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この異世界は物足りない  作者: VRクロエ
異世界学校編
45/137

合宿

 一週間が経ち、合宿まで後一日となった。

 合宿の日程は一週間で、その間は場所によって宿になったり野宿になったりといった感じになる。

 勿論野宿の場合は、魔獣を狩って食べるか、事前に持っていった分の食料を食べることになり、しっかりとした食事は食べれないことになる。

 俺達が行く樹海の秘境は後者になるだろう。


 食事以外のこととなると、引率する教師だが、それぞれの班が発表されているのにも関わらず、俺達に誰が付くのかは未だに教えられていなかった。

 どうなっているのか聞いたところ、合宿で秘境に行く班がいるのは初めてなので、万が一秘境で何かがあった際に十分対応出来る教師の選定に時間が掛かっているらしい。

 何だかんだ言っても行く場所は秘境なので、引率が1人となると難しいらしい。


 日が明けて、俺達は食堂に集まっていた。

 既に出発している生徒が多いので、学校内はかなり静かで、食堂にいるのも俺達だけだ。


 食事をしながら一週間の方針を改めて確認する。

 秘境は奥に行くほど魔獣が強くなる。それを考えて、最初の二日を秘境の入り口付近で過ごし多少のレベル上げをして、その後中腹に移動し四日間がっつりレベル上げをする。

 この六日間でレベルを五十は上げたいと考えていた。

 経験値は、数人で魔獣を狩ったとしても減ることは無い。なので、俺が果ての秘境にいた頃よりも早くレベル上げが出来るだろう。


 そして最後の一日は秘境の最奥に挑む。

 と言っても、危なくなったら即撤退を常に心に置き、狩れそうな魔獣だけと戦っていく感じだ。


 秘境という場所は、未だにその殆どが未開拓で、出現する魔獣などもイレギュラーなことが多い。戦装があるとはいえ、セシルとルーシェにもまだ話していないことだし、出来る限りは使わないで済むように、慎重に立ち回りたかった。


 方針も再確認したところで俺とセラフィの編入試験をした時に付いていたサリーという教師が食堂に入ってきた。

 どうやらサリーが俺達の引率をするみたいだ。


「今回は私が引率することになりました。正直私でいいのかというところはありますが……よろしくお願いします」

「お願いしますサリー先生!」


 実際の実力がどうなのかは知らないが、選ばれたということは教師陣の中でもそれなりに実力があるのだろう。


「準備は大丈夫ですか?」

「大丈夫です。ヨゾラが持っている収納袋がかなり良い物だったので、必要な物は入れて貰いました」


 一応食料は一週間分入っている。それ以外にも予備の武器等は用意しておいた。

 流石にルーシェの着替えはルーシェが自分で持っているが、セシルの着替えとセラフィの着替えは俺が持っていた。

 正直必要な物といえばこんなもんだ。テントなども持ってはいるが、魔法でどうにでもなってしまうので、使う機会は恐らくないだろう。


「それでは行きましょうか」


 サリーに連れられて俺達は帝都を出る。

 秘境までは馬車で行くことになっていた。その辺の手配は学校が勝手にやってくれるので、詳細は知らない。

 遠くに行く場合は数日前から出発するのだが、俺達が行く樹海の秘境はそこまで遠くはなく、馬車で半日もあれば着くので、当日の出発になったのだ。


「貴方達ならば大丈夫でしょうが、私は基本的には戦闘には参加しません。危なくなったときのみです。まあ貴方達が危なくなるような状況で私に出来ることがあるのかは分かりませんが、いざという時は私が殿をするので貴方達は逃げてください」


