表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この異世界は物足りない  作者: VRクロエ
異世界学校編
30/137

情勢

あけおめです! ことよろです!

 編入してから数日を過ごした。俺とセラフィの周囲は未だに騒がしいが、段々と馴染んできた気はする。

 男子は最初セラフィに近づくのを躊躇っていたが、女子が仲良さそうに話しているのを見て、数人が勇気を出して話しかけた辺りから、男子とも絡むようになっていた。

 別に普通に接するなら俺は何もしない。ロウの場合は流石に目に余ったので対処しただけであり、セラフィと仲よくしようが、恋愛感情を寄せてアプローチしようがどうでもいい。セラフィが嫌がった場合のみ俺の出番だ。

 といっても、セラフィが自身で対処出来ない状況はそうそうこないだろう。やり過ぎてしまう可能性があるので、俺が対処するだけだ。


 ちなみに問題のロウは、あれから絡んでこない。明らかに俺とセラフィを避けており、偶に別のクラスの貴族っぽい奴らと一緒にいるのを見かけた。


 まあ何が言いたいかというと、学校生活は順調に過ぎているということだ。


 ここで学ぶことは2つ。基本的な座学、主に歴史や世界の情勢についてと、戦いだ。

 戦いを学ぶというのは、平和な日本に生まれた俺からしたら、何をするのかが良く分からなかったのだが、魔法を教えてもらったり、剣術については、模擬戦なんかをしながら、ダメなところを指摘してもらったりといった具合に、手札を増やすのと駆け引きについてが主になってくる。


 剣を全く使えなかったセラフィも、それなりに戦えるようになってきている。

 物理方面のステータスが極端に低いといっても、魔法方面のステータスと俺を基準にして考えているからであり、一般的に見れば低すぎることは無い。なんなら、クラスの中でも中盤くらいには入ってくる。


 そもそもクラスメイト達はステータスがそこまで高くない。何せ、技術を学んでいるだけであり、レベル上げをしていないのだ。

 年に3度、レベル上げの合宿が1週間に渡りあるみたいだが、それでも秘境に潜ったりするわけではないので、大幅にレベルが上がる訳ではない。休みの日に魔獣を狩りに行っている奴も少ないらしいので、本当に強くなりたいのかと疑問に思う。

 俺とロウの戦いを見れば分かるだろうが、技術をある程度身に着けたところで、ステータスに大きな差があれば意味が無くなる。魔法も強力なものはMPが足りなくて使えないので、相当に策を練ってそれを上手く決めなければ勝つことは出来ないだろう。


 強くなる理由が戦争にあるのならば猶更だ。


 座学により、今の世界のことがある程度分かってきた。

 俺とセラフィが編入した帝都剣魔学校はあまりにも武力という面に方向性が偏り過ぎている。そんな学校なのにも関わらず、500年前に比べてここまで大規模になっているのは、明確に力を必要としている証であり、力が必要になる状況というのは戦争時中が当てはまってくる。


 冒険者として必要ならば、ここまでの規模になることは無い。確かに冒険者という職業はありふれたものであり、実力があれば並の職よりも稼げるのは間違いない。しかし、冒険者になるために学校に通うというのは違う。そもそも国がそこまで冒険者に対して支援する理由がない。


 この学校に通うというのは、将来的に兵士としての活躍を期待されているということだ。


 500年前までは、ルーディスという世界は戦争とは無縁だった。治安も安定しており、警備を強化する必要もない。そんな世界がここまで変わってしまう変化があったのだ。


 俺は気が付いていなかったことがあるのを、最近になって思い出した。この学校に、それどころか帝都内の何処にも()()()がいないのだ。

 それもそうだろう、戦争している相手は他の2国ではなく、俺とセラフィにより生み出された異種族なのだ。果ての秘境を中心に築かれた異種族の国と3国で戦争している。それが今の世界だった。

 正確にはグラヴィウス帝国とレジケル王国が筆頭となっており、スプリトゥス聖国は最低限の支援をしているという感じだ。

 異種族達も人と同じように精霊と契約している者が多いようで、スプリトゥスとしては非常にやりにくいらしいが、それでも敵として認識している以上は支援くらいはするようにしているみたいだ。


 戦争が起きるに至った理由だが異種族――獣人が国を興し攻めてきたのが始まりだそうだ。

 正直、俺はこの情報を信用していない。情報が捻じ曲げられている可能性は大いにある。正しい可能性もあるので、声を大きくしては言えないが。

 果ての秘境は、秘境の中でも飛びぬけて人が入り込めない場所だったが、そこに住める国が出来たとなっては、資源を求めて人が奪おうと動くのはおかしくない。


 俺としては最悪の状況だった。獣人という異世界の楽しみを折角生み出したというのに、交流するどころか戦争が起こっているとなれば、俺が目指した異世界を楽しむという目的からは遠ざかったように思う。

 逆に、戦いという面での異世界を楽しめるというのもあるが、潰す為だけに戦うのは嫌だった。戦いの果てに得る物が無さすぎる。明確に敵と割り切るには難しいだろう。


「どうするかなぁ……」


 セラフィを俺の部屋に呼び出して今後の方針を練ることにした。


「確認しておくが、おぬしはどうしたいんじゃ?」

「獣人を潰す為に戦うのは嫌だな。害にしかならないなら仕方ないと思うが、今のところ戦う理由が弱すぎる。それに折角生み出して、国を立ち上げられるくらいに発展してくれたのに、勿体ないじゃないか」

