城でパーティ1
あけましておめでとうございます! 新年1発目の更新です!
心地の良い風が流れていて、過ごしやすい日にパーティを迎えることが出来た。
始まる時間が近づくにつれて、城の中の獣人達はソワソワとし始めている。今宵は俺の城で働く獣人達のレベルも試されるともあっては、緊張もするだろう。俺目線では問題無いので自信を持って仕事をしてほしい。
俺の友人達は既に到着しているが、まだ会っていない。どの道パーティで会うのだし、ゆっくり話すのもパーティが終わってからでも十分に間に合う。なにもすぐに帰ってしまう訳では無い。
俺とセラフィはパーティに向けて着付けをしてもらっている。
動きにくい服装ではないが、正直着方が複雑過ぎて自分では着られそうにない。セラフィも同様なので、俺はビャクに、セラフィはサクラに頼んで着させてもらっているという訳だ。
俺の服装は黒を基調とした軍服のようにも見える形で、華美過ぎない程度に装飾品を纏っている。
やはりどこの世界でも魔王のイメージは黒なんだなーと最初に見た時は思ったものだ。
前の世界では開いていたピアスの穴が塞がっていたので再度開けることとなったのだが、前よりも痛くなかった気がする。ステータスが関係しているのだろうか? まあこれは別にどうでもいいことだ。
そろそろセラフィの着替えが終わる頃だろうか? 流石にセラフィ相手とはいえども見に行くことは出来ない。
「どうだビャク?」
「そうですね……はい、そろそろ大丈夫そうです」
「んじゃま、行くか」
隣の部屋で着替えているセラフィだったが、着替えも終わったようなので迎えに行く。
ちなみに、セラフィのドレスに関しては、着づらいということを知っているだけで、どういうドレスなのかは俺も知らない。その辺も楽しみにしておいたという訳だ。
セラフィが着替えている部屋の扉をノックする。するとセラフィではなく、サクラが扉を開いた。
サクラも今回のパーティ用に作られたドレスを着ている。
いつも着ているピンク色の和服をそのままドレスにしたような感じで、所々にピンクと赤と黒のサクラ柄が彫られており、ドレスらしく煌びやかに見える。
サクラについては、この世界には存在しないので、俺が事前に絵をドレスを作ってくれる職人に渡しておいたのだ。
「良く似合ってるよサクラ。綺麗じゃないか」
「あ、ありがとうございますヨゾラ様……その……ヨゾラ様もとても素敵です」
「ありがとう」
褒めてやると、サクラは頬を染めて照れていた。メイドとして参加させずにドレスを用意してもらってよかったとしみじみ思う。
「それで、セラフィは何処だ?」
「はい、こちらです。お仕えする身としてこういう言い方はどうかとも思うのですが、とても綺麗で、とても可愛らしく仕上がっております!」
「そりゃ楽しみだ」
サクラは珍しく興奮したように言う。本当に期待出来そうだ。
部屋の中はドレスルームのようになっており、着替えを終えたセラフィはカーテンの向こう側にいるようだった。
「セラフィ? 開けるぞ」
「ヨゾラか。構わぬぞ」
声を掛けてからカーテンを開ける。その先にいたのは、漆黒のドレスに身を包んだセラフィだった。
俺が物語に出てくる男の魔王のような姿をしているのなら、セラフィは女の魔王といった感じだ。
漆黒のドレスは銀色の髪と良く似合っており、夜空に1つの星があるようで、吸い込まれるようなドレスを着ていながら主役はあくまでも自分だとしっかりと主張出来ている。
メッシュのようになっている黒い部分も、装飾品など要らないくらいに仕事をしている。
まあ、長々と言ったが、ようは完璧に似合っていた。
今まで何度あったことか、顔が赤くなるのを感じる。セラフィから目を離せず、心臓の高鳴りを沈められなかった。
「ん? どうしたヨゾラ?」
「……あ、ああ、何でもない。まじで良く似合ってる。勝ちだな!」
「何に勝ったんじゃ……ヨゾラも良く似合っておる。いつも適当に選ばずにしっかりと選べばいいものを……まあ相方として連れておけるのは光栄じゃがな。今宵もしっかりとエスコートしてくれるんじゃろ?」
「ああ、任せとけ。セラフィの隣にいる男として恥ずかしくないように堂々としとくさ」
サクラもそうだが、セラフィ程の女を連れ歩くのだから、それ相応に堂々としていなければいけない。今回は特にパーティで、しかも国の王の主催者だ。誰よりも堂々として、絶世の美少女であるセラフィの相方として相応の振る舞いをしなくてはいけないのだ。
まあ普段から自分勝手に生きているので堂々とはしているのだが、それとこれとは話が別なのだ。
気合を入れて臨むことにしよう。
「ヨゾラ様、セラフィ様、そろそろ会場へ参りましょう。そろそろ参加者も集まっている頃でしょう」
「分かった。それじゃあ行こうか。セラフィ、それにサクラも」
「ではよろしく頼もうかの」
「お供いたします」
セラフィは俺の腕に手を添えて隣を歩き、サクラは右斜め後ろに付いて歩く。ビャクは俺達の少し前だ。
ビャクにより会場の扉が開かれ、中にいた者達が一斉にこちらを向いた。
魔王という存在を再確認して若干の委縮を見せる者。セラフィの美しさに見惚れる者、サクラの美しさに見惚れる者――反応は様々だ。
ちなみに会場は玉座の間だ。最初は他の場所にするという意見もあったのだが、この場所はかなりしっかりと作られていて、一度は見せておきたいという気持ちがあったので、この場所にしたのだ。
