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この異世界は物足りない  作者: VRクロエ
魔王城の住民編
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サクラ

 数日経って、俺とセラフィはビャクに話があると言われたので玉座の間でビャクが仕事を片付けるのを待っていた。

 猫はというと、相変わらず俺とセラフィにくっ付いており、懐きすぎという他なかった。

 まあセラフィが大変可愛がっているので、離れていってしまうと寂しがるかもしれないので、このままでもいいだろう。


「お待たせいたしました」

「ぐーたらしてただけだから別にいいぞ。……で、そっちの獣人は?」


 しばらくするとビャクが仕事を終えてやってきたのだが、入ってきたのはビャクだけではなく、もう1人女の獣人がいた。


「こちらは軍に所属するワイルドキャットの獣人でございます」

「お、お初にお目にかかります! ワイルドキャットの獣人のミヤです!」


 そういえばノーヴィストにも一応軍とかあるんだったな……その辺のことは全部ビャクに任せてたからすっかり忘れてた。

 人と戦争していたのだから軍は当然あるか。今度しっかりとその辺のことを確認しておこう。


 ミヤは見るからに緊張している。まあそれも仕方ないことだ。

 多分ミヤは軍内でもそれなりの立場にある――という訳ではなく、一兵卒だ。それなのに雲の上の存在であるビャクに連れられて、普段は殆ど獣人の出入りが無い魔王城のそれも玉座の間に連れてこられて、魔王である俺とセラフィと会うことになったのだ。


 しかも今の俺とセラフィは玉座の間に用意されている玉座には座っておらず、床に座っている状態だ。

 俺の勝手な知識でこの世界で同じかは分からないが、王を見下ろすのは不敬にあたる。

 仮に跪いたとしても精々同じ目線の高さになるだけだ。


 そんなこともあって、ミヤは挨拶をした後にオロオロとして、困った挙句目を瞑って敬礼したまま動かなくなった。

 流石にこのままでは可哀そうだ。


「あー、よろしくなミヤ。ここには俺達しかいないし、俺も何も言わないから楽にしてくれていいぞ。……何ならあそこに座るか?」


 俺は緊張が解れるように冗談で玉座を指差して言うと、ミヤの顔から血の気が引いていく。


「そ、そんな恐れ多い! もしヨゾラ様とセラフィ様がお許し下さっても他の獣人達に殺されてしまいます!」

「ヨゾラ……虐め過ぎじゃ。見ろ、涙目になっておろうが……流石に不憫過ぎて儂はこれ以上見ておれんぞ。とんだ暴君もおったものじゃ」

「な!? 別に虐めてる訳じゃない! こういうのに慣れてなさ過ぎて匙加減が難しいんだよ……そんな言うならお前がやってみろ! 猫ばっか撫でやがって! 口調は偉そうでもすっかり乙女になったもんだな!」

「急になんじゃ!? 喧嘩を売っておるのか!」


 黙って猫を撫でてただけの癖に俺を責めるセラフィにムカつき言い返すと、セラフィは顔を真っ赤にして立ち上がった。

 そのまま関係の無い方向の言い合いになっていると、ミヤがさらにオロオロしだす。

 ビャクは静かに待っているだけだった。


「ふぅ……で、ミヤは何のためにここに?」

「ワイルドキャットの獣人であれば、フラワーキャットとの意思疎通がある程度可能だからです。全てを理解するのは無理でしょうが、伝えたいことなどは分かるでしょう」

「お、マジか! そりゃ助かるな。頼むぞミヤ」

「は、はい! 頑張ります!」


 俺に頼まれたのが嬉しかったようで、ミヤはやる気を出していた。


 それからミヤと猫は何か会話のようなことを始めた。

 俺の分かる言葉ではないので、何をやっているのか理解出来ない。


 セラフィと一緒に少し離れたところから見ていると、ビャクが隣にやってきた。


「魔獣というのは種が違えば会話は成り立ちません。ですが、僅かな声色などの変化から意思を伝えようとはします。友好的なことであれ敵対的なことであれ、魔獣同士はそうして相手の意志を読み取るのですが、種が近い程明確にそれを読み取ることが出来ます」

「だからこそミヤを呼んできたって訳だな」

「はい。私では何かを伝えようとしている、ということしか分かりませんが、ミヤであればもっと明確に意思を読み取ることが出来るでしょう」


 ここ数日、きっとビャクはなるべくフラワーキャットに近い種の獣人を探していたのだろう。

 その中でもミヤが最適だと考えたようだ。


 俺でも威嚇されてるなー程度ならば分かるが、それ以上となるとさっぱりだ。

 その辺は人と魔獣では感覚が違うのだろう。


 そういえばセラフィはウルジェの契約精霊であるアストラが崇級精霊だとすぐに分かったみたいだが、意思の疎通が出来たりするんだろうか?

 セラフィ自身は純粋な精霊だった頃から言葉も理解していた。思い出してみればアストラもウルジェの言葉にしっかりと反応していたし、ウルジェもアストラの意志を理解していた。

 そう考えれば、精霊というのは魔獣よりも賢いように思う。

 今度スプリトゥスに行った時にウルジェに詳しく聞いてみるのも面白そうだ。


 そんなことを考えていると、会話が終わったようで、ミヤが猫を抱えてこちらにやってきた。


「お待たせいたしました」

「何か分かったか?」

「そうですね……一応は、この子が何を伝えたかったのかは分かりました」


 どうやら上手くいったらしい。

 しかし、ミヤはどこか難しい顔をしている。一体どんな内容だったのだろうか?


