合宿を終えて
傷、体力共に十分回復した俺は、今回の合宿で起こったことについて詳しく聞くためにセラフィとセシルとルーシェを連れてサリーの元を訪れた。
あまり公に出来るようなことではないので、話をするのは学校にある普段は使われていない空き教室だ。
「ではまず、何故樹海の秘境にロウ君達の班がいたのかですが……完全に独断で、引率の教師の目を盗んで抜け出してきたようです。元々ロウ君達がヨゾラ君達に対抗意識を燃やして樹海の秘境を合宿先として申請していたのは行きの馬車で話したと思うのですが、貴族ということもあってかプライドも高く、ヨゾラ君達に許可が出て、ロウ君達に許可が出なかったのが納得出来なかったのでしょう」
それは……随分と傍迷惑な話だった。
合宿先は、基本的に生徒主導で決めることになるのだが、実力的に釣り合わなければ当然却下される。それをプライド云々で覆していては意味が無い。
しかも今回はその結果俺達に多大な迷惑が掛かっている。セラフィが言っていた通り、助けなくてもよかったかもしれないな。
そもそも命知らずにも程がある。魔獣との戦いにおいては、技術は勿論あるにこしたことは無いが、どちらかというとステータスがものをいう。ある程度のステータスが無ければダメージを与えることは出来ないし、一撃食らえば死んでしまう可能性もある。
今回俺が生きていられたのも、素でそれなりに高いステータスを戦装でさらに盛ったからだ。もし戦装が無ければ、吹っ飛ばされた時に死んでいる。
模擬戦で、ステータスによるごり押しで俺に負けたロウが秘境で戦えるはずもない。もし俺達で行けるなら自分達でも行けると思っていたのだとしたら思い上がりもいいとこだ。
「今回のことでロウ君は退学となるでしょう。騎士などになる未来は失われたと言って良いです。長男ではないので跡取りになることもなく、帝国の重役となる可能性は潰えました。まあ、自業自得といえばそれまでですね」
可哀そうだとは思わない、自分で招いたことなのだからサリーの言う通り自業自得だ。
セシルもルーシェも当然だと言わんばかりに頷いている。時間が経ちそれなりに怒りは収まったようだが、この2人の怒りっぷりもセラフィに負けず劣らずで凄かった。
俺のことを想ってそこまで怒ってくれたのだから、俺としては素直に嬉しかった。良い友達を持ったと思う。
「ただ呆れた話ですが、ロウ君の実家――ハーツ家はロウ君の処遇に納得しておらず、ヨゾラ君達に対して批難するようなことすら言っているみたいです」
「なにそれ……信じられない……」
「助けられた立場だということを伝えても感謝の意も全く無かったので他の教師たちも呆れていますね。もしかしたらヨゾラ君達に何か圧力をかけてくる可能性もあるので気を付けてください」
息子が息子なら親も親ということか……フロディスに話をしに行っておいた方がいいだろうか? 流石に皇帝から何かを言われれば大人しくなるだろう。
セシルの父親であるザルバも話を聞けば味方をしてくれそうだ。結果的にセシルに何もなかったとはいえ、一歩間違えば死んでいた可能性すらあるのだ。
そういえばルーシェの母親もそこそこの地位だったか? そちらも心強い味方になってくれるだろう。
「私自身は貴方達の味方なので何かあったら遠慮なく言ってくださいね。学校内でのことであれば力になれると思います」
サリーからも心強い言葉をもらい話はそこまでとなった。
その後俺達は、ルーシェの提案で合宿の打ち上げをすることになり、以前クレーティオもいた時に入った酒場にやってきた。
セシルとルーシェの様子を見るに、戦装のことも聞きたそうにしていたので、出来るならもう少し人が少ないところがよかったというのが正直なとこだが、絶対に隠さなければいけないという程でもない。結局はどう足掻いても俺とセラフィ専用に作られた魔道具なので他の人には使えないのだ。
俺達は席について酒を注文する。戦装以外にも話すことは色々とあるだろうが、まずは乾杯からだ。
「それじゃあヨゾラ君! 乾杯の音頭をどうぞ!」
「了解。――色々とあったが、何とか合宿を終えることができた! 各自レベルもそれなりに上がったと思う。合宿の目的は十分に達成出来て成功と言える。そんな成功を祝って……乾杯!」
「「「乾杯!」」」
俺達はグラスを鳴らし合い、その中身を一気に喉に流し込んだ。
「ヨゾラ君、セラフィ、今回はありがとね。2人のお陰で凄く強くなれたよ!」
「魔獣ともそれなりに戦えると合宿前までは思ってたけど、完全に思い上がりだった。秘境にいるような、強力な魔獣相手だと俺はまだまだだと分からされたよ。それでも2人がいたお陰で大分戦い方を覚えることが出来たし、レベルも大きく上がった。ありがとう」
グラスの中身を空にしたセシルとルーシェは俺とセラフィに小さく頭を下げてお礼を言う。
2人にとっていい経験になったのならば、頑張った甲斐はあった。俺とセラフィにとっても確かな糧となったので、無駄なことは一切なかっただろう。
「どういたしまして。でも中盤からは2人も慣れてきて戦闘の効率も上がったから俺とセラフィにとってもありがたかったよ。2人だとあそこまで効率よくレベル上げは出来ないからな」
「そうじゃな。秘境で戦うこと自体は問題無いのじゃが、限界はあるからのう」
「それで、2人はどのくらいレベルが上がったんだ?」
「そういえば2人にステータスを見せたことってなかったね。誰にでも見せる訳じゃないけど、2人になら全然見せてもいいし、折角だから見てみてよ」
