表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この異世界は物足りない  作者: VRクロエ
異世界学校編
26/137

入学1

 帝都までの道のりは、昔に比べてあまり変わらなかった。強いて言えば人通りが少なかったことくらいだろうか? 前からそこまで人通りが多かった訳ではないので、偶々かもしれないが。

 新しく街が出来ていたりということは無く、基本的には知っている場所を通っていくだけだった。


 多少ゆっくりと見て周っていたということもあり、帝都に着いたのは数日後だ。


「こりゃあ凄ぇな……」


 久々に見る帝都に俺は驚きの声を上げる。


 前は多少高い城壁が立っているだけだったのだが、今目の前にある帝都は、まさに要塞のように見える。

 さらに高くなった城壁の上には、大砲などの兵器が搭載されており、兵士もかなりの数がいる。いつ敵が来ても大丈夫なように備えているような感じだ。


 まさに帝国といった雰囲気になっている。


「とりあえず入るか」


 帝国がどういう意図でここまでの変化をしたのかは、ゆっくりと知って行けばいい。通う学校は帝都にあるので、勝手に知ることになるだろう。


 俺はセラフィと共に門の前まで歩いてくる。そのまま歩いて中に入ろうと思ったら、目の前に兵士が立ちふさがって来た。


「身分を証明できる物を提示してください」


 どうやら今の帝都は身分を確認出来ないと入れないらしい。見た目だけではなく、こういったところも強固になっているみたいだ。


 俺が持っている身分を証明できるものといえば、冒険者カードくらいだ。しかし500年も前の物なので、今も効果があるのか心配になってくる。しかし、他に出せる物は無いので、仕方なく冒険者カードを取り出した。それを見て、セラフィも同じように冒険者カードを取り出す。


