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この異世界は物足りない  作者: VRクロエ
魔王城の住民編
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サクラの戦い

 突然始まったサクラ対アマリリスの模擬戦。その場に居た兵士達は最初こそ戸惑っていたが、フロディスと俺とセラフィも模擬戦を見るということで、速やかに場所を開けて自分達も観戦側に回っていた。


 アマリリスの武器は普通の直剣のようで、恐らく戦い方はスタンダードなものなのだろう。

 一方のサクラは所謂刀で、そのメイン武器とは別に帯の部分に小刀を持っている。


 最初サクラの武器を決める際、俺が刀が似合いそうだと言ったのがきっかけだった。

 この世界にも刀は存在していたみたいだが、使っている者は殆どいないそうで、唯一存在を知っていたビャクですら見たことは無いと言っていた。

 ビャクは俺とは違い500年をしっかり生きているので、そのビャクが知らないということは、本当にレアな物だったのだろう。

 そんな刀でも、サクラは俺が似合いそうだと言ったという理由だけで使うことを決めてくれた。

 俺自身使い方は分からないので、誰も使い方を教える者がいない中、サクラは苦労しながらも模索し、俺が知っている限りではかなり使いこなしていた。


 サクラは刀を抜いて構える。銘を紅桜と名付けられた刀はどういう原理か薄っすらと赤みを帯びた刀身で、色は違うもののサクラの髪とマッチしていて当初俺が想像していた通りよく似合っていた。

 サクラが紅桜を使っての対人戦を見るのはこれが初めてなので、とても楽しみだ。






 ――――――――――






「……よろしくお願いします、アマリリス様」

「ええ、よろしくねサクラさん。随分と面白い武器を使うのね」

「刀をご存じなのですか?」

「知ってはいるわよ。本当にそれだけだけどね。これが終わった後に武器の事、聞かせてちょうだい」

「今は聞かないのですか?」

「だって手の内を晒せって言っているようなものじゃない。それはフェアじゃないわ」


 最初の印象からすると無理に聞いてきてもおかしくは無さそうでしたが、こうして向かい合ってみると口調こそ変わりませんが、とても真っ直ぐな人だという感じがします。きっと、この人にとっての戦いは、私で言うところのヨゾラ様やセラフィ様にお仕えするのと同じように、それに関してだけは曲げられないものがあるのでしょう。


 正直ヨゾラ様に対する礼節の無さから苦手意識がありました。

 だって仕方がありません。いくらアマリリス様が皇族とはいえ、ヨゾラ様は王なのです。明確に上の存在である自身の主が礼を欠かれるようなことがあれば、従者として何も思わない訳ではありません。もし、そんなことがあればビャクに怒られてしまいます。

 まあヨゾラ様への態度は私に負ければ恐らく変わるでしょう。頑張らなくてはなりませんね。


 私は紅桜を構えます。この紅桜はヨゾラ様が溜めていた貴重な鉱石を原料とし、更にはセラフィ様に魔力を込めて貰った後に腕のいい鍛冶師に打ってもらった私専用の特注品です。

 これを頂いた際には嬉しすぎてしばらく手放せませんでした。


 性能は言うまでもなく相当な物となっております。

 紅桜が完成した時にヨゾラ様が俺の剣よりも強いのは間違いないと言っていました。

 ヨゾラ様の使う剣に銘は無く、素材こそかなり良い物なのですが、紅桜のように手の込んだ作り方はしていないそうで、精々一般人が見れば驚く程度の物だそうですが、紅桜はそれこそこの世界では上位に入る性能をしているみたいです。

 そんな物を頂きサクラはとても嬉しいです! この刀と共にヨゾラ様とセラフィ様の偉大さを知らしめて行こうと思います!


