1/20_その4
別名、『模擬戦終結』。
勝利するのは果たしてーーーー
【side:Haruto】
「イクスプロード」
静かに聞こえたその詠唱。その直後、龍の口から赤い光が胴に向かってポポポっと灯り、爆音と共に破裂した。内部から灼かれ、爆発した水龍は水蒸気となって消えてゆく。白くゆらりと煙り、輪郭すら空気に溶けてゆく僕の魔法。自信と意地とほぼ全ての魔力を込めた魔法は、それは見事なまでの爆発で破られた。僕も観客も、その光景に動くことを忘れていた。
あぁ……勝つつもりで放った魔法を、ここまで気持ちよく爆裂四散させられた。僕はまた、炎に負けたんだ。やっぱり、君達は強いな……。
後悔も悔しさも無く、それら全てを爆発で吹き飛ばして、純粋に称賛の眼差しで僕はその場に立ち尽くした。
水蒸気で白く煙る中を何かが僕の方へ向かって飛び出した。炎と水の翼。反対の属性の双翼で水蒸気の白を切り裂いて、彼女は僕の方へと飛んでくる。飛び込んでくる。
僕は彼女に向かって手を伸ばした。僕の最愛の友へと。
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火と水の翼を伴ってハルトへ向かってダブルの属性で攻撃をしようと飛び出したら……。ハルトったら、なんて満足した顔で手を広げて待ってるのよ。仕方ないわね。
翼を羽ばたかせて勢いを殺し、ハルトの元へゆっくりと降りていく。伸ばされたその両手を取ってふわっと静かに着地。双翼も静かに先端から風に溶かすようにして消した。
「僕の負けだよ、キュリア」
穏やかに、晴れやかに言うハルト。その声が先生にも聞こえたため、ここで試合は終了だ。
「ハルト・ウォードが負けを認めたため試合終了! 勝者は無属性科2年、キュリア! 両者に大きな拍手を!」
修練場の観覧席からは大きな拍手と歓声がどっと押し寄せてきた。あまりの歓声の波の大きさに体が少しぐらついた。
「さ、キュリア。英雄凱旋に行こう」
ハルトに持ち上げられ、その腕に座るように軽々抱えられてしまった。これってじあn……あ、なんでもないです、ハイ。
周りがよく見えるようになった。
よくよく細かく周りを見渡すと、アンリ、マティアス兄弟は二人で肩を組んで大盛りあがり。周りの生徒に私のことを自慢している。ウチのキュリアをどうぞよろしくお願いします! とか言ってるわね。保護者目線かな?
それを引いたような目で少し離れて友達と見ているキリコさん。私と目があったから大きく手を振ってくれてる。お友達もすごい振ってくれてる。嬉しい。
ミケーレ先輩とその友人達はメモを片手に興奮した顔で何か話している。魔法の使い方で何か勉強になったかしら。あ、ミケーレ先輩気づいた。小さく手を振ってる。ありがとう、先輩。
そして、遠目からでもわかる派手な髪色とゆるふわなオーラの人がいるわね。隣と前後に人がいない席のど真ん中に座って優雅に手を振っているベルメール先輩。ふわふわ具合がいつもより3割増されてるみたいになってる。いやでも、うーん……いつも通り、かな?
でも、先輩たちだけじゃなくて、他のよく知らない先輩達からも拍手や歓声が送られてくる。私、意外と色んな人から認められていたんだ。今まで、意地悪されたり、態度の悪い先輩や同級生ばかり目についていたけど、こんなにたくさん私のことを認めてくれている先輩がいたんだ。
「キュリア。君は、君が思うよりずっと多くの人から認められているんだ。これから君を認める人だってたくさんいる。今日がその日だ。だから、彼らに応えてやってくれ。自分はここにいるって」
私を片腕に抱きかかえたハルトは歓声を上げる生徒達に手を振りながら言った。
私も恐る恐る手を上げた。そうしたら、歓声が一層大きくなって押し寄せてきた。なんだか恥ずかしいような、むずむずするような、そんな感じ。変なの。嬉しいって感じてもいるし。これが照れとか気恥ずかしいってことなのかしら。胸が温かくてざわざわする。
今日のこと、この光景をずっと覚えておきたいな。ハルトの腕の中から見た、この大歓声を。ずっと。
オマケ
「あ。そうだわ、ハルト。貴方、あの大量の水に毒とか呪いとかの状態異常効果を付与しておけば、もっと対処ができなくなるから、次はそうしなさいよ。初手それで勝てるわよ」
「……発想がえぐいし、12歳の女の子のする発想じゃないよ。そしておすすめしないでよ。しないからね?」
「疫病とか強酸の溶解液でないだけ、まだ良心的だと思うけど……」
「キュリア、それ絶対やらないでね。僕以上の水の物量で今言ったやつ絶対やらないでね。フリじゃないから。やったら友達やめるから」
「じゃあ私達の友情もここまでってことで」
「嘘だよおっ!! 僕が悪かった! けど、やらないでほしいのは嘘じゃないからぁ! 泣くよ!?」
「……やだこの先輩。めんどくさい」
などという会話があったりなかったりする。
オマケ2
「同志達ィ! 我らが推しカプの晴れ姿ですわよ! 我々が推しを描かず誰が描くというのですか! 存分に渾身の力でお描きなさい!」
「「「「「ハイ、部長っ!!」」」」」
「てえてえ」
「部長っ! 勝利の瞬間が美くしくて涙が止まりませんわ!」
「私もですわっ! でも描くのよ! 公式がてえてえのに、涙でよく見えないの! 描きたいのに、よく見えないの!」
「涙をお拭きになってくださいまし、部長」
キュリア勝利直後の『無を推す会』の会話より。
無を推す会……キュリアを推すお姉様方を中心とした非公式ファンクラブ。キュリアと彼女がよく関わるいつものメンバーが快適に学園生活を過ごせるよう遠くから見守り、さり気なくフォローする。主な活動はキュリアの観察。定期的に報告会が開かれる。公式が無自覚に仲間とのてえてえ場面を作ってくるので、絵や文章による報告または布教するため、新聞部や文芸、芸術に秀でた者が数多く在籍している。
ハルトとキュリアの組み合わせが一番てえてえし、美味い。次点でアンリ&マティアス兄弟。3人の悪ガキ兄弟感とアンリ&マティアス兄弟のお兄ちゃんムーブも人気。各学年の各属性科に必ず一人は会員がいる。潜伏してるだけで表立って姿を表さないが、けっこう大所帯。
という話。さて、次回は勝利の後の様子を少しお届けしたいと思います。次回は沢山の人が出てくるので、振り落とされないようご注意です。
今回も読んでいただきありがとうございました。次回は3月!3月の第二土曜日です。よろしくお願いします。




