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魔導学生キュリアの日記  作者: 風雅雪夜
2年生
21/30

10/8

ちょっと頭の痛い話。

みんな戦々恐々のテスト前、そんなある日の話。

 なんだか常にアンリ、マティアス兄弟と一緒にいる感じになってきたわ。顔を合わせれば次の依頼どこ行く? とか、こんな薬草あるんだけど魔物退治しないと取れなくて、一緒にどう? みたいなそんな話ばかり。おかげで自分の実力がメキメキ上がってる。

 そうね、どれくらい上がったかというと、……例えるならだけど、ちょっと焚き火するくらいの小さな火種を魔法で起こそうとしたら、勢いよく炎が出ちゃったくらいの火力の魔法になった、と言えばいいのかしら。

 この前、ついうっかり、無意識にやっちゃったのよね。私はただ、焼き芋を作りたかっただけなのに……。最近、ちゃんと詠唱してないなって思って、詠唱をポロッと口ずさんじゃって。わざとじゃないのよ。ほんとよ。


 魔法は呪文を唱えると高威力になる。例えば、“風の盾”っていう風属性の防御魔法は“風の盾”と詠唱するだけでも発動する。けれど、呪文込みの詠唱だと、“止めよ、押し戻せ。風の盾”となる。この“止めよ、押し戻せ。”に意味がある。

 魔素と自分の魔力にこうしてほしい、と命令することで自分もその魔法のイメージがしやすくなる。このちょっと長めな詠唱をするのは、イメージによって魔法の形を強化しているということ。だから、呪文の詠唱をすると魔法の威力が上がる。まぁ、それ以外に威力を上げるには自分の魔力を多めに使うことも要因の一つだけど。


 うっかりしてたわ。私、最近は魔力があり過ぎて完全に詠唱しちゃうと自分の魔力を多めに使っちゃうようになってきて……。無言か、短い詠唱だけにしていたのに、やらかしちゃって。


 でも、ハルトやベルメール先輩が対処してくれたから大きな事件にはなってないし、キャンプファイヤーと勘違いした踊りの大好きな生徒が乱入してきたり、お芋パーティーが始まったりして、なんか面白いことになったのは良かったかな。良かったことにしておこう。うん。



「キューリーアー、最近アンリ達と距離が近ーい。もっと僕を頼ってよー」

「ちょっと、図書室では静かにしなさいよ」

「最近、キュリアが僕を構ってくれないので道連れです」

「ちょ、ちょっと!」



 ひょい、と私を抱き上げて本ごと貸し出しカウンターへ連行するハルト。皆見てるのよ? 恥ずかしいじゃないのよ! 暴れようにも本が大事だし、騒いでしまうとしばらく使用禁止にされそうだから大人しくするしかない。どうしろと!



「で、これを借りるのですぐに出ていきますね」

「先輩、これキンタイです」

「え?」

「禁帯出。貸し出し不可です」



 図書委員に止められるハルトはぽかんとした顔で私と本を交互に見るけど、ちょっとやめてよ。こっち見んな。禁帯出って言われたら禁帯出なのよ。

 ……さてはハルト、貴方、こういう本を読まない人ね?


 大人しく本を元の場所に戻して、私はハルトと図書室を出た。他の利用者からはコソコソと話し声が聞こえてきてちょっと恥ずかしかったわ。えっと、確か……我々は何を見せられているんだ、これは公式か、とか。後者はわからないけど、前者の意見にはほんとよね、としか言えない。私も何をされていたのかわからないもの。

 あ、これ、裁判案件かしら。レネ裁判長が懐かしい。ほろり。



「で、何を調べてたの?」

「……この前やらかした詠唱と無詠唱、それから魔力の関係についてよ。私だって反省してるんだから」

「勉強家だよね。常に読みたいなら取り寄せる?」

「いいわよ。学校の禁帯出の本だし、いつでも読めるから」



 結局、調べものは邪魔されてしまったけど、本はいつでも図書室にあるから、また後日調べることにしましょう。今日はもうハルトがくっついて離れてくれそうにないし。最近、ハルトとゆっくり話していなかったし、たまには話してやらないと今みたいになるのね。学んだわ。今日はハルトデーね。