「……それは?」


 やはり見覚えの無い物のようで、兵士は怪訝な顔をしている。


「冒険者カードなんだが、見たことはないか?」


 どうにか押し切れないかと、少し煽るように言ってみる。


「失礼、自分には見覚えがありません。確かめる魔道具がありますので付いてきていただきます」

「分かった」


 煽られていることは分かっているのだろうが、表情1つ変えずに兵士は丁寧に案内してくれる。

 城壁に作られた一室に案内されて、冒険者ギルドでステータスを確認する時に使う水晶と瓜二つの魔道具が出てきた。


「冒険者カードであれば、こちらの水晶にカードを翳すとステータスが出てくるはずです」


 使い方も俺が知っている物と同じなようだ。気になったのでサーチの魔法で確かめてみると、冒険者ギルドにあった水晶と同じ物のようで、それっぽい説明が出てきた。


 俺がカードを翳すとステータスが浮かび上がる。マナーなのか、その内容を兵士は見ようとしない。ステータスが浮かび上がったことだけを確認出来ればそれでいいんだろう。

 俺に続いてセラフィもステータスを浮かび上がらせてステータスを表示させ確認が終了する。


「はい確かに確認しました」

「こういうのはなんだが、内容を確認しなくても大丈夫なのか?」

「大丈夫です」


 そういうもんか。


 何にせよ問題は無かったので、俺は兵士にお礼を言って帝都の中に入った。

 外見が大きく変わっていたので、帝都の中はどのくらい変化しているのだろうかと思っていたが、実際はそれほど変わっていなかった。

 建物の感じなどは頑丈そうになってはいるが、配置や道、賑やかな感じなどは俺の知っている帝都で安心した。


「セラフィ、何処か行きたいところとかはあるか?」

「特にない」

「じゃあ早速学校に向かうか。俺の知っている通りなら、その場で編入手続きが出来るはずだ」

「その辺はヨゾラにお任せじゃ」


 そんな訳で早速学校に向かって歩いて行く。道は変わっていないので、覚えている通りに進んでいく。

 大通りを歩いて行き、途中で西の方向に逸れてさらに進んでいくと、やがて一際大きな建物が見えてくる。あれが学校だろう。


「随分と立派な建物じゃな。ヨゾラと契約していない時に見た時はもう少し小さな建物だったと思うんじゃが」

「それも時代の流れってやつだろ」


 むしろ500年も前のものがそのまま残っている方が凄い気がする。


 そんなことを思いながら学校の前まで来る。編入手続きの仕方を知っているだけで、学校の中に勝手に入っていいのかは分からないので、誰か人がいないか外から探してみる。

 しばらくすると、教師っぽい人が通り、俺とセラフィに近づいてきた。


「帝都剣魔学校に何か用でしょうか?」

「剣魔学校?」


 名前を聞いた俺は首を傾げる。俺の知っている帝都の学校は()学校だったはずだ。


「ここでは魔法も学ぶのか?」

「おや? 用がありそうなので知っているものかと……ええ、ここでは剣と魔法――戦うために必要なことを学びます」

「すまない、俺が知っていた情報と少し齟齬があったみたいだ」


 まあ別に剣でも魔法でも俺は構わないので気にすることはない。むしろセラフィのことを考えれば都合が良いと言える。余計なことは考えないで要件を伝えることにしよう。


「編入したい。そのために来たんだ」

「そうですか。ではこちらにどうぞ」


 要件を伝えると、すぐに中に通してくれる。俺達のように突然編入したいというのは珍しくないのかもしれない。


「編入する条件は2つです。年齢が25歳未満であること、それなりに戦えることを証明することだけです」


 校内を歩きながら教師は編入条件を説明してくれる。内容は俺の知っている通りだ。それなりに戦えることを証明するといっても、俺が聞いた話だと、そこまで厳しい訳ではない。学ぶところである以上、最初から高い水準で戦える必要は無いということだろう。


「ちなみに入学金は金貨1枚になります」

「安いな」

「多くの生徒を引き入れるためですよ」


 金額に関しては驚くほど安くなっていた。前は金貨30枚だったはずだが、そこまでして生徒を増やしたかったのだろうか? 建物が大きくなったのは、入学金が安くなって生徒が一気に増加したという理由がありそうだ。


 何度か見かけた体育館のような場所には、授業中だろうか剣を振っていたり、何ヶ所かに区分けされているように見える校庭のような場所では的に向かって魔法を打ったりしている様子が見えた。練度もそれなりに高そうだ。


「着きましたよ」


 キョロキョロとしながら歩いていると、教師が扉の前で立ち止まる。その扉を開けると外に繋がっており、いくつもの的が用意されていた。


「それでは試験を始めます。まずは剣からです。自分の剣をお持ちであればそれを使っていただいて構いません」

「んじゃ俺はいつも使ってる剣を使うか。セラフィはどうする?」

「儂は何か適当なのでいい」


 俺はそれなりに長く使っているオリハルコンの剣を腰から抜く。

 セラフィでは俺の剣を振るのは難しいだろうから、同じくオリハルコンで作った少し短めの剣を渡してやった。まあ、いくら剣が良くてもセラフィのステータスでは限界があるだろうが、鉄とかよりはマシだろう。


「んー、剣は初めて持つが、上手く使える気はせんのう」

「まあいいんじゃないか? お前には唯一無二の強みがあるし」

「それもそうじゃな」

「準備は出来ましたか? では左の的から順にお願いします。少しずつ硬くなっていくので、それだけは忘れずに」

「それじゃ、俺からやるかー」


 時間を掛ける意味は無いので連続で斬ることにしよう。途中で斬れなくて終わったらそれが限界ということだ。


 俺は10個並ぶ的を連続で斬るイメージで剣を構える。


「ふっ!」


 短く息を吐いて走り出し、1つ目の的を斬る。

 勢いを殺さずに2つ目、3つ目と続けて斬っていき――


「これで最後だ!」


 10個目の的まで綺麗に斬り裂いた。


「ふぅ……」


 下がったステータスでもどうにかなってよかった。あくまでも試験なのでこんなもんだろ。

 俺は少しだけ出た汗を拭ってセラフィと教師の元へ戻ってくる。


「どうじゃったヨゾラ?」

「んー、お前だと出来て3つ目までかなー? 8つ目からは多少硬かったから俺もレベルが上がってなかったらきつかったかもしれん」


 俺の剣はいざとなれば精霊魔法でさらに斬れ味を上げれるが、これは剣の試験なので使っては意味がないだろう。まあ、それでも斬れたから関係ないんだがな。


「驚きました。いい剣を使っているなとは思いましたが、実力も相応のものをお持ちのようですね」

「そりゃどうも。ちなみにこの学校に俺と同等の強さの奴っているのか?」

「的を全て斬れるという意味ではいますね。ステータスを見てみないと一概には言えませんが……ヨゾラさんでしたね? あなたの剣は技術的なことを言ってしまえばそこまで高い訳ではなさそうというのが私の意見なので、強さという意味ではまだ測りかねます」

