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この異世界は物足りない  作者: VRクロエ
魔王城の住民編
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城でパーティ3

 次に向かったのはセシルとルーシェの元だ。

 2人共俺の個人的な招待で来てくれたのだが、アノンとは違い立場もそれほど高くないので、居心地が悪くなってしまうことを懸念していたのだが、先程遠目に見た感じではパーティを楽しんでくれているようなので安心した。


「セシル! ルーシェ!」


 名前を呼ぶと、こちらに気が付いたセシルとルーシェは胸に手を当てて小さく礼をした。

 アノンの時もそうだったが、やはり一般的な考えとして友人とはいえど一国の王である俺にこうした公の場で気軽に接していいとは思わないらしい。

 そう考えると、そろそろ第一声でこういう対応をされることを割り切らなければいけないと思い始めた。

 ただまあ、話をする時はもちろんいつも通りにしてもらうけどな。


「久しぶりだな。いつも通りにしてくれていいぞ」

「それではお言葉に甘えさせていただきまして……久しぶりだなヨゾラ」

「久しぶりヨゾラ君!」


 前回会った時も似たようなやり取りがあったので、すぐに態度をいつも通りに戻してくれる。


「しっかし、こんだけの貴族がいる中でヨゾラと普通に話してたら帰ってから貴族の奴らに色々言われそうだな」

「まあそれは仕方無いよね。私としてもヨゾラ君相手によそよそしい話し方はしたくないし」

「別に大丈夫だろ。何なら俺との交流があることを見せつけて立場的に強くなっちゃえよ」


 まあ最悪セシルとルーシェの立場が悪くなったら遠慮なくノーヴィストに引き抜かせてもらうけどな。

 そうなった場合、周囲の声を黙らせられないフロディスが悪い訳だし、優秀な人材を手放したくは無いと思うが、友人が困っているなら俺は迷わない。


 とりあえず周囲の目は無視することにして、俺達はセラフィを探すことにした。

 何だかんだでセラフィもセシルとルーシェとは話したがっていたので、どうせなら学校時代の4人で話すことにしたのだ。


 セラフィは貴族の男達に囲まれていたが、使用人たちが良い感じに追い払ってはくれていたのでどうにかなっているという状況だった。

 もし、もう少し遅かったら、何かトラブルになっていたかもしれない。探しに来てよかった。


「おーいセラフィー」


 声を掛けると、周りにいた貴族の男達はつまらなさそうに捌けていった。残念ながらこれっぽっちもセラフィに相手にされていなかったので、これ以上いても意味無かっただろう。


「遅いぞヨゾラ! ん? セシルとルーシェか、久しぶりじゃな」

「ああ、久しぶり。……セラフィの周辺は相変わらずだな」

「久しぶりセラフィ! まあセラフィ程の美少女を見たら声も掛けたくなるよね~」


 セシルとルーシェも学生時代からの付き合いなので、セラフィが男に囲まれているのを見るのはもう慣れたものらしい。

 いつだかセシルとルーシェに聞いた話では、セラフィが学校を辞めるとなった時に男の生徒達は、それはもう心底絶望したような表情をしていたみたいだ。


 そういえば入学初日にセラフィに声を掛けて俺に喧嘩を売ってきた貴族の男は来ていないのだろうか?

 名前は確か……ロウだっただろうか? 合宿でも色々やらかしていたし、何かしら家から罰がありそうなものだが、一切話を聞かないので大人しくなったのだろうか? まあ別に友人だったという訳では無いし、それどころか仲が悪かったのであまり思い出さなくてもいいだろう。


