第2話 「空き教室」
休み時間が終わるギリギリになってトイレから出て、げんなりした顔で教室に戻ると、隣の席の女子と目があった。
気まずかったから目を逸らそうとすると、「た、竜輝くん」
と声をかけられた。
「体調悪そうだったけど大丈夫?保健室いく?私、保健委員だからついてってあげよっか?」
と言われ、俺は次の授業が嫌いな数学だったことを思い出し、
「じゃあ悪いけどよろしく頼むわ」
と言って保健室までおくってもらうことになった。
俺がこの隣の女子、倉木葉月と喋れるのには訳がある。
それは、同じ小学校出身ということと、俺が所属しているバスケ部のマネージャーが倉木だからだ。
保健室まで向かう途中に倉木に
「いつもありがとう」
と声をかけると、顔を背けて、
「べ、別にこれくらいマネージャーだから当然だよ。むしろもっと頼ってくれていいんだよ。たとえば、弁当とか…栄養管理もマネージャーの仕事だもんね…」
と言われたが、早口だったし、声も小さくてあまり聞きとれなかったが、もう一度聞き直すのも気が引けたので、とりあえず
「うん。ありがとう」
と言ったら顔を赤くして
「嫌いなものとかある?」
と言われたが、意図が分からなかったため
「ないよ」と答えた。
そのまま保健室に向かって部活の話とかをしながら歩いていくと、数学の教師が見えた。
なんか悪いことをしてる気分になり、見つかったらまずいと思い、近くの空き教室に倉木の手を掴んで引っ張って逃げ込んだ。
倉木は何やら顔を赤くし、悶絶しているが、俺は数学の教師に見つかるのではないかと緊張し、倉木の様子に全く気が付かなかった。
先生が何事もなく過ぎ去ったあと、倉木に声をかけると、顔を赤くして、
「そんな、ま、まだ、心の準備が」
とか訳わかんないことを言ってるので、とりあえず、
「保健室行くぞ」
と言って、教室を出た。