4、双子とルイス 1
54話の後のお話です。
ネタバレにご注意下さい。
楽しい物語になるよう心がけています。
誤字脱字等のご連絡は感謝いたします。
緑溢れる領地ベルカノン。
その領主の邸宅から程近い森の中に、幻想的な湖がある。薄らと霧に包まれた湖は、白木の木立ちに囲まれており、その凪いだ湖面は陽光を浴びるとエメラルド色に輝く。
この場所は、世間に知られていない大きな秘密がある。それは、妖精たちの棲家だと言うこと。そして、精霊王の眷属、白狼キリと子狼マルも、かつてはここに住んでいた。
この事実を知っているのは、当代の竜神王であるオレと、その側近、そして、この領地を治めるベルカノン公爵家だけである。
(隣国ベルファント王国の王太子ロイは例外だが、、、)
「ようやく、ようやくですよ。ルイス様!!」
久しぶりに、双子の弟たちと会う事を、楽しみにしているリゼはテンションが高い。
――――ちょっと、嫉妬を覚える、心の狭いオレ。
「リゼ、オレのことも忘れないでくれ」
「いつも一緒にいるじゃないですか!?」
彼女は呆れた顔で、オレを見た。
「そんなに呆れなくてもいいだろう、、、」
オレは独りごちる。
――――柔らかいクリーム色の邸宅が、丘の上に見えて来る。
オレたちは今回、国内視察のついでに、ベルカノン領へも寄ることにした。ところが、このベルカノン領、とにかく秘境中の秘境で、隣の領地からかなり遠いのである。
ここに来るのが、こんなに大変だとは・・・。転移って便利だなと実感した。
「リゼ、ベンジャミンとレノンは何歳になった?」
以前、彼らに会った時は、まだ歩いてなかったような気がする。
――――いや、かなり前だな。
「七歳ですよ。私も年に数回しか会いませんから、忘れられているのではと、時々心配になります」
「そうか、もう七歳なのか、、、」
二人で話していると、馬車が停車した。
「コンコン」
扉をノックして、御者が扉を開けた。オレが先に降りる。そして、いつも通りにリゼのエスコートをするハズだったのだが・・・。
「ルイスお兄様!!」
元気のよい声が聞こえると同時に右左から抱きつかれた。
――――あ、ベンジャミンとレノン!!
「大きくなったなぁ!お前たち」
オレは、驚きを声に出す。次の瞬間、二人はオレに向かって、声を揃え言った。
「九歳になりました!!」
リゼ―!?二歳もズレてるぞー!!と、心の中で思ったのだが、彼女の名誉のため、声には出さない。
――――邸宅のサロンに通され、ようやく一息付いた。
「ルイス様ばかりで、ズルいです!!」
リゼが、オレに不満をぶつける。馬車から、双子とオレは腕を組んだまま、この部屋まで来た。そして、部屋に着くなり、双子は用事があると言って、リゼと話をすることもなく、アッサリと去って行った。リゼは、それが気に食わなかったらしい。
「あの年頃だと、姉より兄の方が良いと言うこともあるだろう。あまり気にするな」
「まぁ、言っている意味は充分、分かりますけど、、、」
リゼの声は、元気が無くなっていた。双子に会うのを、あれだけ楽しみにしていたのだから、少し可哀そうな気もする。
「コンコン」
ノックの音と共に、ベルカノン公爵夫人と双子が、部屋に入って来た。
「殿下、エリーお待たせしました」
リゼとそっくりで、見た目が妖精のような夫人は、いつも明るく柔らかい雰囲気を醸し出している。
「お母様、お久しぶりー!!学園の卒業式に来なかったから驚いたのよ」
「ごめんなさいね。各国の要人の方もお見えになると聞いて、粗相があってはいけないから遠慮したわ」
夫人は双子を横目に言った。
「そうなのね。そんなにあなた達は好き勝手にしているの?」
リゼが双子に話しかけると、金髪のベンジャミンが口を開いた。
「姉さま、うるさい」
「はぁ?あんた、誰に向かって口を聞いているの?」
えっ、オレの知らないリゼが出て来た!?