「なるほど」


 つまり、技術的なことまで考慮すると、斬れる者はそれなりにいるが、ステータスなどを加えた強さで優劣をつけるなら分からないと。

 確かに俺は技術に関しては素人だ。あくまでステータスでごり押ししているに過ぎない。


「よく見てるんだな」

「それが教師としての役目なので。では次のあなた――」

「セラフィじゃ」

「ではセラフィさん、どうぞお願いします」


 少し話している間に斬られた的が消えており、新しい的になっていた。手際の良さに感服する。


「ではいくぞ」


 セラフィは危なっかしい構えのまま的に向かっていく。

 1つ目はすんなりと斬れた。2つ目は少し硬かったのかセラフィが少し顔を顰める。3つ目はギリギリ、4つ目で剣が弾かれた。


「まあこんなもんじゃろ」


 斬れなかったことに対しては何も思っていないようだ。まあ結果は見えてたしな。


「お2人は冒険者パーティーを組んでいるんですよね?」

「お、よくわかったな」

「実力があり2人同時とあれば、それしかありませんから。しかし、パーティー内でここまで差があるのはかなり珍しいですね」

「そうなのか? 魔法をメインで使うなら剣はこんなもんだと思うが……」

「いえ、普通は魔法をメインで使うのだとしてもそれなりに剣も使えるものです。セラフィさんは初めて剣を握ったように見えましたね」

「実際初めてじゃからな」

「こういったケースは初めてです」


 そこまで言うなら相当珍しいのだろう。確かに魔法は大抵誰でも使えるので、ついでで剣も使えるようになっておいて損は無いだろうが、別に使えなくても問題無いとは思う。それともセラフィを魔法単体の基準にしているから感覚が狂っているのだろうか?


「とりあえず剣の腕は分かりました。お次は魔法ですね」


 剣の的がある向かい側にある壁には的のような絵が描かれている。どうやらこれに向かって魔法を放つようだ。


「あの壁には魔道具が埋め込まれていて、威力を数値化してくれます。50以上が合格ラインですね」


 ダメージ表記が出るようなものか。今までにはなかったことなので面白そうだ。


 俺は的に向かって手の平を向ける。放つ魔法は一番使うフォトンレイだ。

 放たれたフォトンレイは真っ直ぐに壁に向かっていって壁を貫通する。フォトンレイが当たればそうなると分かりきっているはずなのに忘れていた。魔道具は大丈夫だろうか……


 心配になったが、それは杞憂だったようだ。壁の少し前の方にステータスが浮かび上がる時のように数字が表れる。


【697】


 それがフォトンレイ1発の威力のようだ。


「……ヨゾラさん、魔法の腕も高いですね。しかも今の魔法は見たことがありません」

「フォトンレイっていう、まあ俺のオリジナルだ」

「貫通力も高い……かなり汎用性がありそうです」


 思っていた以上に驚かれた。オリジナルということもあるだろうが。


「セラフィはもっと凄いぞ」

「それは……楽しみですね」


 俺と場所を入れ替わるようにセラフィが壁の正面に立つ。


「本気でやってよいのか?」

「え、ええ。本気でお願いします」


 本気でやらせていいものかとも一瞬思ったが、俺もどのくらいの数値が出るのか気になってしまった。


「セラフィ、周りにだけは気をつけろ!」

「分かっておるわ! そこまで範囲の広い魔法は使わん」


 分かっているなら良かった。流石に考えてはいるようだ。


 セラフィは手の平を壁に向かって構える。すると、普段はあまり感じることのできない魔力の高鳴りのようなものを感じる。

 空気が揺れる。それはセラフィの手の平に収縮していくように静かになっていき、やがては何事も無かったかのように静かになった。


光の深淵(ホーリアビス)


 セラフィの呟きと共に、ゆっくりと光の球体が飛んでいった。それは優しく触れるように壁に当たる。


「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 激しい衝撃が襲い壁は跡形もなくはじけ飛ぶ。あまりの衝撃に教師は悲鳴を上げた。

 俺も悲鳴を上げたい気分だ。好奇心に負けないで止めておけばよかった。とんでもないというレベルではない。


 やがて衝撃は止み、パラパラと破片が落ちてくる。


「セラフィさん! 今の魔法はなんですか!?」

「光属性神級魔法の光の深淵じゃ!」

「神級……」


 振り返りドヤ顔して教師に言うセラフィ。その後ろには3212という文字が浮かび上がっていた。




クレーティオ「僕のも学生をやってた頃があったんだよ……もう昔の話過ぎて忘れちゃったなー」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