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魔導学生キュリアの日記  作者: 風雅雪夜
2年生
30/30

1/20_夕方

試合後のキュリアとハルトと、ベレジュナーヤ先生。会場の後片付け。

 試合の場となった演習場は無事に元通りのきれいな状態に戻った。ハルトが魔法で水を引き込んでいたから、それを直すのに時間がかかった。無属性の魔法で先生と一緒に直したのだけど、水の通り道の閉じ方、排水で、かなり高度な魔法操作を遠隔で行ったから、魔力がほぼ残っていない。

 疲れた。



「お疲れ様、キュリア」

「ありがとう。でもハルト、全部終わるまで残ることなかったのよ。あなたの仕事は道の出口を教える段階で終わっていたんだし」



 ハルトの魔法、大海の奏者(ハルトが術式を組んで作ったオリジナルの魔法らしい)では水に触れていないとあの大量の水は操れないし、普通の魔法だと出力が足りなくて戻せないらしい。結果、私と先生の魔法と魔力で海水の取り入れ口を塞ぎ、水の通り道を土を寄せて閉じていくのと並行して海水を海に転送して……と、土木工事みたいなことを試合終了後からしていた。

 思ったのだけど、私達がいなかったら、ここってどうなっていたのかしら。それも織り込み済みで魔法を使ったんでしょうけど。じゃないと本気で戦えないものね。後のことなんて気にしてたら、魔法なんて使えないわ。……その分、後片付けか大変になるんだけど。



「なんとか日が沈むまでには終わったな。さ、少し休憩してから帰ろうか、二人共」

「はー、疲れた〜。こういう時、簡単に場所の復元ができる魔法がほしいわ〜」

「基本的には地面は土属性で直していたからな。土属性持ちの方が数は多い。私達のようにどんなに壊滅した状態からでも、全て丸ごと直せる無属性持ちはそういない。そういう魔法が欲しいなら自分で作らないとな」

「方向性はわかるけど、問題はエネルギー問題よ。無属性だけが使えるんじゃ意味無いもの。そこを解決しないと私達ずっーーと修理する人止まりよ、先生。……直すだけじゃなく創建当時の状態も維持できれば、お手入れがしやすいのに……」



 なんて、悪態をつきながら座り込む。それを良しとしなかったのか、ハルトが私を抱き抱えた。やっぱり貴方、私に会えなかったストレスでずっとくっついてるわね?


 でも、修練場のようなフィールドを地面だけじゃなく壁だったり、或いは床面が石だったり、天井があったりした場合、それら全てを一つの魔法で修復する、なんて魔法はやっぱり必要だと思うの。広範囲修復魔法陣、或いは魔法装置とか。魔法の試合で破損したときやメンテナンスがぐっと楽になるじゃない?

 魔法陣の組み立てはだいたい思いついて構築はできるんだけど、それを起動させるためのエネルギーが問題なのよね。

 確かに土属性持ちの魔導士はその辺にたくさんいるわ(ミケーレ先輩やオルガさんとか)。でも、この広いフィールドを全て元通りに修復できるかと言われると魔力が足りないし、土属性だけじゃできないこともある。まぁ、そこは人数や他の属性の魔法も使って補えばいいんだろうけど。

 でも、私は無属性の時魔法を使うことで作られた時の状態に戻したり、維持をしたり、ということもしたいから、やっぱり無属性の魔力も欲しいの。

 ここからが問題なんだけど、無属性の発動には無属性の魔力が必要不可欠。無属性の魔水晶を利用するって案もあるけど、あれってすごい高いのよね。無属性持ちが少ないから他の属性の魔水晶より、どうしても高価になっちゃう。高価なものを定期的に購入するのって、割に合わないし、出費が痛い。それに、無属性を使わず土属性で直すだけなら低コストでできるもの。状態の維持は二の次だし、私があったらいいと思うだけだし。うーん……望み過ぎかな?