「えっと……この子は私達のように人の姿……獣人になりたいみたいなんです」


 それを聞いて、なんでミヤが難しい顔をしていたのかが分かった。

 俺が獣人を生み出したのはセラフィ以外だとビャクしか知らない。つまりは不可能なことだと思ったのだろう。


 そもそも何でこの猫がそれを知っているのかという話だが、直感かなにかで感じ取ったと思うしかない。

 そのような話を最近した覚えもないし、ビャクも簡単に口に出したりはしないだろう。

 セラフィがポロっと漏らした可能性もあるが、言葉を正確に理解している訳でもないだろうし、やはり直感が当たりな気がする。


「だそうだ。セラフィ、どうだ?」

「儂は構わぬぞ。あのモフモフが無くなるのは惜しいが、耳と尻尾があるのならば許せる」

「分かった」


 俺としても、この猫がそれを望むのならば叶えてやりたいと思っている。

 ビャクに聞く限りでは、結構酷い過去があったみたいだし、それで幸せになれるのならば躊躇うことはない。

 セラフィが言ったように、あのモフモフが無くなるのは惜しいがな。


 俺は確認のためにビャクに視線を向ける。

 ビャクは俺が言いたいことを理解してくれたようで、1度頷いてから真剣な表情でミヤのことを見た。


「ミヤ、ここからのことは決して他言することのないように」

「……え?」

「獣人の重大な秘密に関わることだ。もし他言すれば、その時のことは覚悟してもらう」

「わ、分かりました!」


 ビャクの有無を言わさぬ雰囲気にミヤは顔を引き攣らせながら返事をした。


 俺としては別に何か罰を与えたりとは考えていないが、大きく広まれば面倒なことになるのは確かなので、出来るならば他言しないことを願いたい。

 まあ、ビャクがここまで脅したのだから大丈夫だろう。


「それじゃあ話すが、俺とセラフィは魔獣を獣人にすることが出来る」

「え……魔獣を獣人に、ですか?」

「まあ俺とセラフィが特殊な力を持ってるとかそういう訳じゃなくて、そういう魔法を開発して、それを広めてないから俺とセラフィだけが出来るってだけだがな」

「ちなみに階級は神級じゃ。誰でも使える訳では無い。仮に広めたとしても、儂の知っている者達で使える可能性があるのは勇者であるアノンだけじゃな」


 それは初耳だが、セラフィがそう言うのならば使える可能性があるのはアノンだけなのだろうな。


「えっと、それが話してはいけないことですか?」

「そうだが……そのうち気が付くと思うから言っておくぞ。俺は()()()()()()()()()()()と言ったんだ。この意味が分かるな?」

「魔法を開発……開発……え、つまりは……え? でも」

「約500年前、獣人という存在を生み出したのは俺だ」

「え、ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」


 あまりの衝撃にミヤは驚きの声を上げた。

 それはそうだ。自分達の起源が目の前にいる奴だと聞かされれば驚きもするだろう。

 そもそも500年前の人間だということがおかしいからな。


「まあそういうことだ。他言するなよ?」

「は、ははははい!? 勿論でございます!」


 いい返事も貰ったので、早速猫を擬人化させることにしよう。


「そうだ! 折角だし、俺が考えておいた名前を先に発表しよう」

「なんじゃ、ちゃんと考えておったんじゃな。ずっと猫と呼んでおったから忘れていると思ってたんじゃがな」

「いや、なんか名前って適当なタイミングで言うの嫌だしさ」

「変なこだわりじゃな。して、その名前はなんじゃ?」


 結構悩んだが、最終的にはシンプルな名前に落ち着いた。

 適当なのではなく、思いついた名前の中では一番俺の中ではしっくりきたのだ。


「お前の名前は――サクラだ!」

「にゃ~」

「サクラ? 由来はなんじゃ?」

「まあ後で教えてやるよ。そうだビャク確かサクラって――」

「メスですね。用意してまいります」

「頼んだ」


 擬人化させると全裸の状態になる。なのでビャクに大きめの布と服を頼もうと思ったら、察して取りに行ってくれた。

 流石に経験者なだけはある。


 少ししてビャクが戻ってきたので、サクラに布を被せる。

 ちなみに服は薄いピンク色の着物のようなものだった。


 やけに用意がいい。もしかしたらビャクは可能性として考えていたのかもしれない。

 服も俺とセラフィが可愛がっているので、しっかりした物を用意したみたいだ。


「じゃあ、始めるぞ」


 俺はサクラを包む布に向かって手を翳す。

 擬人化の魔法を発動させるのは本当に久しぶりだが、感覚は忘れていない。

 この世界で初めてセラフィと対面した時のことだ。今でも鮮明に覚えている。


 俺が魔法を発動させると、布は少しずつ膨れ上がっていく。

 擬人化が完全に終わると、布の中から桜色の髪と耳が現れ、続いて可愛らしい顔が覗いた。


 サクラは最初周囲を見渡し、その後自身の身体を見つめてから少しだけ動かした。

 自身が獣人となったことを完全に理解すると、一滴の涙を流してから花が咲いたように笑う。


「……ありがとうございますヨゾラ様、セラフィ様! このサクラ、生涯の忠誠をここに誓います」


 綺麗な声でサクラはそう言って小さく頭を下げた。




自由な女神「ケモ耳ヒロインが追加!? 強力なライバルがどんどん増えてくよ……」

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