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セラフィのステータス

 俺とセラフィは果ての秘境からの長い道のりを越えてグラヴィウス帝都にやって来た。

 途中で街に寄ったりなんかもしたが、相変わらずルーディスという世界の治安は良く、平和という言葉がよく似合っている程に俺が秘境に籠っている間に問題は起こっていなさそうだった。


 約9年振りの帝都だが、そこまで大きく変わったという印象は受けない。昔は無かった店がチラホラあったりといった程度だった。


「ふむ、前にヨゾラが滞在していた時と然程変わっておらんのう。何というか、活気に溢れた国じゃ」

「え? 帝都に来たことがあるのか?」

「何を言う、儂はヨゾラがこの世界に生まれ落ちた瞬間からずっとおぬしの傍におったぞ」

「新事実なんだが!?」

「言っておらんかったか?」


 全く聞いたことなかった。まさかそんなに前から一緒にいたとは思ってもいなかった。

 ということは、俺が見えていなかっただけで、その時からセラフィは俺に話しかけてくれていたりしていたのだろうか? そう思うとなんだか申し訳ない気持ちになってくる。


「なんか……悪かったな……」

「まあ、おぬしに気付かれずに置いていかれそうになった時は軽く絶望したものだが、こうして今一緒にいれているのだからいい。仕方のなかったことじゃ、気にするな」


 しかし、何でセラフィはここまで俺に付いてきてくれるのだろうか? 特に俺が何かしたわけではないと思うのだが……不思議だ。今度ゆっくり聞いてみることにしよう。


 そんなことを思いながらも久しぶりの帝都を眺めながら歩いていると、すぐに冒険者ギルドに着いた。

 建て替えか改装でもしたのか、前に比べて冒険者ギルドは綺麗になっている。まるで初めてくる場所のようで、俺は入り口の近くで急に怖くなって立ち止まってしまった。もしかしたらもうソフィアがいないかもしれないと考えると、足が止まってしまったのだ。


「どうした? 入らんのか?」

「ああ、そうだな……」


 俺の様子が気になったのか、セラフィは俺の顔を覗き込んでくる。


「ふむ、心配することはなかろう。確かに9年というのは長い時間じゃが、この世界は想像も出来ん程の時がそこまでの変化なく過ぎたそうじゃな。そう考えれば変わらんものもある」

「セラフィ……悪い、ちょっと考えすぎてたみたいだ」

「まあそういうこともあるじゃろう。安心せい、もし変わっていても儂は変わらず傍にいるでな」


 セラフィの言葉に背中を押されて俺は冒険者ギルドの中に入っていく。相変わらず騒がしい雰囲気の冒険者ギルドは、帰って来たという気持ちにしてくれた。

 そんな冒険者ギルドの中、俺の目が向いたのはいつもの場所、ソフィアがいつもいたカウンターだ。


「あ……」


 そのカウンターには、9年も経っているのにも関わらず歳を感じさせない雰囲気を出す美人の受付嬢が俺のことを見て驚いたような顔をしている。どうやら俺の不安は杞憂だったようだ。


 俺は真っ直ぐにそのカウンターに歩いて行き、受付嬢に笑顔を見せた。


「久しぶりソフィア」


 声を掛けると、ソフィアは嬉しそうに笑って迎えてくれた。


「お久しぶりですヨゾラさん!」


 俺とソフィアは握手をして向かい合う、久しぶりに会ったが、変わりないようで何よりだった。


「ヨゾラさん、この後お時間はありますか?」

「時間? それは大丈夫だが……」

「でしたら少々お待ちください。ルピも呼んできますので!」


 そう言うとソフィアは奥に行って私服に着替えてから冒険者ギルドを出て行ってしまった。ソフィアのいたカウンターには他の職員が入るのかと思ったが、そのまま閉めるようだ。