「キュリアは偉いね。その魔法、特に状態維持の魔法って、無属性の収納袋みたいなことを建物でやれるってことでしょ? それってさ、貴族のお屋敷や迎賓館、お城とか、大事な施設にそういう魔法があったら管理人やお掃除の人とかが楽になれるし、歴史的な場所に施せば歴史や文化が保存できるってことでしょ?   開発したら、その功績で一生暮らしていけるよ。頑張って作ってくれると嬉しい魔法だよ」

「しかし、雇用問題が起きそうだな。使用人などの解雇で働き口を失う人も出てしまうだろう」

「そういう問題があるから今まで開発されていなかったのかもしれないわね。使用条件を付けて価格設定を高めにしたら……」

「急に難しい話しないでよ……」



 そうね。疲れてる時に疲れそうな話は良くないわね。この件は後日ゆっくり考えるわ。とりあえず、今日は帰宅ってことで。


 先生と別れて下校するのだけど、私はずっとハルトに抱えられていた。いつ下ろしてくれるのかしら?

 待ちゆく人たちが私達を見て二度見したり、あらあら……みたいな目を向けてくる。その温かい目にも、なんだか慣れてきてしまった。どうしたってハルトは私のことを離してくれないのだから、いろいろ諦めるしかないんだもの。

 特に会話もなく静かに私は腕に抱かれ、揺られていた。自分で歩いたり、魔法で飛んだり、自分の力を使わないで帰れることは贅沢よね。快適かどうかはさておき。



「さ、キュリア。もうすぐ着くよ」

「そうね。運んでくれてありがとう」

「いいよ。僕がしたいことをしてるだけだから。でも、せっかくだから、一緒にご飯でも食べない? 戦士の厨房で」

「別にいいけど、うちは基本的に大衆向けの料理屋よ? いつも思うのだけど、貴族御用達の高級レストランより騒々しいし、高級な食材も使ってないからお口に合ってるか不安になるのよね」

「逆に賑やかなのか楽しいんだよ。高級だからといって必ずしも美味しいかというとそうでないものもあるし。何よりいっぱい食べられるのがいい。マナーにもうるさくないし、いい息抜きになるんだよね」

「そういう考え方なのね」



 貴族は食事の作法はたしかにうるさそう。この口ぶりからすると、育ち盛りの子供には量が少ない、なんてこともあるみたいね。たしかに大衆向けなら、たくさん食べてもマナーにうるさい人もいないわね。美味しく楽しく食べて、最低限のマナーさえ意識してもらえれば誰でも歓迎だし。

 ハルトも、たまには賑やかな食事を楽しみたいのね。



「どんな料理人だって、自分の作った食事に誇りを持ってる。君の家の人だって、僕の家の料理人も、それから貴族向けレストランのシェフもそれは同じだよ。磨いた技術とセンス、知識、そして美味しい食事を提供する。それに貴族も平民も違いはないよ」

「すごくいいこと言うわね。それ、オルガさん達に直接言ってあげて。泣いて喜ぶし、好きなものを作ってくれるわよ」



 むしろ一品無料にするとかしちゃいそう。

 そんな話をしながらついに我が家『戦士の厨房』に到着。窓から店内を見てみれば、すでにたくさんの人が入っているのが見えた。今日も繁盛してるわね。

 いつもは裏口からだけど、今日はハルトとご飯を食べるから表から帰ることになるわね。なんか不思議な感じで落ち着かないけど、表からただいまって言うためにドアを開けた。



「ただい」

「「「「模擬戦勝利おめでとう!!!」」」」


 割れんばかりの声の圧と、パンパンパンッ! とクラッカーや小さな花火の音が私達を出迎えた。



「な、何!? 何事っ!?」

「へへっ。俺達でキュリアの祝勝パーティーを企画したんだぜ。勝った後輩の祝勝パーティーだぜ。こういうのはド派手にやりたいじゃん?」

「実は、あのクリスマス会の後から計画していたんですよ。勿論、僕らだけじゃなくオルガさんも常連さんに声をかけて」



 企みが成功したいたずらっ子の笑みでアンリ、マティアス先輩達が言う。



「で、でも、そんなことオルガさん一言も!」

「うふふ。私は2週間前からずっとお客さん達にお知らせしていたわよ。ほら、あそこ」



 オルガさんが指差す先の壁には看板メニューの書かれた大きなボードがある。そこに本日のおすすめや日替わりメニューだったり季節のおすすめなんかのお知らせが書かれた紙が貼ってあったりするのだけど……。



