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4国会談

更新遅くてごめんなさい……

 俺とセラフィは堂々として用意された席に着く。

 席が2つ用意されているということは、俺だけではなくセラフィも獣人の国のトップという認識が他の国にも周知されている証拠だろう。俺達のことを知るフロディスにとっては最初から何の疑問も無かったはずだ。


「まずは軽い紹介から始めよう。ヨゾラ殿は我以外の王とは顔を合わせたことが無いのでな」


 フロディスの一人称が我になっていることに笑いそうになってしまったが、流石にここで笑っては空気を読めないどころの話ではないので無理やり抑え込む。

 そんな俺の内心も知らずにフロディスは立ち上がった。


「では我から……グラヴィウス帝国が皇帝フロディス・ヴィア・グラヴィウスである。この度は我が国への招集に応じてもらい感謝する」


 フロディスは短い挨拶を終えると座り直した。

 次に立ち上がったのは、俺から見て右手側に座る少々腹の出たおっさんだ。


「余はレジケル王国の王レグナルト・シューマ・レジケル。お初にお目にかかる獣人の国の王ヨゾラ殿。本日は有用な会になることを期待している」


 レグナルトは真っ直ぐに俺を見て言った。

 その瞳に敵対的な意志は感じられないが、だからといってまだ友好な様子も感じられない。俺がどういう人物か計っているような感じだ。


 今言葉を返すべきではないだろう。俺は仕草だけで小さく反応して黙っていた。

 レグナルトは俺の仕草を見てから静かに座る。

 最後に立ち上がったのは俺の左手側に座る法衣のようなものを着た30代程の女性だ。


「私ですね。スプリトゥス聖国の教皇ウルジェです。立場としては中立でしたが国同士の関係が本格的に動き出す、ということで参加させていただきました。今後も基本的には中立のつもりですが、他国で無益な争いが起きないことを期待しております」


 ウルジェは柔らかく笑って座り直した。この感じだと本当に獣人に対して敵対意志を持ってはいないようで安心だ。


 ただ、1つだけ気になるのはセラフィのことだ。

 スプリトゥスは精霊を信仰する宗教がそのまま国になったような場所であり、そんな国が神とまで崇めているのが理級精霊。セラフィがその理級精霊だと聞いた時どんな反応をするか……

 俺はこの会談でセラフィの正体を明かすつもりだ。俺の過去や獣人の出生などを話すつもりは無いが、せめて新たな国のトップに立つ者の種族くらいは話しておかないとな。


 さて、最後に俺とセラフィの番だ。


「獣人の国の王ヨゾラだ。王と言っても最近なったばかりだからまだ分からないことだらけだが、俺なりに出来ることをしに来たつもりだ」

「儂はセラフィ、ヨゾラの相方じゃ」

「まず気になっていることだとは思うが、俺は純粋な人間だ。だがセラフィは違う」

「うむ、儂は人間ではなくおぬし等の言うところの獣人じゃ」


 俺とセラフィの言葉に最も反応を示したのは元々俺達のことを知っているフロディスだ。


「そうであったか……しかしそうであったなら何故魔王討伐の話をした時に何の反応も示さなかったのだ? 仮にも同族の王であろうに……」

「何を言っておる。人間同士とて全ての者が仲良くしていたりするわけではなかろう。儂にとって顔も名も知らぬ王など別にどうなろうと構わぬ。まあこうしてヨゾラが魔王となった以上は、討伐しようなどと考えんことじゃ」

「それは我としてもそんなことは出来ればしたくはない。にしても、獣人側でも魔王の存在はそれほど詳しく知られていなかったようだな」

「それについては私から――」


 そこで俺達の後ろで黙っていたビャクが口を開いた。

 獣人側のことは俺も詳しくは知らないので説明してくれるならありがたい。


「獣人側でも魔王様――ヨゾラ様とセラフィ様のことを知っていたのは私を含めてごく少数のみでした。ヨゾラ様とセラフィ様も知ったのは魔王城に来てからになります。理由としましては、簡単に言ってしまえば必要の無いことだった、というだけですね。ヨゾラ様とセラフィ様がどこで何をしていようと構いません。獣人の国はお2人が帰る場所であり囚われる場所ではありません。同族達に知らせていなかったのは万が一にも人間の国に知られないようにするためですね」


