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神々の創作物

本日は4話目まで投稿するのでお忘れなく!

「まず初めに知っておいて欲しいのは、人という種が根付く世界は地球だけじゃないんだ。地球の創作でも出てくる異世界ってやつだね。それらの世界は――まあ次元の壁とでも言おうか、そんな感じので隔てられて互いに干渉しないようになってる」

「それはこの空間も似たような感じなのか?」

「お? 察しが良いね。そう、今僕と夜空君がいるこの空間は、言わば僕という神が作り出した世界。他の世界から神以外の存在が辿り着くのは不可能だね」


このクレーティオの言い方的に、地球という世界もどこぞの神が作り出した、今いるこの空間と同じようなものだということになる。

んでもって、世界観の干渉が出来る神であるクレーティオによって、別の世界に呼ばれたって感じか? しかしそれで地球を作った神は何も言わないのだろうか? 死んでもこうして俺という存在が消滅していないのだとすると、地球で死んだ俺の存在は、地球の神の所有物ということになるんじゃないか?


「夜空君が考えてる疑問についてだけどね、間違いではないけど正しくもないって感じかな」

「どういうことだ?」

「地球という世界は少し特殊でね。普通世界を見ているのは、その世界を作り出した神1人だけなんだけど、地球は複数の神によって作られた合作なんだ。つまり地球に存在するものは複数の神が所有権を主張できる」

「つまり俺はクレーティオが所有権を主張して認められたからこうしてここに呼ばれたって訳か?」

「ううん。夜空君は僕が他の神の目を盗んで搔っ攫ったんだよ」

「……は?」


掻っ攫ったって……本来なら俺の所有権が神々の間で話し合いかなんかで決まるところをクレーティオが持ち逃げしたと。それって結構やばいんじゃないか?


「まあその辺の神が束になって襲ってこようが僕には勝てないけどねー。僕こう見えても神の中じゃ超強いから」

「いや、そういう話じゃないだろ……」

「まあまあ。そこまでしても僕は夜空君が欲しかったんだ。こんな可愛い神様に求められたんだから喜ぼうよ!」

「そりゃ変な神のものになるくらいならクレーティオに拾われて良かったとは思うけどな。しかし何で俺なんだ?」


どうもクレーティオは俺を特別扱いしている。その理由を俺は思いつかないし、生きていた頃も普通に生活していただけだ。


「夜空君は哲学的ゾンビって言葉を知ってる?」

「ああ、結構有名な哲学だしな」

「地球で生まれたこの言葉だけどね――凄く確信に近い言葉だと僕は思うよ。地球で生まれる人の99パーセントは神の意志によって作り出されてる。思考も、行動も、ね。まあ人に限らず地球で起こる出来事の大半は神が意図して起こしてる。そういった干渉は順番みたいなのが決められてて、干渉することが許された神以外は自分の順番が来るまで見てるだけって感じだね」


哲学的ゾンビ――行動や見た目において全てが人と同種だが意志を持たない存在。観測する術はなく、まさに哲学の塊のような存在だが、地球に住まう殆どの人間が実際は哲学的ゾンビだとクレーティオは言った。

これこそがクレーティオが俺を特別視した理由なのだろう。俺は勿論自分のことをそんな哲学の産物だとは思ってもいないし、事実そうなのだ。


「世界を本に見立てたなら神は作者だ。それが地球という世界に組み込まれたシステム。多くの神に介入されながら描かれていく物語」


クレーティオの話を聞いていると常識が根本から覆される。俺が今まで生きてきた中で起こってきた自然現象なんかも全て神が起こしたということになる。

正直簡単に信じられるような話ではないが、否定から入っては何も始まらない。とりあえずは納得して話を聞くことにしよう。


「地球についてはとりあえず分かってくれたかな?」

「一応は納得しておくことにする。そこまで規模のでかい話だと、漠然と理解するので精一杯だけどな」

「それでも納得できる夜空君はやっぱり特別だよ」

「――クレーティオ?」


唐突にクレーティオは優し気な笑みを浮かべた。

これまでクレーティオが見せてきた表情は子供っぽい笑顔だったり、少し申し訳なさそうにしたりと、幼さが覗く表情ばかりだったが、今浮かべている表情は、可愛いというよりも綺麗だという表現が似合うものだった。