 しばらくしてソフィアがルピを連れて戻ってくる。


「久しぶりだヨゾラ。それにしても見た目に変化が全く無い気がするのだが……」

「久しぶりルピ。見た目に関してはまあ、気にしないでくれ」

「それで、そっちのあり得んくらい整った見た目をした女とはどういった関係だい?」

「私も気になってました。ヨゾラさんの彼女とか?」

「あー、彼女とかではないな。こいつはセラフィ、俺の相棒だ」

「そういう訳じゃ、よろしく頼むソフィア、ルピ」


 相棒と聞いてパーティーでも組んでいるのだろうと思ったのか、ソフィアとルピは納得したみたいだ。

 立ち話もアレなので、俺達は冒険者ギルドで食事でもしながらゆっくり話そうということになり、アルコールを頼んで乾杯した。


「自然な流れでアルコールを頼んだが、飲めるのかセラフィ?」

「なに、問題なかろう。それともおぬしは儂を酒も飲めない子供だと言いたいのか?」

「いや、そういう訳じゃないが……まあいいや」


 理級精霊だし、大丈夫だろきっと。多分だが、ヨゾラに飲めて儂に飲めない道理は無いとか思ってるんだろうな……


 考えても意味は無いので気にしないことにして、俺は一気に酒を飲みほした。


「しかし長かったですねー、ヨゾラさんは帝都を出てから何をしていたんですか?」


 何をしていたか……正直に言っては流石にまずいので、どう説明したものか。


「そうだなぁ……スプリトゥスに行ったり、レジケルに行ったりかな。最終的には秘境に行って最近戻ってきたな」


 言葉は濁しているが嘘はついていない。


「やっぱり秘境に挑まれたのですね……でもセラフィさんと2人でですか?」

「うむ、儂とヨゾラだけである程度はどうにかなるのでな。中途半端な奴などいても邪魔になりかねん」

「セラフィ、言い方……」

「事実じゃろうて」


 確かに果ての秘境に多少強い奴を連れて行っても足手まといにしかならないことは間違いないが。俺達2人でも秘境の半分も攻略出来なかったのを考えれば、確かに他の仲間は必要ないようにも思う。


「そうなるとヨゾラさんの今のステータスが気になりますね。もしよろしければ見せてもらえませんか? 他言はしないので」

「私はセラフィのステータスも気になるな」

「ステータスか……俺もセラフィのステータスは気になるし、ソフィアとルピになら見せてもいいかな」

「儂も問題はない。別に隠すことでもないしの」


 そんな訳で、俺達は一旦席を立ってソフィアがいつも立っているカウンターに移動した。私用でギルドの物を使ってもいいのかと思ったが、何も言われていないので多分問題はないのだろう。


「それでは冒険者カードをお願いします」

「儂はそんな物持っておらんぞ?」


 そうだ、すっかり失念していたが、セラフィは冒険者として登録していない。


「え、しかしセラフィさんはヨゾラさんの相方なんですよね?」

「それは間違いないのう」

「あー、言い忘れてたが、セラフィは冒険者って訳じゃないんだ。だから冒険者カードも持ってない」

「困りましたね、それではステータスを見ることが出来ません」

「折角だしセラフィも登録しとくか?」

「そうじゃの、冒険者というものに興味がある訳ではないが、しておこうかの」

「ではすぐ終わりますので少々お待ちください」


 ソフィアは俺が冒険者として登録した時に使ったのと同様の紙を取り出した。


「ではこの紙に血を垂らしてください」


 セラフィは俺に手を差し出してくる。刃物を持っていないからやってくれということだろう。

 俺はセラフィの小さい手を取り、少しだけナイフの先で指を切ってやる。滲む程度に出てきた血をセラフィは紙に垂らしてステータスが浮き出てきた。



【セラフィ】

 レベル43 HP390 MP12178 攻撃89 防御170 特功4967 特防1098 素早さ223

 精霊:無し

 魔法:平級光属性 豪級光属性 王級光属性 聖級光属性 神級光属性 平級闇属性 豪級闇属性 王級闇属性 聖級闇属性 神級闇属性 理級精霊魔法

 称号:理を操る者



 浮かびあがったセラフィのステータスは俺の想像を遥かに超えてとんでもないものだった。その証拠にソフィアもルピも絶句している。

 物理的な項目に関しては壊滅的だが――いや、俺を基準で考えちゃダメだ、もしかしたらこのレベルでこの数値は高いのかもしれないが、そんなことを考える意味は正直無い。何せ魔法に関する項目が頭おかしいことになっている。これだけの魔法ステータスがあればそれ以外のことなんて些細なことだ。


