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この異世界は物足りない  作者: VRクロエ
異世界学校編
43/137

いつもの場所

 週末になり、俺はセシルとルーシェを誘って冒険者ギルドに行くことにした。

 本格的に金銭面が危なくなってきたので、依頼をこなさないと不味い。いくら学校生活で必要な金が少ないとはいえ、ゼロではない以上金が無いというのは感情的な忌避感があった。

 セシルも冒険者登録自体はしているというので、依頼を受けること自体に問題は無い。レベル上げにもなるし、丁度いいだろう。


 冒険者ギルドにやってきて中に入る。この感覚は久しぶりだった。

 懐かしさを感じつつも、俺はいつもの場所に目を向けた。

 そこにソフィアはいないと分かっていても、癖でどうしてもそうしてしまったのだ。


 しかし、何気なく癖で目を向けた先にいた人物を見て、俺は固まってしまう。


「ヨゾラ……」


 俺の様子に気が付いたセラフィが心配そうに声を掛けてくる。

 視線の先には見慣れた受付嬢の姿があった。それが信じられずに固まってしまったのだ。


 分かってはいる、それがソフィアではないということは。

 だが、あまりにも似ていたのだ。まるであの頃の冒険者ギルドに来た錯覚さえ覚えてしまう程に。


 俺は深く深呼吸をして心を落ち着かせる。


「大丈夫だセラフィ。分かってるから」


 セラフィに言いつつも、自分に言い聞かせるように口を開いて、しかし俺はその受付カウンターに向かって足を向けた。

 カウンターの前まで来ると、受付嬢は小さく笑って丁寧にお辞儀をする。その仕草はソフィアをさらに思い出させた。


「今回は依頼を受けに来られたのでしょうか? 見たところ学生の方々のようですが」

「ああ、依頼を受けに来た。冒険者登録はしてるが冒険者ギルドは久しぶりでな、何か良い依頼を用意してくれ」

「分かりました。では、冒険者カードの提示をお願いします」


 内心を悟られぬように声を張って喋る。

 セシルとルーシェは何も気が付いていないようでとりあえずは一安心だ。


 俺達はカウンターの上に冒険者カードを並べていく。

 受付嬢はそれを一つ一つ確認する。

 全員の冒険者カードを確認し終えた後、もう一度俺の冒険者カードを確認していた。何かあったのだろうか?

