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この異世界は物足りない  作者: VRクロエ
異世界学校編
40/137

目的と得るもの

 皇帝であるフロディスは威厳は勿論あるが、それ以上にどこか挑戦的な笑みを浮かべて俺とセラフィに話しかけてくる。

 セシルの言っていた通りに、権力で人をどうこうするような奴には見えない。


「どうした? 遠慮などしないでいい。俺はお前達2人と話してみたいだけだ。自然体のお前達とな」


 ここに来る前は、流石に丁寧な口調で話そうか悩んでいたところだが、気にするだけ無駄だったようだ。

 俺は一つため息を落として、口を開いた。


「あー、これでいいか?」


 いつもと変わらぬ口調で口を開いた俺を見て、ルーシェはギョッとした。

 その隣にいるセシルは分かっていたかのように苦笑していた。ザルバもやれやれといった感じである。


「知ってると思うが俺がヨゾラで、こっちがセラフィだ」

「セラフィじゃ」

「それで、今日はどんな要件なんだ?」

「まあ待て待て、そう急がなくてもいいだろう。とりあえず座れ」


 言われた通りに俺とセラフィ、それからセシルとルーシェもフロディスと向かい合うように豪華なソファーに腰を下ろす。

 ソファーは豪華な見た目に裏切らず柔らかく、俺は深くリラックスするように身体を預けた。

 セラフィも同様に、柔らかいソファーに満足してリラックスしているが、ルーシェは相変わらずガチガチで背筋を伸ばすように座っており、セシルも大丈夫だと分かっていてもそれなりに緊張しているようだった。


「まずはいい戦いを見せてもらったことに礼を言おう。セシルはザルバに似てしっかりと実力を付けてきているようだ。ルーシェも母親の面影を感じたぞ」

「自分はまだまだですよ。そこの父親にはまだ届きそうにありません」

「わ、私もお母さんにはまだ……」

「謙遜することはない。若くしてそこまでの実力があるのだ。誇っていいぞ」


 2人共フロディスに褒められて、謙遜はしているがどこか嬉しそうだった。


「話を遮って悪い。ルーシェの母親っていうのは?」

「ヨゾラはルーシェの母親――クティーを知らんのか? 帝国騎士としてそれなりに名前を知られた強者だぞ」

「そうなのか。だが、まず帝国騎士ってのをよく知らないんだ。セシルの親父さんも帝国騎士なのか?」

「そこからか……ザルバ、説明してやれ」

「帝国騎士というのは、帝国の重鎮や治安維持……主に守護する立場にある。通常の騎士よりも一つくらいの高い騎士のことだ。ちなみに私は帝国騎士ではなく、大公といって軍事国家である帝国の軍部のトップだ」


 セシルとルーシェが昔馴染みだとは聞いていたが、親がそれなりに上の立場にいるからこそ付き合いが長かったのか。

 にしてもザルバはかなり高い地位にいそうだと思っていたが、帝国における軍部のトップならば、皇帝に限りなく近い地位にいるのではないだろうか? そういった政治面はまだまだ詳しくないので合っているかは知らんが。


「まあそんな立場にある奴の子供が模擬戦をするというのだ、あれだけの観客がいたのも頷けるだろう?」

「皇帝であるあんたも来てたくらいだからな」

「当たり前だろう? ただ俺はそんな2人と戦う奴も気になってしょうがなかったがな。まさかザルバとクティーの子供2人が負けるとは思っていなかったが……」

「ヨゾラとセラフィは学校でも有名ですよ。戻ってきた俺のところに凄い数の噂が入ってくるほどにはですね」

「私自身セラフィと1対1で負けています。はっきり格上と言っていいと思います」

「と、言われてるが、ヨゾラとセラフィから見てセシルとルーシェはどうだ?」

「2人共普通に強いと思うよ。正直学校に入っても俺とセラフィが断トツで強いと思ってたくらいだからな」

「うむ、次も勝てるという保証はもてんな」


 実際2人は強い。俺とセラフィのレベルが下がっているというのはあるが、それでも基本スペックが高い俺達相手にいい勝負が出来ている時点でセシルとルーシェのポテンシャルは高い。


「そうかそうか! セシルもルーシェも、将来は期待しているぞ!」

「期待に応えられるように頑張ります」

「は、はい! 私も頑張ります!」


 セシルとルーシェは順当にいけば将来は帝国を支えていく存在となるだろう。

 そもそもあの学校はそういう場所なのだ。実力が高い者は騎士として雇用されたり、そうでなくても兵士となる者が殆どだ。


「さて、セシルとルーシェはいい返事をしてくれたが、ヨゾラとセラフィはどうなんだ? あれ程の実力があるのならば、是非とも帝国の為に力を振るってもらいたいもんだが」

「それが本題か?」

「そうだ。今日呼び出したのは、お前達の今後を聞きたくてな」


 皇帝からの直々の勧誘。本来ならば名誉なことなのだろうが、俺は興味が無い。

 俺の目的は、あくまでも自由に異世界を楽しむことなのだ。

 獣人と戦争をしているという今の状況は、俺にとっては悪いことしかない。それを改善するとしても、帝国で騎士や兵士となって獣人と戦い戦争を終わらせるという選択肢は取りたくなかった。

