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この異世界は物足りない  作者: VRクロエ
異世界学校編
31/137

セラフィVSルーシェ

 セラフィの登場により、観客席が大きな盛り上がりを見せる。

 観客席は満員だ。そこまで広い場所でないとはいえ、かなりの人数が模擬戦を見に来ていた。クラスメイト達は勿論のこと、他のクラスの奴らや、上の学年の奴らまで幅広く見に来ている。それだけセラフィが学校内でも注目を集めているということでもある。


 ルーシェはやりづらいだろうなーと思っていたが、どうやらそうでもなさそうだった。

 当の本人はこんな歓声の中でも集中しており、その歓声を聞いていると、()()()()()()()ので見に来ている奴も結構いるようだった。


 ルーシェは明るい性格で容姿もそれなりに優れているので、人気があるのは知っていたが、模擬戦となっても見に来る奴がいるということは、実力も高く認知されているのだろう。

 普段の印象からはそこまで強そうに感じないので、猶更楽しみになってきた。


 審判は俺達のクラスの担任教師が務めるみたいだ。

 ちなみに教師の名前はオランジという。


 オランジから結界指輪を受け取ったセラフィとルーシェは距離を取り剣を構える。


 セラフィの持っている剣は試験の時に使ったオリハルコンの剣。対するルーシェは鉄で作られた双剣を構えていた。


 最近知ったのだが、剣にも等級があるらしい。

 魔法と同じように平級、豪級、王級、聖級、神級となっており、オリハルコンで作られた俺の剣やセラフィの剣は王級に分類されるくらい品質がいいらしい。

 星鉄で剣を作った場合は、作り手によって差が出てくるらしい。良い職人によって作られた場合は聖級にも届くそうだ。


 ルーシェの持っている鉄の剣は平級だ。剣の性能では圧倒的にセラフィに分があると言えるだろう。

 だが、相性という意味では最悪だ。ルーシェが普通の剣を使うのであれば、セラフィは剣の性能差を活かして1撃を受け止めるという戦い方が出来たが、双剣となると受けるのは現実的じゃない。極力接近されないように立ち回って、接近された場合はどうにかして距離を離したいところだ。


「にしても双剣を使う奴って初めて見たな」


 俺は今まで細身の直剣か、重そうな大剣しか見たことが無かった。動きが早く使いやすいか、動きは遅いが1撃が重たいかの両極端だ。正直剣というのはどちらかで十分だと思う。


 双剣というのは極限まで速度と手数に振り切った武器だ。突き詰めていけばかなり強そうではある。

 しかし問題は使用難易度が高いということだ。常時両手が塞がり、剣を振る際はもう片方の剣を邪魔しないようにしなければいけない。

 使ったことは無いので、もしかしたらそこまで苦じゃないのかもしれないが、使用している奴をルーシェしか見たことがないとなれば、恐らく俺の想像している通りだろう。


 武器が双剣なのもルーシェが注目される理由なのかもしれないな。


 ルーシェは双剣で戦うことが初めてという訳では絶対にないだろう。なのにも関わらず、実力者として認知されているということは、しっかりと使いこなしている証でもある。

 単純な練度ならばロウなど比べ物にならなそうだ。だからこそ、俺とロウの戦いを見た後でももう少し良い勝負が出来ると豪語したのだと思う。


 さて、いい感じに歓声も落ち着いてきて、いよいよ始まるという雰囲気が流れ始めている。

 セラフィもルーシェも真剣な顔だ。簡単な模擬戦で終わらせるつもりはないというのが表情に出ている。


 俺はセラフィに向けてサーチを発動させる。ステータスを見る為ではなく、どんな魔法を使ったかを知るためだ。

 2属性とはいえ全ての魔法を使えるセラフィの膨大な手札を理解するにはこうするしかない。惜しげもなく様々な魔法を使うだろうから、見たことが無い魔法が大量に出てくるはずだ。


「それではこれよりルーシェ対セラフィの模擬戦を始める! ルールは剣と魔法、精霊も有りだ! 決着は結界指輪が壊れる、または戦闘続行不可能となった方の負けだ! 何か異論はあるか!」