「……? あれ?」



 微かな魔法の反応にどうして今まで気づかなかったんだろう。そこだけなんだか揺らいで見える。幻惑魔法だ。魔法を解除すれば、今日の試合のこと、私の勝利を確信してパーティーが開かれることを知らせる紙が貼られていた。しかも、私には内緒にすることという箝口令を敷く文面も。



「オルガさん、私にだけ見えないように魔法で隠してましたね!?」

「当たり。いつバレるかヒヤヒヤしてたけど、案外まだ魔導士としての実力はあったみたいで自信持てたわ」

「よく言うよ、土属性科の首席殿」

「ギュンターさんまで」



 うふふと喜ぶオルガさん。その兄のギュンターさんが言う。騎士団の人も何人かいるわ。ラツィオが「よう」、と片手を上げる。



「キュリア」



 女の人の声に呼ばれてそちらへ顔を向けた。懐かしいあの人が立っていた。



「レネさん!」

「よくやったね。ハルトを負かすことができると信じていたよ」



 手を取って労ってくれるレネさんに、私は気恥ずかしくて、でももっと褒めてほしくて、ニヤケが止まらなかった。ずっと会えてなかったから寂しさもあったし。



「ガルシア、僕は? 僕は?」

「ハルトの水の攻撃は厄介だっただろう? 私の時はイメートに苦戦したんだ。君も私と同じようなことをしたとキリコから聞いたよ。どんな魔法を使ったんだい? 私も試合を見たかったよ」

「え、無視? 嘘でしょ?」



 ハルトが色々と慌てだす。レネさんってハルトに対して塩対応なところがあるのよね。仲が悪いんじゃなくて、お互い信頼してるから成り立つそんな関係。


「ささ、積もる話もあるでしょうけど、まずはパーティーを始めましょ。ハルト君も、キュリアと戦って、を連れてくる役目お疲れ様。今日お互いの実力をぶつけ合った戦士二人を讃えて、乾杯!」



 オルガさんが話しながら渡してきたグラスを持って、パーティーが始まった。


 それはもう、どんちゃん騒ぎだった。

 ベルメール先輩が幻覚の魔法で私達の試合の様子を店内に映したら、試合の様子にお客さんは大興奮して歓声が上がり、料理と酒が飛ぶように注文が入る。私はレネさんに解説やハルトとコメントをしながらベルメール先輩の記憶を楽しんだ。(幻覚魔法って戦いに使うだけじゃなく平和的な目的のために使うこともできるのね。)

 それから、かつてレネさんとハルトが試合をしたときの話も聞いて、私も勉強になったわ。お互い、ハルトにはもう少し凶悪性を持たせても良さそうという意見が一致して、それをハルトがやめてくれと笑うところまでがセット。私も、ハルトのあの攻撃には、毒を混ぜてもいいと思うのよね。ハルトからは「そんなえげつない人の心が無いのかと言われかねない攻撃は絶対にしないから。君達も思いついたからってやらないでよ」って再度釘を刺された。




 今日は、全力で楽しんだ。人生で一番楽しい思い出で満ち溢れた日だった。

以上、1/20の日記でした。

今回も読んでいただきありがとうございました。

私事ですが、春から少々忙しくなりそうで、また長く更新を止めます。出会い別れ異動や新生活の準備等、この時期は忙しいですね。落ち着いた頃合いにまた更新と連絡をしますので、その時はまたよろしくお願いします。


それでは、また。

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