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この異世界は物足りない  作者: VRクロエ
魔王城の住民編
89/137

英傑達

 食事の場所はかなり広い場所だった。

 というのも、ただの食事と言うよりは会食のような感じで、他の貴族なんかも多い。

 俺としては知り合いだけのものが良かったのだが、俺やセラフィに挨拶をしたい貴族がいることや、リリスとテスタリスが珍しく揃っているという理由でこうなったとフロディスに聞かされる。

 ビャクがいれば適当に対応してくれるのだが、今回は連れて来てはいないので中々に面倒臭い。

 サクラに対応してもらってもいいのだが、サクラはメイドという立場で、しかも大変に美人だ。あまり高い立場では無いからと邪な考えで近づいてくる貴族もいるかもしれない。

 そんなのを目にしてしまった日にはもう大変だ。俺もセラフィも手が出るかもしれない。


「お任せくださいヨゾラ様!」


 とサクラは言っているが、ここは下がってもらう。

 サクラが頼りにならない訳では無い。無駄な血が流れるのを避けるためだ。


「これはこれはヨゾラ様――」

「ノーヴィストの政を任されている者とうちの息子で婚約でも――」


 本当に面倒臭い。ただの挨拶だけならまだしも、どうにかしてでも俺との繋がりを太くしようとしてくる奴も結構いるのだが、どうしても返事に困る。

 婚約したいのならば、俺の国に来て勝手に口説けばいいものを、と思う俺はやはり王としての自覚が足りないのだろうか?


 セラフィはどうしているのかと探して様子を見に行くと、食事を片手に貴族の男達に囲まれており、飯が食べにくいようで、不機嫌そうな顔をしている。

 何を話しているのか気になり耳を傾けてみる。


「セラフィ殿、今度私とお出かけいたしませんか? よい宝石を扱っている店を知ってるのです」

「いえいえ、僕と花でも見に行きましょう。綺麗な場所を見つけたのです」

「どうです強い男というのは? これでも剣の腕には自信があるのです」


 聞こえてくるどれもこれもがセラフィを口説こうとするものだった。

 うん、さっきは国にきて口説けばいいとか思ったが、俺の知り合いは許さん。俺がいる場でセラフィを口説くとは良い度胸だ。


「なにしてんだセラフィ」

「む? ヨゾラか」


 セラフィは目に見えて助かったというような顔をしている。

 逆に貴族の男達は、若干顔を顰めた。邪魔だとは思いつつも、俺が王なのであまり顔には出さないようにしているみたいだ。


「ほら、行くぞ」

「ちょ、ちょっとお待ちをヨゾラ殿。我々はセラフィ殿と交流を深めております」

「この場では許されていることのはずです」

「それにヨゾラ殿もそういった対応をしないといけないのでは?」


 こいつら暗にセラフィを連れて行くなと言ってるな。

 セラフィが興味の欠片すら無いことにさっさと気が付けばいいものの……段々ムカついてきたな。いや、元からそこそこムカついてるんだけどな。


「お前らはこんな場で、しかも寄ってたかってじゃないとまともに口説くことも出来ねえのか? そもそも俺は王だぞ、わざわざ口答えしてくんな鬱陶しい」

「んなっ!?」

「王とはいえ、その物言いは横暴では?」

「王だからと何でも許されるわけではありませんぞ!」

「うっせえ! 言ってやれセラフィ!」

「はっきり言って食事の邪魔じゃ。それに儂の気を引きたくばヨゾラくらいの男になって出直してくるんじゃな」


 セラフィにはっきりと拒絶された貴族の男達は何も言えなくなってしまい、その間に俺達はさっさと場所を移動した。


 それにしても()()()()()()か……それって俺ならセラフィの気を引けるって意味だよな。

 何だか込み上げてくるものがある。分かってはいるが、セラフィも俺のことは特別な存在だと思っていることが分かって嬉しい。

 もし、いつかセラフィとそういう関係になることもあるのだろうか……それはそれで楽しい未来になりそうだ。

 俺自身セラフィのことをどう思っているのか、まだはっきりとした答えは出ていない。そろそろ真剣に考えてもいいかもしれないな。


「ん? どうしたヨゾラ?」


 セラフィのことを見ていると、そのことに気が付いたようで、セラフィが顔を上げる。


「いや、ドレス似合ってるなと思ってな」

「……そうか」


 褒めてやるとセラフィは嬉しそうに笑った。






 ――――――――――






 貴族の男達から逃げてきた俺達は、サクラとリリスが話しているのを見つけたのでそちらに行くことにした。


「楽しんでるかサクラ?」

「ヨゾラ様! それにセラフィ様も! はい、楽しませていただいております!」

「そりゃよかった。んで、リリスとは何を話してたんだ?」

「昨日のサクラとの手合わせのことよ。まあ一段落ついたから今はただの雑談だったけどね」

「丁度よかったって訳か」

「そうね、丁度よかった」


 リリスは俺ともゆっくり話がしたいと言っていたので、サクラとの話が一段落ついたタイミングで俺がここに来たのは丁度よかったはずだ。

 正直俺としても、もう貴族相手の対応は疲れたので、話し相手が出来るのはいいことだ。その相手がリリスなら貴族達も割って入ってきたりはしないだろう。


 それに俺も聞きたいことがあるしな。


「じゃあまず、今日の戦いでは本気を出していたのかしら?」

「いや、正直本気では無かったな」

「そう。じゃあアノン相手なら本気を出す?」

「今のアノンの実力を知らないからなんとも言えないが、まあ本気を出さざるをえないだろうな」

「わたくしの見立てでは、ヨゾラは今のアノンよりも確実に強いわ。アノンが勇者としての力を全て使ったとしてもね。しかもヨゾラはわたくしとの戦いで魔王としての力を一切見せていないのにも関わらずよ。一体、どこまで強いのかしら……」

