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この異世界は物足りない  作者: VRクロエ
異世界学校編
41/137

英傑

 食事にするということで、場所を移動することになった。

 先程話をしていた部屋よりも広いところに連れてこられると、そこにあるテーブルの上には豪華な料理が並んでいる。

 どの料理もかなりの量用意されており、取り皿なども用意してるのでバイキング形式の食事なのだろう。


「あら? その子達が噂のヨゾラさんのセラフィさんかしら?」


 俺達よりも先に部屋にいたのは2人。オレンジ色の髪を腰の辺りまで伸ばした美人とフロディスと同じ金髪で男にしては長い背中辺りまでの髪を一つに纏めた鋭い瞳のイケメンだ。

 口を開いたのは女性の方で、どうやら俺とセラフィのことは噂として聞いているらしい。


「ああ、こいつらがヨゾラとセラフィだ。話をしていて気に入ったから城に自由に入れる許可証も渡してる」

「貴方がそこまで気に入るなんて珍しいですね」

「話してみるといい。面白いぞ」

「ではそうしましょうか」


 その女性は俺とセラフィの元まで歩いてきて優雅にお辞儀をする。


「私はプリシラ・リント・グラヴィスです。皇妃という立場ではありますが、どうか気軽に接してくださいね」


 皇妃ということは、フロディスの妻ということだ。

 何というか、フロディスが豪胆なのとは逆にお淑やかという感じで、仕草なんかもいちいち綺麗なので緊張してしまう。


「ヨゾラです。突然お邪魔してしまい申し訳ありません」

「セラフィじゃ、よろしくのプリシラ」

「……セラフィは相変わらずだが、俺の時とは随分態度が違うんじゃないか? なあヨゾラ?」


 何だか変に丁寧に挨拶をすると、フロディスが不服そうな顔をしている。


「貴方がそんなだからですよフロディス。もう少し皇族らしく振る舞うことも覚えたらどうですか?」

「ぐっ……これでも公の場では頑張っているんだが……」

「今回は公の場ではなかったのでしょう? 普段通りに振る舞っていてはそうもなってしまいますよ。ヨゾラさん、気にしなくていいので大丈夫ですよ」


 フロディスはプリシラの言葉に黙るしかなかったようだ。

 完全に尻に敷かれている。


「さあさ、食事の場なのですから硬くならずに、楽しみましょう」


 そうして食事が始まった。

 セシルとルーシェは金髪イケメンの方と話をしている。

 俺も挨拶に行こうかと思ったが、何やら盛り上がっているので後ででもいいだろう。


「プリシラ、テスタリスとアマリリスはどうした?」

「あの子達は相変わらずね。テスタはレジケルの人達のところで、リリスは何処かをフラフラしているわ」

「あいつらも皇族としての自覚を持ってほしいものだ……」

「親に似たんじゃないかしら?」


 聞きなれない名前だが、どうやらその2人も皇族のようだ。

 そんな自由でいいのかとも思ったが、フロディスも普通に模擬戦を見に来ていたし、そんなものなのだろう。

 今回は会えなさそうだが、その内機会はありそうだ。


「それで、さっきまでどんな話をしていたのか聞かせてくれるかしら?」


 プリシラは先程までの話が気になるようで聞いてくる。

 フロディスが話しつつ、俺とセラフィも相槌を打ちながらどんな話をしていたのかを説明していく。

 プリシラはその話を面白そうに聞いていた。


「まさか自分の子供程の奴に諭されるとは思ってもいなかったな」

「セラフィさんはその年齢で聡明みたいね。それにしてもヨゾラさんの目的、というものが気になるわね。教えてはくれないかしら?」

「すいません、それは難しいですね。でも個人的なもので、帝国に対して不利益になることはないと思うので安心してください」

「あら、残念」


 流石に異世界を楽しむのが目的ですなんて言えない。

 既に獣人を生み出して、その結果人間との戦争ということになっているが、これ以上誰かに迷惑を掛けることは多分きっと無いと信じたい。

 そもそも戦争自体、俺からすれば意図しないことで、戦争になった責任を俺に押し付けられても正直困ってしまう。

 どうにかして戦争は終わらせたいと思うが、仮に俺が個人的に敵対することがなければ最悪は動かない可能性もある。

 自己中心的だとは思うが、クレーティオに出会った時から自由に生きようと決めているのだ。


「そういえばヨゾラとセラフィは元々冒険者だったな。冒険者というものは騎士なんかを嫌う者が多い。それを考えれば簡単にはこちらに靡かないのも頷けるか……」

「別に俺は騎士とかを嫌ったりしてないよ。そもそもどういった職種なのかもよく知らなったんだ。嫌いようがないだろう」

「確かにそうだったな。にしても、騎士を知らないとなると、一体どんな生活をしてきたのか、ますます不思議に思えてくるな」

「フロディス、変に詮索する人は嫌われますよ? 悪人や怪しい人物に対しては別ですが、ヨゾラさんとセラフィさんは何かをした訳ではありません。今はただの学生なのですから」