 放課後もアンリ先輩達と次の依頼の相談をしようかしら、と考えていたけど。

 あ、あれは先輩達。私達を見て何かを察したらしい弟のマティアス先輩がそそくさと兄・アンリ先輩を連れて逃げていく。お心遣い痛みいるわ。2個上の先輩ってあんなに気が回るものかしら。見習わないと。



「ねー、キュリアー。まーたよそ見してる〜。僕に構ってよ〜」

「ちょっとちょっと、私は貴方の母親じゃないのよ、ハルト」

「母親でも友達でも彼女でも、普通もっと構うよ」

「友達ではあるけど母親と彼女ではないわね。……ハルト、貴方貴族よ。身分的に相応しい相手ってものがいるでしょ。私、知ってるわよ。貴族って恋愛事にうるさいって。泥沼化してお家同士で戦争、最悪そして誰もいなくなった、みたいなことになるって」

「ヒェッ」



 身震いするハルト。何故かずっと猫のようにぷらーん、と抱きかかえられて運ばれてるから身震いが伝わる。

 ……この子、ほんとに貴族よね? パーソナルスペースバグってるんじゃなくて? ソーシャルディスタンスはどこへ?

 注目を集めているから、せめてくっつくのをやめてほしいんだけど。そこのベンチに腰掛けてる眼鏡の女子生徒なんて私達を見つけた途端凄い形相で何か書き(描き)始めてらっしゃるんだけど。何アレ、こわっ。

 しかもその子だけじゃなくて周りに何人か同じような子がいる。どうしたのよ。



「ところでハルト。来週から中間試験だけど、勉強の方はどうなの?」

「大丈夫だよ。それに今回は家に呼び戻されることはないからちゃんと試験が受けられるし、ちゃんと評価がつくから、その分安心して勉強できてる」



 実はハルト、お家の都合でよく家に呼び戻されていて試験を受けられてないものや、出席日数が足りず単位が取れていないものが多々あり、規定の7年で卒業できなかった留年生でもある。貴族でもそういう忙しい家や辺境の家、或いは子供ながらに当主を務めなければならない貴族なんかは勉学を疎かにするよりも家庭の事情で卒業できなかった者の方が多い。実はレネさんよりも入学が早かったなんて知ったときは何を言ってるのかわからなかったわ。

 今回は、ようやく7年生になれたから卒業まであと少し。最後の大事な時期なので家の方も呼び戻すことはしないように話をつけたそうで。だから勉強が無駄になることはなく、また邪魔されることなく試験に臨めそうなので、一番張り切って勉強しているそう。



「やっぱり貴族って大変ね」

「そうなんだよね。あぁ、でも、学年末は忙しいかもしれないんだ。今度は縁談込のパーティーに出席しないと。これも貴族の行事だから」

「貴族なら仕方ないわね。頑張りなさいよ」



 庭のベンチに移動しながら私はハルトと取り留めのない会話を続ける。私はハルトの膝の上に座らせられ、更にハルトの腕で固定までされている。それを利用しようと私は肩掛けの鞄から教科書とノートを取り出す。



「では先輩、可愛いであろう後輩にお勉強を教えてくださいな?」



 今日1のいい笑顔で彼は答えると私にわかりやすく勉強を教えてくれた。こういうやり取りもなんだか懐かしい。一年前なんかはよくこんな感じで一緒に勉強していたなぁ、なんて思い出して。

まとめ。キュリアちゃん、魔法の詠唱でやらかし、対策を考える。


春になりましたが、皆様いかがお過ごしですか?

私は4月に入ってから曜日感覚がなくなるくらい働いておりました。それでも、一日だけ夜桜なんかを楽しむことができました。

新年度、春、スタートです。

なお、小説内では秋のテスト前ですが……。


今回も読んでいただきありがとうございました。

次話は第4土曜日0:00〜公開予定となっております。(公開が遅れたら、時間変更の告知をします。すみません。)

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