 ビャクは説明を終えると再び口を堅く結んだ。


 こうして話を聞くと、やはり俺とセラフィのためを想って動いてくれていたようだ。

 ビャクは俺とセラフィの封印が解けて人間の国で過ごしているのは分かっていたのだろう。

 魔王城でビャクと出会ってからの様子を見ると、自惚れではなくすぐにでも迎えに来たかっただろう。それを抑えて行動してくれたのはただ感謝しかない。


 ビャクの説明を聞いたフロディスは何故か満足そうに笑った。


「そうか……ヨゾラよ、良き従者を持ったな」

「俺もそう思うよ」

「本当であればどういう経緯で魔王になったのか、など詳しく聞きたいところだが、今回の目的はそれではない。そもそも別の話の途中であったし今度聞くことにしよう」

「ふむ、流れで言うと儂の種族についてか?」

「そうだ。教えてくれるか?」

「構わぬ。既にヨゾラと話は付いておるのでな」


 セラフィは改めた確認のために俺のことを見たので小さく頷いておいた。


「儂は精霊の獣人じゃ。恐らくじゃが唯一のじゃ」

「それは本当ですか!?」


 セラフィが精霊だということを明かすと、ウルジェが立ち上がって驚きの声を上げた。


「本当じゃ。この場で嘘などつかん」

「ですが精霊の獣人など聞いたことも……いえ、疑うのは失礼ですね。もしよろしければ階級と属性も教えて頂けませんか?」

「理級、光属性じゃが、闇属性の力も持っておる」

「理級……理級!? しかも光属性で闇の力!? す、少しだけ失礼します」


 ウルジェは立ち上がってセラフィの元まで歩いてくる。


「アストラ」


 セラフィの目の前まで来たウルジェは精霊を呼び出す。アストラというのはウルジェと契約している精霊の名前のようだ。

 精霊はセラフィの近くを飛んで何かを確認しているようだった。


「ふむ、崇級の光精霊か」

「分かるのですか?」

「見れば分かる」

「普通は分からないのですが……」


 先程までは静かであまり顔に出ないタイプに見えたウルジェだが、セラフィが精霊だと分かってから表情がころころと変わっている。

 傍から見ていると美人が少女に振り回されているように見えて面白かった。


 ウルジェが呼び出したアストラという精霊はしばらくしてからウルジェの元へと戻っていく。


「……なるほど、そうですか」


 上手く意思疎通が出来るのか不思議だったが、流石は教皇というべきか、アストラが声を発した感じはしなかったが何らかの手段で意思疎通しているらしく、頷いて目を瞑った。


「セラフィ様、スプリトゥス聖国は獣人の国の属国になることをここに誓います」


 流れるような所作でウルジェはセラフィの前に跪く。

 それは決して一国のトップが簡単にしていい行動ではもちろんない。だが、ウルジェに迷いは無いように見えた。

 その様子にフロディスとレジケルの国王レグナルトは絶句している。

 俺とセラフィは思い切りの良すぎるその行動に多少は驚いていたが、2人の王と比べるまでもなく落ち着いている。もしかしたらこうなるかもしれないと事前に予想していたからだ。

