表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この異世界は物足りない  作者: VRクロエ
異世界学校編
35/137

女神降臨?

 ルーシェに付いていき闘技場に向かう。


「なあ、本当に闘技場とやらに向かってるんだよな?」


 分かってはいても聞いてしまった。

 何せ、前を歩くルーシェは学校の敷地内を出て帝都内を進んでいたからだ。

 完全武装の俺達が歩いていても、帝都という場所においては大して目立ってはいないが、それでもセラフィは視線を集めるので、結構見られている。

 ルーシェも結構可愛いので猶更だ。

 男達からの嫉妬めいた視線が痛い。


「セシル君の言ってる闘技場っていうのは、学校の中にある場所じゃなくて、帝都が管理してる、剣術の大会なんかが開かれる場所のことだよ」

「まじか……そんな場所の使用許可って簡単に取れるものなのか?」

「私達じゃ無理だろうね。だからセシル君が頼みに行ったんだよ。多分、セシル君のお父さんに直接ね」


 俺が思っていた以上に規模が大きくなっている。

 話をするルーシェも何だかげんなりしていた。


「兵士達相手でも勝つ実力があるセシル君と今学校で最も噂になっている2人の模擬戦だから観戦も相当多いだろうね……はぁ……」

「もしかしてルーシェが嫌がってたのって……」

「そんな期待されてる3人に混じって模擬戦をするんだよ! そりゃ渋るよ! しかもセシル君の足引っ張れないじゃん! 私のせいであっさり負けたらそれこそセシル君のお父さんに何て言ったらいいか!」


 ルーシェは模擬戦自体が嫌だったわけではなさそうだ。

 それこそ、普通に学校でやる分には渋らなかっただろうが、こうなることが分かっているのだとしたら乗り気にはなれないだろう。

 実際俺も、嫌だという程ではないが、変に緊張してきた。


「ちなみに、セシルの父親が来ることはほぼ確定か?」

「間違いなく来るね。それどころか、皇帝陛下も面白がって来るんじゃないかな? そういう感じの人だし」

「そんな簡単に出歩いてもいいのかよ……」

「まあ護衛は付いてるし、皇帝陛下本人も相当強いらしいから心配する人って少ないんだろうね」


 それだけではなく、人同士の争いが少ないルーディスだからこそ、襲われるという心配をしていない可能性もある。

 無警戒なのか、相当自信があるのか。帝国っぽいとは思うが、今回は俺自身が関わっているだけに、大人しく引きこもっていてほしいという気持ちが圧倒的に大きかった。


「そろそろ着くよ」


 段々と人が多くなってきたと思ってたら、ルーシェが声を掛けてきた。

 曲がり角を曲がると、国際スポーツ場くらい大きい建物が現れる。

 周囲はかなり賑わっているようで、俺達が通う学校の生徒もそれなりの数が見えた。

 今ここにいる人達、それから中で聞こえる祭りのような騒ぎをしている人達は、俺達の模擬戦を見に来たのだろうか? もしそうなら、まだそこまで時間が経っていないのにも関わらず、相当話は広がっているようだ。


「私達の入り口はこっちだよ」


 人が吸い込まれていく入り口とは別の方向に歩いていき、全く人が出入りしていない入り口にやってきた。

 入り口の前には兵士のような人が立っており、俺達に気が付くとこちらですと手招きをしてくる。


「ルーシェさん、ヨゾラさん、セラフィさんでお間違いないですか?」

「はい」

「ではこちらからお進みください。セシル君は既に到着しています」


 俺達に丁寧な対応をしてくれた兵士は、セシルのことだけ君を付けて親し気に呼ぶ。セシルが兵士達の間でも好かれていそうなことが分かった。


 暗い通路を進んでいき、出た先はまさに闘技場の戦場。

 360度を人が埋め尽くしており、俺達の登場と共に空気が揺れる程の大歓声が鳴り響いた。

 その闘技場のど真ん中に、俺達を見て笑う一本の剣を腰から下げたセシルが堂々と立っていた。


「来たね。俺はもううずうずして仕方がないよ」

「俺は驚きが凄いな。まさかこんなことになるなんて」

「学校の施設じゃ本気でやれないと思ってね。セラフィの魔法は噂だと相当の威力があるらしいから、その為の舞台でもある」

「そこまで頑丈なのか?」

「結界指輪っていう魔道具があるだろ? ここはそれの大規模版さ」


 どうやら話によると、この闘技場全体に結界指輪のような効果、それがしかも10回分は張り巡らされているらしい。

 それだけではなく、結界指輪を応用した本物の結界のようなものが観客席にあるらしく、もしそちらに攻撃が飛んで行ってしまっても何の問題も無いのだそうだ。

 まさに戦う為の場所。


「それにしてもルーシェの完全装備は本当に久々に見たよ」

「私だって久々だよ! 全く、誰のせいだと思ってるのよ!」

「ははっ、悪い悪い! でも安心して隣は任せそうだ」


 セシルの言葉に嘘はなく、本当にルーシェを信頼しているように見えた。


「2人は長い付き合いなのか?」

「そうだね。出会ってかれこれ10年は経ってるかな。学校に入学してからはタッグを組んで戦うことは減ったけど、もしこれからも隣にだれを置くかとなったら俺はルーシェを選ぶかな」


