーキュリー。今日は無理を言ったのに、馬車の手配をありがとう」


 え、誰?マーキュリーは目の前にいるベンジャミンの変わり様に驚く。


「カーンさんは、お元気でしたか?」


「うん、とてもお元気だったよ。お土産まで貰ってしまったんだ」


 ベンジャミンは、手に持ったカゴをマーキュリーに見せた。その中には、瓶に入った牛乳とチーズが入っていた。


「これは、また美味しそうな物を沢山いただきましたね」


「うん、大切に食べないと行けないね」


――――――――


「コンコン」


 あら、誰か戻って来たわ。


「ルイス様、ちょっと離れて下さいね」


 私にくっ付いている王子様を剥がしてから、ドアに向かって返事をする。


「はーい、どうぞ」


「ベンジャミンです」


 ドアを開けて、ベンジャミンが入って来る。――――色々と聞きたいけれど、先ずは彼の話を聞くことが、今回のミッションでは重要だ。


「おかえり。子牛の名前は聞けたか?」


 あれっ!?ルイス様が先に質問しちゃった!!


「うん、カーンさんのところで聞いて来たよ」


「それで、子牛は可愛いお名前だった?」


 私の質問で、ベンジャミンの顔が歪んだのは気のせいかしら?


「姉様、最近生まれた子牛は、オス牛だから名前は無いそうだよ。メス牛と違って、オス牛は太らせて食肉加工所に出すから、名付けたりしないってカーンさんが教えてくれたんだ」


『え、嘘!?まさかこのミッションって、そういうノリなの?』


 思わず、心の声が出る。


『リゼ、そうだ。これは宰相が考えたミッションだからな』


 そして、横のお方も私の心に直接、返事をしてくる。


「そうか、じゃあ、このミッションは完了だな」


 ルイス様は、あっさりとベンジャミンにOKを出した。


「でも、あのね、もう少し話してもいい?」


 ベンジャミンは、まだ何か言いたそうにしている。


「良いわよ。どうしたの、ベンジャミン?」


「カーンさんちは家族で経営しているから、子供も干し草だらけで毎日仕事をしているんだって。あの子は学校に行ってないのかな?」


「そういう家庭もまだあるだろうな。全ての子供を学校に通えるようにするというのは、オレが実現したいことのひとつだ。ベンジャミンも、人々の生活を良くしたいと思うのなら、そうやって一つずつ知ることが大切だぞ。今日は、よく問題点に気付いたな。偉いぞ」


 ルイス様は、ベンジャミンの頭を撫でる。


――――私はベンジャミンの話した内容に驚いた。九歳の子でも、そんな事を考えることが出来るのだと、、、。


『うちの双子は天才かも知れない』


 おおっと、また心の声が出てしまった。


『リゼ、それならオレはどう褒めてくれる?』


 すぐ、お隣の方は話に乗っかろうとする。


『それは勿論、天下の竜神王様ですから、何でも出来て当り前です』


『リゼ、手厳しいな』


「ぼく、お腹空いた!そうだ、コレ貰ったんだ」


 ベンジャミンは、手に持っていたカゴを私達に見せた。中には、牛乳とチーズが入っていた。


「うわー!美味しそうね。良かったわね、ベンジャミン」


「うん、夕飯にみんなで食べよう!兄様、次のカードは、ご飯の後でいい?」


「ああ、構わないぞ」


 ベンジャミンは、カゴを厨房に持っていくー!と、嬉しそうに部屋を出て行った。

最後まで読んで下さりありがとうございます。

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