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この異世界は物足りない  作者: VRクロエ
異世界学校編
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決闘2

 魔法を回避しながら近寄られないようにする。

 俺が今からやろうとしている戦い方は、1度しかやったことが無い。理由は簡単だ、難易度が高い。

 ただ、1対1の戦いにおいてはかなり有効な戦い方であり、対応出来る程のステータスが無ければ対処するのは困難だろう。


 ロウは、確かに実力はある。上の方といっても、その上を知らないので学校内の基準は分からないが、果ての秘境は無理でも、普通の秘境であればそこそこは戦っていけるくらいの実力はある。だが、そのレベルでは俺に勝つことは出来ない。

 仮に、決闘ではなく本気で殺し合いをした場合は、最初の1撃で終わる。精霊魔法を使った俺の攻撃を受けることは出来ないだろう。

 ロウがどこまで強くなりたいのかは分からないが、これもいい経験だと思っとけ。

 戦い方と、喧嘩を売る相手を選ぶということは学べるはずだ。


「いくぞ」


 俺は走りだしをウィンドの魔法を使って一気に加速させる。


「今更その程度で!」


 ロウは正面から迎え打つつもりのようだ。俺にその気はない。


 受けの姿勢をとったロウの少し手前で、地面に平級土属性魔法のサンドウォールを発動させる。

 地面から盛り上がって出る土の壁は、俺の真下から出現する。せり上がってくる土の壁を思い切り蹴って俺は宙に舞った。


「んなっ!?」


 上を見上げるロウは驚きの表情を見せる。


「まだまだ」


 俺は空中で身を翻し、逆さまになる。

 逆さまでしゃがむような姿勢をとって、空中を蹴った。


「なんだそれは!?」


 ロウの後方に向かって勢いよく突っ込んでいく俺は、その最中にさらに身を翻して、着地先にサンドウォールで壁を作って蹴る。

 先程は正面だったが、今度は真後ろからの突撃だ。ロウは何とか俺の方を向いて剣を構えるが、そうなれば宙に行くだけだ。


 完全な立体機動をしている俺を捉えるのは中々に難しい。地上には段々とサンドウォールが増えていき、平面で蹴って移動する択も出てくるのだ。しかも増える程何処に移動するのかが分からなくなってくる。


 どういう原理かというと、単なる力技だ。

 狙ったところにサンドウォールを出し、空中では足元にウィンドウォール、風を収縮させてバネのようにし、全力で蹴っているのだ。

 高いステータスを持つ俺だからこそ出来る戦法。破るには、この速度についてくるか、完全に移動を読み切るか、広範囲で威力の高い魔法を使うしかない。

 現状、ロウには全てが欠けていた。


「クソクソ……クソッ!!!」


 がむしゃらに追ってこようとしているが、ステータスで負けている上に俺は魔法で速度が上がっている、追い付ける訳などない。


 チラッと観客席を見てみると、クラスメイト全員が唖然としている中、セラフィだけは当然だという表情をしている。信頼が嬉しいね。

 この相手がセラフィだったら魔法で一瞬なんだがな。まあ、そもそもセラフィ相手なら普通に速度で圧倒して一撃で沈めるので関係無いが。

 あいつの貧弱装甲はどうにかならないものか。


「お?」


 ロウは追い付けないと判断して、サンドウォールを崩していくことにしたようだ。地上から生える土の壁が次々に崩れていく。


 なるほど、考えたな。勝負勘が良いとは思ってたが、間違っていなかったようだ。


「どうした! 土の壁を作り出す速度が追い付いてないぞ! 対処が分かれば大したことないな!」


 有用だと分かったロウは目に見えて調子に乗り出す。それを行ってもまだ五分なのだが、何処までも傲慢なようだ。


「うるさい奴だな」


 ああいった手合いは嫌いだ。思考がそれなりに早いだけで、深くない。脊髄反射で喋っているために、言葉を聞いていてイライラする。それを偉そうに言っているのだから猶更うざい。