 サリーの言葉に俺達は渋い顔をする。

 ここにいるメンバーで誰かが危なくなった時に逃げるような奴はいない。意地でも助けようとするだろう。

 一応は頷いておくが、絶対にそうはならないだろうなとは思った。


「そういえばサリー先生、ロウ君達の班も私達と同じ樹海の秘境を合宿先に選んでいたみたいなんですが、どうなったんですか?」

「あー、あそこの班ですか……実力的に無理だと却下されていましたね。最後まで抗議してたみたいですけど、結局樹海の秘境の近くにある草原の方になったみたいですよ」


 俺達の班が秘境に行くというのはすぐに噂になった。それを聞いたロウを含む貴族で組まれた班の奴らが、対抗意識を持って自分達も俺達と同じ樹海の秘境に行くと言い出したのだが……結局別の場所になったのか。

 ロウ以外の班員がどうなのかは知らないが、正直ロウの実力では秘境は厳しい気がする。俺達でもあまり無理は出来ない場所だ、ルーシェ程の実力でもギリギリだろう。ロウでは簡単に死んでしまいそうだ。


「正直私としては貴方達が秘境に行くのも反対なのですが、冒険者ギルド、さらには皇帝陛下からも行かせてやれと言われてしまうと、止める訳にもいかなかったので……」

「え、皇帝陛下からも言われてたんですか?」

「はい。どこからか話を聞いたようで、書状で送られてきました。あの4人ならば大丈夫だろうからと。あ、忘れてました、皇帝陛下が素材は持ち帰るようにとも言われましたね。それとヨゾラ君は合宿が終わった後城に顔を出すようにとも書かれていましたね」

「俺が? どうしてまた……」

「それは私にも分かりません。でも、かなり楽しそうな文面でしたよ。一体陛下とどういった関係なんですか?」

「強いて言えば、友人ですかね?」

「はぁ、サラッととんでもないことを言いましたね……」


 サリーは呆れたような顔をしているが、そんな顔をされても仕方がない。

 俺としては別に気に入られようとしたわけではないのだが、勝手に気に入られてしまった。少なからずセラフィの言葉によるものもあるだろうが、初対面の相手に対してもあそこまで砕けて話せるというのは、流石帝国のトップという印象が強かった。

 まさしく、俺が思い描いていた帝国という感じがして嬉しくはあるが。


 とりあえずフロディスに呼び出された時のことを話したりしながら馬車の中で時間を潰していた。

 しかし半日というのは意外と長い。魔獣なんかも出てこなくて平和なので猶更だ。

 なので俺は、果ての秘境というのは伏せたが、果ての秘境に行った時のことを話すことにした。


「秘境では波があるんだ。一度戦闘を始めると、しばらくは休む暇なく魔獣が襲ってくる。だから目の前の魔獣を倒しても、すぐに次の戦闘に気持ちを切り替えた方がいい」

「波か……それは恐ろしいな。一度の波はどのくらいで終わるんだ?」

「そこは正直予想出来ないな。すぐに終わることもあれば、数時間終わらないことも普通にある」

「きつそう……」

「ずっと剣で戦っていると厳しいだろうな。だけど魔法を上手く使っていけばなんとかなるぞ。秘境ではMPの回復が早いから、そこまで気にせずに魔法を使えるしな」


 少なくとも秘境の入り口付近では危険になることは無いだろう。大半の魔獣はセラフィの王級魔法で一撃で倒せるはずだ。最悪セラフィを守っているだけでレベル上げが出来そうなものである。

