2、秘密の誕生日
リゼの悪役令嬢日記の番外編です。
ネタバレにご注意下さい。
このお話は本編54話の後の出来事です。
本編を読んだ後にお読みになられることをオススメいたします。
楽しい物語になるよう心がけています。
誤字脱字等のご連絡は感謝いたします。
「姉様、乙女ゲームってどんなやつなの?」
シータが私に質問して来た。
彼は今ルドルフとベルカノン公爵邸へ遊びに来ている。
「ええ、乙女ゲーム?何で知りたいの」
「うーん、ちょっと知りたいんだ」
んー、何故興味を持ったのだろう。怪しい。
それに確か乙女ゲームって年齢制限があったわよね。
10歳の男の子に乙女ゲームの話とかしていいの?いやいやマズイわ。
「ええっと、その乙女ゲームなのだけど、年齢制限があるの。それで、まだシータの歳だと内容は話せないのよ。もう少し大きくなったら教えてあげるわ」
「えー、そうなの?気になるけど、、、分かった」
少し不服そうな顔をしたシータだったけど、すぐにフリスビーを持ってルドルフと遊び始めた。
スマホの中のスチルとかを見せたのがいけなかったのかしら、、、。
その日の夕方、魔塔の一室にルイスとシータがいた。
「あのね、姉様が年齢制限があるから、ぼくにはダメって言ってた」
「年齢制限?一体どんなものなんだろうな」
「ぼく、手伝えないかもしれない」
シータが、ガッカリしている。
「仕方ない、オレがもう一度聞き出してみる。シータ、また詳しい事が分かったら連絡するから、よろしく頼むな」
「うん、分かった」
そう言うとシータは帰った。
オレはリゼの元に向かうことにした。
「リゼ、今大丈夫か?」
「、、、はっ?ルイス様ですか。今はちょーっと間が悪いです。30分後ではダメですか?」
夕方の30分後にというセリフにデジャヴを覚えるが、
「分かった。30分後に行く」
「えーっと、ルイス様は夕飯食べました?」
「いや、まだ食べてない」
「じゃあ一緒に食べましょう!では後ほど」
そんなこと言われたら待ち遠しいじゃないか。
食事をご馳走になるなら、何か手土産でも用意するか、、、。
何がいいか考えてみるが、今ひとついい考えが浮かばない。
まぁ、リゼなら何でも喜んでくれそうだから、王都で流行っているスイーツでも買っていくか。
オレはそのまま王都で今流行りの店と言われているシシレに行った。
残念ながら、シシレで人気のカヌレと言う茶色い焼菓子は売り切れていたが、フィナンシェは買えた。
時間もちょうど良くなったので、リゼの部屋まで、街角から転移する。
余談だがオレが去った後、シシレに王子御用達と張り紙が貼られたのは後日知った。商売人は抜かりないなと感心した。
「リゼ、こんばんは」
オレが姿を現すとリゼの部屋に夕食が準備されていた。
「ルイス様!おめでとうございます!」
リゼはそう言うと小さな丸いデコレーションケーキをオレに見せた。
ケーキの上には18と書いてある。
「えっ、何故?」
オレは驚く。
今日はオレの本当の誕生日だからだ。
「先日、アリアナ様から、こっそり教えていただいたのです。ルイス様が誕生した途端、小竜ちゃんになって、元通りの人の姿になるまで誕生を秘密にしたと」
「そう言っても1ヶ月くらいだけどな」
「アリアナ様が本当に困ったと言われてましたよ。お乳をどうしたらいいか悩んだそうです」
「動物用の哺乳瓶で何とかしたって話は何回も聞いた」
「それでも流石だなと思ったのはルイス様が子竜になっても怖いとは全く思われていないところです。いいお母様ですね」
「ありがとう、リゼ。母上もリゼがそうやって優しく話を聞いてくれるから、嬉しくて何でも話してしまうのだと思う」
「いえいえ、私の方こそアリアナ様には色々と愚痴を聞いてもらっているので、、、」
そう言うと、リゼはケーキの上に蝋燭を立てて、火を灯した。
そして、部屋を暗くしてオレに吹き消す様にと言う。
だけど、オレは蝋燭の柔らかな光に照らされたリゼが、とても美しくて見惚れていた。
「ルイス様!早く」
小声で急かされる。
我に帰ったオレは蝋燭をフッと吹き消した。
真っ暗、、、。
えっと、真っ暗だな。
リゼ?
「うわっ!」
リゼが急に抱きついて来た。ビックリした!!
「ふふふ、大成功ですね。いつも負けてばかりなので、、、。それからコレはお誕生日プレゼントです!」
そう言うとオレの首にグルグルとマフラーを巻いた。
うん、多分マフラー?
