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この異世界は物足りない  作者: VRクロエ
魔王城の住民編
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サクラの奥の手

 状況はサクラが劣勢だ。途中までは押していたみたいだが、そこから更にアマリリスの速度が上がりサクラを圧倒し始めた。

 サクラもステータス的に遅い訳では無く、むしろそこそこ早いのだが、アマリリスのステータスはそれを上回っているらしい。

 あそこまで激しく動いているとステータスを覗き見ることは出来ないが、多分ルーシェの上位互換のようなステータスをしているはずだ。まあ最後にルーシェと会った時のステータスしか知らないので、今ではアマリリスよりも強くなっている可能性もあるが……


 徐々にサクラの傷が増えていく。正直見ているのが辛いが、サクラはきっと俺の為に自分が戦うことを選んだはずだ。だったら俺が目を逸らす訳にはいかない。


「あの者はヨゾラの新しい従者か?」

「ああ、サクラという名前で、俺の城のメイド長をしている」

「メイド長!? そんな者を長旅に連れてきて城の方は大丈夫なのか?」

「問題無いだろ。サクラにも仕事はあるみたいだが、基本的には俺達の傍にいることが多いからな。そもそも俺の中でのサクラはメイド長というよりも家族とかそっちの感覚に近いんだ」

「それはなんだ? サクラ嬢との出会いか何かが関係しているのか?」

「そんな感じだ。まあその辺は後で話してやるよ」


 話している間にも戦いは進んでいく。どうやらサクラが何かを狙っていそうだった。

 この状況で何かを狙っているということは、それなりに戦況が動くような択を持っているのだろう。

 ここからの展開を楽しみにしておこう。






 ――――――――――






 私の奥の手はヨゾラ様にも届きうるとビャクからお墨付きをもらっています。

 いつかヨゾラ様に直接お見せするつもりでしたが、ここは素直に使ってしまいましょう。


 私は紅桜に持ち替えて自ら仕掛けます。

 勿論速度では勝てません。魔法を使った様子は無いので、単純に素早さのステータスで負けているのでしょう。

 ですが、そうですね……不意を突ければ当てることも出来るでしょう。


「正面から……やけくその特攻かしら?」


 アマリリス様は余裕な表情で攻撃を待ちます。

 その余裕が命取りですよ。


「え……?」


 アマリリス様は何が起こったのか分からないといった声を上げます。

 それもそうでしょう、何せそれまで目の前にいた私のことを見失ったのですから。


「……っ!?」


 背後からの攻撃をアマリリス様は回避しました。流石の反射神経です。

 ですが、どれだけ持つでしょうか……


「また!?」


 アマリリス様は再び私のことを見失います。

 どういう原理でこうなっているかというと、私が固有で持っている能力によるものなのです。

 攻撃を仕掛ける瞬間というのは、少なからず殺気が漏れます。実力者程その殺気に敏感になり、それに反応して回避やガードをします。

 アマリリス様も殺気をしっかりと感じ取っているのは確認出来ました。

 それを利用して、私は攻撃を仕掛ける時に、中断と移動に加えて気配を希薄にする能力を使っています。

 するとどうでしょう、相手からすると急に目の前から敵が消えたように感じるのです。

 そして死角に回り込み、再び攻撃を仕掛けるのです。

 流石に攻撃する時は気配を消しきれないので気が付かれてしまいますが、それでも有利な状況で攻撃出来ることに変わりありません。

 躱されたとしても、今のように連続で使えるので、私のターンが続くという訳です。


「くっ……このっ!」


 アマリリス様は無造作に反撃してきますが、残念ながら精細さに欠ける攻撃では私は当たっては差し上げません。

 しかしながら、ここまで決めさせてくれないことに関してはやはり流石ですね……MPの消費などは無いのでそういった意味では無限に続けられるのですが、肉体的な疲れはどうしても出てきてしまうので、あまり長く時間は掛けられません。

 まあ、その心配もあまり必要では無さそうですが。


「はぁ……はぁ……」


 神経を極限まで使った状態での防戦でアマリリス様は息も絶え絶えです。喋ることはもはや出来そうにありません。

 そんな状態で、避けきれませんよね。私の一撃が当たります。

 初めはかすり傷程度でしたが、数が増えれば無視できないダメージとなり、それにより動きに精細さが欠けてくれば攻撃もしっかりと入るようになります。


 さて、ここからの打開は……無さそうですね。

 折角です、最後は大技を使って決めることにしましょう。


「……凶刃無閃!」


 私はアマリリス様の正面から一気に殺気を強めて斬りかかります。

 決めに来ると感じたであろうアマリリス様は残る力を振り絞って迎撃しようとしています。

 ですが、チャンスは与えませんよ?


