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秘境の奥地

 全員が起きてから朝食を取り、装備などの最終チェックを行う。

 本来ならば装備のチェックなどわざわざしなくてもそれぞれがしっかりと出来ているので問題は無いのだが、俺とセラフィが戦装を身に纏う為の時間とでも言えばいいのだろうか。

 セシルとルーシェにしか戦装のことを話してないので、装備を整えると告げて戦装を身に纏って戻ってくる。

 アノン達にもその内話すことになるだろうが、なにも合宿中じゃなくてもいいだろう。


 戦装を纏って戻ってきた俺とセラフィを見て、セシルとルーシェは気が引き締まったようだ。アノン達も、俺とセラフィが本気なのは何となく感じただろう。


「それじゃあ行くか」


 全員油断など無いことは見れば分かるので、わざわざ必要以上のことを言うことも無く、俺達は秘境の奥地に向かって歩き出した。

 途中で遭遇した魔獣は手短に処理して、波の後続が来る前に素早く進んでいく。

 奥地に近づくほどに魔獣は少なくなっていくし、追ってきている魔獣も諦めるので進むことだけを考えるならばこれが最善策だ。


 やがて奥地の入り口部分に辿り着いた。

 明確な境目がある訳ではないが、なんというか雰囲気が一気に変わるのだ。

 意識的に気を抜こうとしても、本能がそうさせないような異様な空気が流れ、周囲が恐ろしい程に静かになる。

 全く別の場所に来たのではないかと錯覚させる。


 俺達は決して離れないように進んでいく。

 しばらく歩いていると、前方の方から微かに音が聞こえてきた。そのタイミングで足を止めて待ち構える。音はどんどん近づいてきていた。

 姿を現したのは、既に2度戦ったことのあるドラゴンだった。

 即座に戦闘が始まる。ドラゴン自体は、今更そこまで手こずるような相手ではないのだが、その先は地獄のような時間が待っていた。






 ――――――――――






 秘境の奥地で押し寄せる波は尋常ではなかった。

 魔獣の個体数自体は少ないものの、強さは中腹とは比にならない。初めに出てきたドラゴンは1番弱かったといっても過言ではなく、その後はドラゴン以上の魔獣が時には複数同時に現れる。