 流石に俺の王級では威力が足りないが、それでも数発撃ち込めればほぼ倒せる。

 後はセシルとルーシェがどれだけ早く慣れるかだ。


「ちなみにヨゾラ君とセラフィが戦った中で一番強かった魔獣は?」

「アレだな、なんかドラゴンがいた」

「ドラゴン!?」

「ああ。普通に死ぬかと思った」

「うむ、儂も気が気ではなかったのう。最後はヨゾラが何とかしたが、もっとレベルが上がるまでは戦いたくないのは正直なところじゃ」


 恐らく俺とセラフィが戦ったドラゴンは、最上位のものではないだろうが、それでも滅茶苦茶強かった。

 今だったら戦装を使えば戦えるだろうが、絶対に勝てるという保証はない。

 あの時は、何故か斬れる気がして斬れたというだけだ。


「まあ秘境は広いし、そう簡単には出会わないだろう、多分」

「なんだろう、不安になってきた」


 出会ってしまったらやるだけやるだけだ。


 その後はルーシェの不安を払拭するためになるべく明るい話をしたりしながら、時間を潰した。

 樹海の秘境に着いたのは、夕方に差し掛かろうというくらいの時間だ。

 俺達はまず、拠点の設営から行うことにして、樹海の秘境の入り口に俺が魔法で簡易な家を作って、そこに荷物を置く。


「さて、暗くなってきましたが、どうしますか?」

「セシル、ルーシェ、いけるか?」

「俺は問題無いぞ」

「私もいけるよー!」

「それじゃあ今日は三時間くらいやって休もう。がっつりやるのは明日からだ」


 夜になれば流石に入り口付近といえど危険だ。疲れによるミスも怖いので、そこまで無理はせずに切り上げることにする。


「セラフィ、明かりを頼む」

「任された」


 セラフィの魔法であれば、それなりの範囲を照らすことが出来る。その間セラフィからの援護がそこまで望めないのが痛いが、仕方がない。


「気を抜くなよ」


 そうして俺達は秘境の中に突っ込んでいった。

 セシルとルーシェには緊張している様子が見える。静かな暗闇の中に目を向けて警戒していた。

 ある程度の場所まで来て止まり、耳を使って周囲を探る。

 静寂の中、前方の方から音が聞こえてきた。


「来るぞ!」


 現れたのはアンクルホースの群れだ。髭のようなものがあるのが特徴の魔獣である。

 数は五匹。それが俺達目掛けて突進してくる。

 俺は回避を選択、セシルとルーシェは躱しながらも斬りかかるが、大したダメージにはなっていない。


「硬ったい!?」

「くっそ!」

「一撃で倒すことを考えちゃダメだ!」


 秘境の魔獣の特徴として異常なタフさがあげられる。

 精霊魔法を使った俺の攻撃ならば一撃でも倒せるが、セシルとルーシェのステータスだと一撃で倒すことは難しい。大振りで攻撃するよりは、少しずつダメージを与えていくのが堅実だ。


 俺が三頭を精霊魔法を使って処理し、セシルとルーシェが二頭をどうにか倒しきった。


「次! 来るぞ!」


 倒しきった瞬間に、別の方向からヘルハウンドの群れが飛び出してくる。

 分かってはいてもそこで一旦一呼吸置いてしまったセシルとルーシェの反応が遅れる。

 仕方がないので俺はヘルハウンドの群れに正面から向かっていき、先頭の二匹を倒して、無理やり身体を捻り追撃してくる他のヘルハウンドの攻撃を回避する。


「ヨゾラ!」

「ヨゾラ君!」


 後から出てくる数が多く回避しきれそうになかった。

 そこにセラフィの魔法が飛んできて数を減らしてくれる。


「セシル! ルーシェ! あのままではヨゾラが危ない! 叫んでないではよ戦闘に参加せんか!」


 セラフィの叱咤により、セシルとルーシェは即座にカバーに入る。

 どうにか怪我をせずに済んだ。


 その後、波は一時間程続き、それが終わった頃にはセシルとルーシェはへとへとになっていた。

 仕方がないので今日はこの辺で切り上げることにする。セラフィ抜きでこれ以上戦闘をするのは危険だと判断した。


 拠点に戻り食事にすると、セシルとルーシェは俺に謝ってくる。

 本当に申し訳なさそうに、落ち込んだような感じだった。

 寝るまでそんな様子だったので、俺も注意するに出来なかった。


 さて、どうするか。明日は昼の狩りなのでセラフィも参加できる。それで二人も秘境の戦闘に慣れてくれればいいんだけどな。

 心配だが、今日のところはそっとしておくことにした。







自由な女神「やっぱり人を相手にするのと魔獣を相手にするのは全然違うみたいだね。セシル君とルーシェちゃんは明日からどうするんだろう?」

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