急激な温度差からか心臓が跳ねるような感覚がしたが、表には出さずに何でもないように振る舞う。


「僕はね、夜空君……生まれてから運命なんて殆ど信じたことはないんだ。だってそうだろう? 世界はいつだって残酷で、しかも運命的だと思うことでも神に仕組まれたことなんだ」

「そりゃあまあ、ここまでの話を聞いてりゃそうだろうな。それに……お前自身も神だってんなら猶更だろ」


運命なんて曖昧なものを俺が信じているかと聞かれたら微妙なところだが、誰だって心の何処かでは自分に都合のいい運命的な事が起きれば何て思ったことはあるはずだ。

――いや、違うな。クレーティオが言いたかったのはそんなことじゃない気がする。そもそも全てを知っているクレーティオは、運命なんて本質的には存在しないことを理解しているから、運命なんて曖昧な概念を願ったり信じたりしていなかったのだろう。


「でもね……それでも、夜空君を見つけることが出来たのは運命的だなんて、僕は思ってるよ。個人的思考を神の意図せず持っている人間は確かに他にもいる。地球に固執しないのであればそれこそ星の数ほどもね……。にもかかわらず、僕は君に惹かれた、興味をそそられた。その理由は僕自身にも曖昧にしか分からないけどね」

「その理由ってのは?」

「今はまだ言わないでおくよ。その内に分かるだろうしね」


クレーティオが俺という存在を選んだ理由は教えてはくれないみたいだ。

正直とても気になることではあるが、クレーティオは嬉しそうにしつつも、俺にはまだ話したくないという感情が一瞬だけだが見えたので、深く聞くのはやめておこう。多分だが、俺にとって何か不都合のある理由ではないだろうし、そもそも不都合があったところで俺にはどうすることも出来ない。


「あ、そうそう。1つ訂正、というか多分勘違いしていると思うんだけど、僕は元々人間だよ。人として生まれて、神になったんだ」

「おっとここでまた衝撃の事実が出てきたな」

「色々とあってね……まあそんな訳で僕は他の神達と根本から考え方も違うんだ。夜空君は他の神達も欲しがってたけど僕とは全く理由も違うしね。もっと言うと、そんな僕は他の神よりも強いせいで嫌われもしてるよ」

「神社会も世知辛いんだな」

「世知辛いか……なんか夜空君と話してると大したことじゃないようにも思えてくるから不思議だよ」


クレーティオは笑いながら頬を掻く。実際は大変なんだろうが、気が少しでも楽になってくれたならいいなとは思う。


「夜空君、自由になりたいかい?」

「自由か……神とかいう存在を知ってからだと本当の自由なんてあるのか疑問に思えてくるけどね」


恐らくだが、神によって作られた訳じゃないとはいえ、俺の行動やどういった人生を送るかなど、その辺のことはいくらでも弄れたはずだ。この先俺がどうなるかははっきりとは分からないが、何処か別の世界で新しく生まれ変わらせてくれたりするのだと思う。いわゆる異世界転生ってやつだ。わざわざ人の魂で何かをするとなったら、あくまで人の身である俺の考えうる限りだとそんなもんだ。


そんなことを考え出してからは内心少しワクワクしているが、俺がクレーティオに拾われた経緯や、クレーティオの立場的に、新しい生を受けても何処かで介入される気がする。他の神がどこまで俺の所有権を欲していたのかは分からないが、掻っ攫わなければいけない状況だったと考えると、それなりに俺は人気があったのではないか?