「とりあえず4人で落ち着ける場所で話そうぜ。あ、その前に……セラフィを守ってくれてありがとな」


 移動する前に丁度俺達が来る直前にセラフィを守っていた使用人に声を掛ける。

 狐の耳が生えたメイドだったのだが、俺がお礼を言うと「と、とんでもございません!」と言いながら頬を赤くして仕事に戻って行った。


「……どうやら使用人達にも好かれる王みたいだな……」

「……まあ、セラフィに目が行きがちだけど、ヨゾラ君も大概顔がいいからね」


 セシルとルーシェが呆れたように言っていたが、まあ聞こえなかったことにして移動することにした。

 落ち着ける場所と言ったが、別に会場から出る訳じゃない。会場内にも人が集まっていない場所があるのだ。


「ちょっ、ヨゾラ!?」

「確かに人は集まってないけど、まさかこことはね……」


 人が集まっておらず、更には余程のことが無い限り誰も近づいてこないであろう場所――それ即ち玉座の周りだ。

 流石にセシルもルーシェも顔を引き攣らせているが、正直何の問題があるんだと思う。

 王である俺とセラフィが一緒にいるのだし、玉座といっても別に俺とセラフィが座る椅子ってだけだ。何をそこまで神聖視しているのだ、と俺からしたら思ってしまう。

 まあその辺も感覚のズレなので、特に何も言わないが、今回はここでゆっくり話をするのは変わりない。


「なんなら座るか?」

「流石にマズいだろ……」


 冗談で言ったのだが、セシルは顔をさらに引き攣らせて断った。


「それで、最近はどうなんだ? 最後に会った時は帝国騎士だったか? そういえば俺は帝国騎士って実際どのくらいの地位なのか知らないんだよな」

「はぁ……まさか帝都に住んでたことがあって帝国騎士を知らないとは思わなかったよ。まず普通の騎士っていうのは軍の指揮官がいて、その指揮官の命令で動く組織だな。俺の親父がトップの組織だ。それに対して帝国騎士は、基本的には軍とは別の指揮系統があって、その指揮を出すのが皇帝陛下なんだ。まあつまりは皇帝直属の組織だな」

「まあ基本的には軍が対処しきれないことに対して少数で手を貸して解決するって感じだけどね。私達も帝国騎士になってから魔獣討伐くらいしかしてないし。余程のことが無い限りは強い騎士って認識しか持たれないと思うよ」


 ふむ、聞いている感じ帝国のエリートたちが集まっている組織という訳か。かっこいい感じはするのだが、セシルとルーシェの話を聞いていると中々に世知辛い。まあ平和なのはいいことだが……


「んで、帝国騎士には序列ってのがあってな。俺が17位でルーシェが18位だな」

「それって高いのか?」

「現在の帝国騎士は50人くらいはいるから序列上位だね。目標は10位以内だけど、まだ先のことになりそうだよ」

「1位と2位を目指さないのか?」

「流石にそこまで自惚れてないよ。って言っても10位からは殆ど実力差なんかないから実質序列なんて無いようなものだけどね」


 まあ才能に恵まれている奴でも、さらに他とは違う要素を手に入れないと成長に限界が来てしまうのだろう。

 俺やアノン、それに英傑達がいい例だ。俺はクレーティオから貰った限りなくスペックの高い身体にセラフィという理級精霊、それと称号にも何かありそうだが、その辺りはまだ不明だ。

 アノンは言わずもがな勇者という称号にステータスの補正と専用技という恩恵があり、その下位称号とも言える英傑にもステータスの補正がある。

 そういった要因を持っていない者達のトップが言わば帝国騎士の序列10位以上ということなのだろう。


 友人として願うのならば、セシルとルーシェにもそういった要因を手に入れてほしいものだ。

 2人共、才能に驕らず努力をし、身に着けた力はいざとなれば誰かのために振るえるくらいに優しい。俺のように自分の都合だけで人を助ける訳では無い。望むだけの力を手に入れてほしいと心から思う。


「もしすぐ帰る訳じゃないなら果ての秘境でレベル上げでもしていくか? 俺とセラフィも同行するし、最近俺とセラフィ専属のメイドになったサクラも連れて行けば、最奥に行かない限りは何とかなると思うぞ」