「うっさいんだよ」
銀髪のレノンまで暴言を吐く。夫人は両手を挙げて、ヤレヤレというしぐさをする。――――これはオレが想像していた以上に、大変な事態になっているのではないか?
宰相が見たら卒倒しそうだぞ。
「ベンジャミン、レノン。お母上の言う事に、耳を傾けているか?」
オレは二人を見据えて、ゆっくりと低い声で話した。
「えー、母上は話が長いだけで、要点が分からないので、困っていまーす」
レノンがハキハキと答えた。ベンジャミンも、横で頷いている。
「最近は何をして、その長い話になったんだ?」
「うーん、僕が図書室の資料を破いて、ノートに貼っていた時かな?」
ベンジャミンが、レノンに確認する。
「うううん、ピーマンを花壇に捨てた時じゃない?」
オレは聞いているだけで、頭が痛くなって来た。チラリとリゼを見れば、口を開けたまま驚いている。――――そうだろう。リゼの中の双子は天使のままだったのだから。まぁ、これも成長した証なのだろうけど、それにしても、ヒドイな。
「あなた達、これ以上は辞めて頂戴」
耐えかねた夫人が、二人の口を塞ぐ。オレとリゼと夫人は目を見合わせ、どうにかしなければいけないと3人で、アイコンタクトを取った。
―――――――――――
一旦、双子達には適当な用事を言いつけ、退出させた。
――――これから、私とルイス様とお母様の三人で作戦会議を始める。
「お母様、あの子たちはどうしちゃったの?」
「エリー、別に反抗期と言う訳でもなく、普通に邪悪なのよ」
お母様は、ため息を吐いた。私が領地に戻らなかった約一年で、こんな事態になっているなんて、、、。
「ルイス様、男の子って、皆こんな感じなのですか?」
「そうだなぁ、言われた通りにしたくないという反抗期は誰しもあると思うが、、、」
ルイス様は、顎に手を置いて考えている。
「夫人、何か役割を与えてみるのはどうだろう?」
「えええええー!そんなこと、怖くて出来ませんわ」
お母様は、怯えたような声を出した。
「いや、双子というのは、二人揃って一人前のように見られるのが嫌だと聞いたことがある。九歳なら、それぞれに役割を与え、責任を持たせる勉強をしてもいい年頃なのではないかと思う」
「二人セット・・・。確かに、そういう見方をしていたかも知れません」
「ああ、服装一つ取っても、同じものではなく、好きな色をそれそれ選ばせるということが大切だ。その上で、同じものを選んでもいいし、勿論、違う物を選んでもいい」
あ、双子・・・!!そうだった。遠い昔、ルイス様とシータは双子の竜だったってことを忘れていたわ。
「お母様、私たちが滞在している間に、あの子たちに何か挑戦させてみましょう」
「そうね。それは良いかもしれないわね。最近、かなり煮詰まっていたから、、、」
そう言うお母様の目の下には濃いクマあった。何だかお母様、子育てに疲れているような気がする。
「ルイス様、もし良ければ、私と二人で計画を立てませんか?お母様をお休みさせてあげたいのです」
「ああ、オレもそれは賛成だ。俺たちは明後日まで、ここに滞在する。夫人、今から明日の夜まで王都に行きませんか?」
「えっ、王都?」
驚くお母様に、ルイス様は続ける。
「オレが、今から夫人を宰相のところまで転移魔術で連れて行きます。そして明日の夜に迎えに行きます」
お母様の表情が、パッと明るくなった。
「ああ、王都!!いつ以来かしら。殿下、お言葉に甘えてもいいでしょうか?」
「勿論、王都を楽しんで来て下さい」
話が纏まったので、お母様は一度、私室に戻った。――――そして、必要な物だけを鞄に押し込んで迅速に戻って来た。
「リゼ、ちょっと言ってくる。双子達が帰って来たら、よろしく頼む」
「分かりました。お二人共、お気をつけて!」
私は、笑顔で二人を見送った。
最後まで読んで下さりありがとうございます。
面白いと思ったら評価、感想のほど、どうぞよろしくお願いいたします。




