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この異世界は物足りない  作者: VRクロエ
異世界学校編
39/137

呼び出し

 模擬戦が終わった夜、俺はベッドに入ってクレーティオに会いたいなーと考えながら眠りについた。


「やっほー! さっきぶりだねヨゾラ君!」


 こうして、俺が会いたいと思えば会うこと自体は出来るみたいなので、聞きたいことがある時なんかでも困ることはない。


 今日闘技場に現れた時と何の変わりもないクレーティオが、いつもの白い空間でソファーに座りながら紅茶を飲んでいた。

 俺が反対側のソファーに座ると、クレーティオは俺の分の紅茶を出してくれたので、喉を潤して一息つく。


「今日はありがとな。突然過ぎて驚いたけど、セシルもルーシェも喜んでたよ。それに、模擬戦の最後、2人を助けてくれたんだろ?」


 セラフィの神級魔法が晴れた後、クレーティオはセシルとルーシェのすぐ傍にいた。クレーティオであれば恐らく視界が悪くとも状況は把握出来るはずなので、わざわざ場所を移動した理由を考えるとすればそれしかない。


「どういたしまして! そうだね、あの結界指輪って魔道具? は確かに良く出来てはいるけど、結局防げるのは一回切りだからね。セラフィちゃんの神級魔法の直撃で壊れて、その余波までは防げなさそうだったから。まあ、ヨゾラ君の友達を見殺しにしたりはしないよ。2人共悪い子じゃないしね」


 もし仮に、審判がクレーティオじゃなかったら最悪どうなっていたか分からない。

 俺とセラフィの結界指輪は壊れなかったので、もしかしたら死ぬことは無かったかもしれないが、セシルとルーシェの方が余波も受ける場所にいたのは確かなので、大怪我は免れなかっただろう。

 そう考えれば、元々審判だった人には申し訳ないが、クレーティオが審判をやってくれてよかった。


「それで、詳しい話を聞かせてくれるか?」

「はいはーい! と言っても、そこまで難しいことじゃないよ。他の神が作り出した世界に干渉しようとすると水に沈めようとした空のペットボトルみたいに弾かれる感じなんだけど、それを手で無理やり沈める感じで無理やり世界に干渉したんだ。ただそこまで長い時間は干渉してられなくて、僕が精一杯力を使っても今のところは半日程度が限界だね」

「それってやろうと思えば、俺にも干渉出来るってことにならないか?」

「それは無理だね。理由は色々とあるけど……まあとにかく大丈夫だよ」

「まあ、それならいいんだけど……」


 クレーティオは時々話をぼやかすので、気になることも結構あるが、俺にマイナスなことが起きないのは間違いないので変に聞こうとは思えなかった。


「ちなみにクレーティオはルーディスに来ようと思えばいつでも来れるようになったってことか?」

「いつでもは無理だね。かなり大きな力を使って干渉してるから、しばらくは休憩してないと」

「そんなもんか」

「まあ複数の神が力を合わせれば世界に穴を開けて結構な時間干渉出来るようにはなるけど、僕には親しい神はいないし、出来ることもそこまで大きなことはないからやろうとも思わないけどね」