俺達が普段学校で着ている制服は、原理は正直さっぱり分からないが小さな魔法程度ならば弾いてしまうというのは以前ルーシェが言っていた。
どうせ無駄なのだからと、誰かにサーチを使うことすら忘れていたが、今は制服を着ていない。これならばサーチを使ってステータスを見ることが出来る。
セシルも見ても問題ないとルーシェに賛同する感じだったので、折角なので見てみることにした。
まずはルーシェから――
【ルーシェ】
レベル162 HP786 MP561 攻撃621 防御597 特功326 特防289 素早さ973
精霊:創級精霊
魔法:平級土属性 豪級土属性 平級水属性 創級精霊魔法
称号:無し
続いてセシル――
【セシル】
レベル178 HP1002 MP245 攻撃844 防御771 特功210 特防352 素早さ786
精霊:創級精霊
魔法:平級火属性 創級精霊魔法
称号:無し
レベルは合宿が始まる前の俺よりも高くなっている。元がどれ程だったかは分からないが、かなり上がったのだろうというのは分かった。
ルーシェのステータスは物理面が多少高く、素早さがずば抜けて高い。セシルのステータスはルーシェに比べて物理面がさらに高くなっており、その代わりそれ以外は低くなっている。素早さはそれなりにはあるが。
しかしこうして見てみると、いかに俺とセラフィが壊れたポテンシャルをしているのかが分かる。セシルもルーシェも、一般的に見れば才能に恵まれているだろうことを考えれば猶更だ。
「ねえねえ、ヨゾラ君とセラフィのステータスも見せてよ! かなり高そうだし、ずっと気になってたんだ!」
「それは俺も気になるな。もしよければ見せてくれないか?」
見せてもらったのだからこちらも見せるのが筋なのだろうが、俺は少しだけ迷ってしまった。
理由は2つある。単純にステータスに差があり過ぎて2人が自信を無くさないかという心配。もう1つは理級精霊――つまりはセラフィなのだが、契約しているのを知られてもいいのか、というとこだ。
称号も懸念すべき点か。そう考えると3つだな。
「……俺とセラフィのステータスのことを、誰にも話さないって約束してくれるなら……セラフィはどうだ?」
「ん? 儂は問題ないぞ」
セラフィは見られることに対して何の心配もしていないようだ。
単純にセシルとルーシェを信頼しているのか、何も考えていないのか。後者だとするのならば、少し心配になる。
セラフィは頭が良さそうに見えることが多いが、基本は何て言うか阿呆っぽいからな……
「勿論誰にも話したりしないよ! それはマナー違反だしね!」
「俺も誰にも言ったりしない。親父に聞かれたとしても黙ってるよ」
俺もこの2人が誰かに話したりするとは思ってない。確認したのは、俺に迷いがあって聞いてしまっただけだ。
「分かった、見てもいいよ」
最終的にはなるようになるだろうと、俺は許可を出した。
説明することは増えるだろうが、俺の中で話してもいいかとなるくらいには2人のことを信用しているみたいだ。
セシルとルーシェは俺からの許可が出ると、俺とセラフィに向かってサーチを発動させる。
折角なので、俺も改めて自分とセラフィのステータスを確認しておこう。
【ヨゾラ】
レベル274 HP3272 MP5068 攻撃1912 防御1845 特功4331 特防1524 素早さ1997
精霊:理級精霊
魔法:平級火属性 平級土属性 王級光属性 平級闇属性 豪級闇属性 神級闇属性 理級精霊魔法
称号:ヨゾラの作者 理を歩む者
【セラフィ】
レベル196 HP968 MP63961 攻撃299 防御501 特功33670 特防6327 素早さ786
精霊:無し
魔法:平級光属性 豪級光属性 王級光属性 聖級光属性 神級光属性 平級闇属性 豪級闇属性 王級闇属性 聖級闇属性 神級闇属性 理級精霊魔法
称号:理を操る者
俺は既に全盛期よりも強くなっている。最後のケルベロスは相当経験値が美味しかったのだろう。
セラフィに関しては言うまでもない、相変わらず物理面は貧弱だが魔法に関してはもう訳の分からないことになっている。
こうしてセシルとルーシェのレベルと比べて分かったが、ドラゴンとケルベロスの経験値は俺とセラフィにしか入らなかったのではないのかと思う。元のレベルがセラフィよりも低いとは考えにくかった。
にしても、これに近いレベルで、さらに戦装と精霊魔法まで使ってようやく勝てたケルベロスがどれ程恐ろしい魔獣だったか……これで満足していたら、いつかまた痛い目を見そうなものだ。
セシルとルーシェの方を見てみると、完全に絶句していた。
何だかソフィアとルピにステータスを見せた時を思い出して懐かしいような気持ちになる。
「何か俺とセラフィのステータスを見て、聞きたいことってある?」
勿論こんなこと聞かなくとも、色々と質問されるのは分かりきっているが、2人を現実に戻すためにも軽い口調で話しかけた。
俺に話しかけられてハッとして2人は戻ってきた。
先に口を開いたのはルーシェだ。
「……これ、私達が模擬戦で負けたの仕方なくない?」
出てきたのは、どこか諦めたような、そんな言葉だった。
自由な女神「セシル君もルーシェちゃんも一般的に見ればかなり才能がある方なんだけど、ヨゾラ君とセラフィちゃんを見ると、どうしても弱く見えちゃうよね。僕もステータスの数値って意味では才能が無かったから二人の気持ちもよく分かるなー」




