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この異世界は物足りない  作者: VRクロエ
異世界学校編
32/137

後夜祭

 日が落ち本来ならば光源が設置されていないこの場所は真っ暗のはずなのだが、中心で大きな火を上げるキャンプファイヤーと、周囲を照らす光属性魔法のお陰でとても明るかった。


 未だに人が多く残っており、夜だというのに完全にお祭り騒ぎをしている。

 聞こえてくる会話の内容の9割は、今日行われたセラフィとルーシェの模擬戦のこと。

 何処が凄かったとか、あの魔法はなんだとか、2人の成長が楽しみで仕方がないとか、そんな感じの会話だ。


 当の本人達はというと、キャンプファイヤーを囲むように設置された椅子のところで人に囲まれて質問攻めにされている。

 俺はその様子を観客席から眺めているが、落ち着く暇がなさそうで可哀そうである。


 観客席にいるのは俺だけだ。俺も後夜祭を楽しもうかと思ったが、元々俺はこういうイベントを全力で楽しむタイプではない。セラフィやルーシェとなら楽しめそうだが、その2人が捕まっている以上、俺はこうして眺めているだけで十分だった。


「ふぅ……」


 俺はコップに入った酒で喉を潤して一息つく。

 この学校は年齢層がそれなりに広いので、こうして酒も振る舞われていた。


 ちなみにルーディスでは18で成人だ。


 俺は実年齢だと30くらいなのだが、魔法を開発していた9年間では精神的には歳を取ってない。肉体も20の状態に作り直しているので20歳ということでいいだろう。

 ルーシェは丁度18歳らしいので、酒を飲めるのだが、あの状況でそんな暇はなさそうだ。


 肝心のセラフィだが、編入の時には俺と同じ20ということにしたが、実際の年齢は俺も未だに知らない。

 聞こうと思っていたが、すっかり忘れていた。


「聞くついでにそろそろ助け出してやるか」


 俺は立ち上がり観客席から飛び降りる。

 アルコールが多少回ってきていることもあり、着地に失敗しそうになったが、どうにかして踏ん張った。


「おーい、そろそろゆっくり話を聞かせてくれー」


 真っ直ぐにセラフィとルーシェの元へ行き声を掛けると、2人がこちらに顔を向け、周囲にいた奴らは来たのが俺だと分かると避けるように何処かへ行った。

 ロウの一件でセラフィに声を掛けているところに俺が来ると、こうして人払いが出来るようになっていた。楽でいいのだが、何だか怖がられてるみたいで悲しい。


「む、ヨゾラ、酒を飲んでおるな?」

「いいなー、私も私も」


 俺達はわざわざ何回も取りに行かなくて済むように、酒の入った瓶を2本受け取って観客席に戻ってくる。

 主役が消えたというのに、後夜祭が終わる様子は無かった。


 俺はセラフィとルーシェのコップに酒を注いでやる。


「2人ともお疲れ様――乾杯」

「「乾杯!」」


 それぞれがコップに入った酒を一気に飲み干す。

 俺は既に飲んでいたこともあり、本格的に酔いも回ってきた。セラフィはジュースでも飲んでいるかのようにケロッとしており、ルーシェは顔が真っ赤だ。全員様子が違うので面白い。


「模擬戦について色々と話したいこともあるが、その前に忘れてたことがある。――セラフィ、お前って年齢的にはどのくらいなんだ?」

「え? 20歳じゃないの?」

「これは内緒にしておいてほしいんだが、セラフィの実年齢は俺も知らないんだ。編入する時に都合の良いように20と言ったが、真っ赤な嘘だ」


 面倒臭いのでセラフィが精霊だということも言ってしまおうか迷ったが、ルーシェが獣人についてどう思っているのかが変わらないのでやめておく。セラフィも人というよりは獣人に近いから、ルーシェの心象次第では問題が起こる。


