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この異世界は物足りない  作者: VRクロエ
異世界学校編
28/137

決闘1

メリークリスマース!


 ロウをボコボコにするのは決定したが、肝心の決闘はいつやるのかと思ってると、クラスの全員が席を立って外に向かう。どうやら今すぐやるらしい。

 もしかしたら珍しいことではないのかもしれない。戦う為の技術を学ぶ学校でもあるので、唐突に決闘をするとなっても許されるのだろう。俺には理解出来ないが。


 俺もセラフィを伴って付いていく。

 決闘の相手であるロウはセラフィが俺の隣を歩いているのを見て睨んでくる。何だか哀れにも思えてきてしまった。


「ねぇヨゾラ君! 勝つ自信はある?」


 歩きながら話しかけてきたのは、一番最初に質問してきた女子だった。


「あ、私はルーシェ! よろしくねヨゾラ君、セラフィさん」

「よろしく」

「よろしくの」


 黒髪のツインテールを揺らしながら可愛らしい笑顔を向けるこいつはルーシェというらしい。


「んで、勝つ自信だっけ?」

「うんうん。女の子を奪い合って戦うなんてロマンチックだよねー」

「あやつが勝手に言い出したことじゃ。万が一ヨゾラが負けたとしても変わらん。儂の相方はヨゾラだけじゃ」

「と、相方さんは仰ってますが」

「まあ確かに変わらんわな。負けるつもりはないけど」

「ほぅ……」


 そもそも俺とセラフィの関係は複雑だ。契約で結ばれているし、人と精霊だし、長く一緒にいる。強い奴と云々ではない、まあ言ってないから勘違いするのも分からなくはないが。


「折角だしロウのことを少し教えてくれ」

「いーよー。性格は正直最悪だけどイケメン。剣と魔法の腕は学年の中でも上の方かな」

「短気のくせに強いのか」

「強いねー。でも短気って……ヨゾラ君もすぐに喧嘩買ったじゃん」

「あたりまえだろ」


 しかし強いのか……念のためにステータスを確認しておくか。


 俺はロウに向けてサーチの魔法を使う。本来ならばここでステータスが浮かび上がるのだが、どういう訳か出てこなかった。


「サーチの魔法は意味無いよ。この制服はサーチくらいの魔法だったら弾くようになってるからね。魔道具ってやつだよ」

「どうりで見れないわけだ」


 仕方ない、どのくらい強いかは戦ってからのお楽しみにしておこう。


 話しながら、広く頑丈な壁に囲まれた闘技場のような場所にやってきた。ご丁寧に観戦席みたいな場所まであり、クラスメイト達は下がっていき、真ん中には俺とロウ、それから担任の教師だけが残る。


「2人とも、これを」


 教師は俺とロウに指輪を渡してくる。何かしらの魔道具だろう。効果が気になるのでサーチで調べることにした。


結界指輪(バリアリング)

 致命傷となる攻撃を1度だけ完全に防ぐ。


 なるほどな、死なない為の処置という訳だ。戦いの為に鍛えてる奴が本気で攻撃したらそりゃ死ぬもんな。俺も力加減などを気にせずに良さそうだ。


 結界指輪を右手の人差し指にはめると、自身の身体が何かに覆われるような感覚があった。きちんと作動しているみたいだ。


 準備も出来たところで剣を抜き構える。

 ロウを見てみると、俺の剣と同じくらいの大きさの剣を構えていた。しかしよく見てみると星鉄で作られている。俺の剣よりも性能は上だ。

 まあ、剣だけで全てが決まる訳ではない。変な打ち合い方をしなければそう簡単に折られることもないだろう。


 始まりの合図があるまで静かに待っている。すると、観戦している生徒たちの声がはっきりと聞こえるようになった。


「ねぇねぇセラフィさんはどっちに勝ってほしい?」

「ヨゾラに決まっておろうが!」

「えー、じゃあロウくんのことはどう思ってる?」

「馬鹿な男だと思うとる」

「結構イケメンだと思うんだけどタイプじゃない?」

「知らん。ヨゾラの方がいい」

「わお、そこまでストレートに言うと全く関係無い私までドキッとしちゃう」


 女子生徒に囲まれながらセラフィが質問攻めにされている。恥ずかしいのでやめてほしい。


 ほれみろ、ロウの顔がどんどん険しくなってくじゃないか。もはや俺を見る目に殺意が籠っている。俺を睨んだって仕方ないじゃないか。

 まあ、セラフィに手を出そうとした時点で同情の余地は無いが。むしろ早くボコボコにしてやりたい。


「なあ、謝るなら今のうちだぞ」


 狙った女にここまで言われた挙句負けたとなってはプライドは粉々だろう。そして俺はもう1つのプライドが粉々になる提案をしてやった。


「どうやらよっぽど殺されたいらしいな。それに安心しろ、セラフィさんも戦いが終わる頃には俺に靡きたくなっているはずだ」


 重症だなこりゃ。セラフィの可愛さに狂わされたか、元々アホな程の自信家なのか……もしかしたら両方かもな。

 何せこの学校でも上位の実力があってしかも貴族だ。増長したくなる気持ちもあるのだろう。子供だな。


「ルールは剣と魔法、精霊も有りだ。決着は結界指輪が壊れる、または戦闘続行不可能となった方の負けだ。何か異論は?」

「無い」

「無いぞ」

「うむ。それでは――始め!」


 教師の合図と共に決闘がスタートする。


 先手はロウだ。合図とほぼ同時に地面を蹴って接近してくる。


「覚悟しろ!」

「お、意外と早い」


 接近してきた速度的に素早さはそこそこ高そうだ。ただ、言葉を発する余裕が俺にはあるくらいの速度だ。


 速度がのったロウの剣による攻撃を軽く受け止める。それなりに力を込めたのだろうが、簡単に受け止められたのでロウは一瞬驚いたような顔をした。

 しかし、驚いた顔をすぐに引っ込めた後は、追撃とばかりに剣による攻撃を連打してくる。フェイントもしっかりと織り交ぜられており、捌くのが少々面倒だ。これが剣の腕の差なのだろう。


