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この異世界は物足りない  作者: VRクロエ
魔王城の住民編
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圧倒的な差

 案内された部屋の中でフロディスとテスタリスを交えて雑談していると、先にやってきたのはアマリリスの方だった。


「あら? お兄様もいたのね。てっきり魔法研究の方に戻っているかと思っていたのだけれど」

「いやいや、魔法の申し子である精霊の、しかも理級であるセラフィさんには聞きたいことが沢山あるんだ。それにヨゾラ殿もかなりの魔法の使い手と聞くし、部屋に籠って研究している場合ではないよ。こうしてゆっくり話を聞ける機会なんてそうそう無いだろうしね」


 テスタリスは俺達から魔法のことを聞きたかったようで、先程から様々なことを聞かれる。

 セラフィはまだしも、俺は魔法に関する専門知識に強い訳では無いので、魔法を使って戦う冒険者ならまだしも、研究者に対して何かを教えられるかと言われればそうでもない。

 ただ、それでも満足なようで、楽しそうにしていた。


 こんな話ならばいつでもしてやれるのだが、どうやらテスタリスは普段は魔法の聖地であるレジケル王国の王都にいるらしいので、確かにテスタリスの言う通り、機会はそれほどないのだ。


 グラヴィウス帝国には要人から一般人まで広く俺とセラフィのことを知っており、騒ぎになるとはいえ、それほどのものでもなく、事前の通達も通しやすいのだが、レジケル王国で俺とセラフィのことを実際に知っているのはほんの一部だけであり、相当な大事になるため気軽に訪問することが出来ない。

 スプリトゥス聖国なんてもってのほかだ。俺はまだいいが、セラフィがやばい。騒ぎどころではなく、むしろ崇められすぎて誰も話しかけてこなそうだが、こちらから話しかけても面倒なことになるのは目に見えている。


 そういう意味では、こうして皇帝とも友人のような付き合いがあるグラヴィウス帝国は、俺達にとっては非常に都合がいいのだ。


「まあ話が聞きたかったらいつでも俺達の国に来るといいさ。いつでも歓迎するぞ」

「本当ですか! ではそのうち訪れさせていただきますね」

「あら? 歓迎するのはお兄様だけかしら?」

「勿論アマリリスも歓迎するぞ。サクラ以外にも騎士長のミヤとかもいるしな、気になるんじゃないか?」

「それは確かに気になるわね。でもやっぱりわたくしはあなたの実力が気になってしょうがないわね。サクラよりも強いのは分かるのだけれど……」

「ヨゾラ様の実力は私と戦ったくらいでは測れませんよ」


 話をしていると、治療を終えたサクラが入ってきた。

 サクラは戦って疲れているだろうに、俺とセラフィと同じ席には着かずに後方で控えるように立つ。


「だからこそ気になるのよ。探求心は理屈じゃないわ」

「そこまで気になるなら、次は俺とやるか?」

「ヨゾラ様!?」

「悪いなサクラ、お前が色々と考えて俺の代わりに戦ってくれたことは分かってるんだが、ここまで望まれてるなら戦ってもいいと思うんだ。別に命のやり取りをする訳じゃないんだしな」

「そうですか……ヨゾラ様がよろしいのでしたら、私からはこれ以上は何も言いません」

「ああ、ありがとう」


 我儘を言いつつも、いつもこうして俺のことを考えて行動してくれるのは嬉しい。

 謝罪も込めて俺はサクラを隣に座らせて頭を撫でた。


「楽しみね。勇者であるアノンと対になる魔王と戦えるなんて」

「アノンのことを知ってるんだな」

「当たり前じゃない。前に戦ってコテンパンに負けたわよ。正直あれは別格だったわね。あなたにも勝てるとは思ってないわよ」

「でもやるんだな」

「勿論よ! それがわたくしだもの!」


 アマリリスは純粋に強者との戦いを望んでいるようだ。

 戦いといっても、戦争のように誰かを不幸にするものではなく、自身の成長と好奇心のためにだ。

 だったら別に断る理由も無い。俺も命のやり取りをしない戦いであれば、普通に好きだ。異世界らしくていいじゃないか。命のやり取りがあるのならば、そこにはそれ相応の責任と覚悟がいるが、今回のようなことに関しては言ってしまえばゲームのようなものだ、純粋に楽しめる。