視線を浴びながら言葉は発さずに玉座に向かってゆっくりと歩いて行く。途中アノンやセシルにルーシェの姿も確認することが出来た。後で声を掛けに行くことにしよう。
玉座に辿り着き、俺とセラフィはそれぞれの玉座の前に立つ。サクラはセラフィ側の玉座の横で控えるように立っていた。
ビャクはというと――
「ヨゾラ様、セラフィ様、こちらを」
グラスに入ったワインを持ってきたビャクは俺とセラフィに手渡し、目立たぬようにサクラにも手渡した後で俺側の玉座の横に立った。
さあ、ノーヴィストで行われる初めてのパーティの開始だ。
「今日は招待に応じてくれて感謝する。和平を結んでしばらく……ようやく落ち着き始めているこの時にノーヴィストで祝いの場を開けたことを嬉しく思う」
今回のパーティは名目上、和平を祝う場ということになっている。
今更ということはないだろう。なにせどの国もノーヴィストとの交易等で忙しく、和平はめでたいことではあったのだが、大きな場としての開催は難しかったのだ。
当然のように俺にそういった招待が来たことは無い。今回のパーティを提案したフロディスは、各国が落ち着いてきた頃を見計らって話を持ってきたのだろう。
「国としての歴史は浅く、使用人等もまだ最近になって用意したばかりだが、その練度はかなりのものだと自負している」
その言葉に、会場で接待しているメイドや料理人達は、表情にこそ大きく出さないものの、嬉しそうにしているのは分かる。
本当に俺が何もしないせいで迷惑を掛けているので、しっかりやっている彼らを他国の貴族にも認めてほしいのだ。
「これを機に、もっとノーヴィストを知り、そして楽しんでいってほしい。挨拶は以上だ。それでは……乾杯!」
「乾杯じゃ!」
乾杯という声が会場に響き渡りパーティの開始を知らせた。俺もセラフィ、サクラ、ビャクと乾杯してワインを一気に流し込む。
会場の煌びやかな雰囲気も合わさって、普段飲むよりも特別な味をしているように感じた。
会場を見渡していると、それぞれが楽しんでいるのが分かる。
元々国家間の中は悪くなく、交流のある他国の貴族同士での会話がある中、給仕に来た使用人を捕まえて会話に花を咲かせているのも見えて一安心だ。
まあ獣人の国という共通の敵がいなかったらどうなっているかは分からなかっただろうが、結果的に4つの国でこうして手を取り合えているのだから、現状のことを考えると何も言うことはあるまい。
「ヨゾラも混ざって楽しんできてはどうだ?」
「いや、俺はもうしばらくここで楽しんでるよ。あんたこそ、話さなきゃいけない相手が沢山いるんじゃないか? なあフロディス」
会場の様子を眺めつつワインを楽しんでいると、フロディスがやってきて話しかけてきた。
「その話さなきゃいけない相手の1人がこうして誰とも話をしていなかったのでな。厳密には2人か。お前達はもう少し国のトップそしての自覚を持ったらどうなんだ?」
「政治にたいして関与してない俺と話したい奴なんかいるのか? まあセラフィにはいるだろうけどな。俺の代わりにビャクとサクラが大人気じゃないか。俺はいざという時に力を振るえばいいんだと最近は思ってるよ」
開始は俺の元に居たビャクとサクラも、今は沢山の貴族なんかに囲まれて会話をしている。
ビャクの方は政治的な会話が主だが、サクラの方は男の比率が多く、サクラの可愛さに惹かれて話し掛けに行った奴が多そうで少し心配していたのだが、リリスがサクラに話しかけに行ったのが見えたので大丈夫だろう。仮にも皇女もいる場で滅多なことは起こるまい。
特に政治に関与していない俺とセラフィは、こういう場でわざわざ政治の話をしてもあまり意味が無いだけだ。俺が国の為に動けることがあるとすれば、フロディスに言った通り強い敵が現れた際なんかに持てる力を振るって国を守ることだ。
「いやはや、そういう意味では勇者と同等……いや、セラフィ殿も含めれば勇者以上の強さを持つノーヴィストは、力という一点で言えばどの国よりも高い物を持っていると言わざるをえないな。我がレジケルには最終兵器となり得る人材がいないので羨ましい限りだ」
「何を言ってるんだレグナルト……俺はセラフィと出会うまではお前以上に魔法に長けてる奴は知らなかったがなぁ」
追加でやってきたレグナルトの言葉にフロディスが呆れるように言う。
意外にもレグナルトは魔法という方面に関しては相当強いようだ。流石魔法の国レジケルの国王と言うべきか、剣術が盛んなグラヴィウス帝国の皇帝であるフロディスは相当な剣の腕を持っているようだし、その辺の事情も中々に面白い。
スプリトゥス聖国の教皇であるウルジェも精霊の中では理級に次いで高い位の崇級精霊と契約しているので、実力はあるのだろう。
まあそのフロディス達よりも更に強い、世界最高峰の実力を持っているアノンは帝国におり、そのアノンと同等の実力を持つ俺とセラフィがいるノーヴィストは、確かに強さという点では抜けていそうだ。
平和な今の時代ではだからなんだという程度ではあるがな。
「ほれ、いい加減ヨゾラも参加して来い。セラフィもだ。お前達が個人的に呼んだ者達もいるのだろう? そいつらと話でもしてこい」
どうしても俺とセラフィに積極的に参加させたいみたいで、フロディスはしつこく促してくる。
まあ元々話し掛けにはいく予定だったので、そろそろ行くとするか。
さて、まずは誰に話し掛けようか。
自由な女神「国家間の力関係を見ると勇者と魔王ってのはかなりパワーバランスを崩す要因なんだね。まあヨゾラ君もアノンちゃんも優しい子だから変なことに力を使わないから安心だね」