 さり気ないボッチ発言が飛んできたが、クレーティオはそもそも神を嫌っていそうなので、神に友達を作ろうとは考えていないのだろう。


「それにしても力加減には苦労したなぁ。正直そっちの方が疲れたよ」

「流石にデコピンには驚いたな。一体どんな指の筋肉してるんだか……」

「ちょっと!? 人を筋肉ゴリゴリのマッチョみたいに言わないでくれる! 乙女に対して失礼だと思うよ!」

「あのステータスはゴリラだと言わざるをえないな。クレーティオって血液型は何型?」

「O型だよ! Bじゃないからね!? ゴリラじゃないからね!?」


 クレーティオは頬を膨らませて怒っていた。怖いという感じはなく、可愛いだけなのだが、それを言ったらまた怒りそうだ。


 最終的には観客にも受け入れられ人気も出ていたっぽいのは、単純にクレーティオが美少女だということもあっただろう。

 セラフィに負けず劣らずの美少女であるクレーティオについては、明日に色々と聞かれそうだ。






 ――――――――――






 目を覚まし、しばらくするとセラフィがやってきたので2人で食堂に向かう。

 注文を済ませて席を探していると、セシルとルーシェも食事をしているのを見つけたので、俺とセラフィも一緒に食べることにした。


「おはようセシル、ルーシェ」

「あ、ヨゾラ君とセラフィ! おはよう!」

「待ってたよ2人共。少しいいかな?」

「なんじゃセシル、難しい顔をして」


 どうやらセシルとルーシェは俺とセラフィのことを待っていたようだ。

 セシルは何やら顔を顰めている。一体何があったのだろうか?


「まずは先に謝っておく。ごめん、面倒なことになった」

「ん? 模擬戦があんな大規模になったことか?」

「いや、そうじゃないんだ。それについては正直言って悪いと思ってない」

「私は悪いと思っていてほしかったけどね……」

「面倒なことだろ? 後はセラフィの神級魔法か、クレーティオのことくらいか……」

「それもあるだろうが、ヨゾラにも関係してる話だ」

「俺にも?」


 俺はあの模擬戦においてそこまで目立ってはいないと思うんだが……俺に比べたらセラフィやクレーティオの方がよっぽど目立っていた。

 なのに俺にも関係していることとなると、一体どんなことだろうか?


「今日の朝一に俺のところに親父の使いが来てな……皇帝陛下がヨゾラとセラフィと直接会って話がしたいそうだ」

「…………は? 何で皇帝陛下が?」

「それは分からない。でも流石に断りにくいから一緒に来てくれないか? 俺も同席することになってるからさ」


 まさか皇帝から呼び出しが掛かっているとは思わなかった。


 セシルは手を合わせて頼み込んできている。はっきり言って面倒臭いが、ここまで頼まれると無視するのもなんだが気が引ける。


「どんな要件だと思う?」

「多分だが、将来的なことだろうな。騎士とか、兵士として引き込みたいんだろう」


 行きたくない、というのが正直なところだった。

 俺だけならまだしも、セラフィをこういう面倒ごとに巻き込むのは嫌だ。


「どうするセラフィ?」

「儂か? 行ってもよいんじゃないか? 嫌ならば直接断っておいた方が今後面倒も減るじゃろう」

「セシル、断れると思うか?」

「それに関してはそこまで心配しなくても大丈夫だ。皇帝陛下は無理やり人を従わせたりするような人じゃないし、非公式な場みたいだから礼儀もそこまで気にしなくても大丈夫だと言っていたし」


