入学2
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3212という数字は、セラフィの高い特功と神級という規格外の魔法が齎した結果だった。
俺が生み出した擬人化の魔法も神級だが、攻撃に用いる魔法ではないので、イマイチ神級というのを実感しにくいものになっているが、今回セラフィが使った光の深淵はまさに神級という名に相応しい威力をしている。この威力を30程度のレベルで叩きだしてしまうのだからセラフィのポテンシャルは計り知れない。攻撃力だけならば確実に俺よりも数段上をいくだろう。
的となっている壁は悲惨なことになっているが、周囲に被害はそこまで無い。壁の破片も細かくなり過ぎてもはや砂と変わらず、当たっても多少痛いくらいだった。
この威力で周囲に被害が出ないように気を遣っているのだから、その辺を抜きにしたら一体どうなるのだろうか……危ないので考えるのは辞めておこう。
未だに目の前で神級魔法を見た教師は絶句している。このままだと話が進まなくなってしまいそうなので、一旦現実に戻してあげよう。
「で、俺達は合格ですかね?」
ここまでやって落ちるとは思っていないが、何をしていたのかということを思い出してもらう為にもあえて聞く。
俺の何事も無かったかのような声色の質問で教師はハッとして戻ってくる。
「は、はい。勿論合格です……」
なるべく平穏を装って教師は言葉を発することを心掛けたように見えるが、声が震え過ぎていてバレバレだ。
こんな惨状を作り上げたセラフィはというと、やりきったという表情でこちらに歩いてくる。
「この学校に儂と同等の強さの奴はおるか?」
剣の試験をした時に俺が教師にした質問を今度はセラフィが行う。
対抗心でも燃やしているのだろうか? いや、多分だが俺の相方として同じ質問をしておきたかっただけな気がする。嬉しいことにセラフィはかなり俺の相方として自身の存在意義を主張したがるからな。そんなことをしなくても俺がセラフィを手放すわけが無いというのに。
「……魔法に関して言えばセラフィさんを越える生徒はいないでしょう」
「ふむ、どうじゃヨゾラ!」
「まあ分かりきってたことだな。俺もセラフィより魔法を使える奴はいないと思うぞ」
「誇らしいじゃろう!」
「そのドヤ顔が無ければ素直に褒めたんだけどなぁ……」
「なんじゃと!? 別にいいじゃろうが!」
俺とセラフィの軽いやり取りを見て、教師もいくらか平穏を取り戻したみたいで小さく笑っていた。
「それでは細かいことを済ませてしまいましょうか」
無事試験も終わったということで、後は簡単なことを済ませるだけだ。流石に試験を合格しただけでそのまま入学という訳にもいかない。帝国が運営している以上、ある程度こちらの情報を記録したり、制服もあるみたいなので、それの採寸もしなければいけないのだ。
ちなみに制服はブレザーのようだ。学ランよりもブレザーの方が個人的には好きなのでありがたい。自分で着る分にはどうでもいいが、俺の相方は見た目で言えば最強なので、今から楽しみである。
やるべきことを全て終えた俺とセラフィは、これから生活することになる寮へと案内された。
部屋をどうするかという話になった時に、セラフィは一緒でいいと言ったのだが、流石に問題になりそうなので分けてもらうことにした。セラフィはまず確実に人気が出るので、俺と同じ部屋ではもしかしたら俺に矛先が向く可能性がある。主に男子から。
勿論、セラフィに何かあるようならば誰であろうと容赦するつもりは無いが、俺自身にくるもので避けれそうなことならば、避けておいた方が面倒は少ないだろう。
寮の中でセラフィと別れる。いくつか寮はあるが、男女で違う建物に分かれている訳ではなく。建物の右半分が男子、左半分が女子となっている。男女間の恋愛も青春だと割り切ってのことだろうか? 中々に分かってるじゃないか。
明日は俺とセラフィだけ、少し遅れて教室に行くみたいなので、呼びに行くまで待っていてくださいと言われている。
夜には食事も運ばれてきた。食べ終わった後は部屋の前においておけば大丈夫らしいので、言われた通りにして、俺はやることもないので寝ることにした。
