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レベルアップ

ポ○モン……眠い……ポ○モン……。

 朝、目を覚ますとそこに映ったのは見慣れない天井だった。

 クレーティオとの会話があったせいか、あまり寝たという感覚ではなかったが、俺の感覚に反して身体はスッキリとしており、疲労などは一切感じない。上手く説明することは出来ないが、クレーティオと会うあの空間にいる間は、精神と肉体が分離しており、精神だけがあの場にいる状態なのだろう。多分。


「いや、でもクレーティオが出してくれる飲みもんや菓子の味は感じてるな」


 精神が味を感じるというのも変な話である。


 朝からそんな思考をしていたが、途中で切り上げて動き出す。

 洗面所的なところで顔を洗って本格的に目を覚まさせる。地球と同じように蛇口を捻れば水が出るのだが、水道など通っているのだろうか? 水自体はとても綺麗で変な匂いも無いので、何らかの人の手が加えられているのだとは思うが、排水なども地球と同じようにやっているのかは気になるところ。その辺も帝都に着いてから調べてみることにしよう。


 そんなこんなやっていると、昨日夕食を持ってきてくれた婆さんが、今度は朝食を持ってきてくれたので、お礼を言って美味しく頂いた。


「さて、いつまでも世話になってる訳にもいかないし、そろそろ行かないとな」


 暖かい村の人達のお陰で、最初の一日は不自由なく過ごすことが出来たが、流石にいつまでも与えてもらうだけなのは落ち着かない。

 きっともうしばらくここに滞在するとなっても、この村の人達は気にせずに迎えてくれるだろうが、いい人達だからこそ迷惑は掛けたくなかった。

 それに早く世界を見てみたいという気持ちもある。なので、今は先に進むとしよう。


 俺は村を散策しアルギを探す。しばらく探していると、村の人達と談笑しているところを発見した。


「おうヨゾラ。こんなとこでどうした?」

「このままお世話になっている訳にもいかないのでそろそろ行こうかと思いまして」

「んなこと気にしなくてもいいのによ……まあ分かった。それで、何か必要な物はあるか?」

「武器になるような物を一つ頂けませんか?」

「分かった。余ってるのをやるから待ってな」


 アルギはそう言って何処かへ走って行った。

 俺はその間、アルギ以外の村人達に気を付けるように言われてほっこりしつつ、本格的に異世界を渡り歩くことに胸を躍らせていた。


 少ししてアルギが俺の腕の長さと同程度の長さの剣を持って現れた。


「これならお前さんでも使えるだろう。ほれ、持ってみな」


 手渡された剣は確かな重量感を感じさせる。しかし振れないという程でもなさそうだった。よくアニメなんかで聞くのは、思いっきり振ったとしても止めたいところで完全に止められるくらいになると達人レベルというのを見かける。今の俺にそこまでは無理そうだった。


「ウルフくらいなら何とかなるだろうが、万が一やばそうな魔獣が出てきたら迷わず逃げろよ? 危険を感じたら村に戻ってきてもいいからな。この村にいる奴らもそこそこ戦えるからよ」