 どうやら皇帝は権力主義者ではないようだ。

 非公式な場なので、貴族なんかもいないと考えていいなら、セラフィの言う通り直接断っておくのもアリかもしれない。


「分かった、行くよ」

「ありがとうヨゾラ! じゃあ食事の後に向かおう」

「頑張ってきてね~」

「ルーシェも行くんだよ」

「……なんでぇ!? 聞いてないー!?」


 他人事だと傍観していたルーシェだが、セシルの一言で絶叫した。

 セシルが帰ってきてからのルーシェは災難続きだなー、と俺も他人事のように思った。


 食事を終えてから、俺は着替えに戻る。

 服装についてセシルに聞いたところ、制服で構わないらしいので安心した。礼服など持っていない。

 剣もいつも通り下げておいて問題ないとのことなので、結局は普段と変わらない格好で向かうことになった。


 ルーシェに怒られながら歩くセシルに付いていきながら城に向かう。

 俺の横を歩くセラフィに緊張した様子などは無く、全く普段通りだった。


 帝都内を歩いていると、昨日の模擬戦を見に来ていた人達だろうか、俺達を見て何かを話していたりと視線を感じて落ち着かない。

 特にセラフィに向けられる視線は元々多かったが、さらに増えており、声を掛けてきそうな男などが多くてどうしたもんかという感じだった。


「やっぱりセラフィは歩いてるだけで目立つね」


 一頻りセシルに説教をしたルーシェがセラフィの横に並び話しかける。


「面倒なだけじゃ」

「結構イケメンな人達もいたと思うよ?」

「前にも言ったが、顔だけの男や腕っぷしだけの男に興味などない」

「じゃあセラフィはどんなタイプが好みなの?」

「それは俺も気になるな。学校に戻ってきて聞いた話だと、もう結構な数の男子に言い寄られて振っているらしいじゃないか」

「そうなのかセラフィ? 初耳なんだが」

「別に報告せんでもいいじゃろう。特に問題は起こっておらぬしな。にしても、好みのタイプか……考えたこともないのぅ」


 セラフィはルーシェの質問に考えるように唸っている。

 俺も結構気になるところではあった。今までセラフィのそういった話は聞いたことがない。


「やはりよく分らん」

「そっかー。じゃあヨゾラ君は? 好きな人とかいないの? クレーティオさんとか結構特別そうな感じがしたけど」

「む、ヨゾラはクレーティオと恋仲なのか?」

「クレーティオとはそういう感じじゃないよ。可愛いとは思うし、一緒にいて楽しいのは否定しないけどな」

「じゃあセラフィのことはどう思ってるの?」

「セラフィのことか……勿論可愛いとは思ってるし、信頼もしてるよ」

「恋愛感情は?」

「どうだろう? もしかしたらあるのかもしれないが、いつも一緒にいるから分からないな」

「あー、なるほどね」

「ヨゾラよ、あんまりはっきり言われると恥ずかしいんじゃが……」

「別に今更だろ。お前に対して遠慮はしない」


 実際どうなんだろうか? 俺はセラフィに恋愛という意味での大切という感情を抱いているのだろうか?

 前世で本気で人を好きになったことがない俺は、イマイチその辺の感覚がマヒしているのかもしれない。

 告白されて嫌じゃなかったから惰性的に付き合ってみたことはあるが、勿論長続きはしなかったし、付き合ってから好きになったということもなかった。

 まあ、今後もセラフィとは長く一緒にいるだろうからいずれ分かるだろう。


 そんな話をしながら歩いていると、すぐに城の前まで辿り着いた。

 兵士が立っており、セシルが何かを告げると案内される。

 整えられた庭園や、兵士達が訓練しているのを見ながら進んでいき、とある一室の前までやってくる。

 流石にルーシェは緊張しているようだった。


 兵士が扉をノックすると中から「入れ」という声が聞こえてきて扉が開けられる。

 部屋の中には、模擬戦の時に見たセシルの父親と、厳つい顔をした金髪のおっさんがいた。

 恐らくあれが皇帝だろう。


「セシル、しっかり連れてきてくれたようだな。ルーシェは久しぶりだな」

「は、はい! お久しぶりですザルバさん!」

「そしてヨゾラとセラフィと言ったな。セシルの無茶苦茶に付き合ってくれたことを感謝する」


 セシルの父親――ザルバは父親らしい笑みを浮かべて感謝してきた。


「いえ、まあ、俺も楽しかったので」

「はっはっ! そうか! 今後もセシルのことを頼むぞ!」


 こうして話していると悪い人ではないというのが分かる。クレーティオを止めておいてよかった。


「ザルバ、俺にも喋らせろ」

「ああ、悪かったな」


 少しの間黙っていた金髪のおっさんがようやく口を開く。

 皇帝のはずなのだが、ザルバは砕けた口調で喋っている。仲が良さそうだった。


「俺はフロディス・ヴィア・グラヴィス。グラヴィス帝国の皇帝だ」


 ニヤッと笑いながらフロディスは名乗り立ち上がった。


「自然な態度でいい。話をしようじゃないか」


 俺を見定めるような視線を向けてきつつ、楽しそうにしている。

 どうやら腹の探り合いは、そこまでしなくてもよさそうだった。


自由な女神「ヨゾラ君を呼び出すなんて! 用があるなら自分でくればいいのに!」

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