 セラフィは俺の質問について軽く考えた後に口を開く。


「生まれてから過ぎ去った時間という意味で聞いておるのならば、儂は10歳程じゃな」

「10歳……未成年飲酒!?」

「落ち着けルーシェ。10歳と言っても肉体構造的にはおぬしらと同年代くらいじゃ。まあ、細かいことは話せぬ。すまんな」


 オロオロするルーシェをセラフィは優しく宥めている。こうして見ているとセラフィの方がしっかりしてそうに見えるから不思議だ。


 俺も表には出していないが、それなりに驚いていた。

 精霊という生き物がどういったものか、それを詳しくは知らない。スプリトゥスで調べた時も、そこまで詳しい情報は出てこなかった。

 それでも、セラフィは人の寿命じゃ考えられないくらいの年月を生きてきたのかと思っていたのだ。言葉遣いや、それなりに知識が豊富だったのが理由だ。

 しかし生まれて10年しか経っていないという。まだまだ子供と言える年齢だ。


 ん? 10年……何か引っかかるな。


 俺はふと10年というのが気になった。それもそのはず、10年というのは、俺がルーディスに転生してきてから経った時間だからだ。


「なあセラフィ、もしかして俺が関係しているのか?」

「その通りじゃ。まあ、詳しいことは部屋に戻ってから話してやろう」


 やはり俺がセラフィの出生と関係しているらしい。

 俺にはその関係がどういうものか見当もつかないが、セラフィは知っているみたいなので、疑問はすぐに解けるだろう。


 気になっていた話も今はここまでにして、そろそろ模擬戦についての話を始めよう。


「ルーシェ、セラフィには色々と聞いておきたいことがあるんじゃないか?」


 ルーシェからしたら、セラフィが使った魔法には謎ばかりだろう。俺自身もサーチを使っていなければ訳が分からなかったのだ。戦闘中にサーチを常時発動させていることなんて無理なので、最後のなんかは片鱗すら理解出来ていないことだろう。


「そうだよセラフィ! 今日見た魔法全部私初見なんだけど!? いや、あの光を飛ばすやつ? はヨゾラ君も使ってたから知ってたけど!」


 酔ってきたのか、ルーシェは興奮気味にセラフィに言い寄る。呼び方もセラフィさんからセラフィと呼び捨てになっていた。


「ヨゾラも使っておったあの魔法はフォトンレイじゃな。ヨゾラオリジナルの王級光属性魔法じゃ」

「オリジナル!?」

「次に使った魔法は豪級闇属性魔法のシャドウファングじゃ。あの程度の魔法ならこれからも見る機会はあるじゃろう」


 豪級くらいなら、それなりにレベルを上げれば使えるようになるだろう。1度見たので俺も使えるはずだ。


「んでおぬしが精霊魔法で壁を作って止めようとしたやつじゃが、アレは聖級光属性魔法のフォトンブラストじゃ」

「聖級!? 聖級なんて使える人殆どいないよ! というか実際に見たの初めてだよ!」


 この時代でもやはり聖級魔法は希少なようだ。まああんなのを普通の奴が軽く使えたら戦争の規模がとんでもないことになっているだろう。それでも使える奴はいるにはいるだろうが、まだ生徒という枠に収まっているルーシェであれば見たことが無いのも仕方ない。