 そもそも俺とセラフィだけで戦争を終わらせるのは無理があるしな。


「はっきり言っていいか?」

「いいぞ」

「俺にその意思はない。俺は自由に、自分のやりたいことをやるだけだ。仮に獣人と戦うことがあっても、それは帝国の為じゃなく、俺自身の為にだ」

「ほぅ……セラフィは?」

「儂はヨゾラと共に行くだけじゃ。ヨゾラが帝国の為に戦うというのであればそうするし、戦わないというのであれば戦わん」

「神級魔法すら使いこなすお前がどうしてヨゾラにそこまでする? 恋愛感情でもあるのか?」

「儂がどんな魔法を使おうが関係はない。ヨゾラの相方は儂で、儂の相方はヨゾラというだけじゃ。それに、ヨゾラの隣が一番面白いしの」


 今はレベルが低く、そこまでぶっ飛んだ実力を見せない俺はまだしも、神級魔法を扱うことが出来るセラフィのことはどうしても引き込みたいようだった。


「フロディスと言ったな、おぬしは一つ勘違いをしておる」

「勘違い? 聞かせてもらおうか」

「神級魔法というものに目がくらんでおるようじゃが、儂よりもヨゾラの方が潜在的に見れば強いぞ」

「それはお前が神級魔法を使えるが故に自身を過小評価しているだけじゃないのか?」

「違うな。神級魔法はあくまでも手段であり、そこに強さが直結してくるわけではない。ヨゾラには目的があり、それに対する手段を持つ。そこがおぬしの勘違いの原因じゃ。おぬしは神級魔法という手段で完結しておる」

「神級魔法は戦争を終わらせる手段だ。目的はある」

「では見誤りじゃな。神級魔法だけで戦争は終わらん。必要な手段としてはあまりにも陳腐過ぎる。そも、目的の方向性が曖昧じゃ。戦争を終わらせて何を求める。新たな領土か? 帝国の平和か? その辺をはっきりせい。そのどちらもを求めんとするのならば、もう少し頭を使うことじゃ」


 セラフィの厳しい物言いにフロディスは表情を顰め、室内はピリピリとした空気に包まれる。

 しばらく睨み合っていたフロディスとセラフィだが、突然フロディスが笑い出した。


「ははっ! 手段と目的か! まさかそれをこんな子供に言われるとはな! 俺は浅かったようだ。神級魔法という手段だけでは確かに戦争は終わらん。しかし目的か、そこまで深く考えたことはなかったな。戦争に勝つことは目的ではあるが、得るものは何か……それが俺とヨゾラの違いだということか」


 俺の目的は異世界を楽しむこと。そこにセラフィが言った程の大層なものがあるとは思わないが、セラフィからしたら違うらしい。

 確かに俺の行動指針はそれ一つに終結する。それだけは間違いない。

 フロディスの言う戦争に勝つということは確かに目的になるのかもしれない。しかし、戦争に勝って得る領土の拡大や帝国の平和というのは曖昧だ。戦争に勝ったところで帝国が本当に平和になるのか? 領土に住んでいる残りの獣人はどうするのか? 得るものの確証が持てない。これがセラフィの言う俺とフロディスの目的に対する違いなのだろう。


「セラフィ、お前はいい女だなぁ! どうだ? 俺の息子と婚約しないか?」

「突然何を言い出すんじゃ……そんなもの、するわけがなかろう」

「金も地位も名誉も手に入るぞ? 俺の息子も男としてかなりのものだしな」

「いらん!」

「ヨゾラはどうだ? 俺の娘と婚約しないか?」

「セラフィやクレーティオよりも良い女なら考えるよ」

「そりゃあお前次第だ」


 段々と話が変な方向へと進んでいる。面倒臭いので、さらに別の方向に話を持っていくことにした。


「そうだ、クレーティオには手を出そうとしない方がいいぞ。あいつが本気で怒ったら多分、俺でも止められないからな」

「そのつもりは無いから大丈夫だ。話してみたいとは思うがな。連れてくることは出来ないのか?」

「無理だ」

「そうか……なら敵対だけはしないでくれと伝えてくれないか?」

「別に伝えなくても何もしなければ大丈夫だ。片手間に帝国を滅ぼせるくらいには強いだろうが、そんなことに興味無いだろうしな」

「片手間か……帝国も舐められたものだ」

「冗談じゃなく事実だ」


 実際何処まで出来るのかは分からないが、やろうと思えば出来るのではないだろうか?

 そうなったら俺は大人しく逃げるとしよう。


「はぁ、まあ分かった。これ以上ヨゾラにしつこくしても、そのクレーティオとやらの怒りを買いそうだから勧誘もこんなもんにしとくか」

「そうしてくれ」

「まあ気が変わったら言いに来い。いつでも歓迎する。ザルバ、あれをヨゾラとセラフィに渡せ」


 フロディスが諦めたようにため息をつき、ザルバに何か指示を出す。

 ザルバは懐からカードのような物を取り出して渡してきた。


「これは?」

「城にいつでも入れるようになる証明書みたいなもんだ。俺からの友好の証だな。渡すつもりは無かったんだが、お前達のことが気に入った。今後は友人として仲良くしようじゃないか!」

「それは困ったことがあれば頼みに来ていいってことか?」

「タダとはいかないかもしれないけどなぁ」

「しょうがないから受け取っとくよ」


 互いに笑い合って俺はそれを受け取った。

 まあ、何かあれば力を貸してやろうくらいの気持ちはある。フロディスの人柄もそうさせる要因の一つだろう。


「それじゃあ難しい話はここまでだ! ザルバ、食事の用意を頼む。お前達も食っていけ」


 まだ飯時には早いが、どうせだから楽しんでいくことにしよう。

 もう少し砕けた話もフロディスとしたいことだしな。



自由な女神「こうしてみるとやっぱりセラフィちゃんって頭良いよねー。ヨゾラ君もかなり頭良いし、似た者同士なのかな?」

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