 アマリリス様は紙一重で攻撃を避けるように動きます。

 しかしながらそれは……


「残像です……」


 隠すことなく全力で放った殺気は固有能力を発動させても一瞬ですが残留します。

 それは私自身よりも先に相手に届き、それに反応してしまうのです。

 なので遅れて放った私の攻撃は、殺気に包み隠されて不可視の攻撃となるのです。


 完全に決まった渾身の一撃で、アマリリス様が付けていた結界指輪は砕けます。


「……私の勝ちです」


 私の勝利宣言を聞いてもアマリリス様は何が起こったのかが分からない様子でしたが、少ししてから小さく笑います。


「私の負けね……完敗よサクラさん。あなたは強かったわ」

「ありがとうございます。アマリリス様もとても強かったです。もう一度戦えば、勝負は分からないかもしれません」

「どうかしら? サクラさんの能力に関しては、冷静になれば予想は出来るけれど、あくまでも予想でしかないから対策は厳しいしね。そもそも対策出来るものなのかしら?」

「ビャク……ノーヴィストの総括であるビャク様には既に対策されてしまっています」

「あー、話は聞いているわ。身のこなしから只者ではないというのは知っているけれど、そこまでだったなんて……」


 まあビャクに関しては、私が出会ったことのある者で一番高い気配察知能力を持っているからなのですが……ヨゾラ様とセラフィ様はどう対処するのでしょう? とても楽しみです。


「ふぅ……もっと話をしたいところだけど、わたくしもあなたもボロボロね。一先ず治療してもらいましょうか」

「その前にヨゾラ様とセラフィ様に終わったことをご報告してきてもよろしいですか?」

「ん? ええ、そうね。しっかりと褒めて貰いなさい」

「……」


 そんなに褒めて貰いたいというのが分かりやすかったでしょうか? 恥ずかしいです……






 ――――――――――






 終盤、サクラが見せた動きは凄まじいものだった。

 サクラの能力については獣人になった時に聞いていたので知っているが、それを戦闘にこのように応用するとは驚きだ。

 俯瞰で見ていたので完全に見失うことこそ無かったが、動きの瞬間は一瞬見失うこともあった。

 目の前で向かい合っていたら、俺も対応が難しかっただろう。


「……セラフィならどうする?」

「そうじゃなぁ……まあ無難にいくのならば、魔法による全方位攻撃じゃろうな。恐らくじゃが、アマリリスには魔法の全方位攻撃という択が無かったか、戦いながらではその方法まで辿り着けなかったのじゃろう」

「全方位攻撃か……なるほどな」

「もっとメタっぽい話をするのならば、儂やヨゾラならばサクラの攻撃は一撃くらいは耐えれるから、受けてから返すというのもありじゃな」

「攻撃を食らう前提で反撃を狙うのか。そう考えると、ステータスの差って残酷だな」

「あまりうかうかしてると、その手は使えなくなりそうじゃけどな」

「サクラの成長速度はかなりのものだからな」


 まあサクラが成長してくれるのは、俺としても嬉しいことだ。自慢出来て鼻が高くなる。

 本当に、元は弱い魔獣だったということが信じられないくらいだ。


 サクラとアマリリスの戦いの余韻に浸っていると、少しだけ話をしていた2人だが、サクラだけがこちらにやってきた。

 表情はどこか嬉しそうで、更には何かを期待しているように見える。

 みなまで言わなくても分かっている。しっかりと褒めてやろう。


「戻りましたヨゾラ様、セラフィ様」

「ああ、お疲れサクラ。凄かったじゃないか、かなり強くなったな」

「うむ、儂らの想像以上ではあったな。よく頑張ったようじゃなサクラ」

「お褒め頂いてありがとうございます! ですが、もっともっと精進してお2人を更に驚かせられるように頑張ります!」


 褒めてやるとサクラは自分はまだまだこれからだと言う。

 だが、嬉しいという感情が隠しきれていない。主に耳に現れている。

 サクラは隠せていると思っているようだが、耳がぴくぴくと動いていた。


 うん、可愛いな。


 それにしてもサクラは傷だらけだ。見ていて痛々しい。

 ちゃんと傷が残らないように治るよな?


「フロディス」

「分かっている。恐らく既にリリスが医者の手配をしているだろう。すぐに治療の準備は整うはずだ」

「それは助かるな」

「リリスはいつもあんな感じだからな。慣れもするだろう。しっかりと治るから心配そうな顔はするな。まあ珍しいものは見れたがな。ヨゾラとセラフィでもそんな表情をするのだな」


 そりゃ心配もするだろ。サクラは俺とセラフィにとって家族みたいなもんだからな。


 フロディスの話を聞いていたサクラは、今度は目に見えて嬉しそうにする。

 心配しているのに嬉しそうにされると、何だか微妙な気分だな。


「ほらサクラ、まずは治療を受けてこい」

「はい!」


 頭を撫でながら催促すると、サクラは元気よく返事をして治療を受けに行った。

 久々に少女らしいところを見せてくれて顔が綻ぶ。

 セラフィも同様だったようで、フロディスは呆れたような顔をしていた。


「ほれ、俺達も移動するぞ。話したいこともあるだろうしな。安心しろ、案内は向かわせている」


 アマリリスが治療を受けに向かった時に、まだサクラと話をしたいような顔をしていた。

 フロディスも色々と聞きたいこともあるだろうし、この場ではなく落ち着ける場所に向かうことにしよう。


 移動する時の足取りは、何だか軽かった。

 どうやら嬉しかったのはサクラだけでは無かったようだ。




自由な女神「サクラちゃんだけが持つ能力を上手く活かしたいい戦い方だったね! この子はこれからもっと強くなりそうだよ!」

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