――――――――――
さて、待ちに待った異世界での学校生活初日だ。
地球にいた頃は大学生だったが、雰囲気的には高校という感じな気がするので、懐かしさを感じていた。
俺は白いワイシャツに紺色のブレザーを羽織って灰色のズボンを履きベルトを締める。室内に用意された鏡でおかしなところは無いか確認したが大丈夫だ、何処からどう見ても学生そのもの。実際学生なのだがな。
その状態でしばらくボーッと待っている。
しかし暇だ。セラフィと契約してからは、喋れないながらも一方的に話しかけたりはしていたので、正真正銘近くに誰もいないというのは本当に久しぶりな気がする。
セラフィが擬人化してからは、ポンコツだなんだと言いながらも、あの騒がしさが心地よかった。
寂しさを感じていると、ようやく扉がノックされる。俺はいつもの剣を腰に下げて扉を開けた。
「おはようございますヨゾラさん」
呼びに来たのは、昨日俺とセラフィの試験を行ってくれた教師だった。
「改めまして帝都剣魔学校の教師のサリーと申します」
「よろしく頼むサリー先生」
「……何だかあなたに先生と言われると違和感を感じますね。何故でしょう?」
そりゃ、俺がとても教師に使うような言葉遣いじゃないからだろうな。
ルーディスに来た頃は殆ど敬語だったが、9年間も敬語を一切使っていないと自然とは出てこない。流石に貴族や皇族と話すとなったら心掛けるつもりだが、上手く出来るだろうか? まあなるようになるだろうな。
「それでは行きましょうか。セラフィさんは既に外でお待ちです」
お楽しみの時間だ。俺はセラフィの制服姿を想像しながらサリーに付いていく。
寮の外に出てくると、近くに生えている木にもたれかかり、俺を待っているセラフィの姿があった。
「む、ようやく来たかヨゾラ」
「あ、ああ。お待たせセラフィ」
やばい、神級魔法並の破壊力だ。
セラフィの綺麗な銀色の神は制服の色と良く合っており、膝よりも少し上くらいのスカートから覗く細く綺麗な足が男としての欲求を込み上げさせる。
それだけでも完璧なのだが、学校に向かう前の待ち合わせのような雰囲気がバフを盛り盛りに掛けている。
なんだこれ、青春か? 青春なのか!? セラフィの攻撃はヨゾラに効果抜群だ。赤ゲージに入った時のピンチな効果音まで聞こえてきている気がする……愉快な音だけで体力が回復する施設に向かわなければ!
「どうした? なにを呆けておる」
「何でもない気にするな。制服似合ってるぞ、死ぬかと思った」
「やけに素直じゃないか。まあ、悪い気はせんが……」
うむ、褒めたのは失敗だ、何やら甘酸っぱいフィールドになった気がする。
「いい雰囲気のところ申し訳ないのですが、そろそろ向かわないとクラス担当の教師に迷惑が掛かってしまいます」
「……すいません」
昨日とは逆にサリーによって俺が現実に戻される。
恥ずかしさを気合で抑え込んで、俺とセラフィは教室に向かう。転校の経験はないので、こうして途中からの編入を改めて自覚してくると緊張してきた。
「こちらになります」
いよいよ俺が過ごすことになる教室の前へと到着した。
サリーが扉を開いて、中の教師に話を通す。俺は深呼吸をして教室の中に入った。
教室の中に入ると、20人程の生徒からの視線が一斉に振りかかる。
次いで入ってきたセラフィに視線が変わると、教室内は騒然となった。
反応はいくつかのパターンに分かれている。男子からの歓喜の声や、逆に何も言えなくなってしまう奴もいる。女子に関しても、セラフィを見て可愛いというような黄色い声や、男子に対する軽蔑に似た視線を送っている奴もいた。
俺も、それなりに顔は整っている自信があるが、セラフィと並べば目にも入らなくなるくらい霞む。だが残念だとは思わない。そのセラフィは俺の相方だからな。
「それじゃあ挨拶をしてもらおうか」
このクラスの教師は30後半くらいの男だ。いい感じにダンディなイケオジだが、服に隠れた筋肉はまだまだ現役だと思わせてくれる。
現在注目はセラフィに一点集中なのでセラフィから挨拶した方がいいのだろうが、挨拶の仕方など分からないようなので、俺からするしかないだろう。