「それじゃ、楽しませてもらうわね!」

「……お手柔らかに」


 その言葉が開始の合図となり始まります。

 アマリリス様は一直線に突っ込んできました。

 素直で分かりやすい軌道ですが……とても早いです。

 アマリリス様がこういう戦闘スタイルなのか、それとも様子見で放った一撃なのかは判別できないので、まずは最善の行動を取ることにしましょう。


 私は刀をアマリリス様の剣の軌道に合わせて構えて、刀の反りも使って力を逃がします。


「……へぇ、やるじゃない」

「ありがとうございます」


 こうして初手で見せたものの、この技術も身に着けるのに苦労しました……アマリリス様も難しいことだと分かっているようで、感心したように褒めてくれます。


「これはどうですか!」

「流石にまだやられないわよ!」


 かなりの速度で攻撃を放ってきたので多少体勢が崩れるかと思ったのですが、アマリリス様はそんなこともなく、しっかりと切り返して私の攻撃を回避しました。

 勢いに対する筋力もしっかり身に付いているみたいです。本当に皇族なのでしょうか? 少し疑わしいです。

 まあフロディス皇帝陛下も武人としてはかなりのものだそうなので、グラヴィウス帝国の皇族は大なり小なりそういった側面もあるのでしょう。

 それに私の主であるヨゾラ様とセラフィ様が果てしなく強いので、他国の皇族がどうこうとは言えませんね。


「ほら次行くわよ! ファイアジャベリン!」

「っ!?」


 おっと、考えごとばかりしている暇はありません。少し距離が空いたところで、アマリリス様が魔法を放ってきました。

 ファイアジャベリンは豪級の魔法で威力もそれなりにあります。しかもアマリリス様のは発動が早い……

 当たれば戦闘不能までとはいかないものの、それなりに大きなダメージを食らってしまいます。


「……では、これでどうでしょう?」


 私は同じ豪級魔法のアイスランスを発動させます。

 発動は私の方が後でした。しかし、間に合います。私が磨いてきたのは刀の腕だけではありません。

 ぶつかり合ったファイアジャベリンとアイスランスは相殺され消滅します。

 残されたのは水蒸気のみ。視界が不明瞭になったところで、私から攻めることにしましょう。


「はっ!」


 私は一気に距離を詰めて刀を振ります。

 魔獣だった頃の名残でしょうか? 他の魔獣から身を隠すには、気配を察することも重要なため、私は視界が悪くともある程度周囲の状況を把握することができるのです。


「くっ……」


 不明瞭な視界の中からの強襲だったのですが、アマリリス様は反射神経でガードしてきました。

 ですが有利なのがこちらなのは変わりありません。このまま攻めることとしましょう。

 真っ直ぐに、速度を乗せて剣を振ります。アマリリス様は最初こそガードしたものの、その後は回避で精一杯の様子。

 むしろ、回避できているだけ凄いと言えます。

 そして、水蒸気が晴れる頃、ようやく攻撃が掠りアマリリス様の肩の服が破け、小さな傷ができました。

 視界が晴れれば少し余裕が出来たようで、それ以上は攻め続けさせてもらえませんでした。


「はぁ……はぁ……、ごめんなさい、あなたのことを過小評価してたみたいだわ」

「初対面ですし、仕方ありませんよ。ですが、私もヨゾラ様とセラフィ様のメイドとして相応の力を示さなければなりませんので」

「もう十分あなたの力は見せてもらったわ。だからここからは……本気でいくわね!」


 アマリリス様の目が変わりました。今までも真剣な目をしていましたが、それとは比べ物にならない圧のようなものを感じます。

 ひり付くものを肌に感じながら刀を握り直した瞬間、アマリリス様は動き出します。

 先程よりも一段階早い速度で、直線的ではなくこちらの目を振り回すように自在に動いています。


「さあ、ついてこれるかしらサクラ!」


 声と同時に左側面から剣が迫ります。咄嗟にガードしましたが、かなりの衝撃で身体が浮きます。体重の軽さが仇となりますね……

 この状態だと受け流したりするのが難しいです。刀で対応出来る範囲も限られているので、小回りの利く小刀に切り替えます。


 二撃目は真反対の右側から襲い掛かってきます。何とか身体を捻って右を向き、なるべく身体を丸めて身体に伝わる衝撃が分散しないようにします。

 力が一転に加わったことにより、私の身体は吹き飛びます。ですが、自身から狙って吹き飛んだので、着地まではスムーズに繋げることが出来ました。


 これで一旦落ち着かせては……くれませんね。

 着地して即座に目の前に剣が迫ってきます。体勢はあまり良くありませんが、予測はしていたので避けることは問題ありません。

 最小限の動作で剣を躱し小刀が届く距離になったので刺しにいきます。

 刃が届くまで1秒の時間もありませんでしたが、躱されてしまいました。

 予測されていたか、単純に躱したのか……どの道速度では敵わなそうですね。


「まだまだいくわよ!」


 速度の差を埋める方法を考えていると、アマリリス様は更に速度を上げました。

 私の目ではもう追いきることは出来ません。どうにか反射神経と人には無い獣人特有の感覚で受けていますが、反撃なんて出来ようもありません。


 そして遂にアマリリス様の攻撃が私を捉えます。

 肩口を軽く斬られて血が舞います。嫌な痛みを感じました。

 その痛みを御しきれない私をアマリリス様が見逃すはずも無く、猛攻を加えてきます。

 1撃もらうまでは長かったですが、その後はあっという間に傷が増えていきます。

 未熟な自分が嫌になりますね。


 こうなると、もう速度がどうこうの話ではなくなってしまいます。小手先の技術や作戦では戦況は絶対に覆りません。

 参りましたね、これはもう奥の手を使うしかありませんね。

 出来ればこれをヨゾラ様に見せるのは、ヨゾラ様に手ほどきしていただいている時が良かったのですが……不甲斐ない姿だけは見せたくありません。

 ヨゾラ様は私が傷を負うたびに心配そうな顔をしています。セラフィ様はいぜん堂々としておられますが、後に色々と言われるかもしれません。

 これ以上主に心配をかけるくらいならば、迷わずに奥の手を切ることにしましょう。


「アマリリス様、ここからは私も本気でいかせていただきます!」


 そうして私は奥の手を切った。








自由な女神「サクラちゃん随分強くなったんだね。元々弱い種族だったとは思えないよ」

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