 恥かしげもなくセシルは言っているが、その相方のルーシェは顔を真っ赤にしている。

 甘酸っぱい雰囲気、という程ではないが、友達で留まっているような関係にはとても見えない。


「人が大勢いるところで恥ずかしいこと言うのやめて……」

「いいじゃないか、頼りにしてるぞ」

「もう……ま、言われなくてもしっかりやるけどね」


 10年来の付き合いは伊達ではなさそうだ。

 時間だけで言えば俺とセラフィよりも長い時間だ。まあ、時間だけで俺とセラフィのタッグが劣っているとは思わないがな。


「ヨゾラ、セラフィ、俺を楽しませてくれよ?」


 それだけ言ってセシルはルーシェと共に離れていく。

 俺とセラフィも、セシル達と反対方向に歩いて行き、ロウとの決闘の時よりも2倍ほど離れた場所で睨み合った。


 セラフィ以外の全員が剣を抜く。

 初めて見たセシルの剣は、とても綺麗な俺の剣と同じくらいの長さの直剣だ。

 サーチで確認して見ると、星鉄で作られた聖級の剣。ここに揃う剣の中では最も質の良い物だった。


 客席の一角からは実況のようなものが聞こえてきている。

 現在は戦場に立つ俺達4人の紹介をしているようだった。


 しばらくすると、審判らしき人物が俺達の立つ場所にやってくる。

 両手には10個の結界指輪が嵌められていた。万が一にも巻き込まれて命を落とさないようにする為だろう。

 審判は俺とセラフィ、それからセシルとルーシェの元に結界指輪を届けてから邪魔にならなそうな場所まで下がっていった。


「ルール説明は不要だな?」


 審判の言葉に全員が頷く。

 いよいよ模擬戦が始まろうとしていた。


「――なんじゃ?」


 睨み合う中、セラフィは唐突に客席の一角に目を向ける。

 何か気になることがあったのかと、セラフィの方を向くと、信じられないものを見たような表情に変わっていく。

 只事ではない様子だった。


「何があったセラフィ」

「ヨゾラ……あの場所で理級精霊が、発生した」

「……はっ!?」


 理級精霊が生まれる条件はこの間セラフィから聞かされていた。

 とてもこんな場所で生まれるようなことがあるとは思えない。しかし精霊が見えるセラフィが間違いを言っているとも考えにくかった。


 何が起こったのだろうか? 俺はセラフィが見つめる先に目を向ける。

 騒ぎは一切起きていない。どういうことだろうかと、そのまま見つめていると、その理由は人の波を掻き分けて現れた。

 あまりにも驚きすぎて、俺は咄嗟に言葉が出てこなかったが、その代わりと言ってはなんだが、その原因が客席から飛び降りて俺の方に走ってくる。


「おーい! ヨゾラくーん!」


 突然現れた謎の乱入者にこの場にいる全員が何者だと騒ぎ立てる。

 知っているのは俺だけだった。


「クレーティオ!? お、おまっ、なんでこんなとこにいるんだよ!?」


 俺に向かって走ってくるのは、9年間会っていなかったクレーティオだった。

 クレーティオは周囲の目など一切気にせずに、俺にダイブしてくる。

 咄嗟のことだったが、俺はどうにか受け止めることに成功した。


「久しぶりヨゾラ君! 元気してた?」

「まあ、元気ではあったよ。それよりも早く説明してくれ」

「いやね、ヨゾラ君が全然会いに来てくれないからさ、僕の方から会いに行けるようにならないかなーって思って頑張ったら、少しの間だけどルーディスに干渉出来るようになったんだよね。それでヨゾラ君の近くに出現してみたら、何だか人が多くて鬱陶しかった!」