「ありがとうございます。無理だけはしないようにします」


 出会って一日、しかも迷惑しか掛けていないのにここまで心配してもらえて、何だか涙が出そうになる。


「ヨゾラ君や、これも持っておいき」


 昨日の夜と今日の朝に食事を持ってきてくれた婆さんが、包みに入った弁当を持たせてくれる。


「本当にお世話になりました。いつか、必ず恩返しにきます」

「おう! 待ってるぜ!」


 暖かい気持ちを抱えながら頭を下げて俺は村を後にする。

 いつか、ルーディスでの生活が安定したらまたこの村に来ようと思う。一日で貰った恩以上のものを返せるように、今は頑張るだけだ。






 ――――――――――






 森の中で迷わないように慎重に歩いて行く。

 アルギが昨日俺に渡した地図はそのまま持っていっていいと言ってくれたので、手元には地図がある。貰った剣も鞘に納めて腰に下がっていた。

 慣れないうちは、腰にある剣のせいで歩きにくかったが、慣れてきたこともあり、気にならなくなっていた。


 街までは何事もなく進めば半日くらいだろうか……俺の体力で半日も歩き続けられるか心配だ。

 最悪の場合何処かで休む必要が出てくる。夜になってしまえば移動に支障が出てくるので猶更だ。もし今日中に着かなそうなら、早めに安全を確保しておいた方が良さそうだ。


 しばらく歩いていると、俺の足音以外に音が聞こえてきた。

 茂みが揺れる音で、そちらに目を向けると、草葉の陰から一匹の狼が出てきた。恐らくこいつがウルフという魔獣だろう。


 初めて見る魔獣に身体が強張るが、動かなければ餌になるだけなので腕に力を入れて剣を抜く。

 俺が剣を抜いたからだろうか、ウルフはこちらを威嚇するように身を屈めて唸り出した。


 少しの膠着が続く。俺に戦いの心得はないので、ここで先に動くべきか相手が動くまで待つかの判断が付かない。FPS初心者が最後まで生き残っているのと同じような感じだ。動けないから、戦いにならずに最後まで残ってしまう。


 ならばここは恐れずに相手に対して行動を起こしてみよう。

 俺は剣を構えたまま、右足を前に一歩進めた。しかし進むような重心の動かし方はしない。あくまでも攻撃するぞという姿勢を見せつつも、受け身になる構えだ。

 その動きにウルフは見事に反応して飛びかかってきた。俺は対応出来るようにしていたため、直線的に迫ってくるウルフの側面に即座に回避して、無防備な背中に思いっ切り剣を振り下ろす。

 腕に伝わってくる鈍い感触と血飛沫が舞い、剣が身体の中腹程まで食い込んだウルフは少しの藻掻きの後動かなくなった。


「はぁ……一先ずはどうにかなったな」


 初めてということもあり、命を絶つ感触に若干参ったが、この世界で生きていく以上はある程度慣れなければいけない。

 心に疲れを感じて座り込むが、それとは裏腹に肉体には力が湧いてくる。


「レベルが上がったってことでいいのか?」


 俺はステータスを呼び出して確かめてみることにした。


【ヨゾラ】

 レベル2 HP14 MP12 攻撃12 防御10 特功10 特防8 素早さ12

 精霊:無し

 称号:ヨゾラの作者


 予想通り魔獣を倒せばレベルが上がるみたいだ。

 ウルフを倒した時に貰える経験値のようなものがどのくらいかは分からないが、低レベルとはいえ一匹倒しただけでレベルが上がったことを思えば、しばらくはウルフだけでレベル上げが出来そうだ。

 ステータスの中で一番上昇したのは攻撃と素早さだ。剣で倒したことが関係していそうな気もするが、その辺はすぐに分かるだろう。


「にしてもレベル1でワンパンか……クレーティオが気を利かせて俺でも倒せる相手しかいない場所に飛ばしてくれたんだろうな」


 村への恩返しもだが、クレーティオにもその内何か恩返しが出来るといいな。何だかんだ言いつつも、俺の為に色々と動いてくれていたみたいだし。


「まああいつのことだから、俺が自由に生きてるだけで恩返しだよとか言いそうだけどな……」


 そんなことを言っているクレーティオが容易に想像出来た。


「まあ自由だと言うならクレーティオに恩返ししようとするのも俺の自由だしな。その為に早く力も付けないとな」


 草葉の陰から更に三匹のウルフが出てくる。数が増えて厄介だが、先程の戦闘を思い出せば、変に間違えなければ負けたりはしないだろう。

 レベルも2になっている。この1の差がどこまで大きいものか、是非試させてもらおう。


 俺を囲もうとウルフたちが動き出したので、囲まれる前に俺は走り出す。

 真っ直ぐに走る俺をウルフたちは追いかけてくる。素早さはウルフの方が早そうだったが、三匹の中で特に早いのはいなさそうで、差は詰めてきているが場所的に俺が走り出した方向と逆側にいたウルフ二匹は若干遅れていた。