 怪訝な顔をしていると、受付嬢は真剣な表情で俺を見つめた。


「貴方はヨゾラさんで、隣にいる貴方はセラフィさんで間違いないですか?」

「? ああ。冒険者カードにもそう登録されているだろう?」

「そうですね……失礼しました。少々お時間を頂いてもよろしいでしょうか?」

「それは構わないが……」

「ではこちらにお越しください。お連れ様にはお待ちいただいて、ヨゾラさんだけでお願いします」


 突然なんだろうか? と思いつつも、断れる雰囲気ではないので、セラフィ達に待っていてもらうように伝える。

 個室に案内されると、受付嬢は何処かへ行ってしまった。仕方がないのでしばらく待つことにする。


 それから十分程だろうか、待っていると受付嬢は何かを持って戻ってきた。


「お待たせいたしました。こちらを」

「これは?」

「中身はお一人でいる時に確認してください。危険な物ではないので大丈夫です」


 中に何か入っているであろう箱と紙を受け取る。大きさは片手で持てるほどの物だ。


「それから中身についてはセラフィさん以外には出来るだけ話さないようにお願いします」

「……分かった」


 多分だが、この受付嬢はソフィアの血族だろう。

 そして、きっとこれはソフィアが残した物なのだということは察することが出来た。

 それを考えれば、誰かに話せるようなことではない。わざわざ個室に移動したのは、これを受け取ったのを見たセシルとルーシェが聞いてくるのを避けたかったのだと思う。


「私の名前はソティーです。今後何かあれば私にお申し付けください」

「ああ、そうさせてもらうよ」

「では戻りましょうか」


 箱を渡したソティーは、どこか肩の荷が下りたように安心した表情をしていた。

 小さく笑うその姿は、やはりソフィアの面影があった。


 戻ってくると、セラフィ達は冒険者ギルドの中を見て周っていたようだ。

 絡まれていないか少し心配だったが、模擬戦を見ていた冒険者もそれなりにいたらしく、セラフィ達の実力を知っているということもあって、声は掛けられなかったようだ。


「皆、お待たせ」

「お帰りヨゾラ君。もう用件はいいの?」

「もう大丈夫だ」

「それじゃあ依頼に行こうか!」


 ルーシェは何も聞いてこない。セシルも気になってはいるようだが、察してくれているようだ。

 セラフィと話すことがあるんじゃないかと思ってか、依頼の説明を代わりにルーシェとセシルが受けてくれる。

 心遣いがとてもありがたかった。


「セラフィ、帰ったら話がある。大事な話だ」

「うむ、分かった」


 流石にここでは話せないので、大事な話があることだけを伝えておく。

 セラフィも、今はそれで納得してくれた。


 依頼の説明を受けたセシルとルーシェがこちらにやってくる。


「どんな依頼を受けたんだ?」

「普通に魔獣の討伐だな。内容は行きながら説明するよ」


 依頼の場所に向かいながらセシルに説明を受ける。

 場所は帝都から二時間程歩いた草原地帯で、対象はフィアーモンキーで数は三十を超えるという。

 猿なのに草原にいるのかと内心で突っ込みつつ、先程渡された物のことは一旦忘れて依頼に集中することにした。


 草原に辿り着き、フィアーモンキーを探しているとすぐに見つかった。

 ホラーな顔をした猿の大群は、見ていて気持ち悪かった。


 話し合った結果、戦い方は単純なものにすることにした。

 俺とセシルとルーシェが前衛でセラフィが後衛で援護。全員の実力がそれなりに高いからこそ、単純でいいだろうということだ。


 セラフィに、自分以外に掛けられるバフの魔法をかけてもらい、俺は精霊魔法も発動させて3人でフィアーモンキーの大群に突っ込んでいく。

 バフにより、予想以上の速度が出たセシルとルーシェは驚いていたが、どこか楽しそうでもあった。


 大群の中に突っ込むと、四方八方からフィアーモンキーが飛びかかってくる。

 俺達は互いを庇うように立ち回りながら、内側から数を減らしていく。セラフィは外側から数を削ってくれているので、対処出来ないような数がいっぺんに襲ってくることはなかった。


 戦闘時間は十分程度だっただろうか、気が付けば動いているフィアーモンキーは一匹もおらず、地面には大量の死骸が転がっていた。


「っはー! 楽しかったー!」

「そうだな。今までルーシェと2人で依頼を受けたことはあったけど、手練れが2人増えるだけでここまで楽になるとはな」


 セシルとルーシェは満足そうに話していた。

 実際俺も楽しいと感じていた。ストロングアントの討伐の時にスカット達と共に戦いはしたが、セシルとルーシェの実力はあの3人を大きく上回っている。

 連携の精度は凄まじく、気持ちよく狩りが出来たので俺も満足だ。


 数もそれなりにいたのでセシルとルーシェのレベルも上がっただろう。

 俺も三レベル上がっていた。


「どうだったセラフィ?」

「うむ、ヨゾラ達がしっかり連携しておったお陰で援護はしやすかったの」

「レベルは?」

「五は上がった。多少魔法の威力も上がったじゃろう」


 セラフィは魔法に関連するステータスの上り幅が異常なので五とはいえそれなりに大きい。


「ささ、皆! 討伐証明部位を取って戻ろ!」


 ルーシェはそそくさと討伐証明部位である尻尾を剥ぎ取っていた。

 俺達も尻尾を剥ぎ取っていき、計四十三の尻尾を持って冒険者ギルドに戻ることにした。


 依頼の完了をソティーに報告して報酬金を貰う。

 4人で等分したとはいえそれなりの金額にはなった。もしかしたら合同依頼だったのかもしれない。


 俺達はそのまま冒険者ギルドで食事をしていくことにする。

 酒を頼み、久しぶりに冒険者ギルド特有の雰囲気を楽しんだ。

 途中で酔って絡んで来たガラの悪そうな冒険者パーティーをルーシェが沈めたり、俺とセシルが逆ナンされたりと色々とトラブルもあったが、それも冒険者らしいと最後は笑い話にする。


