12/20 その1
Let's party!
人の転移の魔法にも慣れてきて、私一人なら問題なくどこでも行けるようになってきた。年が変わったら人を連れての転移を習う。私の魔力量なら問題はないみたいだけど、色々ストレスをかけて人の転移をするということをしていく、と先生は言っていた。
ストレスがかかると心が不安定になり、魔力が乱れやすい。転移の魔法だけじゃないけど、魔力の量に影響が出て、魔法の威力の減少や暴走にも繋がりかねない。そのため、ストレス耐性をつけつつ魔法の練習をするそう。不安ではあるけど、何か不測の事態に遭遇したとき、ハルトの体の一部を残して逃げるように転移という事態は避けたいし、安全に移動したいじゃない。
新年からはヘビーな授業になりそうだけど、でも、今は今で楽しまないとね。
「キュリア、そっちピンいる?」
「足りてますよ、キリコさん。それになくなったら魔法で取るので大丈夫ですよ」
白い小さな魔法陣が手の上にぽっと出て、ちゃらちゃらっと何本かのピンが手のひらに乗った。
「無属性フル活用って感じね〜」
「日常生活の中でも無意識に使えるようにしないと。私の場合は特殊ですから」
「キュリアー。店長が料理もう持ってっていいかーって」
「あ、お願いしまーす!」
今日はクリスマスには少し早いけどパーティーを開く。残念ながら最上級生の貴族2名は晩餐会シーズンのため欠席だが、平民籍の私達はレネさんの時と同じ2階の個室でパーティーを開く。今回は人数が少ないので開催を悩んでいたけど、オルガさんから『やりなさい、むしろやれ』と強めのゴーサインを出されたので決行。ベレジュナーヤ先生もお呼びした。先生もいたら、なにか面白いことしてくれそうだし。
「そういえばキリコ先輩。レネ先輩は年明けまで帰らない感じですか?」
「そうなの。晩餐会やニューイヤーイベントの警護もあってね。交代で休みはもらえているみたいだけど、有事の際には出動しなきゃだから王宮内で過ごすんだって。ここのお店の倅さんとあの騎士の子も帰らないんでしょ? 華やかでやりがいのある憧れの職場だけど、現実を知るとなぁー。ま、私はお家継いで職人になるけどね!」
確かにみんなが憧れているのはその華やかな一面しか見ていないせいもあるわね。全貌を知れば夢も憧れも無くなる、なんてことはよくある話かも。ギュンターさんとラツィオなんかは王様を守るのが仕事だし。
もしかしたら、国家魔導賢者も相当きついお仕事が裏であったりするのかしら。賢者は魔導士の最高権威だから魔法にも学問にも秀でていなきゃいけない。魔法実技に関してはそんなに心配はしていないけど、学問をもっと頑張らないといけないかも。ちょっと気が重くなってきたわ……。
「料理も来たし、後は先生待ちだな!」
「無属性の先生って、僕らがお世話になることなんてないから、どんな先生か謎の人ですね。ちょっと緊張します」
そう言われてみると、確かに先生は基本的に私の授業しか担当しない。無属性の指導というのが仕事でお呼びしたわけだから、他の生徒に関わることがない。食堂や図書室なんかの学内の施設で見かけることはあっても話しかける猛者はいないみたい。無属性を無意識に恐れているのかしら? 私には突っかかってくる生徒はそこそこいるけど、オーラ的な問題?
「皆から見た先生ってどんな感じですか?」
「うーん……なんか……平民とも貴族とも違うよな。空気が」
「あ、それは僕も思います。簡単に近寄っちゃいけない感じです」
アンリ、マティアス兄弟はそう答えるけど、平民でも貴族でもない空気感ってどいういことかしら。それを聞いてキリコ先輩がミケーレ先輩に問う。
「ミケーレ先輩のパパさんとかと似てるんじゃないの? ほら、ミケーレ先輩のパパさんって確か裁判官でしたよね?」
「あー、そういう。僕はどちらかというと聖職者とか巫女とかそういう宗教的儀式に関わる人って印象を持ったよ。常に儀式をしている、みたいな」
ミケーレ先輩の読みはあながち間違ってはいないのよね。先生が無属性を学んだというモクシュカ・ジャドゥは神殿で勉強をするというから。宗教国家というわけではないけど、初代の統治者の理念を受け継いで無属性の保護や魔法の発展に日々取り組んでいるって話を先生から聞いたわ。だから、半ばその初代統治者を御本尊とした宗教国家みたいなところはありそうね。
行ってみたい気はするけど、でも、なんかしきたりやルールやマナーなんかが面倒くさそうな気もする。
「キリコ先輩は?」
「うーん、お姉ちゃんとは違うタイプの美人さん、かな。お姉ちゃんってクールビューティー系だけど、面倒見はいいし優しいし、楽しいことには笑顔でちゃんと楽しい! って言うタイプ。遠目からのベレジュナーヤ先生は、クールビューティー系だけど、淡々と仕事をこなす人、必要最小限の栄養とか言葉とか荷物とか、贅沢しないで心を静かに湖底に沈めて生きてる感じ」
「例えが独特ぅ……」
ともあれ、先生に関しては近寄りがたい美人というのが共通認識だということがわかった。クールな美人だけど、そんなに近寄れないほど厳しい人ではないし、話してみるといろいろとたくさんお話してくれるし、いろんな魔法を使って例を示してくれる教え上手な先生だし。慣れてしまえば緊張する先生ではないのだけど。みんなの見方が今日で変わるといいなぁ。
「こちらです」
「ありがとうございます」
女性の声が2つ。どうやらご到着のよう。みんなは静かに先生を待つ。なんだか急にすごい緊張感に包まれちゃったわ。私まで緊張してきちゃう。普段緊張なんてしないのに。
「……待たせたな! お前達の師が来たぞ!」
「キャーセンセーステキー!」
何事かと身を硬直させる先輩達、先生の登場に棒読みながら歓声を上げる私、そして、私にこう言ったら盛り上がるのが最近のトレンドです、と嘘を信じて実行した先生。
ごめんなさい先生、スベりました。
今回の小ネタがわかった方、握手しようぜ?
ということでね、楽しいパーティー始まりました。しばらくゆるっとパーティーの話です。いいっすね、パーティー。
今回も読んでいただきありがとうございました。次回は第4土曜日です。