 聖級はMPや特功が高いだけじゃ使えるようにならない。修行の末に使えるようになるものであり、実際見たことがあり、MPも特功も申し分ない俺でも使えない。


「最後の3連じゃが、最初のは王級光属性魔法エクスプロージョン。2つ目が王級光属性魔法リフレクション。最後のが王級闇属性魔法のサイレントヴォイドじゃ」

「お、王級3連発……とんでもないね……。じゃあ私が感覚を失った魔法がサイレントヴォイドって魔法なんだね」


 そうか、戦っていたルーシェからしたらサイレントヴォイドで感覚を奪われたと思ってしまうのか。確かに発動を認識出来たのは3つの魔法だけ。分からなくても仕方がない。


「いや、ルーシェの感覚を奪ったのは別の魔法じゃ」

「え? でも3つって……」

「最後の魔法は溜めが必要での、連続して発動したというには語弊がある」


 3連発はあくまでも、最後の魔法を使う為に必要な状況を生み出す為の流れでしかない。


「最後におぬしの感覚を奪った魔法は神級闇属性魔法のブラックアウトじゃ」

「…………神、級?」

「うむ、神級じゃ」

「……」


 神級と聞いたルーシェは絶句している。

 それもそうだろうな。神級魔法なんて資料なんかでしか出てこない伝説レベルの産物。この世界で使うことが出来る奴なんか見つかるのかというレベルである。


 実際は使えるようになる奴はいるだろう。ただ、魔法習得に必要なイメージという部分が出来ないだけだ。

 何せ見たことが無いのだ。それどころか、神級魔法がどういったものなのかすら、分からないだろう。神級というものがあると伝わっているだけだ。


「ね、ねぇセラフィ。セラフィが使える魔法ってどのくらいあるの?」

「光属性と闇属性であれば平級から神級まで存在する魔法は全て使うことが出来るな。逆に火属性、土属性、水属性は一切使えぬが」

「……」


 再びの絶句である。


 セラフィは恐らくだが、魔法を使って戦闘を行う者の中で最強の存在だ。人の身では辿り着くのが不可能なほどの領域にいる。

 精霊という特性上魔法との親和性が限りなく高く、さらには精霊の中でも最上位である理級である。

 クレーティオによって高いポテンシャルを与えられた俺でも、セラフィに魔法で追い付けるとは欠片も思わない。それ程の存在なのだ。


「ち、ちなみにヨゾラ君は……」

「俺か? 火属性と土属性が平級魔法をいくつか使える」

「そ、そっか。それと王級の魔法が1つだもんね。強いとは思うけど常識的な範囲で安心した……」

「ルーシェ、まだヨゾラの話は終わっておらんぞ」

「え?」

「今ルーシェが言ったように王級光属性魔法が1つ使えるな。それと闇属性が平級、豪級、神級だ」

「……」


 三度絶句。何だか可哀そうになってきた。


「わ、私2人に敬語使った方がいいかな……?」

「そんなことせんでよい。儂らは友達なのじゃろ?」

「まあそうだな。今更気を遣われても気持ち悪いだけだ。それに今ルーシェが絶句した相手に模擬戦で良い勝負したんだぞ? もっと自信を持ってもいいんじゃないか?」


 魔法だけで見るから俺とセラフィがとんでもないように見えているだけで、ルーシェも間違いなく強者に入る。この世界の兵士がどのくらい強いのかは分からないが、ルーシェくらいの実力が今の時点であれば、兵士になった場合でも十分活躍できると思っている。


「はぁ……ありがとう2人とも。私ももっと頑張ることにするよ」

「今度は俺と模擬戦するか?」

「お願いしようかな。そういえばヨゾラ君はセラフィよりもステータスが全体的に高いんだよね?」

「MPと特功以外は比べ物にならないくらい高いな」

「その辺のことも考えておかないとかー。厳しい戦いになりそうだよ」


 酒を飲みながらルーシェはあははーと笑う。


「そうだルーシェ。ステータスをもっと上げたいと思うなら今度俺達とレベル上げしに行くか?」


 ルーシェには向上心がある。それに良い奴だとも思うし、俺も友達だと思っている。そんなルーシェの手助けをしてやりたくなった。


「え? いいの?」

「勿論だ。いいよなセラフィ」

「うむ、構わんぞ。互いを高め合うのはいいことじゃと思うしな」

「ありがとう~」


 感極まったのか、ただ酔っているだけなのか、ルーシェは俺とセラフィに抱き着いてきた。

 何にせよ喜んでくれたのなら提案した甲斐があったというものだ。


「じゃあさ! 次の野外合宿の時に一緒にパーティー組もうよ! 1週間あるし、それなりにレベルも上げれると思うんだ!」


 そういえばそんなものがあると聞いたな。

 確かに休日にその辺で少しだけ魔獣と戦うだけじゃ雀の涙だ。ならば1週間という期間で、強い魔獣が出るところに行って一気にレベル上げをした方が効率がいい。


「楽しみにしとくね」

「おう」


 一通り模擬戦の話も終わり、俺達はゆっくりと下らない話をしながら酒を楽しんだ。

 しばらくすると疲れてしまったのか、スヤスヤと寝始めたルーシェを寮の部屋まで運んでやる。

 セラフィもそれなりに疲労が溜まっているようだったので、セラフィの出生についての話は明日にすることにして、俺達も休むことにした。

自由な女神「一般的に神級っていうのは、生きている間に見ることの方が少ないんだ。だからミーシェちゃんの反応は普通だね」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 良い友達ができてよかった♪ まさか合宿中に秘境に連れていくのかな…(笑) [気になる点] 細かいですが、あとがきでルーシェがミーシェになってるのでご確認くださいm(__)m
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