 何も普段からそこまで考えろとは言わないが、今は確実に考えた方がいい局面だ。これがセラフィやクレーティオであれば、こうはいかなかっただろう。


 相性最悪だな、絶対に仲良くなれない。まあうざい奴をボコボコに出来ると考えると、スッキリ出来るからいいか。


「多少きついが、とっておきを見せてやる」


 俺はサンドウォールの発動を辞める。手を止めたことにより、地上はロウによりスッキリと整地された。


「さて、これで――」


 ロウは言葉を止める。それもそうだろう、先程まではサンドウォール込みで行っていた立体機動を、サンドウォールがない状態で俺が行っているからだ。


 仕組みは簡単、風だけでやっている。魔法の発動と、壁を蹴るよりも力を使うので体力の消費と集中力の消費が半端ないが、その分風により速度は先程よりも早い。

 アニメでこんな感じに移動しているのを見たことがあり、かっこいいので再現できないかと練習したのだ。実戦で使おうとは思わないが、実力差がはっきりしている命の掛かっていない決闘であれば存分に見せることが出来る。


 段々とロウの視線が追い付かなくなる。あちこちへと瞬時に移動する俺にいちいち目を向けていることもあり、酔いも来てそうだ。


「さて、セラフィに手を出そうとしたことを後悔してもらおうか」


 軌道を変えながらも徐々に接近していく。


「まっ――!」


 待つわけがない、セラフィも飽きている。


 俺はロウの胴体を真っ二つにする勢いで剣を振って、地面を滑りながら着地する。

 斬られたロウは、少しだけ吹き飛ぶだけに収まり、指にはめた結界指輪が砕け散った。致命傷を受けた証拠だ。


「そこまで!」


 決着が付いたことを教師が告げる。観客席からは歓声が沸いた。

 クラスメイト達がこちらにやってくるのと同時くらいに、何処からか見知らぬ教師がやってきてロウを運んでいく。地下行きではなく、医務室に連れていかれたのだろう。

 背負われているロウは動かない。気絶しているようだ。


「全く、時間を掛け過ぎじゃ。無駄に怪我までしおって……」


 セラフィが俺の頬を撫でる。そういえば斬られたのだった。


「なんだ? 心配してくれたのか?」

「当たり前じゃあほ! 相方が怪我をするのを平然と見てられる程のオリハルコンメンタルではない!」

「悪かったって。想像よりも強かったんだ」


 にしても心配そうな顔で頬を撫でてくれるセラフィが可愛い。勝利のご褒美か。普段がポンコツなので、こういうギャップはこいつのズルいところだ。


 さて癒しはこの辺にしておいて、目の前のことを考えなければいけない。

 色々と聞きたくてうずうずしているクラスメイト達が怖い。俺はここから生きて帰れるだろうか。


 まず来たのはルーシェだ。


「いやぁ、凄いものを見たよ。試験で凄い結果を残したとは聞いてたけど、まさかここまで強いとは思ってなかったよ」

「まあな。その辺の奴に簡単に負けるつもりはないよ」

「今度私も模擬戦お願いしようかな」

「お? 勝てる見込みでも?」

「んー、ロウくんよりは良い勝負する自信はあるかな」

「へぇ、そりゃ楽しみだ」


 冗談で言っている訳ではなさそうだ。


「いや、どうせならセラフィとやってみたらどうだ? 仲も良さそうだし」

「む、儂か? まあ構わんぞ。ルーシェはあの馬鹿男とは違うようじゃし、仲良くなれそうじゃ」

「どうしようヨゾラ君、まだ仲良くないみたい」

「セラフィは俺以外との関わりが殆ど無かったからな。基準がまだ曖昧なんだろ」


 悪い奴じゃないのは確定だ。俺も仲良くしておきたいところではある。


 俺達の話が終わったのを確認して、他のクラスメイト達も突撃してきた。