「いいのか? 俺とルーシェにとってはありがたい話だが……」

「迷惑じゃない?」

「何を遠慮しとるんじゃおぬしらは……儂もヨゾラも暇を持て余しておるし、おぬしらが思っているよりも強くなっておる。任せておけ」


 最奥に行けば強い魔獣が数で現れるので俺やセラフィでも危ない場面が出てくるかもしれないが、今更中腹でヘマをしたりはしない。

 伊達に魔王をやってはいないのだ。いつまでも自分が収める場所の近くで手をこまねいてはいられない。そのうち本格的に最奥も攻略するつもりだ。

 暇を持て余しているが、サクラのレベル上げや俺自身もまだまだ強くなっておきたいので、度々秘境で魔獣を狩っている。

 俺に関して言えば、必要性があってのレベル上げでは無くて、もはやレベル上げが日課というか、癖になってきてしまっている。

 RPGで無心でひたすらレベル上げをしているようなものだ。


「そういう訳でセシルとルーシェも城に泊まってけよ。特に気なんか使わないでさ」

「まあ俺とルーシェは城にある帝国騎士専用に作られた建物に泊まってるから、城だからって気負うことはないが……使用人はあまりいないようだし、大丈夫なのか?」

「あんまり仕事を大変にさせるのは忍びないよね……」

「だ、そうだぞビャク」

「ご安心を、見習のメイド達も順調に育ってきております。無理な労働を強いることはないでしょう」

「だってさ。気にすんな」


 正直、現在城で働く使用人がどの程度の規模なのかは把握していない。面識があるのはそれこそ各使用人達のトップ層だけで、他に関しては申し訳ないが名前などは分からないのだ。

 頑張ってもらっているので、落ち着いたら一度使用人全員に褒美でも与えようと思う。


「ちなみに俺とルーシェ以外は誰が泊まるんだ?」

「さっきヨゾラがアノンとアマリリスに声を掛けていたのは見かけたが、どうなんじゃヨゾラ?」

「ああ、アノンとリリスも泊まっていくことになってる」

「皇女様と勇者様だよ! そんなビッグネームと一緒にされると何だか悲しくなってくる……」

「俺の中じゃ全員友人だから肩書で優劣を付ける意味なんてないぞ」

「ま、ヨゾラ君ならそう言うよね。分かった、それじゃあお世話になります!」


 こうして俺の城に新たな来客が増えた。

 最近は賑やかになってきたとはいえ、やはりまだ寂しさはあったので、数日ではあるが城に友人が来るのは喜ばしいことだ。


「あ、そうだヨゾラ。さっき教皇がお前と話したがってたぞ」

「そういえばそうだったね。なんか聖女様を紹介したいみたい。私達はまた明日にでも話せるから行って来たら?」

「そうか。じゃあそうするよ。セラフィも来てくれ」

「ん? 儂もか?」

「ウルジェもお前と話したいだろうしな。理級精霊として、しっかりと信徒の話も聞いてやらないと」


 セラフィとしては、あまり崇められている自覚が無いので釈然として無さそうだが、それでも俺についてくることにしたようだ。


 しかし聖女というのも気になっていたので楽しみだ。称号か何かなのだろうか?


 まあそれは実際に会ってみれば分かることなので、とりあえずウルジェを探すことにした。




自由な女神「帝国騎士ってかなり強そうなイメージがあるけど、今のヨゾラ君基準だと仮に敵対したとしてもそこまでの脅威にはならなそうだよね。まあ今後何があるか分からないから、備えとしての戦力って意味じゃ丁度いいのかな?」

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― 新着の感想 ―
[一言] ロウの音沙汰がないのが不気味ですね… 親も屑野郎だったし、もしかして英傑を集めて謀反か何か企ててるのかな? 魔王ロウの誕生、ありそうだなあ…
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