 ケルベロスが3体同時に現れた時には苦笑いが出てしまった。


 流石に前衛は無傷とはいかず、大きな傷こそ無いものの、小さな傷は無数に出来ており多少の血が出ている。

 俺の役目はあくまでも危ない場面のサポートということになっていたが、時間が経つにつれてそうも言っていられなくなり、前衛として戦っていた。

 セシルとルーシェは疲労が大きいので少し退いた立ち位置に移動しており、ロニはそのセシルとルーシェのカバーにまわってもらった。


 現在は俺とアノンのツーマンセルで戦っている。

 俺にもアノンにも余裕はなく、まだ戦えてはいるが疲労は徐々に溜まってきている。

 セラフィとフーシーの的確な援護が無ければ既に撤退していたところだ。

 特にセラフィの魔法は、このレベルの魔獣に対しても大きなダメージを与えられる威力があるのでかなり助かっている。


「次が来るぞ。まだいけるか?」

「は、はい! まだやれます!」


 頬に付いた土を拭いながらもアノンははっきりと答える。ならもう少し頑張るとしよう。


 魔獣の死骸を掻き分けながら現れたのは巨大な蛇だった。

 地球基準での巨大ではない。はっきりと全体を見ることは出来ないが30メートルはありそうな程だ。規模が違い過ぎる。

 もはや出てくる魔獣の名前は分からない。サリーならば知っているかもしれないが、悠長に聞いている余裕などないので、戻って落ち着いてから聞くことにしよう。


「俺が先に行く! 様子を見つつ援護を頼む。――セラフィ!」

「援護は任せよ! アノン、ヨゾラを頼んだのじゃ!」

「はい!」


 精霊魔法が発動する感覚に包まれる。発動しっぱなしだと俺もセラフィも疲れてしまうので、戦闘と戦闘の僅かな合間をセラフィが見計らって解除してくれていた。

 見えないところでもサポートが上手い奴だ。


 俺はフォトンレイを打ちながら大蛇に向かって突っ込む。

 大蛇はフォトンレイを避けることは無い。フォトンレイは大蛇に当たるも、大してダメージを与えた様子は無かった。

 先程からそうなのだが、このレベルの魔獣ともなると、いくら戦装と精霊魔法があったとしても王級であるフォトンレイでは殆どダメージを与えることが出来ない。セラフィ程の特功があれば違うのだが、そうでない俺に魔法で出来るのは牽制程度なのだ。