「無いぞ」

「無いです」


 ルールは俺とロウが決闘をした時と同じだ。今回は観客が多いのでオランジも声を張ってルールの説明をしている。


「それでは――始め!」


 合図と共に模擬戦が始まった。


 ルーシェは直線的にセラフィに向かって走り出す。細かく、地面を多く蹴り走っているので速度は勿論だが、いつでも軌道変更することが出来るようにもしているのだ。


 ルーシェが走り出すのと同時にセラフィは自身にバフを付与する魔法――王級光属性魔法フィジカルライズの魔法を使って真後ろに跳んだ。


 バフを付与する魔法は色々な種類があるみたいだが、セラフィが好んでフィジカルライズを使っている以上、これが光属性か闇属性の魔法で使える最大のバフなのだろう。


 後ろに跳びながらセラフィは10のフォトンレイを放った。俺では出来ないがセラフィは10まで同時に発動させることが出来る上に、威力も発動速度も俺より早い。弱点である発動後に照準を変えることが出来ないのは変わらないが。


 フォトンレイは俺とロウの決闘で1度見ているので、ルーシェに動揺した様子は無い。

 ロウのように大きく回避するのではなく、最小限の身体の捻りで10のフォトンレイを躱してのけた。


 現状の速度はルーシェが上だ。フォトンレイで速度を殆ど落とせなかったのはセラフィとしては痛い。

 幸い元からそれなりの距離があったので、まだ多少距離の余裕はあった。


「これならばどうじゃ!」


 セラフィは着地後に後ろに跳んだ慣性をそのまま活かして細かいバックステップを踏みながら豪級闇属性魔法のシャドウファングを発動させる。

 地面から黒い刃が現れてルーシェに襲い掛かる。


「甘いよ!」


 ルーシェは襲い掛かる刃を双剣で全て斬り裂く。その間も速度が止まることは無い。対処しきれると自身の能力を正確に理解し、迷いなく突っ込んだ結果だ。


 またしても足は止まらず距離は詰まる。回避以外の対処が不可能なフォトンレイをセラフィは再び放つが、やはり有効打にはならなかった。


 セラフィはそこで一旦足を止める。魔法を溜めるためだ。

 聖級以上の魔法を使う際、セラフィであろうと足を止めて集中する必要がある。歩くくらいは出来るが、魔法の照準をしっかりと合わせるのならば完全に足を止めた方がいいのだ。