 相変わらず自由な女神様のようだ。自分の行動したいように行動しており、状況自体は何となく分かっているのだろうが、関係無く俺の元に来たっぽい。


 久しぶりに会えたからだろうか、クレーティオは目に見えてはしゃいでいる。

 だが、この場においてただの侵入者としか認識されていないクレーティオがどういう対応をされるかは目に見えていた。


「あの侵入者を叩きだせ! 切り捨てても構わん!」


 客席の中でも、豪華な席の一角から男の怒声が聞こえてきた。

 それと同時に闘技場内には兵士達がなだれ込んできくる。


 最も早くクレーティオに辿り着きそうなのは元々この場にいた審判役の男だ。

 剣を構えてクレーティオに斬りかかろうとする。やばいと思い、俺は咄嗟にクレーティオを庇うように抱きしめた。

 俺の背に剣が当たると、指に嵌めていた結界指輪が砕ける。これが無かったら危なかったかもしれない。


「待ってください! こいつは俺の――」


 どうにか説明しようとした直後、空気が揺れる。

 それと同時に、俺と観客席にいた人達以外が、何かに抑えつけられたかのように膝をついた。

 その原因は俺の腕の中にいるクレーティオだ。


「僕の自由を……奪おうとするなぁ!」


 俺の腕の中から抜け出して、周囲に向けてクレーティオが聞いたこともない声を上げると、俺に斬りかかった審判の男以外の兵士達が眠るように気絶する。

 明らかに怒っていた。それも生半可なものではなく、ガチのガチだ。


「ヨゾラ君、少し待っててね」


 俺に振り返って小さく笑ったクレーティオが、客席をピョンピョンと飛んで移動したのは先程クレーティオを叩きだすように命令した男の元だった。


「親父!!!」


 セシルは必死に絞り出して父親を呼ぶ。

 どうやら先程命令をしたのはセシルの父親だったようだ。


 もしクレーティオがこのまま暴れればセシルの父親がどうなるか分からない。


「クレーティオ! その人を殺さないでくれ!」


 俺が叫ぶと、クレーティオはセシルの父親を睨みつけたまま頷いた。


「僕は今とても気分が良い。久々にヨゾラ君に会えたからね」


 冷え切ったクレーティオの声に、セシルの父親は気圧されていった。

 それでも軍部の重鎮としての意地を見せ、必死に声を絞り出す。


「貴様は……何者だ……?」

「失礼な男だね。お前こそ名を名乗ったらどうだい?」

「――ザルバだ」

「そ? まあ興味無いけどね。ねぇ、あそこにいるヨゾラ君に斬りかかった奴倒したら僕が審判やってもいいかな? あー、今の無し。あいつ倒して僕が審判やるよ。だからもう、邪魔しないでね?」


 クレーティオの有無を言わさぬ物言いに、ザルバは言い返そうとしたが、息子であるセシルからヨゾラという人物のことを聞いて、この目の前にいる存在がそのヨゾラと懇意だということならば、素直に任せた方が良いと判断して頷いた。


 話は終わったとばかりにクレーティオは戻ってくる。

 クレーティオが俺の元に着くのと同時に、審判の男は解放されたように立ち上がった。


「クレーティオ、審判なんて出来るのか?」

「そりゃ勿論! 少なくともそこの男よりは出来ると思うよ、どんな攻撃が流れて来ても問題無いしね」

「そう聞くと……確かにそうなのかもな」


 もうどうにでもなれといった感じだった。


「俺贔屓の審判はしないでくれよ?」

「分かってるよー、ヨゾラ君がどれだけ成長したのかも楽しみだしね!」


 俺とクレーティオだけで話が決まってしまい皆には申し訳ないが、クレーティオを止めようと思っても無理だ。

 いや、俺が言えばもしかしたら引き下がるかもしれないが、そこまで問題は無いような気もするので、クレーティオが行動したいようにさせることにした。


「ほら、早くかかってきなよ」

「っく……後悔するなよ女ぁ!!!」


 早く終わらせたいといった感じのクレーティオの挑発で審判の男はキレて斬りかかる。


「はい終わり」


 クレーティオは左手の人差し指と中指で剣を白刃取りして、右手でデコピンを一発。

 男はクレーティオの小さな手から放たれたデコピンを食らうと、とんでもない速度で壁まで吹き飛んでいき、気絶した。


 この場にいる全員が、クレーティオは只者じゃないと思っていただろうが、まさかデコピン一発で審判の男を倒すとは思っていなかっただろう。

 呆気なさすぎる決着に、一瞬場が静まり返ったが、その後に大歓声が上がる。

 帝都という場所がそうさせたのか、クレーティオの美しすぎる見た目が客の心を掴んだのか、それ以上の問題になることはなさそうだった。







自由な女神「久々に僕の登場! やっぱり僕が最強のヒロインだってところを見せていかないとね!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] クレーティオ顕現!  会いにこなかったからってもっと怒ってると思いましたが、なんやかんや女神らしい包容力を感じますねぇ。 しかしハーレムっぽくなってきたから男からの視線はすごそうだなあ(笑…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