閑話:あっという間の1年間
合宿最終日は、特にこれといった問題も無く終えることが出来た。
それぞれが成長し、魔王討伐に向けての準備もそれなりだと言えるだろう。
その後の学校生活は、やはりアノン達と行動を共にすることが多く、周囲もアノンが只者ではないと察している様子だったが、別に気にする必要も無い。
どの道、魔王討伐に出発する前には大々的に公開されることだ。万が一会話などから知られてしまっても問題無い。フロディスからもそう言われていた。
残り3回あった合宿も何事も無く終了し、他の行事などはこの学校にはないので、特にこれといって特出する出来事は1年間起こらなかった。
肝心の魔王に関しては、未だに何の動きも無いそうだ。と言っても、魔王の姿などはフロディス達であっても知らないらしく、完全に戦場で獣人達が話していたことによる憶測でしかない。
獣人との戦争については、この1年で激化しているらしい。理由は分からないとのこと。
予想としては、魔王が復活した影響だとは言われている。
アノンはどうやら、勇者になってから自らの意志で戦場を見に行ったことがあるらしい。
目的としては、勇者としての自覚と役割をしっかりと刻み込んでおかないと、獣人と対峙した時に迷いが生まれそうだったから、とのことだ。
しかし、アノンの認識はその時点では甘かったと言って良いだろう。何しろ、戦場はアノンが想像していた数倍も数十倍も凄惨な場所だったからだ。
目を逸らしてしまいたい程のものだ。だが、その場所に来てしまった以上――勇者となってしまった以上は、目を逸らす訳にはいかないし、逸らすことは出来ない。
強烈な死の匂いに吐きそうになり、涙を流しつつもアノンは目を逸らさなかった。
アノンが本当に勇者となったのは、この時だろう。
そんな経験もあり、アノンは戦争を終わらせることに、つまりは魔王を倒すことに迷いはなかった。
戦争の一番の原因は魔王だと言われている以上は、その道を進むだろう。
魔王さえ倒しさえすれば、戦争は終わるのだと信じていた。
俺としては、違和感は覚えつつも基本はアノンについていくことにする。
正直な話をすれば、魔王を倒しただけで戦争が終わるとは思えない。思えないのだが、アノンが戦争を終わらせることを目的としていることに対して、俺の目的は今回は違う。
獣人との戦争を終わらせることは、俺が以前に立てた目的の一つだが、今回は魔王を勇者と共に討伐するという、いかにも異世界っぽいイベントを楽しもうと思っているだけだ。
勿論結果的にそれで戦争が終わるのならば一石二鳥だが、終わると個人的に思えない以上はその後の情勢に目を向けるべきだろう。
戦争を終わらせる活路は無かったが、魔王討伐の果てに色々と変わり、戦争を終わらせるきっかけが見つかればいいなと考えている。
まあ、そもそもの話、魔王に勝てる前提の話なのだが……
アノンは日に日に強くなっている。勿論、俺とセラフィも遅れを取らないようにレベル上げなどは前よりも精力的にやっているが、そんな俺達の目から見ても、アノンは明らかに強いと言える。
勇者というポテンシャルは非情に高く、こと戦闘においては一線を画している。
それ程の存在であるアノンの対となる魔王が弱い訳がない。
それこそ、俺やセラフィよりも強い可能性すらある。
結局は魔王に会ってみないことには何も分からないのだが、あまり楽しむことだけに傾倒していては、取り返しの付かない事態になる可能性もあることは忘れないでおこう。
勿論楽しむことが一番なのは変わりないがな。
魔王討伐に出発するまではあと1か月だ。
いよいよアノンが勇者だということも大々的に発表される。
学校でやり残したことは無いが、それでもセシルやルーシェとは一先ずの別れとなるので、しっかりと思い出は作っておこう。
自由な女神「次回からいよいよ魔王討伐に向けて出発だね! 一体魔王ってのはどんな奴なんだろう?」