「ふむ……出来れば人と獣人が友好的な関係を築くのが望みか」

「そうだな」

「であればまずは戦争を終わらせることが重要になってきそうじゃな」

「上手くいくかぁ?」

「無理じゃろうな。いくら儂とヨゾラが強いといっても、数で圧し潰されるじゃろう。人と戦うにしても獣人と戦うにしてもじゃ。起点となるのは今のところ難しい」


 全てを圧倒出来る力があれば、割って入るだけで戦争を終結させることが出来るだろうが、2人でそれを実行するのはあまりにも難しい。今から死ぬ気でレベルを上げてもきついだろうな。


「なぁヨゾラよ、今すぐ動く必要は無いのではないか?」

「どういうことだ?」

「状況的に難しいならば、何もせずに状況が動くのを待ってもいいということじゃ。人も獣人もすぐには滅ばんじゃろう。ならば、今は当初の予定通り学校というものを楽しむというのもアリなんじゃないか?」


 確かにセラフィの言うことは一理あった。無理に行動を起こして詰むくらいなら、機会を伺うということか。


 それを聞いて、密かに期待していたことを1つ思い出す。

 この状況、世界は停滞から動き始めたのならば、もっと異世界らしいことが起こっても不思議ではない。


 例えば()()の出現だったりだ。


 称号というシステムがあるルーディスならば、獣人との戦いという大きなイベントにおいて、人側に勇者が出現する可能性があると期待している。そして、可能性が決して低いものでもないと考えていた。


 何せ、獣人側のトップは()()と呼ばれているからだ。


 称号に魔王というものがあるのかどうかは分からないし、姿も不明らしいので、情報があまりにも弱いが、それでも500年前には無かった魔王という言葉がルーディスで生まれたことは偶然ではないだろう。

 その魔王というのが、人に対して明確な敵対意志を持っているのならば、むしろワクワクするくらいだしな。


「勇者が出てくるまでは待ってもいいかもな」

「その勇者というのが何かはよく分らぬが、それが何かしらのトリガーになりそうなのか?」

「出てくれば確実になるだろうな。セラフィの言う通り、状況が動くまでは待ってもいいかもしれない」

「急くと期を逃す。その選択でいいじゃろう」


 結局、俺とセラフィはすぐには何もせずに、学校を楽しむということになった。

 獣人との交流がまだまだ先になりそうなのは残念だが、仕方ないだろう。焦って死にたくはない。


 なにはともあれ、大きく世界が変わっていたのは間違いないのだ。今の状況はよく考えれば予測できたこと。望んだ方向ではないが、おかしな方向ではない。異世界と呼ぶに相応しい世界にはなってきているので、今後も期待が出来る。


 もしかしたら俺が勇者に……なんてことも起こったりしてな。いや、勇者は俺じゃない方が楽しめそうだな。


 出来ることなら勇者とパーティーを組んで旅をしてみたいという気持ちの方が強かった。勇者を差し置いて俺の方が無双するなんて展開の方が燃える。


 色々と妄想していると、セラフィが時間を気にしたように立ち上がった。


「そろそろ儂はいかんとな。ルーシェが待っておる」

「お、そういやルーシェとの模擬戦って今日か」

「うむ。ヨゾラも来るか?」

「勿論」


 話も纏まったとこで俺とセラフィはロウと決闘した場所に向かう。

 元々模擬戦の約束はしていたが、慌ただしい日々も続いており、何よりもセラフィが模擬戦をするとなると見に来る奴も多くなりそうなので、集まりやすい日まで持ち越しとなっていたのだ。


 口振りから察するにルーシェは結構強そうだ。楽しみな模擬戦である。


「勝てそうか?」

「どうじゃろうなぁ……簡単に負けるつもりは無いが、儂はそもそも1対1の戦闘は向いておらんしな」

「前衛がいないと普通に攻撃食らって死にそうなくらいのステータスだしな」

「大きなのだけもらわなければ1撃ということは無かろうが、速度で負けている状況で相手を引きはがせずに近距離戦闘を続けられたら結果は変わらんじゃろうな」

「一応剣もそこそこは使えるようになったんだろ?」

「精霊魔法を使ってようやく戦いになるくらいじゃな」

「意味無ぇな」

「あのな……もう少しオブラートに包んでくれてもよいと思うぞ儂は」

「親愛の証だよ」

「全く……」


 緊張はしていないみたいだ。正直な話、そこまで負けるとは思っていない。接近されても何だかんだ対処するんだろうなーくらいな感覚だ。


 セラフィにはあり得ない程多い手札と、それを使いこなすための下地がある。火力に関しては俺ですら1撃でHPを削りきられる可能性があるくらいだ。強さという意味では申し分ない。

 後は、ルーシェがどんな戦い方をしてくるか次第だ。


「それじゃ、頑張ってな」

「ああ、行ってくる」


 俺とロウの決闘とは違い、平和な模擬戦が始まろうとしていた。










自由な女神「意図してない方向に世界が動いちゃったんだね……ヨゾラ君が獣人と仲良くなれる未来はあるのかな?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