「てかお前光属性の魔法しか使えないんじゃなかったのか!?」

「いや、本当に使えなかったぞ? ただ心当たりはある」


 ソフィアとルピには聞かせられないのか、俺に耳を貸すように手招きしてくる。


「恐らくじゃが、擬人化の魔法を受けた影響じゃろう。あの魔法は闇属性のそれも神級じゃ、影響を受けた可能性がある」

「ってことは擬人化させた魔獣全てがこんなことになってるって訳か?」

「それはないじゃろう。理級精霊である儂だからこそ大きく影響を受けたと見るべきじゃ」


 まさかそんなことになってるとは……でももしかしたらセラフィの前髪にある黒い部分は闇魔法を使えるようになった影響が滲み出たのかもしれないな。

 にしても、光属性ではなく闇属性まで全部の魔法を使えるようになったのか……使いこなしたら誰にも負けなさそうだ。


 冷静になってきて気が付いたことがもう1つある。レベルだ。

 恐らくは擬人化した時にリセットされたのだろう。秘境で俺と一緒に戦っていたのにこんなにレベルが低い訳がないからな。


 俺は称号も見てみることにした。俺も似たような称号を持っているが、今更ながらどういう内容なのか見ていないのを忘れていた。



【理を操る者】

 道理が通っていることに事であれば伴う行動の成否を操ることが出来る。



 説明を読んだ感じ、事前にセラフィから聞いていた理級精霊の力をそのまま説明しているだけのものだった。ということは俺のも然程変わらない気がする。


 一通りセラフィのステータスを見る頃にはソフィアとルピも多少冷静さを取り戻しているみたいだった。


「なるほど……ヨゾラさんが私達にならば見せてもいいという言い方をした理由が分かりました。これは知られればとんでもないことになりますよ」

「ヨゾラもこんな感じのステータスをしてるのかと思うと、私はもう寝込んでしまいそうだ」

「いや、俺のはもっと普通ですよ」

「正直その言葉には怪しさしか感じませんけど……まあこれから分かることです。しかし不思議ですね、精霊と契約していないのにどうして精霊魔法が……それも理級なんて資料の中でしか見たことがありません」

「ごめんソフィア、それは話せないんだ」

「そうですか……仕方ありません、あまり掘り下げてヨゾラさんに嫌われたくはありませんから」


 素直にソフィアが引き下がってくれてホッとする。流石に擬人化のことまでは話せない。今後のことを考えると、俺が擬人化に関わってることは知られたくなかった。


「さて次はヨゾラさんですね」

「一体どんなのが出てくることやら……」


 人のステータスをパンドラの箱みたいな言い方をするのは辞めてほしい。確かに強くはなったが、まだ人間の範疇だ。レジケルで聞いた世界最強達の話が本当ならば。


 俺は冒険者カードを翳して、擬人化の魔法を作り始めてから全く見なくなっていた自身のステータスを表示させる。



【ヨゾラ】

 レベル263 HP3008 MP4812 攻撃1865 防御1768 特功3980 特防1456 素早さ1823 

 精霊:理級精霊

 魔法:平級火属性 平級土属性 王級光属性 平級闇属性 豪級闇属性 神級闇属性 理級精霊魔法

 称号:ヨゾラの作者 理を歩む者



 ドラゴンを倒して以降秘境の魔獣はあまり積極的に狩っていた訳ではないのでこんなもんだろう。まだまだ人間の範疇だ。

 それよりも、気になっていた理を歩む者の内容を見てみよう。



【理を歩む者】

 歩む道の大半はその者にとって道理の通ったものであり、不可能なことは限りなく無いに等しい。



 随分と大層な説明だが、不可能なことは沢山あるだろう。過大評価が過ぎる。

 というか、今までに俺が見た称号はこれで3つ目だが、持っていて効果があるものはヨゾラの作者しかない。それも今のところ効果を実感出来ていないので、ほぼ無いに等しいが……称号というのはこんなものなのだろうか?


 俺が称号に関して考察している間に、ソフィアとルピは俺のステータスについてアレコレ話をしている。一般的に見れば俺のステータスもとんでもないものだろうから無理はない。


 しばらく2人の話が終わるのを待っていたが、満足したのか切り上げて俺とセラフィの方に向き直した。


「本当に強くなりましたねヨゾラさん。私は誇らしい気分です!」

「見送った甲斐があったというものだね」


 ただ賞賛の言葉を送ってくれる、俺はそれだけで満足することが出来た。




自由な女神「いやー、かなり尖ったステータスだね。魔法に関しては右に出る者無しじゃないかな?」

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