「そうだな。すまん、忘れてくれ」


 プリシラさんは少し話しただけだが、とても良い人だというのが伝わってきた。

 この人がいれば、フロディスが変な方向に進んでいくこともないだろう。帝国はしばらくは安定しそうだ。


「父上、母上、そろそろ俺に替わってください。俺もその2人と話してみたいので」


 話の切れ目を見計らってか、セシルとルーシェと話をしていた金髪のイケメンがこちらにやってきた。


「俺はフリザーブ・クルエリ・グラヴィスだ。よろしく」

「フリザーブも俺と同じタイプだ、俺と話す時と同じような感じで大丈夫だぞ」


 他の2人がどうかは分からないが、このフリザーブはフロディスとよく似た感じなようだ。


「ヨゾラだ。よろしくフリザーブ」

「セラフィじゃ」

「セシルとルーシェに勝ったみたいじゃないか。俺もセシルと同程度の実力があるからこそその凄さが分かる。なあ、一つ聞いてもいいか?」

「なんだ?」

「ヨゾラかセラフィ、どちらかかもしくはどちらともだが……英傑という称号を持っているんじゃないか?」

「英傑? いや、持ってないな」


 ほぼ確信に近い感じでフリザーブは言うが、俺もセラフィも英傑という称号は持っていないし、聞いたこともなかった。


 そもそも称号というのは、そうそう手に入るものではない。

 学生ながら高い実力をもつセシルとルーシェも持っていないしクレーティオですら四つしか持っていない。

 俺が持っているのもクレーティオによって与えられたヨゾラの作者とセラフィと契約した時に手に入れた理を歩む者だけだ。


「そうか……そこまでの実力があれば持っていてもおかしくないと思ったんだがな」

「英傑っていう称号を持っている奴に知っている奴がいるみたいだな」

「実際知っている。それも複数人だ」

「それはまた……で、英傑ってのはどんな称号なんだ?」

「ステータスの伸びが1.5倍になるというのが効果の一つ。もう一つが、世界に大きく関わる運命の中に置かれるというものだ。英傑を持つ者達は現在戦場の最前線で戦っている。今の時代、最も世界が大きく動く要因である戦争に深く関わっているということを考えると、効果通りだということになるな」

「それは意図的に英傑を最前線に送っているだけじゃないのか?」

「違うな。獣人が攻めてきた街なんかで英傑が生まれ、導かれるように戦いに身を置くことになる。他人が状況を生み出すのではなく、状況により英傑が生まれるんだ」


 つまりは英傑は持つ者が生まれるべくして生まれるのか。


 考えればかなり興味深い称号だ。

 ステータスに直接関わってくる称号を初めて聞くのもそうだし、身の振り方を強制される類の称号も初めてだ。

 ステータスの上昇率が上がる部分だけを見ればかなり魅力的な称号だが、後半の部分を聞くとほしいとは思わないが。


「セシルとルーシェからヨゾラのステータスが高いことを聞いた。もしかしたらと思ったんだが……違うなら安心だ」

「安心? どういう意味だ?」

「英傑がいる場所では必ず何か大きなことが起こる。過去に戦場から離れた英傑がいたんだが、行く先々で大きな戦いに巻き込まれたり、事件なんかに巻き込まれたんだ。だから万が一ヨゾラかセラフィが英傑の称号を持っていたら、この帝都でも何かが起こることになる。だからといって出て行けとは言わないが、備えはしておかなければならないからな」

「それは難儀なことだな……」

「まあ、ヨゾラとセラフィの存在は帝都でそれなりの事件だがな。何せこうして皇族が関わりを持つことになったんだ。それに噂のクレーティオという人物が現れたのもそうだ」

「別に悪いことは起きてないだろ」

「責めてはいないさ」


 フリザーブは可笑しそうに笑う。


 実際のところどうなのだろうか? ヨゾラの作者という称号のことを俺はまだよく知らない。

 どういう効果を齎すのか、本当に効果が出ているのか。もしかしたら、俺が知らないだけで効果を発揮しており、帝都でも何かしらの動きがあった可能性もあるが、それを確かめる術はない。



【ヨゾラの作者】

 ヨゾラの作者はヨゾラ自身であり他の何者でもない証。他からの干渉を防ぎ、ヨゾラだけの物語を紡いでいく。



 何度見てもイマイチ理解出来ない内容だ。

 人間関係が築けている以上、そういった意味でも干渉を防いでいる訳ではない。

 ヨゾラだけの物語を紡ぐというところもそうだ。孤独な物語という意味ではなさそうなので、そこに関しては安心だが、まだ何か隠されていそうに思う。


「なあ、ヨゾラ? この戦争が、このままの状態で続いていくと思うか?」

「それは分からないな。フリザーブは何かあると思うのか?」

「勘でしかないが、ある。獣人側に魔王という強大な存在がいるように、人間側にも英傑以上の大きな存在が生まれてくる。そんな予感だ」

「確かに在り得るかもな」


 獣人の出現により、ルーディスはいよいよ異世界らしくなった。

 そこに魔王という存在までいるのであれば、いずれは勇者が生まれてくるのもおかしくはないだろう。

 俺自身はそうであってほしいと思っている。いや、勇者がいずれ生まれてくることを信じていると言ってもいい。それにより戦争はさらに大きくなるかもしれないが、そちらの方が異世界としては面白いからだ。


「俺はいずれ皇帝となる。その時に何か大きなことが起こるかもしれない。俺はヨゾラに仕えてくれとは言わない。だけど、いざという時、俺が迷った時には力になってくれないか?」


 フリザーブは真っ直ぐに俺の目を見つめて頼んで来た。

 薄っすらと、この先世界が大きく動くと感じているのだろう。

 きっとそれは間違いではない。そして、その原因の一部は俺であることもほぼ間違いないだろう。

 何しろ、停滞していたルーディスを再び動かし始めたのは俺なのだから。

 だったら、俺が異世界を楽しむ範囲の中で、皇族の手伝いをしてやるのもやぶさかではない。


「いいよ。本当に困ったときは、力になってやる」

「ありがとうヨゾラ!」


 俺とフリザーブは笑い合って握手をした。





自由な女神「初めてヨゾラ君とセラフィちゃんが持ってるやつ以外の称号が出てきたね。結構凄そうな称号だけど、持ってる人はどんな感じなのかな?」

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