真っ暗でよく分からないけども。
「リゼ、真っ暗で良く見えない」
「ちょっとお待ちを!!」
ふわっと蝋燭が灯った。
リゼは室内に何個か蝋燭を用意していた様で次々に火を灯して行く。
とてもいい雰囲気の空間が出来上がった。
「洒落てるなぁ」
オレは呟いた。
「そうでしょう?少し素敵な空間にしてみました」
リゼは蝋燭を消したケーキを一旦準備台に置いて、先に座るように促された。
「リゼ、これは土産だ。今日はお招きありがとう」
オレはリゼの前に紙袋を出す。
「こ、これはシシレじゃないですか!あー、これとっても美味しいのです。バターにこだわっていて。ありがとうございます。とっても嬉しいです!!」
彼女は予想よりもかなり喜んでくれた。
買いに行って良かった。
渡すものも互いに終わったので、ようやく2人でテーブルに付いた。
オレは着席する時にマフラーは食事で汚さない様にと外した。
よく見るとドラゴンの刺繍がワンポイントで入っている。
コレをオレが使ったら、ネタバレになりそうだが、、、。
「リゼ、プレゼントありがとう。とても嬉しいよ。ドラゴンの刺繍はリゼはしたのか?」
「はい、編み物とか刺繍は結構好きなんです。上手ではないですけど」
「いや、充分上手だと思う」
オレは素直に感想を述べたが、リゼは素直には受け取ってくれない。
何でも器用にこなすのに自己評価がとても低い。
多分、彼女の目標が高過ぎるのだと思う。
充分なのに、、、。
「褒め過ぎですよー、でも、ありがとうございます」
やっぱり今日も謙虚で、可愛い。
「では、そろそろ冷めないうちに食べましょう!」
と、リゼが言う。
「そうだな。食べよう」
と、オレは答えた。
食事をしながら、リゼは料理の調理方法や、どの地方の料理だとか食材は何処のものだとかいつも楽しそうに話してくれる。
オレはそれを聞くのが楽しいし好きだ。
リゼが何にでも好奇心を持つところは尊敬している。
「それで、ルイス様から先にご連絡があると思ってなかったから驚いたのです。私に何かご用事だったのでしょうか?」
食事の途中でリゼが聞いてきた。
オレはこの時間を楽しんでいて、すっかり用事を忘れていた。
「ああ、ちょっと聞きたい事があったんだ。乙女ゲームの事なんだが、覚えている内容を教えてくれないか?」
そう言うとリゼは難しい表情になった。
「それ、お昼にシータからも聞かれたのですけど、お二人で何か企んでいるのですか?」
「ああ、企んでいると言えば企んでいる。内容を聞いて、その乙女ゲームを再現しようかと思って、、、」
突如、リゼの表情が悲しそうになって行く。
「ダメです!乙女ゲームの再現っていったら、私はルイス様と居られなくなってしまいますし、マーゴット様もアズールと居られなくなってしまいます」
ん?言い方が悪かったか、、、。
「違う違う!リゼ、現実で再現するのではなくて、リゼの言うスマホのゲームとして再現しようとしているんだよ」
「え?スマホのゲーム?って、スマホも無いのにどうやって?」
「実はスマホはまだ手元にあるんだ。それでその中の情報を使って、乙女ゲームを再現して、過去に送ろうという計画だ」
「えっ?どう言う事ですか?」
「分かりやすく言うと、多分リゼが前世でしていた乙女ゲームはオレとシータが仕込んだものだと思ってくれ。先にリゼが死にそうになる事件を知っているオレたちが今から作って過去に送り込む」
「何と言うことを、、、。でも、それなら辻褄が合いますね。この世界と人物や風景が似ていることも、、、。それにしても、いつそう言う発想になったのですか?」
「あの壁画がずっと引っ掛かってた。シータがドゥだと分かって確信になった。アレはオレたちしか知らない場所なんだ。最大のヒントだろう」
「ところが、残念なお知らせがあります」
リゼが申し訳無さそうな顔をする。
「ほとんど内容を覚えてい無いのです。歯抜けの記憶で何とかなりますかね?」
「ああ、あのスチルというイラストと、少しの話を入れて催眠にかけるという手もある。だから知ってる事だけで大丈夫だ。大切なのはあの日のあの時間にスマホを見ていて、死ぬというか、何というか、、、こちらへ来てもらえる状況にすればいいから」
最後は言いにくい言葉を無理やり濁した。
「そこは分かってます。私も私の魂を悪用されたくなど、ないのですから」
そして、オレはリゼから、乙女ゲームがまず何であるかを教えてもらってから、彼女の覚えている内容を全て聞いた。
「なるほど、本とは違って、動いたり喋ったりする絵を自分で選んで物語を進めるのか、想像するだけでワクワクする。リゼの前世の世界は興味深いな」
「そう言ってもらえると嬉しいです」
リゼはニコニコしている。
その顔を見ていると今夜は幸せな時間を過ごせたなと、、、。
「ルイス様、もう一つプレゼントというか、ご提案なのですけど、、、」
リゼが急にモジモジし出す。
「ん?何だ」
「あのですね、良かったら久しぶりにお泊まり会はいかがでしょうか?」
「泊まる!」
そんなの即答に決まってる。
リゼ、最高だ!
「ええ、久しぶりに抱き枕になりますね」
可愛い顔で言う、リゼ。
あー!大好きだ。思いがけず最高の誕生日になった。
翌朝、宰相が朝食に現れて微妙な空気になることはこの時のオレは知る由もなかった。
最後まで読んで下さりありがとうございます。
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