 飛んでくる質問は「最後のアレはなんだ?」、「精霊は契約してないの?」、「ステータス高くない?」、「今まで何して生きてきたの?」と、とにかく質問の種類が多い。

 答えにくい質問も混じっているので、正直言ってめんどくさい。俺は逃げることにした。


「今日の授業とかってどうなるんだ?」

「今日は特に何もしないぞ。編入生が来る時は大体授業にならないから自習みたいになるんだ」

「そんな……」


 絶望だ。俺はこの地獄から逃げることは出来ないみたいだ。


 仕方がないので、答えられる質問だけ答えて、残りは何とか誤魔化す。

 一通り落ち着いてきたところで、クラスメイト達の一部は模擬戦を始めていた。

 俺とロウが戦っているのを見て、身体を動かしたくなったらしい。教師は模擬戦をするクラスメイト全員に結界指輪を渡して回っていた。


 それぞれが何かをやり始める中、俺とセラフィ、それからルーシェは観客席の方に移動して一息つく。


「にしても良かったねセラフィさん。ヨゾラ君が勝ってくれて」

「だから何度も言っておろうが、当たり前じゃと」

「でも嬉しかったでしょ? セラフィさんの為に怒って、戦って、勝ってくれて」

「う、うむ。それはまあ……」

「あのですね。そういう会話は俺がいないところでやっていただけます? 恥ずかしいでしょうが」

「照れすぎてヨゾラ君の口調が変になってる」

「キモイからやめい」


 ルーシェはもしかしたら俺を弄ることに喜びを覚えてないか? 嫌な性癖だ、去勢してやろうか。

 さり気なくセラフィはキモイとか言ってるしな。俺は忘れないぞ。


「そうだルーシェ。俺との模擬戦でロウよりも良い勝負が出来ると言っていたが、このクラスではお前が一番強いのか?」

「ううん。セシルっていう男子が一番強いかな。ちなみに性格も問題無いよ、誰にでも優しいから皆に好かれてる。今日は来てないみたいだけどどうしたのかな……」

「そのセシルって奴とルーシェが戦ったら戦績はどんな感じになる?」

「10戦やったら8戦は私が負けるね。ヨゾラ君とは良い勝負しそう」

「早く会ってみたいな」

「またセラフィさんに一目惚れするかもね」

「勘弁してくれ……セラフィが構わないならいいが、そうじゃないなら面倒にしかならん」

「今回みたいなことにはならないから大丈夫だよ」


 笑うルーシェの隣で俺は溜息を吐く。逆側のセラフィに目を向けると、ボーっと模擬戦を眺めている。


 今回みたいなことがあるかもしれないとは考えていた。そしてこれからもあるだろう。その中で、セラフィは誰かしらに想いを寄せられて応えることはあるのだろうか?


 セラフィに対する、恋愛感情があるかと聞かれたら、多分無いと思う。何せ距離が近すぎて分からないのだ。もしかしたら惚れている可能性もある。

 いつか、俺がセラフィに本気で恋愛感情を抱いた時、その想いを伝えた時、俺とセラフィの関係にどのような変化が訪れるのだろうか……


 そんなことを考えていると、もう1人の人物が頭に浮かんでくる。クレーティオだ。

 もう随分と長いこと話をしていない。感謝はしているが、クレーティオに対する感情も良く分からないというのが正直なところ。

 近々会いに行くか。俺が意識して眠ればきっと会えるだろう。


 まあ、上手く答えが出ないのならば一旦忘れるのもアリか。俺の今の目的は異世界を楽しむこと。まだ一部も楽しめていない。まだまだこれからなのだ。


 明日にまたロウが絡んできたら面倒臭いなーと思いながら、クラスメイト達の模擬戦が全て終わるまで、3人で適当に雑談していた。





自由な女神「まあこんなもんか。ヨゾラ君に勝とうなんて100億年早いよね」

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