「あー、今日から編入してきたヨゾラだ。年齢は20、見たところ皆歳は近いみたいだから気軽に話しかけてくれると嬉しい」
出来るだけ笑顔で挨拶すると、一部の女子から好感触な様子が見られた。嬉しい。
「ほれ、セラフィ」
小声で次はお前の番だと教えてやる。
「儂はセラフィという。まあ、なんじゃ……よろしく頼む」
ぎこちない挨拶だが、幼めな顔付きの美少女であるセラフィがやると、恥ずかしがっているように見えて破壊力がやばいな。男子達どころか、女子まで赤面してる奴がいる。
さて、ここからは質問タイムになるだろう。まずは何からくるか……
どんな質問が飛んでこようとも対処出来るように身構えていると、後ろの方の席にいる女子が手を上げる。
「ヨゾラ君とセラフィさんが昨日の試験で凄い結果を出した編入生ですよねー?」
「凄い結果といっても、俺はそこそこだったと思うぞ。サリー先生が驚いてたのはセラフィだな」
「そうなんですか? 男子の方も凄いってサリー先生が言っているのを聞いたので」
その質問で生徒達が小声で会話を始める。
聞こえてる限りだと「男の方はステータスが高いらしい」とか「セラフィさんはとんでもない魔法を使うらしい」とかそんな感じのことが聞こえてくる。思った以上にしっかりと噂が広がっているみたいだ。
「俺も質問だー」
今度は前の方に座る男子が手を上げる。
「ヨゾラとセラフィはどういう関係なんだ? 一緒に編入してきたんだろ?」
うわ、答えにくい質問が来てしまった。
どう答えたものか……出来るだけ当り障りのない返答をしたいが。
「ヨゾラは儂の相方じゃ! 死ぬまで離れることはないじゃろう」
「ちょっ!? お前!?」
悩んでいると、セラフィは堂々と言い放つ。教室内は大惨事だ。
男子達は嫉妬と怨嗟の声を上げ、女子は水を得た魚のようにピンクの悲鳴を上げる。
「つ、つまり2人は恋人ということですか!!!」
テンション高すぎだろ女子。食い気味にも程がある。
「恋人? はて、なあヨゾラよ、儂とヨゾラは恋人なのか?」
「え? いや、恋人ではないと思う……」
「なるほど……では相方というのは所謂パーティーメンバーみたいな意味合いで深い意味合いは無いってことですか?」
「それは違うぞ。儂とヨゾラの関係はどこまでも深いものじゃ。儂以上にこやつを理解し、寄り添える者などこの世にはおらん」
セラフィの返答に女子大歓喜。もうどうとでもなれ。
「ちなみにヨゾラさんとセラフィさんはどちらが強いんですか?」
「どうじゃろうなぁ……ヨゾラよ、どう思う?」
「……お前には勝てんわ」
戦闘という意味では正直分からない。火力はセラフィだが、総合的に見れば俺に軍配が上がる。正面から戦った場合は俺が勝つだろうが、遠くから魔法を打たれたら負けるだろう。
戦闘を抜きにすれば、俺はセラフィに勝てない。この状況を見てみろ、どう見ても俺の負けだ。
様々な意味を込めて冗談交じりに言ったのだが、その意味を履き違えて変な気を起こす馬鹿がいた。
「セラフィさんよりも弱いのに相方だと? 笑わせるな! だったらその相方という席をお前を倒して俺が貰うことにしようじゃないか!」
「あ?」
真ん中くらいの席から嘲笑するようなセリフが聞こえてくる。一気に教室内が静かになる中そちらに目を向けると、茶髪で目付きの悪い男が立ち上がる。
「俺の名前はロウ・ハーツ。ハーツ領の貴族だ! ヨゾラに対し、セラフィさんを賭けた決闘を申し込む」
どうやら貴族のようだ。しかも典型的な増長したタイプに見える。
「セラフィさん程の女にはそれ相応の相方が必要だ。貴様では役不足だということを分からせてやる」
なるほど、俺を倒してセラフィを奪おうと、そういう訳か。
貴族なんかには敬語を使うようにしようと決めていた。このロウというのは貴族だ、敬語を使うべきなのだろう。
だが、もう1つ決めていることがある。
「受けてやるよ」
セラフィに手を出そうとするのならば、絶対に許さないということを。
自由な女神「ヨゾラ君に喧嘩を売るなんてなんて奴だ! 神の鉄槌を落としてやろうか!」