「ねぇ! そろそろ野外合宿のことを決めておかない?」


 野外合宿というのはいつだかルーシェも言っていた、学校の行事のようなものだった気がする。


「ルーシェ酔ってるな……まだヨゾラとセラフィは俺達と組むって言ってないだろ……」

「えー! 私達と組んでくれるよね!?」

「って言ってるが、どうだ? ヨゾラ、セラフィ」

「勿論いいぞ。元々そのつもりだったしな」

「儂も構わん」

「やったー!」


 やること自体は単純で、班を作って教師同伴で遠出して経験値を稼ぐというものだ。

 セシルとルーシェならば、それなりに強い魔獣が出る場所に行っても問題なさそうなので、組むとするならばこの2人がいいとは俺も思っていた。


「行く場所はある程度自分達で決められるからね! 何処にしようか?」

「あまりにも実力と合っていない場所は教師から却下されるんだが、このメンバーなら教師も許してくれそうだな」

「ちなみにだが、前は何処に行ったんだ?」

「北の山脈だね! あそこは結構強い魔獣も出るから」

「どうだった?」

「正直もう少し上でも問題ないって感じだったね」


 北の山脈という場所がどういうところか知らないが、セシルとルーシェが行ったのならば、そこそこレベルは高い場所なのだろう。

 何処かいい場所が無いか4人で頭を捻る。中々良い案は出てこない。


「何かお悩みのようですが、どうなさいました?」

「あ、ソティーさん。野外合宿の行き先について悩んでいました」


 悩んでいると、それを見ていたソティーが声を掛けてきた。

 ルーシェから事情を聴き、ソティーも少し考えるような仕草をする。


「どのような場所をお望みなのですか?」

「出来ればレベルを一気に上げれるような場所がいいです!」

「そうですか……でしたら今日依頼で行かれた草原の先にある樹海の秘境などはどうでしょう?」

「秘境ですか!?」

「ええ、ヨゾラさんとセラフィさんがいれば問題は無いと思いますよ? あそこは秘境の中でもそこまで厳しい場所ではないですし」


 秘境か……確かにその選択肢は頭になかった。

 一応今くらいのレベルの時に俺は果ての秘境に挑んでいる。そこよりもレベルが低い場所ならば、セシルとルーシェも戦えるだろう。


「冒険者ギルドがヨゾラ君とセラフィにどんな評価をしているのか気になってきたよ……でも、許可が出るかな……」

「もし行かれるのでしたら私の方から話を通しておきますよ」

「ソティーさんって何者……?」

「少し顔が利くだけですよ。それで、如何なさいますか?」

「どうする皆……」

「俺はいいと思うぞ。今日の依頼を受けても思ったが、ヨゾラとセラフィがいればいける気がする」

「ヨゾラ君とセラフィは?」

「俺も問題無いな。秘境は初めてじゃないし」

「そうじゃな。問題なかろう」

「そっか……じゃあソティーさん! お願いします!」

「はい、任されました」


 そんな訳で俺達の野外合宿は樹海の秘境に決まった。


 魔獣との戦いは、技術は確かにあった方がいいが、それよりもステータスがものをいう。

 火力が無ければ攻撃が通らないなんてことが魔獣相手にはざらにあるからだ。

 最初の内は俺とセラフィがメインで戦うことになるだろう。合宿の後半になってくればレベルが付いてきてセシルとルーシェだけでも十分に戦えるようになっている可能性はある。

 折角だし、これを機にセシルとルーシェにはもっと高みへ上ってもらおう。


 今から緊張しているのか「秘境……」と呟いているルーシェがおかしくて3人で笑いながら、詳しい内容を話し合っていくことにした。

 野外合宿は来週だという。俺も久々にがっつりレベルを上げるのが楽しみだった。

自由な女神「分かってはいても知っている人がそこにいないのは悲しいよね。それにしても渡された物が凄く気になる! 絶対凄い物が入ってるよ!」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 気になっていたソフィアの子孫に会えてうれしいです。 他の人と結婚してもヨゾラのことは特別な存在として代々伝えていったんだなと思うと感慨深いですね…
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