「あー、その魔王としての力ってのは?」

「そのままよ。アノンが勇者として固有の力を有しているのだから、その対の存在である魔王にもあるんでしょ? 魔王としての力が」


 何だか話が嚙み合わない。リリスは俺に何かしら特別な力があると思っているようだが、俺にそんなものはない。

 いや、クレーティオからもらった『ヨゾラの作者』という称号は特別な力だが、そもそも俺はこの称号に関して殆ど何も知らないし、それこそ戦闘に使えるような効果があるのかすら不明だ。


 多分だが、リリスは俺が魔王という称号を持っていると思っているのだろう。フロディスの伝え忘れか、アノンとの話で誰にも話さないことにしているのかは分からない。

 立場的には俺は魔王だが、実質的には魔王では無いのだ。勇者であるアノンが持っているような固有の力などあるはずもない。


 言ってもいいものか……いいや、言っちゃえ。


「実はなリリス、確かに俺は獣人の国ノーヴィストの王だが、魔王じゃないんだ?」

「はい? ちょっと意味が分からないのだけど……獣人達が崇拝していたのはヨゾラじゃないってこと?」

「いや、それは間違いなんだが……でも俺は魔王じゃなんだ。アノンのように称号で現れている訳でもないし、固有の力を持っている訳じゃない。ただ、獣人の国の王という意味だけの魔王だ」

「初耳なんだけど……」


 リリスは困惑しているが、本当のことなので受け止めてもらうしかない。


「じゃ、じゃあヨゾラは魔王でも英傑でもないのにあれ程強いって言うの!?」

「なんか俺、スペックが滅茶苦茶高いらしいぞ。それこそ人間って種族の中で最高らしい」

「はぁ……わたくし自身かなりのスペックがあるから、それこそ特別な称号を持たない人間の中じゃ一番だと思ってたんだけど……上には上がいるものね」


 何せ神様に作られた肉体だからな。普通に生まれてくる人間では敵わないだろう。

 だがリリスもそうだが、セシルやルーシェといった面々は、今後努力したら俺に痛い目を合わせる可能性を秘めていると思っている。

 才能というものは努力で覆ることもある。俺も自身のスペックに甘えてはいられない。

 セラフィやサクラといった、何としてでも守りたい者が出来た。ならば、誰よりも強くあれるように努力を怠るわけにはいかない。

 この楽しい世界は、楽しいだけではなく簡単に血も流れるのだから。


「まあ悲観することはないんじゃないか? 俺はいつでも上で待ってるぞ」

「悲観? するわけ無いじゃない。いつかヨゾラに勝ってみせるってやる気に満ち溢れてるわよ」

「そっか、ならいつでも相手になるさ」

「定期的に会いに来なさいよ!」

「ん? ああ、分かった」


 リリスは随分と嬉しそうだ。そんなに俺と戦えるのが嬉しいのだろうか?

 会いに来なさいという言葉を聞いた時、サクラは耳をピンと立たせて、セラフィは「ふむ……」と何か考えるような納得するような声を出す。

 何か気になることでもあったのだろうか? まあそうなら2人がリリスに聞くだろう。


「そうだリリス。俺も聞きたいことがあったんだ」

「あら? なにかしら」

「ロニとフーシー以外の英傑達だ。今は何をしているんだ?」

「それならうちの国と王国の貴族達が取り込んだわよ。まあ一部の貴族だけどね。ただ、気になることもあるのよね……」

「気になること?」

「ええ、あまりいい噂を聞かない貴族だったり、まあそんな感じのことよ。それに、今の時代に英傑を取り込む意味もよく分からないのよね……」

「何かを狙っている可能性があるってことか?」

「そういうことよ。まあ英傑達が素直に貴族の言うことを聞くかは怪しいところだから、英傑側は単純に金銭面的な問題で、貴族側は魔獣に困っているなんてことも考えられるけどね」


 確かにそう聞くと怪しい気はする。

 魔獣の脅威にさらされているのなら、冒険者で間に合いそうなものだし……それとも普通の冒険者では太刀打ちできないような魔獣というのも結構いるものなのだろうか?


 それに英傑は戦いを呼び寄せる的なことを前に聞いた。むしろ英傑を取り込んだだけ危険に晒されそうなものなのだが、もしかしたら世界が平和になった影響で称号にも影響が出ているということもあるのだろうか?


 ダメだ、今は答えが出ない。まあ今現状は平和が続いており、貴族にも怪しい動きがあったりということでもないのなら、考えるだけ無駄だろう。

 むしろ、英傑に模擬戦なんかを申し込むのならば都合が良いかもしれない。

 まあ、その為にこの場で英傑を取り込んだ貴族を探し出して関わりを作ろうと面倒なことは思わないが。


 世界も順調に前に進んでいるようだし、異世界らしいイベントもそのうち起きるだろう。

 それまでは、適当にやりたいことをやって、気楽に生きていこう。




自由な女神「これはアマリリスちゃん、ヨゾラ君にほの字だね……え? おやじ臭いって? うるさいよ!」

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