「食らうがいい!」


 セラフィが手の平をクロスしながら突き出すと、そこから巨大な光のビームが発射される。ドラゴンを倒した時にも活躍したフォトンブラストだ。

 あの頃よりも明らかに威力は高くなっている。


 さて、ルーシェはどう対処するか。


「精霊魔法! クラフト!」


 ルーシェは一瞬の迷いもなく精霊を召喚し精霊魔法を行使する。

 叫んだ名前的にルーシェの精霊は創級だろう。それを証明するかのように、地面に地面の壁が一瞬で生成された。


 むろん、そんなもので鬼のように特功が高いセラフィの聖級魔法が防ぎきれるわけがない。だが、数秒でも止めることには成功した。


「ここからは私の番だよ!」

「くっ……」


 距離が縮まりきったことにより攻守の交代だ。ルーシェの双剣による怒涛の攻めがセラフィに襲い掛かる。


 セラフィはまだまだ付け焼刃の剣と発動の速い平級、豪級魔法で何とか対処しているが、徐々に辛そうになってきている。

 精霊魔法は既に発動させてある状態だった。


 フィジカルライズと精霊魔法でステータスを底上げしているお陰でまだどうにかなっているが、ステータス的には五分という状況、技術で完全に負けていた。


「技術が半端ないのは見てて分かるが、ステータスもそれなりに高そうだな」


 元々低すぎないセラフィのステータスは、今一般的に見たらそれなりに高いというくらいまで上がっている。ロウよりも高いという程だ。

 それと同等である以上、ルーシェは全てにおいてロウよりも勝っている。もう少し良い勝負ができるというセリフにも納得だ。


 まだそれなりに余裕がありそうなルーシェに対してセラフィには余裕がなさそうに見える。このままではいずれ決着だ。


 状況を打開するためにセラフィが取った選択肢は自身の足元に魔法を放つことだった。

 避けながら必死に発動した魔法は王級光属性魔法エクスプロージョンだ。爆発を起こす魔法なのだが、流石に威力を抑えて放ったようで、互いが多少吹き飛ぶくらいに収まった。


 小さいダメージを互いが負う形となったが、有利に状況を動かせるのはセラフィとなる。


 吹き飛んだ後に、動き出しが早かったのはルーシェで、離れた距離を一瞬で詰めてセラフィを斬り裂く。

 しかし動き出しが早かったのがルーシェだっただけで、魔法を発動するのはセラフィの方が早かった。


「え?」


 声を上げたのはルーシェ。何しろ致命傷で結界指輪が壊れる未来を想定していたのにも関わらず、結果は斬られたセラフィが溶けるように消えるというものだった。


 王級光属性魔法リフレクション。自身の幻影を作り出す魔法だ。


 エクスプロージョンによる自爆のような行動すらルーシェからしたら予想外であり、実力でどうにか吹き飛んだ後に即座に動くことが出来たが、吹き飛ぶ瞬間にセラフィからほんの一瞬だけ目を離してしまったのだ。


 吹き飛ぶことを自身で選んだセラフィは、その後の行動を決めていた。その差が拮抗している戦いにおいて大きなアドバンテージとなる。

 エクスプロージョンを発動させ、直後にリフレクションを発動させたことにより、即座に動き出したルーシェには幻影の後ろにいるセラフィに目がいかなかったのだ。


 幻影を斬り裂いた先にセラフィはいない。ルーシェが距離を詰めて幻影を斬る間に3つ目の魔法も発動させていた。


 王級闇属性魔法サイレントヴォイド。一瞬だけ自身の姿と音を消し去る魔法だ。


 セラフィを見失ったルーシェに取れる手段は大きく後退することだが。そうすればセラフィの凶悪な威力の魔法が着地までに飛んでくる。

 そもそも立て続けの想定外にルーシェの思考は止まってしまっていた。


「――ブラックアウト」


 そして、止めの魔法が発動された。


 一見すると何も起こっていないように見える。俺もサーチを発動させていなければ何が起こっているのかが分からなかっただろう。


「――!?」


 ルーシェは目に見えて困惑している。それもそうだろう、視界も音も、人が持っている感覚の全てを奪われているのだから。


 神級闇属性魔法ブラックアウト。対象の感覚を全て奪い去る凶悪な魔法だ。


 相当な近距離でしか発動させられないようだが、ルーシェは自ら距離を詰めた。そしてセラフィには神級魔法を発動させるまでの時間も十分にあった。一連の流れ全てがセラフィの思惑通りだったのだ。


 困惑するルーシェにセラフィは斬りかかる。胴体を両断する軌道で斬り裂かれれば、確実に致命傷だ。


「そこまで!」


 結界指輪は壊れ、同時にオランジが決着を告げた。


「あ、あれ? 負けたの?」


 闇から解放されたのだろう、ルーシェは自身の結界指輪が壊れているのを見て自身が負けたのを察したようだ。


 静まり返っていた観客席から大歓声が上がる。最後だけは理解不能だったが、それでもレベルの高い模擬戦に満足したようだ。


 セラフィとルーシェは良い模擬戦だったと握手する。

 どちらとも笑顔だったが、ルーシェは悔しいという気持ちを抑えているようだった。


 いつまでも歓声が鳴りやまず、完全にお祭り騒ぎ。チラッと聞こえたが、この後実際に祭りのようなものが開かれるらしい。後夜祭だそうだ。

 どこかで見ていたらしい教師陣も混ざって後夜祭の準備を始めている。どうせだから俺も参加することにしよう。

 今回模擬戦をした2人ともゆっくり話したいしな。


自由な女神「魔法全振りと素早さ全振りの勝負だったね。結果的には上手く意表を突いたセラフィちゃんに軍配が上がった感じだね」

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