 予定通りの流れだ。俺は先頭のウルフに追い付かれる寸前に足を止めて、振り向きと同時に剣を振る。

 全力で走るウルフの勢いと合わさり威力の増した俺の斬撃がウルフの首を跳ね飛ばす。

 頭と切り離された胴体を後ろを走るウルフ目掛けて蹴り飛ばすと、片方が大きく回避し、もう片方は直撃した。

 一瞬迷った後に大きく回避した方のウルフ目掛けて走り、着地の寸前を狙って剣を振って倒す。

 残った一匹は、自身と同じくらいの質量をもろに直撃させられたこともあってか、受け身が取れずに足の一本が折れて倒れていた。

 それに近づいて止めを刺す。これでウルフ三匹は全部倒し終わった。


「群れで行動する割には知能は低そうだな。これなら無茶しない限りは大丈夫そうだ」


 レベルも3に上がっており順調と言えた。身体能力も若干だが向上したように思う。

 感じられる成果が大きいというのはやる気にも直結しており、俺はさらなる獲物を探して森の中を歩き始めた。






 ――――――――――






「これは……調子にのってやり過ぎたか……」


 既に辺りは暗くなっており、視界は最悪と言って良い。それなのにも関わらず、俺は安全に休める場所の確保すら出来ておらず、どうしたもんかと立ち尽くしていた。

 レベルが上がっていく感覚が楽しくて、ついつい時間を忘れてしまったのだ。気が付いた頃にはもう手遅れ、どこで休もうかと悩んでいた。

 しかしハイになった状態から急に冷静になったことで、忘れていた疲労感も一気に襲ってくる。結果として、俺は周りに常に注意を配った状態で休まなければいけなくなってしまったのだ。


「近くに手ごろな場所があればいいんだが……」


 流石に日が昇るまでこうしている訳にもいかない。俺は周囲の安全確認が終わってから、疲労感のある身体に鞭を打って動き出した。


 しばらく歩いていると、人三人分程の窪みができた岩肌を発見した。かなりお粗末だが、もうここでいいかと適当に決めて、壁を背に腰を下ろす。

 婆さんから貰った弁当は既に食べているので、食事はない。空腹を感じるが、時間を忘れて狩りに没頭していた俺の責任なので我慢することにしよう。


 明日は朝一で街に向かう。偶々遭遇してしまったウルフとの戦闘以外は一切挟まない。その結果また到着が遅れては、それこそ危険が伴ってくる。疲労が溜まった状態ではどこでミスをするか分からない。


「そうだ、レベルはどんな感じになったかな」


 俺は見ることも忘れていた自分のステータスを表示させる。そこには、俺の思っていた以上の結果が映し出されていた。


【ヨゾラ】

 レベル23 HP174 MP102 攻撃189 防御177 特功160 特防153 素早さ202

 精霊:無し

 称号:ヨゾラの作者


 何故だか、最初の上り幅とは全く関係無くバク上がりしていた。

 ここまで数値に差が付いた理由は分からないが、初期値から考えて十数倍は強くなっている。この世界ではこんな上がり方をするのだろうか?

 勿論俺自身の肉体スペックがクレーティオにより高く設定されていることは理解しているが、それでもこれには首を傾げざるをえない。今ならばウルフの大軍を相手しても勝てる可能性すらあった。


「てかこんなことに気が付かない程俺は戦闘に没頭していたのか……」


 自分が何かに没頭すると周りが見えなくなるのは分かっていたが、ここまでとは思ってもいなかった。

 とはいえ、悲観することは一切ない。戦いが起こる世界で早々にある程度の力を付けることが出来たのはむしろ嬉しい誤算だ。

 落ち着いたら一旦自身の能力を詳しく確かめてみることにしよう。


 俺は自身に呆れつつも、ステータスを閉じて身体を休めることにした。



自由な女神「いやぁ、やっぱりヨゾラ君は面白いね! 転生して早々から楽しませてくれるよ!」

作者「本、さいこー。ぽ○もん、ばんざい」

自由な女神「ちなみに作者はどうしたかっていうと、ポ○モンやってて寝不足だね。日付が変わってから17時間ぶっ通しでやってたみたい。まあ、もろドンピシャ世代で前々から楽しみにしてたからね」


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