「――絶対とは言えないけど、夜空君は自由になれる素質を持ってるよ」

「自由になる素質?」

「そう、素質」


クレーティオが言う自由――神に介入されないということ。これまでの話で神に介入されない存在は……


「俺に神になれってか?」

「ははは、それはとってもいい案だと思うよ! 僕にも神の友達が出来るって訳だしね。でもまあ、そうだね……人の身で自由になることは出来るよ。その為の用意もしてある」

「随分と用意がいいな」

「前々から準備してたからね。まあ無駄になる可能性もあるけど」


流石に喋りすぎて喉が渇いてきたのか、クレーティオが指を鳴らすと俺とクレーティオの手元にティーカップに入った紅茶が出現した。

喉を潤し、一息ついてからクレーティオは立ち上がる。


「確かに僕は自由になるために神になって、実際に自由を手に入れた! 神になってからも、自分勝手に、何にも縛られずに生きている。言わば僕は自由の女神だ!」

「ニューヨークに住んでそうな女神だな!?」

「ナイスツッコミありがとう! そして自由の女神の所有物である夜空君は自由であるべきなんだ! 選択肢が神しかないようなら自由とは言わないだろう?」

「まあ、確かにな。俺は別に神になりたい訳じゃない」

「だから僕が君にあげるよ、自由になる可能性を!」


クレーティオは座る俺に手を差し伸べてくる。きっとこの手を取れば俺は自由になれる。ほぼ確信に近いものがあった。


自由というものを生きている間に深く考えたことはない。世間のルールという縛りはあったものの、俺はそれなりに充実した生活を送っていた。

色んなジャンルの本を読み、下らない知識を求めて調べ事をしたり、深夜はアニメを見たりゲームをしたり、大学の友達とも騒いだり遊びに行ったり、結構やりたいことをして生きてきた。

クレーティオの話を聞いて地球のことを知っても、それがまやかしだったとは思わない。俺が生きてきた人生は俺のものだ。


だが、今後俺の自由が明確に侵害される可能性があるなら俺は――


「クレーティオ、俺に自由をくれ」


俺は目の前に差し出された手を取る。

そもそも悩むだけ無駄なことかもしれない。人としてこれからも生きれる道があるなら勿論そうしたいし、異世界転生というのは、アニメや漫画を嗜んでいる奴なら一度は憧れたことがあるはずだ。


どんな世界だろうか……剣と魔法の世界はド定番。勇者や魔王、獣人なんかもいて――世界を冒険するのは絶対に楽しいだろう。

SFな世界も面白そうだ。科学の発展はいつだって人の期待を高めてくれる。


新たな世界を思って湧いてくるこのワクワク、これは好奇心だ。

好奇心には貪欲に、それが俺、皆月夜空だ。


「楽しい世界に連れてってくれよ?」

「さぁ、どうだろうね? 夜空君が楽しめるかは夜空君次第だよ」

「でもいいのか? 俺はクレーティオに何も返せないぞ?」

「今更そんなこと気にするの? 僕は君と話してるだけで楽しいからそれで満足だよ!」

「そんなに面白いことは言ってないと思うが……」

「ほら、あれだよ、何気なく会話していても楽しい相手がいるでしょ? そんな感じ」

「そりゃ嬉しいね」


俺自身も出会ったばかりなのに気楽に会話出来るクレーティオは、会話に心地良さを感じている。


「それじゃ、いよいよ今後の話をしようか。夜空君を自由にする()()については最後までのお楽しみね」

「クレーティオは好きな物を最後に食べる派か。ちなみに俺は好きな物しか食べない派だ」

「それは……僕より自由かもね……」


呆れるクレーティオと笑い合って、俺達はベッドではなくソファーに座り直した。


「では、新しい夜空君の就職先、ルーディスという世界の説明会を始めよう!」








今作の後書きキャラは5話目から登場します! 果たしてどんなキャラになるでしょうか

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