 当然ビャクにもそのことを話している。その際にある程度のパターンを想定して返しの言葉は決めていた。


「ウルジェ、おぬしが儂を崇めるのは構わぬ」


 このパターンはセラフィが返答することになっていたので、セラフィは打ち合わせ通り口を開いた。


「じゃがな、おぬしが――おぬしら聖国が儂を崇めることと国同士の関係性を混ぜてはならぬ。儂を崇めるのと国を崇めるのは同義では無い」

「……そう、ですね。失礼いたしました」

「うむ、分かればよい」


 俺達の目的は人と獣人の和平であり、決して獣人の国に属国が欲しい訳ではない。

 仮にここで属国になることを受け入れてしまえば、聖国に対して反感を持つ者も現れるかもしれないし、人間の国同士の関係性も微妙なものになってしまう。

 それは望むところではないのだ。


 セラフィの伝えたかったことをウルジェは理解してくれたようで、優しい笑顔を作りながら立ち上がる。


「では改めまして……セラフィ様、ヨゾラ様。スプリトゥス聖国は獣人の国と和平を結ぶことをお約束いたします」

「うむ、よろしく頼むぞ」

「スムーズに進んで何よりだ。それと、その様付けは止めてくれないか? 一応立場的には対等な訳だしさ」

「それは儂からも頼む」

「分かりました。ではセラフィさん、ヨゾラさんと呼ばせていただきます」


 聖国との話はまとまり、最後に握手をしてウルジェは自身の席に戻って行った。


「――さて」


 ウルジェのおかげで流れは出来た。このまま詰めさせてもらうとしよう。


「フロディス、あんたはどうするんだ?」


 俺が挑戦的な笑みを浮かべながら話を振ると、フロディスは呆れたような顔をした。


「ヨゾラ、もう少しやり方というものがあるんじゃないか?」

「そんなこと気にする必要があるか? もしかして俺に一国の王としての立ち振る舞いを期待してたのか? あんたみたいな」

「それはだな……」

「そもそもあんたは何がしたい? 獣人との戦争か? 和平を望む獣人の国との和平締結か? 以前セラフィに言われたことを忘れてるんじゃないか?」

「……全く」


 俺の言葉を聞いたフロディスはこめかみを抑えながら姿勢を崩して楽な体勢になった。


「レグナルト、難しく考えるだけ無駄だ。これ以上話すことも無い。グラヴィウスとレジケルも獣人の国と和平を結ぼう」

「そうは言ってもなフロディス。何の理由も縛りも無く和平を結ぶなど余の民達は納得せんのだが……」

「案ずるな、何かあれば帝国が責任を取ると周知させればいい」

「でしたらスプリトゥス聖国も同じく責任を取ると約束いたしましょう」

「……」

「会って分かったと思うがヨゾラはこういう奴だ。だが悪い奴ではない。そのヨゾラが協力的ならば、俺はそれを信じることにしよう」

「お、一人称が戻ってるな」

「黙れ! もうそんなことを気にしているような雰囲気ではないわ!」


 キレられてしまった。


「フロディスよ、この者を信用しておるのだな」

「話した回数はそれほど多い訳じゃないが、俺は人を見る目はある。ヨゾラは信用してもいい」

「であるか……分かった、レジケルも和平を結ぶことにしよう」


 どうやら上手くいったようで安心だ。


「ザルバ、あれを」


 フロディスが何かを要求すると、ザルバは後ろから4枚の紙を取り出した。それは各国に1枚ずつ配られる。

 何の紙か見てみると、和平を結んだことを証明するための物だった。


「そこに署名をして終わったら右の者に渡せ。この場にいる王全員の名が書かれるようにな」


 フロディスの指示通り、俺は自分とセラフィの名を書いてレグナルトに渡す。

 それと同時にウルジェから紙が回ってきたので、同じように名前を書いた。

 4度繰り返すと最初の紙が戻ってくる。


「本日はこれにて終了だ。が、ヨゾラとセラフィに対して言いたいことがある者もいるだろう。会食の場を用意したので、そちらで楽しむことにしようか」


 フロディスは俺を睨みつけながら場の解散を言い渡す。

 会食に行かないとまた何か言われそうなので、大人しく行くことにしよう。

自由な女神「何事もなく終わってよかったね。教皇の反応も想定してたみたいだし、まあ今更そんなことで2人が取り乱したりはしないよね!」

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