 流石にこのままではきつくなってくるので、一度力を込めてロウの剣を大きく弾く。体勢を崩してくれればとも思ったが、ロウは弾かれた方向に逆らわないように身体を動かして後ろに跳ぶ。


「そら食らっとけ!」


 距離が離れたということもあり、俺はロウに向けて手の平からではないフォトンレイを放つ。見慣れぬ魔法に戸惑ったようだったが、ロウは危険を察知したようで横に走り出した。

 勝負勘はそれなりに良さそうだ。ただ攻撃を仕掛けても有効打にしてくれなさそうな感じがする。


「お返しだ!」


 ロウは走りながら平級火属性魔法ファイアボールをいくつも飛ばしてくる。それを見て俺も横に走り出した。


 数手の攻防だったが、ステータスでは俺が大幅に勝っている。残念なことに技術では今のところ勝ち目がないので、ステータスでのごり押しをするしかなさそうだ。


 互いに広く場所を使いながら時に接近して剣を打ち合わせ、時に魔法で牽制し合うような戦いが続いた。その楔を切ったのはロウだ。


「こい精霊!」


 掛け声と共にロウの傍に精霊が出現する。色的に火属性の精霊なのは間違いないが、階級はぱっと見では判断することが出来ない。


 いや、戦闘中に出してくるなら導級か。崇級と理級の可能性もあるが、俺の知っている常識で考えれば可能性は低い。


「精霊魔法、身体強化!!」


 ロウが魔法を発動させると、1テンポ遅れて精霊がロウの中に入っていき、ロウの身体が光り出した。


「ここからは本気だ!」


 ロウは一直線に突っ込んでくる。その速度は先程とは比にならない程早い。


「んなっ!?」


 それでも俺には見えているので剣で受け止めようとしたが、想像以上のパワーで剣が大きく弾かれる。

 体勢を崩した俺にロウは好機とばかりに追撃してきた。それを気合で避けたり、力を込めて受け止めたりするが、やがては避けきれなくなり頬が少しだけ斬り裂かれる。


「どうだ! これが俺の力だ! さっきまでの大口はどうした、手も足も出てないじゃないか!」

「るっせぇ! 調子乗んな!」


 ニヤ付きながら攻撃してくるロウがあまりにもうざい。俺は一旦仕切り直すために平級土属性魔法のウィンドでロウを吹き飛ばす。平級魔法といえど、それなりに特功の高い俺が使えば踏ん張っていない相手を多少吹き飛ばすことくらい出来る。


 再び距離の離れた俺とロウは睨み合う。


「その程度とは拍子抜けだな! 聞いた話だとセラフィさんは魔法においてこの学校でもトップの実力があるみたいじゃないか。それに比べて君は。情けないにも程がある」

「いちいち癇に触るやつだなぁ。そんな俺を倒しきれてないお前はどうなんだよ」

「はっ! 時間の問題だ!」


 再度攻防がスタートする。依然としてステータスでは勝っているが、精霊魔法で差を縮められたことにより、技術面で劣っている俺が攻め手を上手く作れないでいた。


 さて、どうするか……


「ヨゾラーいつまでやっておるんじゃー。いい加減に終わらせぬか」


 後ろの方からもう飽きたように話しかけてくる。多分だが、ロウが思っていた以上に弱くて飽きてしまったのだろう。


「分かった分かった、もう終わらせるから待っとけ」

「こんな状況でよくそんなことを言えたものだ! まともに攻めれてないじゃないか、どうやって俺を倒すっていうんだ?」


 俺とセラフィの会話にロウが割って入ってくる。会話の内容を聞いて明らかにキレていた。


「お前はさっき本気でいくって言ってたなぁ。お前が本気だったんだとしても、俺はまだ本気じゃなかったってことだよ」

「……どこまでもムカつく奴だ」


 ロウの剣筋がさらに鋭くなる。結局は届かなければ何の意味もないのだが。


 どうせなら派手に終わらせたいな。ステータスの高さを最大限生かせば派手に見えるかな。


 考えながら攻めてくるロウの攻撃を捌いて、一旦距離を取ることにする。追ってくるだろうが、繰り返してればその内攻め方を変えてくるかもしれない。

 同じような攻防を5回程繰り返して、ロウは魔法も織り交ぜるようになってきた。


 残念ながらそれは悪手だ。


「さて、それじゃあ終わらせるぞ。セラフィに手を出そうとしたことを悔やみな」


 俺は魔法の準備をしながら、剣を構えた。

自由な女神「お、意外と強い? 小物感が凄いけど、一応は口だけじゃないみたいだね」

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