41 安心
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コンコン、ドアをノックする音がした。
「はい」
シータが答える。
「司教のマキトです。ご挨拶に参りました」
「どうぞ、入って」
ロイが返す。
ドアが開くと、ひょろっとして、丸いメガネをかけた青年がそこに立っていた。
彼はロイに礼をしてから、オレの方を向いた。
「ご挨拶が遅くなり失礼いたしました。この正教会の責任者をしております。司教のマキトと申します」
彼は申し訳なさそうに挨拶をする。
「初めまして、ランドル王国の王子ルイスです。そして彼は我が国の次期王宮筆頭魔術師シータです」
オレは横に立つシータも紹介した。
「ご紹介に預かりましたランドル王国の魔術師シータです。よろしくお願いいたします」
シータを見て、司教はあからさまに驚いた様子をしている。
「随分とお若いのですね、驚きました。どうぞよろしくお願いいたします」
「ところで司教、今日は何をしていたの?」
ロイが司教に話しかける。
「すみません。仕事が立て込んでおり、ご挨拶が遅くなりました」
司教は再び申し訳なさそうにする。
「それと、実は一つお知らせもありまして参りました。わたくしの方でベルカノン公爵令嬢を先ほど保護いたしました。建物内をお一人で歩いていらしたので」
言いにくそうに司教が言う。
「ああ、君はやはりそう言う事だったのか」
ロイが呟く。
「司教殿、オレからも至急貴殿に知らせたいことがある」
オレがそう言うと、司教の表情が一気にこわばった。
「はい、何でしょうか?」
か細い声で、司教は答えた。
「先ほどベルファント王国のブランド領にて貴殿のご家族及びルソー・ブランド辺境伯を発見し、速やかに保護した。これで大丈夫か?」
オレが言い終わると同時に司教は床に崩れ落ちた。
両手で顔を覆い涙を流している。
よほど家族が心配だったのだろう。
「良かったね。司教さんこれで安心したよね」
シータが声を掛ける。
つい先ほど、アズから司教の家族とルソー・ブランド辺境伯爵が、ブランド領の民家に囚われているのを発見し保護したと連絡があった。
シータから人命の保護救助を依頼されたアズは姫に助けを求めたらしい。
姫は司教の家族と面識があったらしく、アズがその情報をもとに人の繋がりを辿ったと言っていた。
魔術師アズと戦士姫の二人なら少々強い相手が出てきても難なく倒すだろう。
次は占星術師ノアの捜索に動いてもらっている。
黒い仮面の男に関しては司教が情報を持っているだろう。
シータは倒れ込んだ司教に話を続ける。
「ぼくは、最初にリゼ姉さまが何故マーゴット王女殿下といる時ばかりを狙われるのだろうと思ったんだ。しかも襲ってくる相手はマーゴット王女殿下より弱いし、リゼ姉さましか狙わない。それは刺客の攻撃を成功させないためと気付いたんだよ。使役紋を受けた人たちも大した攻撃はして来ないし、時間を稼いでいたよね?」
両手で顔を覆っていた司教は手を下ろし、涙声で語る。
「はい、家族を人質にされ、身動きが取れませんでした。こうして先延ばしにして凌ぐしか、、。ありがとう、、ございます。何と言って良いのか、、、お礼の言葉もありません。罪は償います。本当にありがとうございます」
この悪質で凶悪な事件で脅されたとはいえ実行犯であるにも関わらず、うまい具合に失敗を組み込んで人的被害を最小限にしたこの司教は非常に優秀な頭脳派だと思う。
司教が泣き崩れている間に、オレはリゼを迎えに行くことにした。
ロイとシータに司教を任せ、部屋を出る。
部屋の場所は司教に聞いた。心は逸るが早歩きにならないように気を付ける。
コン、コン、ココン
“大丈夫”の合図にしていたノックをする。
部屋の封印はもう司教によって解かれているはずだ。
「えっ、ルイス様?助けてください!!この部屋に閉じ込められているのです!!」
室内からリゼの声がした。
リゼ、、、。そんなに大声でしゃべったら、いざという時のノックの合図も全く意味がない、、、。
思わず顔が緩む。
オレはゆっくりドアを開けた。
リゼはソファーに座っていた。
オレを見て、リゼが驚いた顔をする。
「えっ?鍵は開いていたのですか」
イヤイヤ閉まってたよ。
さっきまでは、、、。
「いや、何というかホッとしたよ。リゼ」
オレが近寄るとリゼが立ち上がったので、そのまま抱きしめた。
「あー、ミッション達成したと思ったのに!!残念」
腕の中でリゼが悔しがっている。
「いや、リゼ?ミッションは大成功だ。司教もその家族も、おまけにルソー・ブランド辺境伯爵も無事に保護した」
リゼにかろうじて聞こえるくらいの小声で伝える。
「えっ、この短時間に何があったのですか?色々詳しく聞かせてください!!」
色々察したのか、リゼも小声で返してくる。
「その前に補給する」
「えっ何を?お腹がすいたのですか」
「分かっているくせに」
オレは笑う。
「もう仕方ないですね」
リゼのあきらめたような声がした。
それからは何も言わず、二人の唇が重なる。
オレは無意識に先ほどのリゼを失ったかもしれない慟哭に飲み込まれていた。
いつもは唇を重ねるだけなのに、リゼの深い甘い吐息を感じて我に返る。
だいぶん感情に流されて、やり過ぎてしまったかもしれない。
そっと瞼を開けて、リゼの方を見ると彼女は真っ赤になっている。
「もう!やり過ぎです!」
そう言うとリゼは顔を伏せた。
「ごめん、止まらなかった」
言い訳も思い浮かばず、素直に謝った。
「止まらなかったって、、、」
リゼは耳まで真っ赤になってしまった。
「ああ、どうしようもなく可愛い、愛してるよリゼ」
オレはそう言うとギュッとリゼを抱きしめた。
「ルイス様、そういうのは二人のお部屋でお願いします。ここは司教さまのお部屋ですよ!」
オレはしまった!という顔になっていたと思う。
ごめんなリゼ、そんなこと完全に忘れていた。
リゼにやさしいお説教をもらって、オレたちは皆の元へと戻ったのだった。
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