 目などに的確に当てることが出来れば別なんだがな。


 無い物ねだりをしても仕方がない。十分に接近することは出来た。

 これほどの巨体となると、適当に体をぶつけられただけでかなりのダメージになるか、最悪の場合死ぬ可能性すらあるので、反撃に気を付けながら大蛇の体を斬りつける。

 鋭く硬い鱗を斬り裂き、肉を斬る感覚が手に伝わってきた。両断するようなことは出来ないが、精霊魔法を発動している状態ならば斬ることが出来るのは幸いだ。


 大蛇の体から血飛沫が上がる。魔獣の血には毒が含まれていることがあるらしいので、浴びないように避ける。

 それなりにダメージが入ったはずなのだが、大蛇に気にした様子は無く、高く上げていた頭を俺に向けて下ろし飲み込もうとしてくる。


「させません!」


 頭が下りてきたのを見計らってアノンが跳び、横に真っ直ぐ斬る。感知能力が高いようで、即座に大蛇が反応し目を潰すことは出来なかった。

 アノンが斬った瞬間大蛇は怯んだと思ったのだが、頭を上げる瞬間俺に向かって毒液を吐いてきた。

 毒液を回避することは簡単だったのだが、その後に予想外の攻撃が俺とアノンに飛んできた。


「そんなのアリか……」

「っ!?」


 大蛇は大きく体を回転させると、鱗の一部が俺とアノンに向かって飛んできた。

 俺は毒液を回避したばかりでアノンは着地したばかり。回避が非常に難しかった。


「致命傷だけさけるのじゃ!」


 セラフィの声が聞こえてきて、俺とアノンはそれぞれ対処する鱗を瞬時に選択する。それ以外の鱗はセラフィとフーシーが魔法で撃ち落としてくれた。

 無理な体勢で残りの鱗を剣で弾いたり避けようと身体を捻る。

 全てを避けきることは出来ずに、俺とアノンはそれぞれ足と腕に今日負った傷の中では最も大きな傷を受ける。

 あくまで致命傷を避けただけだ。


「大丈夫かアノン」

「いっ……私は大丈夫です。でも戦闘が長引くのは避けたいですね」

「そうだな。大蛇も普通に動いてはいるがかなりダメージは溜まってるはずだ。次で決めよう」


 俺とアノンで付けた傷はかなり深い。既にかなり血が流れているので、このまま押し切りたいところだ。


「ヨゾラ先輩、30秒だけ時間を稼いでいただければ、私が決めます」

「……分かった。頼んだぞ」


 何かとっておきでもあるのだろう。任された以上はやるしかない。


 俺はヘイトを全力で稼ぐために突っ込んでいく。

 ダメージを稼ぐ必要は無いとはいえ、ただ突っ込んだだけでは後ろで画策するアノンにヘイトが向いてしまう可能性があるので、俺は倒すつもりで斬りかかる。

 流石に大蛇もこれ以上攻撃を食らうのは看過できないようで、大きく動いて俺に向かって体を振り回してきた。

 攻撃の範囲が広く避けるのが難しい。地面に多少穴を開けてそこに身を隠しても、それ以上に深く削られてしまう。

 ここは覚悟を決めるしかなかった。


「こんなとこで……やられるかぁ!」


 俺は空中で逆さまになるように跳ぶ。それでも大蛇の攻撃範囲から抜け出せているのは下半身だけだ。

 逆さまの状態で剣を構える。避けきれない部分は、自分で安全な場所を作るしかない。

 迫りくる大蛇の体に剣を向けて斬り裂いていく。丁度上半身が抜けれるように広げながらだ。

 視界は斬り裂かれた大蛇の間をすり抜けるように過ぎていく。正直滅茶苦茶怖かった。


「はぁ、はぁ……」


 何とか避けきることが出来た。大蛇の血が多少かかったが、運が良く肌に直接着いたりはしていない。

 一息つきたいところなのだが、そんな暇は無い。跳んだ瞬間に後ろでセラフィが魔法の準備をしているのが見えていたので、俺は着地後にその勢いを利用してもう1度大きく跳んだ。

 俺が斬り裂いた大蛇の体に向かってセラフィの魔法が飛んでいく。入学の時に見せた光属性神級魔法である光の深淵だ。

 光の球体が大蛇の体に触れた瞬間、強い衝撃が走り裂かれた部分から後ろが弾け飛んだ。

 洒落にならないダメージが入ったはずなのだが、大蛇はそれでも俺を殺そうと頭ごと突っ込んでくる。


「ヨゾラ先輩にばっかきついこと任せてられないな!」


 またも回避するのは難しいのでどうしようか考えていると、ロニが剣に炎を纏わせて鱗に傷つけられることも恐れずに、殴るように大蛇を斬りつける。


「私達も負けてられないよ!」

「俺達だってさらに強くなったんだ」


 ロニに続いてルーシェとセシルも斬りこむ。完全に不意を突いた3人の攻撃で大蛇の動きが止まる。


「体内であればそれなりに効くでしょう」


 そこへフーシーの魔法が飛んでくる。

 風の刃は自然では在り得ない軌道で大蛇の大きな口の中に入っていき、口内を無暗に傷つける。

 これには、ここまで殆ど怯むことが無かった大蛇も体をうねらせて藻掻いていた。


「さて、そろそろか……」


 俺はそこへ追撃することもなく、ただ大蛇を見つめて呟いた。

 丁度、アノンが指定した30秒が経つ頃だろう。


「ありがとうございました。これで決めます!」


 アノンが準備完了を告げたのでそちらに目を向けると、剣が眩く輝いていた。


「全てを滅せ――グランシャリオ!!!」


 アノンが技名を口にした瞬間、姿が消える。

 俺の目ですら追えない程の高速移動。気付いた時には、アノンは大蛇の後ろで背を向けるように立っていた。


「終わりです」


 言葉に遅れて大蛇から血飛沫が上がる。それも7か所同時にだ。

 アノンはあの一瞬で7か所を斬ったのだ。何かしらの発動条件を満たさないといけないようだが、それでも恐ろしい技だ。

 仮に俺が食らったとして、この技だけで俺のHPが消し飛ぶ可能性がある。

 人間に比べて数段タフな魔獣。その中でも大蛇は俺が戦ったことのある魔獣では最もタフだった。

 そんな大蛇でも、今まで蓄積したダメージに加えて、こんな技を食らえば流石に沈む。地面に血の池を作る大蛇は起きることは無い。


 技を使ったアノン自身にも身体に負荷がかかるようで、倒れはしなかったが座り込んでしまった。

 今日はこれ以上の戦闘は出来ないだろう。ルーシェとフーシーがアノンを支えて、俺達男が前衛、セラフィが最後尾で、魔獣が出てきても対応出来るように並んで拠点に戻ることとなった。




自由な女神「随分とかっこいい技が出てきたね。ヨゾラ君もそろそろ必殺技が欲しいところかな?」


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