43 司教の話
ジャンルにこだわらずガンガン書いていきます。
誤字脱字等のご連絡は感謝いたします。
今回は少し硬めのお話です。どうぞ最後までお付き合いください。
「ギザン様、今日も遅くなられるのでしょうか?」
「マリー、いちいち聞くな。カルマン商会で商談の予定だ」
ギザンさまは、わたくしを見ると不機嫌になられる。
今までも、「オレを誰だと思っている。黙っていろ」と何度言われたことでしょうか、、、。
もともと、ギザンさまは、隣の大陸のホロロ帝国の第四王子殿下で、いらっしゃいました。
わたくしは、ベルファント王国サマンサ侯爵家の1人娘。
父は私が産まれた時、すでに高齢でしたので、私が成人するなり、直ぐに婿を取ることになりました。
そして、国王さまのご紹介で、ギザンさまは我が家に婿入りして来られたのです。
彼は初めて出会った時から、ご自身が王族から降格する事に納得いかないご様子でした。
わたくしとも打ち解けようとはなさらず、未だ指一本触れようとはしないのです。
ただ、わたくしは気付いております。
ギザンさまは、強気な発言から、社交界では王家の力を強くするために正教会を潰そうとしている超血統主義者と言われています。
しかし、わたくしの目には、独断で突き進むイメージとは真逆の繊細で丁寧に物事を進められる姿が見えております。
実は正教会の方々と密にご連絡を取り、お互いの関係を良くする方法を探っていらっしゃることも、、、。
「ギザンさま、くれぐれもお気をつけて」
それでも、力も勇気もないわたくしは何も知らないフリをして今日もあなたを送り出すのです。
ようやく落ち着いた司教さまと、私たちは応接室に移動し、円卓の席についた。
それにしても、ベルファント王国でこんなに目紛しくなるとは思わなかった。
ルイス様達は、当然の様に最短で問題を片付けて行く。
上に立つ人達というのは、タフだなと実感する。
「改めて、司教に色々聞きたいのだが、、、。オレからの質問は最後にする。あなたの知っている話をしてくれないか?」
今回はシータではなく、ルイス様が音頭を取られた。
「では、少し長くなりますが、お話いたします」
司祭さまは、穏やかに話し始めた。
少し前まで、この国の近隣には旧ヨーク公国という国がありました。
その国はホロロ帝国の紹介で、リベラ共和国と金剛石の取引を始めました。
取引は順調で次は銀、そして鉄鉱石と徐々に取引額が大きくなっていきました。
ある日、突然リベラ共和国は一方的に取引をストップしました。
理由は鉱石類が全く取れなくなったというのです。
ここで問題が起きました。
鉱石類を掘ってもらう側は採掘にかかる資金として、購入する額に応じた前金を渡す契約になっていたのです。
旧ヨーク公国が支払った前金は、先方が倒産してしまいましたので、もう取り返せません。
ですが、契約により旧ヨーク公国は、ホロロ帝国から先に預かっていた前金の返還義務が発生したのです。
突如、莫大な資金を調達しなければならなくなった小さな公国は破綻の危機を迎えました。
そこで助け舟を出したのは、ベルファント王国でした。
提案は多額の借金の肩代わりする代わりに、旧ヨーク公国を併合するというものでした。
公国民を路頭に迷わせることは出来ないという大公の判断で、迅速に旧ヨーク公国はベルファント王国へ併合されたのです。
その後、皆の意見が割れました。
最初に話を持ちかけたホロロ帝国が悪いと言う者、最後に話を持ちかけたベルファント王国の罠だと言う者、騙された旧ヨーク公国が悪いと言う者。
また、助けを出したベルファント王国を称賛する声は、驚くほどありませんでした。
この旧ヨーク公国の件で、わたしは不思議に思っていたのです。
リベラ共和国の事を悪く言う者が、誰も居ないことを、、、。
事あるごとに、ベルファント王国で旧ヨーク公国の者が暴動を起こしました。
何が目的なのか、よく分かりませんでした。
ただ可哀そうな感情が皆の中にあったのか、それを受け入れる雰囲気がありました。
またホロロ帝国から旅芸人が来て公演を始めると、その地区で暴動が起こりました。
これも何が目的なのか、よく分かりませんでした。
しかし、ホロロ帝国の国民だから悪さをしても仕方ないという考えが根底にあったのか、大した対策も取られませんでした。
わたしはこの人々の気持ちを誘導する流れに早く気づき、己の感じた気持ち悪さを、もっと考えるべきでした。
この事件で実際に莫大な金を手にしたのは、、、。
ガタッ、ドン!!
大きな音がして、ドアが蹴破られた。
襲撃だ!!
司教の話の途中で、黒いローブを着た集団が、私達の居る部屋へ雪崩れ込んで来た。
えええ、あああ、襲撃!?
えっ、本当に?と動揺する私。
「リゼ、大丈夫だ。オレから離れるなよ」
この一瞬で私の横に来たルイス様が、声を掛けてくれた。
ナイスタイミング!!ありがとうございます。
我に返りました。
「シータ頼む!オレもサポートする」
ルイス様はシータに向かって叫んだ。
私たちに飛び掛かってくる人達の動きが、突如スローモーションになる。
視線の縁でシータが両手を広げている姿が見えた。
シータの手のひらから出た光が、雷のように室内をほとばしる。
眩しい!!わたしは目を開けて居られなくなって、目を閉じた。
ほんの数秒で、騒音が消えた。
恐る恐る目を開けると見慣れた魔塔の部屋に変わっていた。
「案外、黒幕が早かった、、、」
シータが呟く。
「えっ、またランドル王国?」
ロイ王太子殿下は呆然としている。
そうよね、ベルファント王国に戻ったと思ったら、また帰って来ちゃったものね、ランドル王国へ。
「全員無事だな。司教、ご家族はもうすぐここへ戻ってくる。一旦、仕切り直そう。悪いが貴殿は容疑者でもあるから魔塔からは出せないが部屋を用意するので休養を取ってくれ」
やけに落ち着いた口調で、ルイス様が話す。
「はい、分かりました」
それを受け止めた司教さまも、落ち着いていた。
私の心臓はまだバクバク言っている。
本当に飛んで帰ってくるとは思わなかった。
全部投げ出して来ちゃったよね、、、。
ええっと、ベルファント王国は色々と大丈夫なの?
最後まで読んで下さりありがとうございます。
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