「本当なら今からと言いたいところなのだけれど、流石に疲れたから明日でもいいかしら?」

「構わないぞ。明日も今日と同じくらいの時間帯に来ればいいよな?」

「ええ、よろしくね」

「悪いなサクラ。サクラのために帝都に来たのに、勝手に予定を作って」

「お気になさらないでください。それに、私も楽しみですから」

「セラフィも明日の予定は今話していた通りでいいか?」

「構わんぞ。ヨゾラも言った通り、今回はサクラのために来たのじゃ。そのサクラがいいのであれば儂は何も反対せん。何だかんだで儂も結構楽しんでおるしな」


 セラフィも結構楽しんでいたのか……いつもと変わらないようにしか見えなかったが、もしかするとサクラの成長が見れて嬉しかったのかもしれない。

 思えば最近はセラフィも我儘を言うことが減ったし、今回のことが終わったら今度はセラフィの要望を聞いてやるとしよう。

 まあ、茹で卵が食べたいとか言い出すかもしれないが……


 それから少しの間雑談して俺達は宿を探しに行くことにした。

 城に泊まっていけと誘われたが、それは明日にすることにしよう。アマリリスと戦うまでの時間は今日みたいにサクラに帝都を見せて周る予定だからな。


 夕食を楽しんで、良さげな宿を見つけた俺達はゆっくりと休むことにした。

 表には出していなかったが、サクラも疲れていたようで、一番に眠りについていた。






 ――――――――――






 わたくしは、魔王ヨゾラを過小評価していたのだと分からされる。

 昨日言った通り、勝てるとは思ってはいなかった。それでも、一撃くらいは届かせられるのではないかとは思っていたのだ。


 勇者であるアノンは強かった。それでも、勇者としてアノンだけが使える力を引き出すことは出来たのだ。

 しかし、ヨゾラは普通に戦ってるだけだ。もしかしたら気が付けないだけなのかもしれないが、だとしてもそれだけの実力が離れているということになる。


 今の戦争が終わった世界。そのきっかけとなったアノンとヨゾラの戦いで、アノンは確かにヨゾラを瀕死にまで追い詰めた。

 ならば、アノンよりかは弱いということではなかったのか……


 実際はそんなことはなく、少なくともわたくし個人の意見はヨゾラの方が強い。間違いなく。


 結界指輪はとうに砕け、わたくしは驚きのあまり立ち上がることが出来ない。

 驚いているのはわたくしだけではない。その場に居るほぼ全員が、ヨゾラの実力を少しは知っているであろうお父様まで、驚きで声を失っている。ヨゾラの専属メイドであるサクラまでもだ。


 唯一驚いていないのは、最もヨゾラと近い場所にいるセラフィだけだ。

 元よりヨゾラの実力を知っているというのは勿論だろうが、きっとあの理級精霊の獣人である少女も同じ高みにいるからだろう……


 気が付けば手が震えていた。こんな経験は初めてだ。

 これまで、どれ程の強者と戦おうが震えが起きたことなどない。

 武者震いではない。あまりの実力差に心が屈服しかけているのだ。


 そんなわたくしの心など知らずにヨゾラは立てないわたくしに手を差し伸べてくる。

 その顔には少しの心配と優しさがあり、圧倒的な実力を持つ者の他を威圧するような雰囲気がどこにもなかった。


 手を取り立ち上がってもう一度ヨゾラの顔を見る。

 何故か負けたことに対する恥ずかしさは無いのに、顔が熱かった……






 ――――――――――






 アマリリスは強かった。俺の圧勝ではあったが、素直にそう思う。

 実力的には、勇者パーティーとして魔王を討伐するために行動していた時のロニとフーシーよりも上だ。英傑でもないのにこの実力があるというのは、努力は勿論だが相当な才能があるのだろう。

 ロニとフーシーは、当時実力は他の英傑達の方が上だが、アノンと歳が近いという理由で選ばれたと聞いていた。それを考えれば英傑でなくともこれほどの実力がある奴がいるのも在り得ない話では無かったと今更ながらに思う。

 そして、いよいよ他の英傑の実力が知りたくなった。まあそのうち会えるだろう……


「とりあえずお疲れアマリリス。……大丈夫か?」


 アマリリスは手を貸して立ち上がった時は俺の顔をじっと見ていたのだが、今は目を合わせてくれない。

 もしかして、嫌われたのだろうか……


「……アマリリス?」

「え、ええ……大丈夫よ。わたくしの我儘を聞いて、こうして戦ってくれたこと感謝するわ」

「どういたしまして」

「それで、その……こうして戦ったのですし、そろそろその他人行儀な呼び方ではなくて、リリスと呼んでくれないかしら?」


 戦ったからという理由は分からないが、まあそう言うなら別に拒否する理由は無い。


「分かったリリス。ってか戦ったからっていうなら、サクラもじゃないか?」

「そ、それもそうね! まあ、理由なんて建前なんだけど……」

「なんだそりゃ」


 よく分からないが、単純にリリスと呼んでほしかったのだろう。


「ヨゾラ達は今日は城に泊まっていくのよね」

「ああ、そのつもりだ」

「だったら、また後でゆっくり話しましょ」

「それもそうだな。まずは傷を治してもらえよ」

「ええ、そうするわ」


 段々と素に戻ってきたリリスは、傷を治すために出て行った。

 俺の方は一撃も食らってないし、大して疲れてもいないが、汗だけは流したいのでセラフィ達に一言伝えて汗を流しに行く。

 サクラからは喜びの言葉を貰い、フロディスは色々と聞きたそうにしていたが、それは後にしてもらおう。

 セラフィはこうなることを分かりきっていたので「まあこんなもんじゃな」と言っていただけだった。

 何だか信頼されているのが伝わってきて、それが一番嬉しかった。


 夕食は豪華になると聞いたので楽しみである。

 セラフィなんか、俺が汗を流して戻ると戦いのことなどもう忘れたかのように、食事のことばかり口に出している。


 どうせならセラフィとも戦ってもらえばいいのに、と思うがそれはリリス次第だろう。

 何ならテスタリスの方がセラフィと戦いたいと思っているかもしれない。食事の時に聞いてみることにしよう。


 俺が気になる他の英傑に関してだが、まあフロディスに聞けば分かるだろう。

 アノンやロニ、フーシーも詳しそうなので、会えそうならば明日会いに行くか。


「飯はまだなのかヨゾラ!」


 そろそろセラフィがやかましくなってきたので、考えごとは一旦やめて食事の場所に向かうことにするか……




自由な女神「実際今のヨゾラ君ってどのくらい強いんだろう? 口ぶりからしてアノンちゃんよりも強そうだけど、予測できないよね」

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